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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』連動 ベネズエラ産プログレッシブ・ロックの45年 (1973 – 2018)

本記事は、「netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』第50回 RAIMUNDO RODULFO / Mare Et Terra (Venezuela / 2008) 」に連動しています

ブラジルやアルゼンチンといった南米プログレッシブ・ロックの中心国と比べれば、プログレッシブ・ロックに関する話題を聞くことが少ないベネズエラではありますが、同国からは南米プログレッシブ・ロック史を語る上で外すことの出来ないアーティストも登場してきました。そもそも、ベネズエラのプログレッシブ・ロック・アーティストたちがブラジルやアルゼンチン勢に勝るとも劣らない音楽性を有しているということは、ベネズエラ出身のミュージシャンであるAMAROKのRobert SantamariaやKOTEBELのCarlos Plaza Vegasなどが、スペインに渡りスパニッシュ・プログレッシブ・ロックの代表格グループを率いていることからも証明出来るでしょう。ここでは、Vytas BrennerやFernando Yvoskyを始点とするベネズエラ産プログレッシブ・ロック・シーンの歴史を掘り下げます。


Vytas Brenner / La Ofrenda de Vytas Brenner (Venezuela / 1973)

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ドイツ生まれのミュージシャンVytas Brennerは、ベネズエラのプログレッシブ・ロック・シーンにおける最重要人物のひとりでしょう。60年代末から音楽活動を開始した彼は、73年にデビュー・アルバムとなる『La Ofrenda de Vytas Brenner』を発表しました。本作以降のVytas Brennerは、スペーシーなシンフォニック・サウンドを生み出すミュージシャンへと変貌を遂げることになりますが、デビュー・アルバムで聴くことが出来るのはラテン・アメリカのサウンド・メイクによるファンタジックなシンフォニック・ロック。75年作『Jayeche』や83年作『Vytas』における、コズミックな作風とはまた違った魅力を放ちます。

Fernando Yvosky / Dos Mundos (Venezuela / 1975)

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Vytas Brennerと共に、ベネズエラ産プログレッシブ・ロックの黎明期である70年代に優れたアルバムを残したのがFernando Yvoskyです。75年にリリースされた『Dos Mundos』は、高い完成度を誇る組曲形式のプログレッシブ・ロック・アルバム。音楽性としては、チェンバー・ロックの趣が強いシンフォニック・ロックであり、デリケート且つファンタジックな印象です。バンド楽器に加えてヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、フルート、オーボエ、クラリネット、バスーンの各奏者ら20名以上のゲスト・ミュージシャンを従え、自主制作作品とは信じがたいクオリティーのサウンドを聴かせます。

ESTRUCTURA / Mas Alla De Tu Mente (Venezuela / 1978)

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ベネズエラのみならず、南米プログレッシブ・ロックを語る上でも外すことが出来ないであろう78年作『Mas Alla De Tu Mente』で知られてきたのが、マラカイで結成されたシンフォニック・ロック・グループESTRUCTURAです。A面B面に長尺の組曲を配置しナレーションも挟みながら進行する作風は、Rick Wakemanがフランスのジュール・ヴェルヌによる小説「地底旅行」にインスパイアされ製作した74年作『Journey To The Center Of The Earth』を彷彿とさせます。女性ヴォーカリストMarisela Perezによって歌われるメロディーはどこまでも美しく、全編を南米叙情が支配したかのようなシンフォニック・ロックが炸裂します。

EQUILIBRIO VITAL / Kazmor El Prisionero (Venezuela / 1984)

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70年代末にマラカイで結成され、83年に『Equilibrio Vital』でアルバム・デビューを果たしたのがEQUILIBRIO VITALです。EQUILIBRIO VITALの音楽性は、新世紀以降の南米プログレッシブ・ロック(メキシコのCASTやアルゼンチンのNEXUS、あるいはチリのENTRANCEやキューバのANIMA MUNDIといった南米各国の代表格グループたち)の源流とも呼べるであろうへヴィー・シンフォニック・ロック。70年代のプログレッシブ・ロック・サウンドと、アグレッシブ且つメタリックな80年代の音作りを融合させた本作は、ベネズエラのプログレッシブ・ロック・シーンを確実に前進させたはずです。

