2019年3月23日 | カテゴリー:ライヴ・レポート,世界のロック探求ナビ
こんにちは。カケレコ・スタッフ増田です。
3月21日にビルボードライブ東京で行われた、ユーライア・ヒープ来日公演の1stステージを観てまいりました。
2016年1月にクラブチッタ川崎で行われた公演から3年ぶりとなる来日。今年で結成50周年という記念すべき節目でもあった彼らのステージの模様をお届けいたします!
ご存知レッド・ツェッペリンやディープ・パープルと並び70年代ハード・ロックの雄として掲げられる英国のグループ、ユーライア・ヒープ。70年代に活躍し今もなお活動を続けるバンドは多数存在しますが、彼らの場合は69年の結成から一度も解散を経ることなく、現在も勢力的にライヴやアルバムリリースを続けているというのだから驚異的です。昨年18年にもなんと25番目のスタジオ・アルバムとなる新譜『LIVING THE DREAM』をリリースしており、今回はそのツアーの一貫として日本を訪れてくれました。
メンバーは16年と同様、以下の5人。
86年から在籍するベテランのバーニー・ショウ&フィル・ランゾンに、07年から加入したラッセル・ギルブルック&12年加入のデイヴィー・リマーという若いリズム隊。そして結成時より不動のギタリスト、御年71歳のミック・ボックス!既に長年を積み上げてきているこのラインナップ、しかもアルバムをリリースしたばかりという脂の乗った状態でのバンドの演奏に期待が高まります。
ステージのオープニングを飾るのは新作『LIVING THE DREAM』の1曲目「Grazed By Heaven」。初っ端からいきなりパワフルな音圧で襲いかかるアンサンブルに大興奮!普段のビルボードライブだと割合静かに聴き入るような公演が多いと思われますが、しかし彼らは現役のハード・ロック・バンド。間近で鳴らされる重厚なサウンドにベテランのファンたちも腕を振って応え、1曲目から会場の温度は一気に上昇しました。
曲が終わると「コンニチハ!…いやコンバンハの時間かな?」と朗らかに挨拶するバーニー・ショウ。続く2曲目はジョン・ウェットンが在籍した75年作のタイトル曲「Return To Fantasy」。おなじみの「ダッダダッダ」というギャロップ・ビートに乗せて重厚に鳴り響くハモンドの音色、そして荘厳なコーラス・ワーク。ミック・ボックスのワウワウ・ギターも炸裂し、これぞユーライア・ヒープ!と言えるサウンドを披露します。
続いては再び新譜から「Take Away My Soul」。これが格好良かったです!新譜『RETURN TO FANTASY』を聴いた時もベテラン・バンドとは思えぬ活き活きとしたハード・ロック・ナンバー揃いで感動しましたが、生だとさらに素晴らしい。ミック・ボックスの衰え知らぬ切れ味鋭いギター・リフに、会場に響き渡るバーニー・ショウのソウルフルなハイトーン・シャウト。ドラマチックな中間部から分厚いハモンドによるスピーディーなソロへと雪崩れ込むパートはハード・ロック・ファン歓喜!
そして今回印象的だったのが、メンバーの中では若手であるギルブルック&リマーのリズム隊。ミュージシャンとしては全く衰えていないものの、やはり白髪を蓄えた見た目であるミック&バーニー&フィルの3人と、メタル・バンドから引き抜いてきたようなリズム隊2人はヴィジュアル的にはコントラストがありますが、バンドとしての一体感は文句なし。さらにど派手なドラミングを筆頭としたリズム隊の地の底から響くような重厚感&エネルギッシュさとベテラン3人による「往年のヒープ」らしい味わいが混ざり合って、かつてよりもパワーアップした「現代のヒープ」サウンドに仕上がっていました。
4曲目は72年の名盤『悪魔と魔法使い』より「Rainbow Demon」!イントロから「来たー!」と心の中で叫んでしまう、往年の名ナンバーの再現に胸が熱くなります。
その後ミック・ボックスの前にガット・ギターが用意され、新譜からのナンバー「Water Flowin’」を披露。叙情あふれるヴォーカルとガット・ギターの組み合わせは名曲「The Wizard」も彷彿とさせ、ジーンと心に染み渡りました。メンバーによる鉄壁のコーラス・ワークも見事!
