2020年9月28日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
【5月24日~30日の3枚】
2013年より活動する気鋭女性ピアニスト、北川とわ率いるプログレッシヴ・ジャズ・トリオ、2020年作4thアルバム。
前作『MIND UNIVERSE』ではKBBのヴァイオリニスト壷井彰久とのスリリングな共演を聴かせましたが、今回は27分にわたる組曲を収録し、構成面でもプログレ度を増した内容となっています。
注目はやはりピアノで、スピーディーな音運びで畳みかける緊張感あるタッチと、息をのむように柔らかくしなやかなタッチが自在に入れ替わり、情熱的かつ幻想的な音世界を描き出すプレイが何より圧巻。変拍子をたっぷり織り込んだ複雑な楽曲においても、一貫して流麗に紡がれていく演奏があまりに見事です。
そんなピアノを絶妙な呼吸で支えるリズム・セクションも特筆。PRISMの岡田治郎によるテクニカルにして芳醇なベース、そして山内陽一朗(Coba、NOBU CAINE etc.)/岩瀬立飛(ブルーノート東京ジャズオーケストラ、国府弘子 etc.)/橋本学(NHORHM、堀秀彰 etc.)という3人のドラマーが各曲でプレイしており、それぞれの持ち味が出た演奏によってアンサンブル全体が豊かに表情を変えていきます。
ハイライトは、なんといっても暗い森に迷い込んだ主人公を描く7部構成の組曲『Suite forest in the dark』。ピアノが静謐なタッチで暗い森の情景を映し出す「静」のパートと、猛烈なテクニックで疾走するアヴァンギャルドなジャズ・ロックへとなだれ込む「動」のパートが劇的に対比し一気に聴かせる、聴き応え抜群の大作となっています。
今作もジャズ・ロック・ファンなら是非とも聴いてほしい素晴らしき一枚!
続いては、注目の多国籍プロジェクトが放った1stアルバムをご紹介☆
スペインはカナリア初頭出身のマルチ・プレイヤー/コンポーザーDave Bandanaを中心にCAMEL~TIGER MOTH TALESのPeter Jones(Vo/Sax)やSteve Walshのソロ作に参加したドラマーTim Gehrt、COSMOGRAFのRobin Armstrong(g/key)などイギリス/アメリカ/イタリア/オーストラリアなどから実力派メンバーが参加したプロジェクト、20年デビュー作。
「友情と戦争」を題材にしたコンセプト作となっており、一部にそれを思わせるSEが入るものの、サウンド自体にテーマから想像される重々しさは皆無と言っていいです。
シンセサイザーが丹念に折り重なり描かれる浮遊感ある音空間の中、美しくキャッチ―なメロディとハートフルな歌声が印象的に響くプログレッシヴ・ポップは心地よさ抜群。
メロウにたゆたうギターとサックスも加わって映像を喚起させるような美しく情緒に富んだアンサンブルが続く中盤も素晴らしく、サイケ色はありませんがちょっぴりGONGやSteve Hillageの初期ソロに近い彼岸(?)的な世界観も感じます。
淡い音色が重なり合いさざ波のように押し寄せてくるサウンドが静かに心を打つ、感動の作品に仕上がっていますよ。
ラストは、名ポンプ・バンドのメンバーが結成したニューバンドによる新作!
80年代ポンプ・ロックの一角を担ったABEL GANZの元メンバーGordon Mackie(Ba)やKenny Weir(Dr)在籍の英国プログレ・バンド、20年作2nd。
瑞々しくも優しい音像を作り上げるピアノやシンセにヴィンテージなオルガン、アンソニー・フィリップスを彷彿とさせる繊細なアコギ、叙情的で穏やかなヴォーカル。
GENESISをはじめとする70年代憧憬に満ち溢れた暖かみ溢れるサウンドはまさしくABEL GANZ直系で、実に聴き心地よくファンタスティック。派手さはないものの、一音一音丁寧に紡がれるアンサンブルが聴き手に懐かしい気持ちを運んでくれます。
アコースティカルな叙情シンフォ好きは要チェックの逸品となっています。
【5月17日~23日の3枚】
今回は番外編。先週入荷した再入荷タイトルの中から、注目したい3枚をご紹介したいと思います☆
最初は、ハード・ロック黎明期の名バンドによるたまらんBOXをピックアップ!
ブルー・チアーやアイアン・バタフライらと共に、HR/HMの源流の一つとして名を残すアメリカの轟音ハード・ロック・バンドですね。
そんな彼らのオリジナル・アルバムである70年1stと71年2ndに、76年に制作されながら長らく未発表となっていた06年発表の3rdを加えたコンプリート・ボックスがリリース!
