プログレッシヴ・ロックの中古CD豊富!プログレ、世界のニッチ&ディープな60s/70sロック専門ネットCDショップ!

プログレ、60s/70sロックCDのネット通販/買取

24時間以内発送(土・日・祝は翌営業日)、6,000円以上送料無料

マリリオン来日公演1日目@クラブチッタ川崎 ライヴレポート

スタッフ佐藤です。

10月20日にクラブチッタ川崎でおこなわれた、マリリオンの来日公演1日目にいってまいりました!

マリリオンと言えば、もはや説明不要の名バンドですよね。79年に前身バンドSILMARILLIONとして活動を開始し81年にマリリオンに改名、初期ジェネシスの音楽性を受け継いだポンプ・ロックの創始バンドとして80年代のプログレ・シーンを代表する存在として活躍します。

ピーター・ガブリエルのヴォーカルやパフォーマンスを踏襲した看板ヴォーカリストFishが脱退した翌年には、現在までヴォーカルを務めるスティーヴ・ホガースが加入。以後はジェネシス的なサウンドを離れ、シリアスなテーマ性を前面に出したよりリアリスティックな質感のメロディアス・ロックを聴かせるようになりました。

メンバーはホガースが加入した89年以降不動のこの5人。

スティーヴ・ホガース – ヴォーカル
スティーヴ・ロザリー – ギター
マーク・ケリー – キーボード
ピート・トレワヴァス – ベース
イアン・モズレイ – ドラム


来日公演は3度目で、94年以来23年ぶり!この日を待ち望んでいたファンもそれは多かったはず。客席はもちろん満席で、普段のライヴ前より大きくざわつく会場の様子に期待の大きさが伝わってきます。

19時半ちょうどに会場が暗転。まずはオープニング・アクトを務めるRANESTRANE(ラネストラーネ)が演奏を開始!

ラネストラーネは98年結成09年にデビュー作をリリースしたイタリアン・プログレ・バンドで、名作映画にオリジナル解釈によるサウンドトラックを新たに付け加えるという音楽活動をおこなっている注目のグループ。

マリリオンとは、「2001年宇宙の旅」をテーマに製作した13年作『2001 A SPACE ODYSSEY PART I』と続編となる15年作『~ PART II』にホガースやスティーヴ・ロザリーらがゲスト参加していたり、またキーボーディストのRiccardo Romanoがロザリーのバンドの一員として活動するなど密接な繋がりを持っており、ここ数年各国でのマリリオンのツアーで演奏しています。

そんな彼らは、2013年ここクラブチッタでおこなわれたイタリアン・プログレ・フェスで、ロヴェッショ・デッラ・メダーリャ(Enzo Vita)のバックバンドとして好演したこともある実力派。RANESTRANEとしてのステージを観るのは初めてでした。

冒頭ミステリアスなシンセの旋律が響くと、ひんやりとした空気がステージを覆い、往年のゴブリンを思わせる緊張が走ります。そこから一気にパワフルな演奏へとなだれ込むアンサンブル。ホラームーヴィーの金字塔「shining」をモチーフとした11年作からのナンバーです。

中心人物であるドラマーのDaniele Pomoが、演奏を引っ張るダイナミックさとジャジーな緻密さを持ち合わせたドラムをプレイし同時にヘッドマイクでメインヴォーカルも取るという活躍を見せます。ドラムの力強いプレイに雄々しく歌い上げるイタリア語ヴォーカル。長髪と髭を蓄えた風貌はちょっとマイク・ポートノイっぽくてカッコいい!

ドラムの重い打音に合わせ明滅する赤い照明によるライティングが決まってます。ここはどうやらジャック・ニコルソンが斧でドアを突き破ろうとするあの場面です。映像を想像するとより一層スリルが増してくる感じが堪りません。

ギターも聴き手に緊張を強いるような反復フレーズを弾き続け、ジワジワと不安と焦燥を煽ります。一転してギターソロでは、哀愁のフレーズを織り交ぜた日本人の琴線に触れるタイプのプレイスタイルで聴かせ、この落差にはなかなかグッと来ました。

ゾクリとする冷たいトーンのシンセに加え、荘厳なオルガンやピンと張りつめたタッチのピアノを駆使して、静謐な空間を生み出すキーボードのプレイもさすがです。

4曲ほどで40分弱のステージでしたが、演奏技術、パフォーマンスの質の高さともに現代のイタリアン・ロック・バンドとしては屈指のグループであることを実感。
いずれはイタリアン・ロック・フェスのメインの一バンドとして是非やってきてほしいものです。


30分のインターヴァルを挟んで、いよいよマリリオンのステージが開幕!!