続いても新譜より、8分に及ぶ大曲「Rocks In The Road」。ギターとハモンドによる疾走感溢れるユニゾン・リフをフィーチャーした前半部に幻想的な中間部、そして激しいギター・ソロが繰り広げられる後半部へとドラマチックに展開する聴き応えあるナンバーとなっており、特に荘厳で分厚いハモンドがこれでもかと降り注ぐ中盤はオルガン・ファンにとって至福の時間でした。
そして次はデビュー・アルバム『VERY ‘EAVY…VERY ‘UMBLE』から「Gypsy」!歪んだハモンドとギターによる独特のイントロが鳴らされた途端もう会場は大盛り上がり。そして何より、パワーがもの凄い…!原曲のちょっぴり怪しく不気味な雰囲気も良いですが、今回のライヴの音圧、一発一発叩きつけられるような重厚感は「Gypsy」の新たな魅力を引き出していると感じました。「Gypsy(2019 version)」としてシングル・リリースして欲しいくらいです!
会場の熱がピークに達したところで、「Gypsy」のアウトロからそのまま代表曲「Look At Yourself」へ!これも素晴らしく格好いいのですが、もうテンポが早い早い(笑)。目まぐるしく弾丸のように疾走するヘヴィなアンサンブルは、とても最年長71歳の居るバンドと思えぬエナジーに満ちていました。
そして「Look At Yourself」曲内でメンバー紹介&ソロ・パートに突入。ロータムをパワフルに打ち鳴らすドラムに安定感のあるベース(ベースのフレット部が青く光る仕様で格好良かったです)、派手に体を使い鍵盤を掻き鳴らすオルガン・・・。圧巻はギュワギュワとワウを踏み、手を下にビャッビャッと振ったり、観客に向かって投げキッスをしたりしながら(!?)怒涛のソロを披露するミック・ボックス!メンバー交代やバンドの停滞など数々のトラブルに見舞われつつも、それでも50年に渡ってユーライア・ヒープを支え続け、そして未だ歩みを止めぬ彼の姿は本当に「貫禄」の一言でした。
ラスト・ナンバーはライヴ定番曲の「Lady In Black」。始まる前にバーニー・ショウが一階席の観客を立たせ(ビルボードで観客が立つのはあんまり見た事がありません!)、会場一体となっての大合唱!見渡すと上階のお客さんも立っていたりと、その盛り上がりと感動ぶりが伺えました。今回のライヴは会場が小さかったこともあって、メンバー全員が隅々の観客まで見渡しながら手拍子を煽ったり盛り上げていたのがとても印象的でした。曲が終わるとメンバーは一旦退場するも、すぐに戻ってきてアンコール曲「Easy Livin’」を演奏。一階の観客は立ったまま、サビに合わせて手を振ったり一緒に歌ったり。演奏のエネルギーも最後まで全く落ちることなく、メンバーも観客もライヴを心から楽しんでいることが伝わってくる公演でした。
前日に行われた大阪公演などの評判も良く楽しみにしていましたが、思っていた以上に素晴らしいライヴでした!熱量溢れるハード・ロック・アンサンブルを間近で体感できたのは勿論のこと、彼らが現在も第一線を走り続けるライヴ・バンドであることを証明した来日公演だったのではないかと思います。往年のロック・ファンたちの心を若返らせてくれるような、そんな熱い一夜でした。
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ケン・ヘンズレー、デヴィッド・バイロン率いる初期英国ハード・ロック・シーンを牽引した名グループ。Vertigoレーベルよりリリースされた70年1st。手数が多くヘヴィなドラムを土台に、ギターとオルガンが引きずるように荘厳なリフを放ち、エモーショナルなハイトーン・ヴォーカルが炸裂する!メロトロンを使った楽曲など、後のドラマチックな音楽性も覗かせますが、冒頭に配された代表曲「GYPSY」のように重さと疾走感が共存した荘厳なハード・ロックこそ本作の肝。オルガンとギターが一体となって生み出すダークなグルーヴ、そこを切り裂くハイトーン・シャウトはこれぞ英国ハードの王道と言えるでしょう。聴き逃し厳禁な英ハード屈指の名作!
