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【KAKERECO DISC GUIDE Vol.13】哀愁ほとばしる米国オルガン・ロックの至宝。BANGOR FLYING CIRCUS『BANGOR FLYING CIRCUS』(1969)

スタッフ増田です。月ごとに更新される「カケレコセレクト100」より、スタッフがイチ押しの作品をご紹介する、名付けて【KAKERECO DISC GUIDE】!

本日は昨年韓国BIG PINKレーベルから再発された米国オルガン・ロック・トリオ、BANGOR FLYING CIRCUSの69年唯一作を取り上げたいと思います。

■BANGOR FLYING CIRCUSとは

オルガン・ロック好きの中でもあまり名前を知られていないであろう謎のグループ、BANGOR FLYING CIRCUSは、67年にイリノイ州シカゴにて結成されました。69年にデビュー作である本作を発表するも、同年に解散してしまった短命のグループ。

メンバーは以下の通りです。

David “Hawk” Wolinski – ベース、キーボード、ヴォーカル
Alan DeCarlo – ギター、ヴォーカル
Michael Tegza – ドラム

ベースとキーボードを担当しているグループの要、David “Hawk” Wolinskiは、1966~67年にはシカゴの名ブルース/ガレージ・バンドSHADOWS OF KNIGHTにベーシストとして参加していました。
BANGOR FLYING CIRCUS解散後にはギターのAlan DeCarloと共にファンク・ロック・グループMADURAを結成。さらに70年代には名ファンク・バンドRUFUSやChaka Khanのソロ、映画音楽の場でも活躍したりと、そのキャリアを伸ばしていきます。

Michael Tegzaは同じくシカゴのサイケ・バンドH. P. LOVECLAFTに参加していたドラマーで、BANGOR FLYING CIRCUS後は新生グループのLOVECLAFTを結成しています。

■繊細かつジャジーで流麗、69年唯一作『BANGOR FLYING CIRCUS』

そんな彼らが69年に発表した本作。アメリカンなジャケからは男くさいヘヴィ・サイケなんかを想像してしまいますが、イメージに反して内容はどこまでもメロウ&ジャジー。

憂いあるオルガン、乾いた感じのブルージーなギター、そして哀愁漂うジェントルなヴォーカル。リズム・セクションも滑らかかつタイトで、アメリカンな豪胆さというよりは英国的な繊細さを感じます。ムーディーなスキャットや流麗なピアノを交えたアンサンブルには本格的なジャズの素養も伺え、かなりテクニカル。

派手な作品ではありませんが、同69年のCOLOSSEUM『VALENTYNE SUITE』、70年のCRESSIDA『CRESSIDA』など、同時期の英国Vertigo勢をはじめとするジャズ・ロック名作と比べても遜色ないクオリティを誇る一枚。ぜひ一聴の価値ありです。

それでは、本作より3曲お聴きください。

Violent Man

試聴 Click!

まずはオープニング・ナンバー「Violent Man」。初っ端からとてつもない哀愁。叙情的なヴォーカルやオルガンが織り成すこの湿っぽさ、まさに英国的と言ってよいでしょう。ちょっぴりデイヴ・ギルモアを思わせるエッジィかつブルージーなギター・ソロも堪らない格好良さ。ジャジーなピアノ・ソロも非常にお洒落で、心鷲掴みにされてしまいます。

Ode to Sadness

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哀愁たっぷりに歌いあげるヴォーカルと厚いハモンドのアンサンブルを堪能していると、テンポが上がってソロ・パートに突入。洒脱で技巧的なオルガン・ソロにも聴き惚れてしまいますが、その後のヴォーカルのムーディーなスキャットと軽やかなギターの絡み合いも素敵。艶やかな女性ヴォーカルを交えたボサノヴァ風のパートもあったりと、大人のジャズ・ロックといった雰囲気の一曲です。

Norwegian Wood

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アルバムのラストを飾るのは、なんと「Norwegian Wood」のインスト・カヴァー。勢いのあるジャジーなドラム・ソロに始まり、スピーディー&グルーヴィーに展開されるおなじみのメロディ。と思ったら変幻自在に拍子を変えテンポを変え、テクニカルなインプロビゼーションを繰り広げ。いやはや69年のアメリカにこれほどのテクニカルなジャズ・ロック・ナンバーが存在するとは……ひたすらに見事です。

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