プログレッシヴ・ロックの中古CD豊富!プログレ、世界のニッチ&ディープな60s/70sロック専門ネットCDショップ!

プログレ、60s/70sロックCDのネット通販/買取

24時間以内発送(土・日・祝は翌営業日)、6,000円以上送料無料

PARLOUR BAND『IS A FRIEND ?』- MEET THE SONGS 第170回

フォーク・ロックを軸に、ハード・ロック、プログレッシヴ・ロックのテイストが絶妙にブレンドされた淡くもエッジの立ったサウンドが人気のバンド、PARLOUR BANDの72年デビュー作『Is A Friend ?』をピックアップいたしましょう。

PARLOUR BANDの結成は70年で、出身はなんとイギリス海峡上に浮かぶジャージー島(ジャージー牛の原産地、人口約9.5万人)。島の歴史上、イギリス本国でメジャーデビューした唯一のバンドのようです。

バンドの中心人物は、リード・ヴォーカル&キーボード奏者で、アルバム全曲の作曲を手がけたピーター・フィルール。彼がデッカに送ったデモ・テープをレーベル側が気に入り、バンドとしてデビューさせるべく、島内のローカル・バンドからメンバーが集められ、バンドが結成されました(当初のバンド名はROCKBOTTOM)。

メンバーは、以下の5人。

ピーター・フィルール(リードVo&キーボード、すべての作曲を担当)
ジョン・”ピックス”・ピックフォード(ギター&Vo)「Evening」のリードVoのみピックス
クレイグ(ギター&Vo)とマーク(ベース&Vo)のアンダース兄弟
ジェリー・ロビンス(Dr)

71年にジャージー島を離れ、デッカ傘下のデラムと71年に正式に契約を結び、ROCKBOTTOMからPARLOUR BANDへと改名します。レスターに拠点を置いてライヴ活動やレコーディングをスタートし、72年にリリースしたデビュー作が『Is A Friend ?』です。アルバム・リリース後は、同じレーベルに所属するキャラヴァンやKHANらとも英国ツアーに回りました。

アルバムのプロデュースは、シン・リジーの初期作や後にマリリオンも手がけるニック・タウバー。エンジニアは、イースト・オブ・エデンやメロウ・キャンドルも手がけるケヴィン・フラーが務めています。

アルバムのオープニングを飾るのが彼ららしさの詰まった名刺代わりと言える「Forgotten Dreams」。左右チャンネルに配された2本のギターがコール&レスポンスのようにそれぞれ奏でるハード・エッジなフレーズが絶妙にからみ合って一つのリズムを形成するギター・アンサンブルが特徴。ギターのトーンは、歪んでいてハードなんですが、どこか透明感やまどろみ感があるのがなんとも言えない味わいで、「ハード・ロック」にはならず、この曲にはアコギが入ってないのに印象としては「フォーク・ロック」なのがおもしろいところ。

もう一つの特徴が、卓越した多声コーラス・ワーク。CS&Yをやはり彷彿させますが、でも「ウェストコースト」な軽やかさや伸びやかさはなく、しっとりと叙情的で内省的で流麗なのがまたこのバンドの持ち味。まぎれもなくブリティッシュ・ロックのサウンドと言えるでしょう。中央に陣取って淡いトーンでむせぶ幻想的なハモンド・オルガンもまた英国ならではの陰影をサウンドに与えています。

T1: Forgotten Dreams

試聴 Click!

2曲目「Pretty Haird Girl」と3曲目「Spring’s Sweet Comfort」は曲間なくつながり、まるで組曲のような構成になっています。1曲目と比べ、アコースティック・ギターが入ってグッとフォーキーな味わい。やはりCS&Nを彷彿させますが、同じ英国人のグレアム・ナッシュではなく、デヴィッド・クロスビーに近い感じなのがおもしろいところ。1曲目もそうですが、フォーク・ロック的なのに牧歌的にならないのは、このデヴィッド・クロスビーに通じるメランコリーが全体に貫かれているからかもしれません。英国然とした幻想性たっぷりの三声ハーモニー、淡くたなびくハモンド・オルガン、時にWISHBONE ASHを思わせるエレキ2本がからむアルペジオやリードも出色の味わいです。

T2: Pretty Haird Girl

試聴 Click!

T3: Spring’s Sweet Comfort

試聴 Click!