URIAH HEEPといえば、「対自核」(邦題)と云われる程の代表作!サウンド的には前作「Salisbury」と次作の中間といった所なのですが、バンドのサウンドが成長し、完成度の高いアルバムになっています。また、ミック・ボックスのギターが活躍しており、このアルバムがブリティシュ・ハードロックの名盤として語られる事が多いことも頷けるサウンドになっています。まだ、少々荒削りなサウンドですが、勢いのあるサウンドで、バンドとしての勢いも感じられる仕上がり。冒頭に収録されたアルバム・タイトル曲「Look At Yourself(対自核)」は、名実ともにユーライア・ヒープの代表曲であり、70年代ブリティッシュ・ハード・ロックの名曲のひとつ。楽曲の全編を重厚なオルガンが覆っていますが、決してそれだけが浮き上がることなく、全体としてアグレッシヴなロック・ミュージックを構成する様が見事。間奏部のエキゾチックなメロディや要所要所で聴かれる印象的なコーラスも独特の雰囲気を醸しています。終盤ではOsibisaのメンバーによるパーカッションの客演を得て、さらに魅力的な演奏が展開。決して「軽快」とは言い難いが、興奮を誘うような独特の疾走感が痛快!
元GodsのKen Hensleyを中心に結成されたグループが71年にヴァーティゴよりリリースした2nd。ヘヴィなギター・リフとケンのオルガンによる重厚感溢れるサウンドと、後のヘヴィ・メタルへと受け継がれる様式美的な曲展開がすでに完成の域に達した名盤。デヴィッド・バイロンの力強いハイ・トーン・ヴォーカルも圧巻。対照的にアコースティカルな楽曲の素晴らしさもさすが。
紙ジャケット仕様、アップグレード・リマスタリング盤、ボーナス・トラック7曲、定価2200+税
盤質:全面に多数傷
状態:良好
帯有
若干スレあり
英ハードの代表格、72年作4th。前作で完成させたドラマティックなオルガン・ハード・ロックのスタイルにアコースティック要素を注入、Roger Deanによるアルバム・ジャケットの如く、幻想的な世界観を作り出しています。ヘヴィ且つメロディアスなワウ・ギター、凶暴に歪んだハモンド・オルガンが生み出すグルーヴ感に、パワフルなハイトーン・ヴォーカルが乗るハード・ロック・パートから、泣きのスライド・ギターとシリアスなコーラス、センチメンタルなピアノが絡み合うシリアスな叙情的なパートへ、緩急を付けた曲展開にグイグイと引き込まれます。繊細なアコギ、力強くタメの効いたドラム、メロディアスなベースも素晴らしい。ハード・ロックの疾走感こそ前作『LOOK AT YOURSELF』に譲るものの、英オルガン・ロックらしいドラマティックな構成美が楽しめる本作もURIAH HEEPの代表作の一つです。
廃盤希少!!紙ジャケット仕様、SHM-CD、03年リマスター音源、ボーナス・トラック5曲、内袋付仕様、シリアルナンバー入りレーベルカード封入、定価2667+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
DEEP PURPLE、LED ZEPPELIN、BLACK SABBATHに並ぶ、70年代英国HRを代表する名グループ。1972年5THアルバム。結成当初のヘヴィ・ロックから、キャッチーで疾走感溢れる名盤『対自核』を経て、徐々に音楽性を変化。イニシアティブを鍵盤奏者のKen Hensleyが握り始め、アコースティック・ギターやキーボードをフィーチャーした叙情的でドラマティックなサウンドとなりました。本作は、鍵盤重視の音楽性をよりはっきりと示した集大成的な内容。オルガンに加えて、シンセサイザーの音色も印象的です。特にアルバム最後に収められた、10分を越すタイトル曲「MAGICIAN’S BIRTHDAY」は素晴らしい出来栄え。Roger Deanによるアルバム・ジャケットの如き、色彩豊かな幻想世界が繰り広げられます。親しみやすいヴォーカル・メロディに、ムーグ・シンセサイザーを被せて、呪術的な雰囲気を演出し期待感を煽ります。更に中盤に置かれたMick Boxのギター・ソロ・タイムは圧巻。計算尽くされたワウペダルの操り振りには鳥肌です。HR度の高い『対自核』では楽しむことが出来ない、アコースティックで繊細な世界感。本作を聴いて、URIAH HEEPの真の魅力に触れてください。
ESMCD338(GAS0000338ESM)(CASTLE)
デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲
盤質:傷あり
状態:良好
ケースツメ跡あり、側面部に色褪せあり
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