2019年8月27日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: ハード・ロック
そんなウェストとパパラルディの再会は69年。パパラルディがプロデュースを務めるJOLLIVER ARKANSAWというバンドのアルバム録音の折、「ギターが物足りない」と感じたパパラルディは試しにウェストを呼びソロを弾かせてみることに。するとかの太った少年は、見違える程にその腕を上げていたのでした。
こうしてパパラルディはウェストのソロ・デビュー作をプロデュースすることを決意。彼自身がベースとキーボードをプレイし、ドラマーにはJOLLIVER ARKANSAWの前身BO GRUMPSというグループに短期間在籍していたN・D・スマート二世が参加。またゲスト・キーボーディストに後に短命のハード・ロック・バンドHAMMERを結成するノーマン・ランズバーグを迎え、同年7月にリリースされたのが本作『MOUNTAIN』です。
サウンドの完成度、インパクトという点では、本作は翌年のMOUNTAIN名義での第一作目『CLIMBING!(勝利への登攀)』にやや及ばないかもしれません。とはいえウェストをフロントに据え、パパラルディがベースやアレンジによって更なる音の厚みをもたらしていくというMOUNTAINの様式は既に見て取ることができます。
全体を歪ませたヘヴィな音作り、切れ味鋭いギターと饒舌でメロディアスなベース、全体を引き締めるドラムのスリリングな応酬。自らが手掛けたCREAMのサウンドを継承しつつ、よりハードに、そしてより多彩で奥行あるサウンドに発展させようというパパラルディの試みが、ウェストの才覚と化学反応を起こした第一作目。決して「第二のCREAM」というだけでは語れない、複雑なMOUNTAINサウンドの原点がこのアルバムには現れています。それでは注目曲をピックアップ!
まずアルバムの冒頭を飾る「Blood Of The Sun」は、後のMOUNTAIN「Never in my life」にも通ずるヘヴィでパワフルなナンバー。推進力のある力強いドラムの上で歪んだギターとベースがユニゾンでリフを奏で、ウェストの力強いシャウトが炸裂!
右チャンネルのギターと左チャンネルのベースが主張激しくせめぎ合うアンサンブルはCREAMを彷彿とさせますが、それでも豪快な存在感を誇るウェストのギター&ヴォーカル、そしてそれと対を成すパパラルディの緻密なベースラインというコントラストはMOUNTAINならではの味わいと言えるでしょう。
続く2曲目「Long Red」は72年にリリースされる傑作ライヴ盤『LIVE: THE ROAD GOES EVER ON(ライヴ: 暗黒への挑戦)』でも披露された名ナンバー。後にMOTT THE HOOPLEがカヴァーしたことでも有名ですね。
叙情的なメロディを奏でる優しいトーンのオルガンとフォーキーなアコギをバックに、ウェストの伸びやかなヴォーカルが響き渡る。この1曲目と2曲目のうって変わった表情からしても、パパラルディがヘヴィさ一辺倒なだけではない多彩な要素のあるサウンドを生み出そうとしていたことが伺えます。
アルバムの後半ではTHE BANDとボブ・ディランの共作「This Wheel’s On Fire」のカヴァーも披露。しかし他の楽曲ではフォーキーなアコギも取り入れているというのに、何故か本曲のサウンドはとりわけヘヴィ。荘厳に響くオルガンも交わり、後のHR/HMもかくやとばかりの重厚かつドラマチックなアンサンブルが展開されていきます。このヘヴィさと繊細な叙情性の融合の完成形が、次作の「Theme For An Imaginary Western」や「For Yasgur’s Farm」であることは間違いありません。
本作はバンドではなくウェストのソロ名義でリリースされたアルバムではありますが、パパラルディの中には既に自分がメンバー兼プロデューサーを務めるバンドをウェストと共に結成する目論みがあったようです。それは本作リリース直後のデビュー・ライヴがウェストのソロ名義ではなく、MOUNTAINというバンド名義で行われていることからも明らか。
この後パパラルディは自分達MOUNTAINのアルバムをリリースするための自主レーベルとマネジメント会社を設立。8月にMOUNTAIN名義でウッドストック・フェスティバルに参加すると、秋にはウェストにパパラルディ、それからドラムにコーキー・レイング、キーボードにスティーヴ・ナイトを加えた4人組バンドMOUNTAINとしての実質なデビュー作の制作に取り掛かります。
ウェストの豪放磊落なハード・ロック・サウンド。クラシックを学んだパパラルディによる高度で多彩な音楽的要素。そして、パパラルディの妻ゲイルによる深淵で文学的な歌詞。単に力強いだけでなく、複雑でどこか混沌としたMOUNTAINのサウンドは、ロックが多様化した当時のシーンをまさに象徴しています。ストレートなロックを志すウェストは後にパパラルディと袂を分かってしまいますが、そんな異なる個性のぶつかり合いもまた、魅力あるロック・サウンドの要因と言えるかもしれません。
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3枚は無傷〜傷少なめ・2枚は傷あり
1973年作品。70年代アメリカン・ハード・ロックを代表するマウンテンの歴史を網羅するベスト・アルバム。ピッキング・ハーモニクス、バイオリン奏法、メロディアスなソロなどレズリー・ウエストに影響受けたギタリストとしてはマイケル・シェンカー、エース・フレーリー、エイドリアン・バンデンバーグ、ランディ・ローズなど超一流どころがズラリ。70年代を代表するアメリカン・ハード・ロックの教科書ともいえるマウンテンの「ベスト・オブ・ベスト」である。
1974年作品。解散状態だったマウンテンは1973年の日本公演のため再度集結、ライヴ・イン・ジャパン「Twin Peaks」の録音で何かを掴んだパパラルディはマウンテンをもう一度復活させる決意を抱く。そこでもう一度栄光を夢見て制作されたのがこの「雪崩」。サウンドはレズリーの意向が強調されたものになり、サザン・ロック的な志向が強い。「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」「サティスファクション」などのカバーも収録。この作品でマウンテンは解散。83年にはパパラルディはマウンテンのLPジャケットなども担っていた妻ゲイル・コリンズに射殺され、悲劇的な死を遂げた・・・。
廃盤、紙ジャケット仕様、08年DSDリマスタリング、インサート付仕様、定価1800+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
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