爆音で手数多く叩きまくるドラム、図太すぎるベースによるまさに「鉄壁」という言葉がぴったりのリズム隊、バキっと歪んだリズムと鋭角に切れ込むリードどもにエッジが半端ないギター、そして、金切り声でシャウトしまくるヴォーカル。
サバスを凌駕するほどのヘヴィネスとガレージ・サイケ由来の初期衝動を孕み、凄まじい音圧で迫りくるサウンドにのけぞってください!
そして最大の目玉が3rdで、オリジナルドラマー/ヴォーカリストのジョン・ガーナ―&ギタリストのルイス・ダンブラに、ジミー・ペイジやポール・ロジャースとの共演で知られるベーシスト:トニー・フランクリンを加えたラインナップ。オンラインショップでしか手に入らなかったこともあり、現在は激レアとなっている幻の作品。
5年の空白がありますが、さすが1st、2ndの流れをそのまま受け継いだパワフルな轟音サウンドが楽しめますよ。
2枚目は、ここ数年のプログレリイシューの中でも特にお勧めしたい英マイナー・ジャズ・ロックの名盤をセレクト!
1974年に英ブリストルで結成された、2人の管楽器奏者を擁する7人組ジャズ・ロック・バンドによる77年の唯一作。
この再発時に初めて聴いた作品でしたが、1曲目から「こ、こ、これはっ!」と本当に驚いたのを憶えています。
そのサウンドはずばり「アルティ・エ・メスティエリ meets カンタベリー・ロック」!
手数多くも精密に刻む技巧的なドラム&ベースが作り出すタイトかつスピーディなリズムに乗って、流れるように快速フレーズを繰り出すギター、ふわりとファンタジックな音色を紡ぐエレピ&シンセ、そして艶のあるしなやかな音色で駆け抜けるフルート&サックスが躍動。
アルティばりのスピードとテクニックでひた走る流麗なジャズ・ロックに、カンタベリー風の優雅で芳醇な管楽器群を重ねたこのアンサンブル!ジャズ・ロック然とした強度と、柔らかく軽やかなタッチが見事に一体となっていて、もうとにかく素晴らしすぎます。このオープニングナンバーでジャズ・ロック・ファンなら誰もが心奪われること必至です。
またアルバム後半で聴けるアコースティック・ギターをメインとする地中海的エキゾチズム薫るアンサンブルも極上。
こんな大変な傑作がまだイギリスにあったとは驚愕。これほどの実力派だけに唯一作なのが惜しまれます。
ラストは、カケレコ屈指のロングセラーを記録しているこの人気盤をご紹介しちゃいましょう!
70年代初頭にブリティッシュ・ロックの隠れ名盤と言うべき2枚の作品を残したCAPABILITY BROWN。2nd『VOICE』のジャケットはかのヒプノシスがデザインしたもので、「お口にチャック」ジャケは見たことあるという方も多いのではないでしょうか。
そのCAPABILITY BROWNが76年に解散し、同年にその主要メンバーによって結成されたのがKARAZY KATです。1stと2ndを収録していますが、76年1stはプロデュースにビートルズ『ホワイトアルバム』の製作に携わって以来、ポール・マッカートニー、ピンク・フロイド、エルトン・ジョン、セックス・ピストルズなど数々のビッグネームと仕事をしてきたクリス・トーマスを起用した意欲作。
そのサウンドは、CAPABILITY BROWN時代からの持ち味だったメンバー全員による巧みなコーラスワークを生かした10CCにも迫る完成度のブリティッシュ・ポップ/AOR。楽曲自体は英国らしい捻りのあるハイセンスを散りばめつつもポップで耳馴染みのいいものなのですが、演奏に注目するとこれがもうテクニカルでキレキレなんですよね。その辺のギャップも面白い作品と言えます。
2ndは幾分リラックスした曲調が増えAORテイストが出た作品ですが、さわやかなハーモニーや随所で聴かせる緻密でタイトに畳みかける演奏など持ち味はもちろん健在。
どちらも文句なしの傑作です♪
【5月10日~16日の3枚】
最初は、BIG PINKレーベルからのオススメ新譜をピックアップ!