B面の幕を開ける5曲目「Evening」が、これまた素晴らしい名曲。まるでテープ逆回転のような減衰とともに半音ずつ上昇していくギターのメロディ、そこに重厚に歪んだギターとハモンドが被さってくる荘厳なイントロから雰囲気たっぷり。リリカルなピアノのバッキングがあらわれると、一気に幻想的な味わいとなり、まるでゾンビーズのように美しいメロディが流れ、2本のエレキがメロディに寄り添うようにメロディアスなオブリガードを添える。あぁ、良い感じ。サビでリズム・チェンジする展開もカッコ良いし、マーチング・ドラムがまたドラマティックに盛り上げていて素晴らしい。ハードなパートとフォーキーなパートを時に流れるようにつなぎ、時に鮮やかに切り替えてドラマを生むリズム・アレンジの巧みさもまたこのバンドの魅力でしょう。

初期BARCLAY JAMES HARVESTにも通じる気品と憂いに富んだドラマティックさに心躍る、英国叙情派ロックの名曲です。

T6: Evening

試聴 Click!

そしてハイライトと言えるのがラストを飾る10曲目「Home」。3部構成を持つ7分38秒の楽曲で、ずばり「アビーロードB面へのPARLOUR BANDからの回答」。抑制されたトーンのキーボードをバックに、物憂いメロディをヴォーカルがささやくように歌う冒頭。ドラムが入ると、エレキのリフ&オブリガードが入ってアンサンブルが走り出しますが、ここでのビートリッシュな単音のオブリガードが良い感じ。そこから、スパッと場面が切り替わり、ピアノが間をつなぎながら、次々にメロディが展開していきます。いよいよ「幕が下がるよ」という合図のように黄昏色を増していき、コーラスもひなびた哀愁たっぷりで、あぁ、いつまでも浸っていたい心地よさ。ラストに向けて、再びメロディが自在に展開していき、アビーロードB面のような感動に包まれます。本当、愛すべきバンドだなぁ。

T10: Home

試聴 Click!

この作品が72年ではなく、69年頃に制作されていれば、もっとCS&Nをはじめとするウェストコースト・ロックへの憧れを素直に表現したフォーキーでスワンピーなサウンドになっていたはずです。

1972年と言えば、イエス『こわれもの』、EL&P『トリロジー』、ジェネシス『フォックストロット』がリリースされた年で、翌年の73年にはキング・クリムゾン『太陽と戦慄』、ピンク・フロイド『狂気』がリリースされるなど、まさにプログレ黄金の時代。一方でギラギラとグラム・ロックも勃興していました。

この時代背景が、フォーク・ロックを軸にしつつも、独特のエレキのトーンとアレンジにつながっているはずで、この時代にしか生まれ得ない音と言えるでしょう。

ジャージー島出身という地理的な背景もまた、彼らのサウンドを生むポイントとなっていたはずです。ロンドンやバーミンガムなどの出身であれば、メインストリームの影響を強く受けるでしょうし、ライヴを通して、回りのバンド達と切磋琢磨しながら、サウンドを洗練されていったはずです。そんなメインストリームとは離れた場所で生まれたからこそ、良い意味での垢抜けなさがあり、そこが絶妙な味わいを生んでいると言えるでしょう。

72年という時代、ジャージー島出身という背景を持つ彼らだからこそ生まれた何とも言えない折衷具合が唯一無比な味わいを生んだブリティッシュ・プログレの愛すべき名品です。

なお、バンドは、アルバムリリース後にドラムが代わるものの、2ndに向けて活動を続けていきますが、デラムとの契約を失ってしまいました。その後、CBSと契約を結び、バンド名をA BAND CALLED Oと改名。74年にCBS傘下エピックから『A BAND CALLED O』をリリースし、75年には2nd『OASIS』をリリースします。その後、中心人物のピーター・フィルールが脱退しますが、元アラン・ボウン・バンドのジェフ・バニスターを迎え、またまたO BANDと改名し、ユナイテッド・アーティスツから76年に『WITHING REACH』をリリースするなど、地味ながらも着実にキャリアを重ねていきました。

ピーター・フィルールは、バンド脱退後は、リチャード・トンプソンのソロ活動をサポートするなど、いぶし銀の活動を続けているようです。

コメントをシェアしよう!

あわせて読みたい記事

中古CD買取案内

カケレコ洋楽ロック支店

新着記事

もっと見る

プロのライター&ミュージシャンによるコラム好評連載中!

文・市川哲史

文・深民淳

文・舩曳将仁

文・netherland dwarf

人気記事ランキング

* RSS FEED

ロック探求特集

図表や代表作品のジュークボックスなどを織り交ぜ、ジャンル毎の魅力に迫ります。