バックの大きなスクリーンに、古いフィルムを思わせる映像が映し出され、霧がうっすらとかかるように広がる音響。
メンバーが一人ずつステージに登場すると、そのたびに割れんばかりの拍手が起こります。

そしてひときわ大きな拍手で迎えられたのが、軍服風(?)のロングジャケットを着込んだホガース。ゆっくりと歩いていきステージ中央に立つ、もう何故かその出てくる所作からしてカッコいい!

1曲目は、16年リリースの最新作『F.E.A.R』より「El dorado」。ドラマーのイアン・モズレイを除くメンバーが揃い優しく歌い始めるホガース。少し掠れた声質で鼻に抜けるように歌う彼ならではの歌唱が繊細に会場に響きます。マリリオンのヴォーカルとしては30年近くのキャリアとなる彼ですが、その深みあるヴォーカルに衰えはないどころか、歳月を経てより芳醇になっている気すらします。至福。

イアン・モズレイがステージに上がりタイトにリズムが刻まれ始めると、マーク・ケリーのエレピが乗り、アンサンブルがゆったりと形成されます。
そして徐々に熱を帯びていく演奏に乗って、ホガースが力を込め歌い始めた瞬間、空気が変わりました。

自身の発した一声一声を明確に伝えるかのように、身振り手振りを交えて体全体を使って歌うホガースの姿にもう一瞬も目が離せなくなります。

初代ヴォーカルのフィッシュや彼が手本としたピーター・ガブリエルが持ち味としたシアトリカルなステージングとはある意味対照的な、歌唱によって勝負するヴォーカリストだと思っていたのですが、その認識は完全に間違っていたようで、派手な衣装やメイクはなくとも激しいジェスチャーによってエネルギッシュに作品世界を表現する姿は、ヴォーカリストであると共に役者であるようで、生命力に溢れたパフォーマンスに思わず息をのみます。

ステップを踏んだり、頽れたり、駆けまわったり、感情を発露するように表現されるその一挙手一投足を、会場中が固唾を飲んで見守っているのがひしひしと感じられました。間違いなくカリスマ。稀代のライヴパフォーマーであることを一瞬のうちに証明します。この時点で一気にマリリオンの描く世界へ惹き込まれていきました。

そんなホガースの渾身のパフォーマンスを支える演奏陣もさすがと言うほかありません。

スティーヴ・ロザリーは、変わらぬあの繊細でまろやかなトーンでギターを歌わせます。まるでスティーヴ・ハケットの気品あるデリケートなタッチとギルモアのエモーショナルな泣きを一つにしたような素晴らしさ。ビジュアルからは想像できない(失礼!)、奥ゆかしさのある音色で紡がれるギタープレイは、ホガースのヴォーカルと共にこれぞマリリオン!と言うべきサウンドです。ただ劇的に高まっていくソロパートでも表情をほとんど変えず定位置に立ち弾き続ける姿はちょっと面白かったりします。

そんなロザリーとは対照的によく動くのがスーパーグループTRANSATLANTICの一員としても活躍するベーシスト、ピート・トレワヴァス。バンドの中では一番のテクニシャンであろう彼ですが、指板上を目にも止まらぬ速さで指が動くやはり圧巻のベースプレイを各所で披露。見ていると自身のテクニカルなパートほど動き回っているようで、結構目立つのが好きなのかな~と思って見ていました。

一方、どこか寡黙な職人風のオーラを感じさせるキーボードのマーク・ケリーは、派手な見せ場こそロザリーに譲りますがピアノを中心に美しいプレイでマリリオンに欠かせない凛と透明感のある幻想的なサウンドを担います。

そしてドッシリと安定感があり過ぎる硬質なドラミングでマリリオンのサウンドに重厚感を生むのが、DARRYL WAY’S WOLFやオランダのTRACEなどでもプレイした大ベテランのイアン・モズレイ。メンバー中最も大柄な身体から繰り出されるパワーとテクニックを兼ね備えたドラミングは緩急自在です。

これだけのメンバーが集結したバンドなので悪いはずはまずないんですが、実際には鳴らされているサウンド以上のものが会場を覆いつくすように広がる不思議な感じがあるんですよね。これが「世界観」というものなのかなぁと聴いていて思いました。これまでそれなりに多くのプログレ・バンドのライヴを観てきましたが、ここまでバンドの持つ「世界観」が認識できるほどに濃厚に立ち上がってくるステージは経験したことがありません。いやぁこんなにも凄いバンドだったとは…。

曲が終わるごとにウオ~~~というものすごい歓声と割れんばかりの拍手が起こり、収まるのに毎回数十秒かかるほどで、パフォーマンスの素晴らしさを物語ります。

カンペを読みながら「オマ…タセシマシタ」とたどたどしく日本語で挨拶するホガースがのチャーミングさと来たら。曲中での雄弁なヴォーカル・パフォーマンスに対し、MCではボソボソと小さめの声でしゃべるんですよね。