のちの79年に短期間ながらBLOOD SWEAT & TEARSに参加するギタリストKenny Marcoと管楽器奏者Steve Kennedy、そしてTRIUMPHを結成するベーシストMike Levineら在籍のカナディアン・ポップ・ロック・バンド、70年作2nd。
日本ではかなりマイナーな存在ですが、69年にシングル「When I Die」が米チャート18位に入ったことでアメリカおよびカナダにおいてはそこそこの成功を収めたバンドとして知られます。
冒頭、ギターとサックスのユニゾンが奏でるメロウなフレーズからはじまると、ピアノのこぼれる雫のような音が続き、タイトかつ跳ねるようなドラム、ファンキーなギターのカッティングが切れ込む、思わず体が揺れてしまう心地よいビート感に早くもノックアウト!ソウルフルでありながらマイルドなボーカル・ハーモニーも絶妙にマッチします。
とにかく楽器の一体感が素晴らしく、スムースなサックスと隙間を埋めるようなオルガンが鳴り響き、そして感情の高揚がそのまま音になっているようなギターソロでも胸がいっぱいになります。
どっしりとして粘っこいリズム・セクションも特筆もの。
これはスワンプ・ロック・ファンにもオススメの、カナディアン・ロック名品です。
2枚目は、再入荷より、2020年リリースのこの注目コンピレーションをチョイス!
これはまた、英フィーメール・フォーク・ファンが喜びそうなコンピがリリースされました!
英国やアイルランドのレア・フォーク/サイケデリック・フォークを集めているのですが、まず2曲目NEW WINE「Time Flies By」を聴いてください!
ギターと微かな鍵盤がゆらめく繊細なバンド・サウンドに、ちょっと不安定ながらも透き通った女性ボーカルが響き、思わず微笑んでしまうような可愛らしさです。フルートや男性ボーカルと掛け合いながら、美しいボーカルがどこまでも心地よく広がっていきます。
同系統の可憐なボーカルが楽しめるジャズ・サイケ・フォーク・トリオGUGGENHEIM、まるでメロウ・キャンドルのようなカルテットCEATHRARも素晴らしいです。
他にもヘヴィ・サイケ・バンドARAGONや、起伏に富んだ展開とハードなギターが楽しめるプログレ・バンドZEITGEISTも収録されており、フォーク・ファンのみならずマイナー・ブリティッシュ・ロックのファンにもご注目いただきたい一枚となっています!
ラストは、イタリア重鎮によるベスト盤をご紹介!
怖~いジャケットがいかにもなセンスと言える、イタリアン・ロックの大御所グループOSANNAによる2020年編集のベスト・アルバム。
2001年の復活作『Taka Boom』から17年作『Pape Satan Aleppe』まで5作品からの選曲に、新曲も加えた全18曲を収録しています。
2ndアルバム収録の名曲「There Will Be Time」の流麗な室内楽アレンジ・バージョンなど過去曲のセルフカバーや、09年作『Prog Family』からのDavid Jackson参加曲など選曲も素晴らしいです。
00年代も濃密かつ孤高の活動を展開してきたOSANNAの軌跡を堪能できる好ベスト・アルバム!
【5月3日~9日の3枚】
最初にご紹介したいのが、北欧フィンランドから届いたこの素晴らしきシンフォ・アルバム!
結成以来精力的な活動を続ける、イタリア/フィンランド/アメリカ出身のプログレ・ミュージシャン3人を中心とするプロジェクト・グループSAMURAI OF PROG。
2020年にはそのうち2人による別ユニットがアルバム『GULLIVER』をリリースしたことも記憶に新しいところです。
ここで取り上げるのは、上記アルバムにも名を連ねるドラマーKimmo Porstiによる新作ソロ・アルバム。
CAMEL彷彿のファンタジックで気品たっぷりのシンフォに、ジャズ/フュージョン的な滑らかさ、北欧フィンランドらしい神秘的な民族音楽エッセンスを加えた、ハートフルかつ緻密なサウンドに心奪われます。
IONAのギタリストDave Bainbridge、STERN MEISSENにも参加したサックス奏者Marek Arnold、ユニット作『GULLIVER』でもプレイしたスペインの実力派ギタリストRafael Pachaなど、SOPと同様に各国の腕利きミュージシャンが参加していますが、中でもBainbridgeの歌うようにメロディアスで叙情溢れるギターはやはりさすが。
Porstiによる自在にリズムパターンを変化させながら精緻に叩き出される職人的ドラミングの素晴らしさも特筆ものです。
ジャケットどおりの幻想風景がイマジネーション豊かに立ち上がってくる、息をのむような傑作です!
70年代イタリアン・ロックのファンでしたら、再入荷したこちらの新鋭グループがイチオシ!
