2018年1月26日 | カテゴリー:KAKERECO DISC GUIDE,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ新鋭
スタッフ増田です。新鋭プログレも聴きたいけど、モダンな音はちょっと苦手…。やっぱり70年代の暖かみのある音が好き!今回はそんな方にオススメの、ドイツの新鋭プログレ・トリオMOUTHによる昨年リリースのアルバム『VORTEX』をご紹介いたします。
本作の最大の特徴はなんといっても、ユーライア・ヒープ、ホークウインド、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、そしてアシュ・ラ・テンペルやブレインチケットといったクラウトロック等、70年代を強く意識したヴィンテージかつへヴィなサウンド。プログレッシヴな要素もありますが、どちらかと言えば上記のようなハード・ロックであったりスペーシーでサイケ・チックなグループからの影響を感じさせる作風となっています。
MOUTHはドイツ、ケルンで結成されたプログレ・トリオです。ケルンといえばドイツではベルリン、ハンブルク、ミュンヘンに次ぐ4番目に大きな都市。またクラウトロックの代表的バンドCANもケルン出身だったり、ジャーマン・ロックの名プロデューサー、コニー・プランクの録音スタジオもケルン郊外にあったりなど、ロックの歴史においても重要な役割を担った都市のひとつと言えるでしょう。
メンバーは以下の通り。
MOUTHは彼ら3人によって2000年に結成されましたが、1stアルバム『RHIZOME』をリリースしたのはなんとデビューから9年後の2009年。さらにそこから8年の歳月を経て、昨年ようやくリリースされたのがこの2nd『VORTEX』。つまり、新鋭とはいえ既に17年という長いキャリアを持った実力派グループの「デビュー作から8年越しの力作」がこのアルバムなのです!
力作らしく、アルバムの冒頭を飾るのは16分に及ぶ組曲「Vortex」。まずはそのオープニング部分を聴いていただきましょう。
出だしの音から、70年代ハード・ロック・ファンはノックアウト必須。この荘厳なオルガンと強烈なワウ・ギターは…ユーライア・ヒープの「July Morning」ではありませんか!後半になるとそこへ怪しいウィスパー・ヴォーカルも絡み合ってくるのですが、これもまたヒープの「Magician’s Birthday」を彷彿とさせます。いわゆるオマージュの域なのでしょうが、冒頭にこのヘヴィかつオカルティズムを感じさせるヒープのフレーズを配置することで、70年代ロック・ファンの心をガッチリと掴んで惹き込ませますね。
この後、組曲はホークウインドを思わせるソリッドかつスペーシーなサイケ・ジャムを経て、冷ややかなトーンのオルガンと柔らかなアコギが織りなすフロイド・チックな虚脱感のあるラストへと終息してゆきます。MOUTHは「70年代音楽への憧憬」と同時に「ディストピア」を作品のコンセプトとしており、その為か暖かみのある音の中にもどこかダークで虚無的な雰囲気を漂わせているのが特徴です。
大曲以外も佳曲揃い。ホークウインドや同郷のクラウトロックを思わせるスペ―シーなシンセが縦横無尽に蠢く「March of the Cyclopes」、ミニマル・フレーズに荘厳なハモンドや壮大なギター・オーケストレーションが重なり合って最高潮へと昇り詰める展開が圧巻の「Parade」など、70年代愛に包まれた多彩なアプローチで楽しませてくれます。プログレやハード・ロック、サイケを下敷きにしつつも、タイトで硬質なリズム・セクションに支えられたアンサンブルはオルタナティブな感性にも溢れ、強靭かつ鮮烈。懐かしさとエネルギッシュな瑞々しさを同時に持ち合わせた、充実の一作です!
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