TEMPANO / The Agony And The Ecstasy (Venezuela / 2002)

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EQUILIBRIO VITALと共に80年代のプログレッシブ・ロック・シーンに名乗りを上げ、ベネズエラ産プログレッシブ・ロックの代表格グループへと成長を遂げていったのがTEMPANOです。首都カラカスで77年に結成されたTEMPANOは、80年作『Atabal-Yemal』でアルバム・デビューを果たしました。彼らはデビュー・アルバムこそプログレッシブ・ロックの音使いが伺えましたが、次作以降は時代性もあってか南米叙情を適度に感じさせるポップ・ロックを奏で、そのまま80年代を終えています。プログレッシブ・ロックへの回帰は99年の復活作『El Fin De La Infancia』以降であり、特に2002年作『The Agony And The Ecstasy』が南米シンフォニック・ロックの傑作と評されました。

FICCION / Sobre El Abismo (Venezuela / 2002)

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ベネズエラのプログレッシブ・ロック・シーンにおいては、2000年以降にレコード・デビューを果たすも、実は70年代から活動するべテラン・グループであったという例がいくつか見受けられますが、2002年に『Sobre El Abismo』でアルバム・デビューを飾ったシンフォニック・ロック・グループFICCIONも、グループの結成は76年にまで遡ります。本作は変則的な作品であり、79年から86年に録音された7曲に2000年録音の3曲を加える形でリリースされました。彼らの音楽性はパワフルなリズム・セクションと、対照的にメランコリックな南米独特のメロディーを併せ持ったシンフォニック・ロックとなっており、その作風は新世紀以降においても健在です。

PIG FARM ON THE MOON / Orbital (Venezuela / 2003)

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FICCIONのレコード・デビューは2002年でしたが、彼らのデビュー・アルバム『Sobre El Abismo』は、その大半が80年代当時にレコーディングされた音源を使用し構成されていました。そういった意味で、2000年代初のベネズエラ産プログレッシブ・ロック・グループの称号はPIG FARM ON THE MOONにこそ相応しいのかもしれません。PIG FARM ON THE MOONは、アルバムの発表以前からメキシコの有名プログレッシブ・ロック・フェスティバルBaja Progのステージを経験し、YESやGENESISといったブリティッシュ・プログレッシブ・ロックからの影響を昇華した2003年作『Orbital』を発表。彼らの作風はメロディアスなシンフォニック・ロックであり、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの各奏者をゲストに配し、ドラマティックに盛り上げていきます。

PARTHENON / Mare Tenebris (Venezuela / 2005)

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79年にドラマーJuan Carlos BallestaとキーボーディストRobert Santamariaを中心に結成されたのがPARTHENONです。PARTHENONは当時アルバムを発表することなく解散し、Robert SantamariaはスペインでAMAROKを結成。AMAROKは、現在ではスパニッシュ・プログレッシブ・ロックの代表格グループとして知られているでしょう。新世紀を迎え、Juan Carlos BallestaとRobert Santamariaを中心に、AMAROKの女性ヴォーカリストMarta Seguraを含む体制で再始動を果たした彼らは、ついにデビュー・アルバムとなる2005年作『Mare Tenebris』を発表しました。ボーナス・トラックとして、80年代当時のセッション音源やライブ・テイクも収められており、AMAROK関連作としても押さえておきたい作品となっています。

ODRAREG / God’s Garden (Venezuela / 2005)

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TEMPANOでドラマーを務めるGerardo Ubiedaが立ち上げたサイド・プロジェクトがジャズ・ロック・グループODRAREGです。音楽性は、Gerardo Ubiedaによるテクニカルなリズム・セクションを中心に、参加ミュージシャンたちの技巧を全面に押し出した内容となっており、適度なエスノ・フレーヴァーを纏った楽曲の質感などは辺境プログレッシブ・ロックならではの魅力に溢れています。また、楽曲によってはサックス奏者やトランペット奏者をゲストに従え実験的な色合いも覗かせるなど音楽的な幅も広く、一筋縄ではいかない音楽性を飽きずに聴かせています。