16年にリリースされた最新作『F.E.A.R』、12年作『Sounds That Can’t Be Made』、04年作『Marbles』あたりの曲を中心にプレイしてくれたのですが、中でも嬉しかったのがフィッシュ時代の超名曲「Sugar Mice」。ロザリーの柔らかく幻想的なギターの調べに乗って、伸びやかに歌うホガースの姿がただただ感動を呼びます。感情が高ぶり寝転がるホガース。そしてロザリーのエモーション溢れる極上のソロで高みへ…。これには泣きそうになりました。

『Marbles』からの「Neverland」も好きなナンバー!マーク・ケリーの厳かに鳴るストリングシンセと叙情的なピアノをバックに、切々と歌い上げるホガースのヴォーカル。あまりに劇的なサウンドに会場中が酔いしれます。ホガースがフレーズを繰り返しエコーのように聴かせるパートも素晴らしかったな~。そこにロザリーのギターまで絡んできてはもう泣くしかありません!名曲!

アンコールの拍手が3分ほど続けられ、そろそろ叩き疲れた頃、再びメンバーが登場して会場は大興奮。でもホガースはいません。そのまま『Marbles』より「The Invisible Man」の演奏が始まると、なんとスクリーンの映像でホガースがスーツ姿で歌っているではありませんか!なんとも凝った演出です。映像が消えると同時にスーツにチェンジした本物のホガースが姿を現し歌い始めます。たっぷり2時間10分ほどのステージとなりました。

毎年数枚ライヴアルバムを発表しているマリリオンですが、それだけライヴを重視するバンドなだけあって、その真価はまさにライヴでこそ発揮されていると強烈に感じさせる見事なパフォーマンスでした!正直、音源を聴いているだけの場合とライヴを体験した場合でこれだけ印象が違ってくるバンドというのは他にないかもしれません。それほどライヴ・パフォーマンスとしての魅力に溢れた素晴らしいステージだったと思います。

終わった後もかなり長い間余韻が消えず、いかに自分にとっても印象深いライヴだったかを実感していました。
今年最高の一夜を体験させてくれたことに感謝!4度目の来日もどうか早めにお願いします^^

MARILLIONの在庫

  • MARILLION / AN HOUR BEFORE IT’S DARK

    ご存知ブリティッシュ・プログレの重鎮グループ、4つの組曲を配し劇的に展開する2022年作!

    5大プログレ・バンドに匹敵する人気を誇る英国のレジェンド・バンドによる22年作。世界に降りかかる様々な危機や、スティーヴ・ホガースが敬愛するレナード・コーエンの死去についてなどを題材にした内容となっており、4つの組曲を配したプログレ然とした重厚な構成で聴かせます。シリアスなテーマを採りながらも、どこか浮遊感ある出音でメロディアスに幻想美を描くギター、凛としたピアノを軸に気品ある佇まいを崩さないキーボード、そして一声一声に繊細なニュアンスを込め歌う揺るぎない説得力を持つヴォーカルらが一体となり、一曲一曲に崇高なドラマ性を宿したサウンドにはいつもながら感動させられます。名作『Brave』にも通じる深遠さと力強いエモーションが対比する、かなりの聴き応えを持つ一枚です。

  • MARILLION / MISPLACED CHILDHOOD

    85年リリースの3rd、FISH在籍時代の代表作!

  • MARILLION / CLUTCHING AT STRAWS

    87年リリース4th

  • MARILLION / THIEVING MAGPIE’ (LA CAZZA LADRA)

    FISH在籍期、88年ライヴ作

    フィッシュ時代の総決算とも言うべきライヴ・アルバム。ディスク1では代表曲を、ディスク2では「過ち色の記憶」を完全再現するなどの充実した演奏ぶりと、貫禄さえ感じられる存在感に圧倒される作品。第一期の最後を飾るに相応しいベスト盤的選曲は入門編としても最適。

  • MARILLION / SEASONS END

    2代目ヴォーカリストSteve Hogarthの初参加作、89年リリース

  • MARILLION / BRAVE

    94年リリース、ホガース時代初期を代表するドラマチックな名作

  • MARILLION / AFRAID OF SUNLIGHT

    名作『Brave』に続く95年作

「MARILLIONの在庫」をもっと見る

コメントをシェアしよう!

あわせて読みたい記事

中古CD買取案内

カケレコ洋楽ロック支店

新着記事

もっと見る

プロのライター&ミュージシャンによるコラム好評連載中!

文・市川哲史

文・深民淳

文・舩曳将仁

文・netherland dwarf

人気記事ランキング

* RSS FEED

ロック探求特集

図表や代表作品のジュークボックスなどを織り交ぜ、ジャンル毎の魅力に迫ります。