現イタリア屈指の有力バンドと言える、UNREAL CITYのギタリスト、CELLAR NOISEのキーボーディストらによって結成されたプログレ・グループによる20年デビュー・アルバム。
BANCOやMUSEO ROSENBACHなど往年のイタリアン・プログレの遺伝子を確かに受け継ぐ、オルガンとメロトロンを軸にした哀愁のクラシカル・プログレは、さすが実力派メンバーが集結しているだけあって、洗練されつつも風格に満ちていて圧巻!
70年代初頭に聴かれたようなヴィンテージ・トーンで荘厳に鳴るオルガン、ここぞで洪水の如く流れ込むメロトロンらによって構築的に展開していく、重厚ながらもスリルに満ちた音世界を構築しています。
一音一音に零れ落ちんばかりの哀感を湛えた泣きのギター、神秘的な調べのフルートも絶品です。また熱唱タイプではないながら聴く者を惹きつけるエモーションを湛えたイタリア語ヴォーカルも伊ロック・ファンならグッと来るはず。
これは往年のイタリアン・ロック好きのツボを隅々まで心得たサウンドと言えるでしょう。素晴らしいですよ~☆
ラストは、マイナーながらある有名バンドのメンバーが結成したこのデュオ作品をピックアップ。
あのCHICAGOを送り出した名プロデューサー、ジェームズ・ウィリアム・ガルシオがそれ以前に手掛けた「元祖ブラス・ロック・グループ」BUCKINGHAMS。
そのBUCKINGHAMSのシンガーDennis TufanoとギタリストCarl Giammareseが組んだデュオによる73年のアルバムが本作です。
さらっと乾いたアコースティック・ギターの響きと、2人のコーラス・ハーモニーが本当に美しいサウンドで、その瑞々しさはまるでCS&Nのごとし!
特にキャロル・キングもピアノで参加した「Music Everywhere」が素晴らしくて、歯切れの良いギター・カッティングから始まり、小刻みでタイトなドラムとベースが助走をつけると、Dennis Tufanoのちょっぴりソウルフルなボーカル、伸びやかなハーモニーをつけるCarl Giammareseの2人のヴォーカルが気持ちよく響きます。
キャロルによる2人のヴォーカル・ハーモニーを盛り立てるキラキラしたピアノはさすがの好演だし、ソウル畑の名手デイヴィッド・T・ウォーカーのギターも楽曲に躍動感を与えていますね。
めでたく初CD化となった注目作!
4月の「今週の3枚」は次ページでお楽しみください☆
2019年12月以前の「今週の3枚」は下記ページにてチェックどうぞ!
【関連記事】
「これは聴いてもらいたい!」というカケレコメンドな作品を毎週3枚ご紹介。2019年7月~12月に取り上げた作品はこちらでチェックどうぞ♪
ヴォーカルやギターなどCAPABILITY BROWNの主力メンバーにより結成されたグループ。76年作1stと77年作2ndとをカップリングした2in1CD。美しいツイン・リード・ギターとドラマティックなコーラス・ワークによるポップ・プログレ、ヌケの良いギター・リフとキャッチーなメロディ&ハーモニーによるハード・ポップ、粘っこいファンキー・ロック、英国らしい憂いのあるメロディと流れるようなアンサンブルが胸にしみるフォーク・ロックなど、どの曲も印象的なメロディと味わい深いアンサンブルが絶妙な佳曲ぞろい。CAPABILITY BROWNのファンはもちろん、PILOTや10ccやBADFINGERやQUEENなどブリティッシュ・ポップのファン、ニッチ・ポップのファンはかなりグッとくるグループです。おすすめ
1974年に英ブリストルで結成、2人の管楽器奏者を擁する7人組ジャズ・ロック・バンドによる77年の唯一作。このサウンド、ずばり「アルティ・エ・メスティエリ meets カンタベリー・ロック」!手数多くも精密に刻む技巧的なドラミング&ベースが作り出すタイトかつスピーディなリズムに乗って、流れるように快速フレーズを繰り出すギター、ふわりとファンタジックな音色を紡ぐエレピ&シンセ、そして艶のあるしなやかな音色で駆け抜けるフルート&サックスが躍動。アルティばりのスピードとテクニックでひた走るテクニカル・ジャズ・ロックに、カンタベリー風の優雅で芳醇な管楽器群を重ねたこのアンサンブル、ジャズ・ロック然とした強度と、柔らかく軽やかなタッチが見事に一体となっていて、もうとにかく素晴らしすぎます。アルバム後半で聴けるアコースティック・ギターをメインとする地中海的エキゾチズム薫るアンサンブルも極上。こんな大変な傑作がまだイギリスにあったなんて!と驚かずにはいられない逸品です。