IX / Ora Pro Nobis (Venezuela / 2007)

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TEMPANOのドラマーGerardo UbiedaによるODRAREG名義でのアルバム・リリースに続き、キーボーディストGiuglio Cesare Della Noceもサイド・プロジェクトIXを立ち上げ、2007年に『Ora Pro Nobis』を発表しました。本作にはTEMPANO人脈を含め総勢15名を超えるゲスト・ミュージシャン(ドラマーだけで4名)が名を連ねており、Giuglio Cesare Della Noceによるシンフォニックな楽曲を堅実にサポートしています。Gerardo UbiedaによるODRAREGと併せて、TEMPANO関連作として見逃せない作品です。

RC2 / Future Awaits (Venezuela / 2008)

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首都カラカスで99年に結成された新世代グループであるRC2は、2003年に『RC2』でアルバム・デビューを飾りました。ベネズエラ出身ミュージシャンがスペインに渡り、スパニッシュ・プログレッシブ・ロック・シーンで活躍を見せる例がしばしばありますが、RC2もベネズエラで結成され、現在はスペインで活動を展開しています。彼らのセカンド・アルバムである2008年作『Future Awaits』は、アメリカの名門Progrock Recordsからのリリース。パワフル且つメロディアスなプログレッシブ・ロックを展開しています。

MOJO POJO / Mojo Pojo (Venezuela / 2009)

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MOJO POJOは、キーボーディストLuis Daniel GonzalezとドラマーJorge Pepino Gonzalezの兄弟、そしてベーシストEnrique Perez Vivasによるセッション・グループが発展し、ギタリストAntonio Narcisoを加え2006年に首都カラカスで結成されました。彼らの音楽性はジャズ・フュージョンに分類されるものですが、さらにメタリックな音作りも伺えるという個性的な作風。2009年のデビュー・アルバム『Mojo Pojo』では、TEMPANOのキーボーディストGerman Landaetaがミックス・エンジニアを務めている他、印象的なアートワークをカナダ出身のアートワーク・デザイナーHugh Syme(カナディアン・プログレッシブ・ロック・グループRUSHのアートワークで知られる)が手掛けています。

BACKHAND / Through The Turbulence (Venezuela / 2014)

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2010年代を迎えベネズエラのプログレッシブ・ロック・シーンが動いたのは、2010年に首都カラカスで結成されたBACKHANDの登場です。BACKHANDのメンバーは豊富な音楽キャリアを持っており、ギタリストPablo Mendozaは音楽学校を、ベーシストOscar Fanegaはジャズのワークショップを運営。キーボーディストAdrian Van Woerkomはサウンド・トラックの作曲家として知られ、ドラマーAdolfo Herreraはセッション・ドラマーとして活躍しているようです。そして注目すべきは、カナダのDRUCKFARBENからPhil Naroが参加していることでしょう。彼は、TALAS(Billy SheehanがMR.BIG以前に率いていたグループ)への参加で知られるヴォーカリストです。

SYRIAK / Dentro De Los Cuentos Del Dia (Venezuela / 2015)

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ギタリストGustavo VilchezとキーボーディストCarlos Vilchezを中心に首都カラカスに次ぐベネズエラの都市マラカイボで81年に結成されたSYRIAKは、2015年に『Dentro De Los Cuentos Del Dia』でアルバム・デビューを飾りました。80年代から2010年代まで幾つもの時代が流れ、SYRIAKも幾度となくメンバー・チェンジを重ねながらグループを存続させてきた模様ですが、その蓄積がシンフォニック・ロックからポンプ・ロック、アメリカン・プログレッシブ・ハード・ロックを混ぜ合わせた独自のスタイルとして昇華されています。また、スペイン語によって歌われる南米叙情豊かなメロディーは、南米プログレッシブ・ロック・ファンならば一聴の価値あるものでしょう。

Raimundo Rodulfo / Mare Et Terra (Venezuela / 2008)

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