2013年より活動する女性ピアニスト、北川とわ率いるプログレッシヴ・ジャズ・トリオ。27分に及ぶ組曲を配したよりプログレッシヴなスタイルで聴かせる2020年作4thアルバム。スピーディーな音運びで畳みかける緊張感あるタッチと、息をのむように柔らかくしなやかなタッチが自在に入れ替わり、情熱的かつ幻想的な音世界を描き出すピアノが何より圧巻。変拍子をたっぷり織り込んだ複雑な楽曲においても、一貫して流麗に紡がれていくプレイはあまりに見事です。そんなピアノを絶妙な呼吸で支えるリズム・セクションも特筆。ベースはPRISMの岡田治郎、ドラムは山内陽一朗/岩瀬立飛/橋本学という3人のドラマーが各曲でプレイしており、それぞれの持ち味が出た演奏によってアンサンブル全体が豊かに表情を変えていきます。ハイライトは、暗い森に迷い込んだ主人公を描いた7部構成の組曲『Suite forest in the dark』。ピアノが静謐なタッチで暗い森の情景を映し出す「静」のパートと、猛烈なテクニックで疾走するアヴァンギャルドなジャズ・ロックへとなだれ込む「動」のパートが劇的に対比し一気に聴かせる、聴き応え抜群の大作となっています。今作もプログレ・ファン、ジャズ・ロック・ファンなら是非聴いてほしい傑作!
これはまた、英フィーメール・フォーク・ファンが喜びそうなコンピが発売されました!英国やアイルランドのレア・フォーク/サイケデリック・フォークを集めているのですが、まず2曲目NEW WINE「Time Flies By」を聴いてください!ギターと微かな鍵盤がゆらめく繊細なバンド・サウンドに、ちょっと不安定ながらも透き通った女性ボーカルが響き、思わず微笑んでしまうような可愛らしさです。フルートや男性ボーカルと掛け合いながら、美しいボーカルがどこまでも心地よく広がっていきます。同系統の可憐なボーカルが楽しめるジャズ・サイケ・フォーク・トリオGUGGENHEIM、まるでメロウ・キャンドルのようなカルテット、CEATHRARも素晴らしいです。アルバムにはヘヴィ・サイケ・バンドARAGONや、起伏に富んだ展開とハードなギターが楽しめるプログレッシブ・バンドZEITGEISTも収録されています。
注目の多国籍シンフォ・プロジェクトSAMURAI OF PROGのパーマネント・メンバーとして活動するフィンランド出身ドラマーによる2020年ソロ作。IONAのギタリストDave Bainbridge、STERN MEISSENにも参加したサックス奏者Marek Arnold、ユニット作『GULLIVER』でもプレイしたスペインの実力はギタリストRafael Pachaなど腕利きが参加。CAMELを彷彿させるファンタジックで気品たっぷりのシンフォニック・ロックに、ジャズ/フュージョン的な滑らかさや、北欧フィンランドらしい神秘的な民族音楽エッセンスを加えたスタイルは大変完成度高いです。優雅な聴き心地の中に耳を惹くクリエイティヴなサウンド作りが光ります。リーダーによる安定感と躍動感がバランスした見事なドラミングも聴き物!
スペインはカナリア諸島出身のマルチ・プレイヤー/コンポーザーDave Bandanaと、マルチ・プレイヤー/作詞家Bradley Birzerを中心に、CAMEL〜TIGER MOTH TALESのPeter Jones(Vo/Sax)やSteve Walshのソロ作に参加したドラマーTim Gehrt、COSMOGRAFのRobin Armstrong(g/key)などイギリス/アメリカ/イタリア/オーストラリアなどから実力派メンバーが参加したプロジェクト、20年デビュー作。「友情と戦争」を題材にしたコンセプト作ですが、サウンド自体にテーマから想像される重々しさは皆無。シンセサイザーが丹念に折り重なり描かれる浮遊感ある音空間の中、美しくキャッチ―なメロディとハートフルな歌声が印象的に響くプログレッシヴ・ポップが抜群に心地よいです。メロウにたゆたうギターとサックスも加わって映像を喚起させるような美しく情緒に富んだアンサンブルが続く中盤も素晴らしく、サイケ色はありませんがちょっぴりGONGやSteve Hillageの初期ソロに近い彼岸(?)的な世界観も感じます。淡い音色が重なり合いさざ波のように押し寄せてくるサウンドが静かに心を打つ、感動の一枚です。
言わずと知れたイタリアン・ロックの重鎮グループ、01年作「TAKA BOOM」以降のアルバムより選曲の18曲収録ベストアルバム。
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