6月27日、YESのベーシストでリーダー、クリス・スクワイア氏が亡くなりました。67歳でした。
今年5月19日に白血病であることを公表し、治療に専念するためYESのツアーには参加しないことを伝えていたスクワイア氏でしたが、公表から1か月余りでの突然の訃報となりました。あまりに突然のことで個人的には実感がいまだ湧いてこないのが正直なところですが、一プログレ・ファンとして大きな存在を失ったこの心情は、お読みいただいている皆さんも同じなのではないかと思います。
47年の歴史において幾度ものメンバーチェンジ、分裂を経てきたバンドの中で、YES名義の作品全てに参加している唯一のメンバーであるスクワイア氏。
ジョン・アンダーソンのハイトーンやスティーヴ・ハウの個性的なギターワークなどYESをサウンド面で特徴づける要素は多く挙げられますが、音楽的にもそれ以外の部分においても、真の意味でYESの核を担っていたのが彼だったと言えるでしょう。
この英国が生んだ偉大なるベース・プレイヤーへ哀悼の意を込めて、結成以来常にYESと共にあった彼の経歴を、彼のベースが活躍する楽曲を交えて振り返っていきたいと思います。
48年ロンドン生まれ、YES以前の65~67年には、YESのオリジナル・ギタリストとなるピーター・バンクスも在籍したTHE SYN、MABEL GREER’S TOYSHOPで活動。68年にヴォーカリストであるジョン・アンダーソンとの出会いを果たし、同年、プログレッシヴ・ロックを代表するグループYESが誕生します。
アトランティック・レコードと契約してリリースされた69年のデビュー作は、サイケやジャズの要素を含んだアート・ロック調のサウンドながら、現在の耳で聴いても古臭さを感じさせないモダンでスタイリッシュなアンサンブルが鮮烈な作品。スクワイアは持ち味と言えるトレブルを強調した存在感のあるプレイスタイルをほぼ完成させています。
LED ZEPPELINらとともにアトランティック所属のブリティッシュ・ロック・バンドとして高い人気を獲得していったYES。
オーケストラとの共演による文字通りのシンフォニック・ロックを展開する70年発表の2ndを経て、楽曲に構築性が加わり一気に独自のプログレッシヴ・ロックを聴かせるようになった3rd「THE YES ALBUM」をリリース。リズムキープの域を大きく踏み越え、時にリード楽器のようにメロディやリフを奏でたりと、演奏の中で自在にスタイルを変化させる豊かな幅を持つプレイからは、高い演奏技術は勿論のこと、並々ならぬミュージシャンシップの高さが伝わってきます。
おそらく、スクワイアのベースが堪能できるナンバーを投票すれば、多くの方がこのアルバム収録曲を選ぶのではないでしょうか。「ROUNDABOUT」におけるリッケンバッカー4001の硬質なトーンを生かした攻撃的なリフレイン、自作曲「FISH」での疾走感溢れるランニング、そして「HEART OF SUNRISE」の超絶ユニゾンを鮮やかに決める途方も無いテクニック。スクワイアのベーシストとしての手腕が、全編で遺憾なく発揮された名盤です。
続く72年作5thはプログレ史上の最高傑作にも挙げられる作品。表題曲「CLOSE TO THE EDGE」での、リッケンバッカーベースの硬質感のある音色を最大限に利用したのたうつように凶暴なプレイがひたすらカッコいいですよね。これだけ緻密で音数の多い演奏の中で、リード楽器に埋もれてしまうどころか、時折喰ってしまわんばかりの存在感を発揮するベース・プレイは驚異の一言。
YES史上類を見ないアグレッシヴなサウンドを展開する「RELAYER」収録の「SOUNDCHASER」では、ハウのギターとのツインリードとすら呼べそうな超絶プレイを連発。
曲の進行を存在感たっぷりに唸るベースがリードする自作ナンバー「PARALLELS」もYESらしさがこれでもかと詰まった名曲です。
YESナンバー中屈指の人気を誇るドライヴ感溢れる快速チューン。このハイテンポな中でグルーヴ感とメロディアスさを併せ持つプレイを聴かせる才気みなぎるベースは、「痛快」の一言に尽きます。
83年には、80’sらしいNW/ハードポップ色を大胆に取り入れた作風が話題を呼んだ「90125」をリリース。ただそんな中にあってもスクワイアのベースはやはり変わらぬトーンで、ジョン・アンダーソンの歌声とともにYESとしてのアイデンティティを支え続けます。
YESらしさ満点の会心作となった99年作。胸躍るようにファンタジックなYESサウンドに、往年と変わらぬ豪快なピッキングで適度な硬質感と重厚感をもたらすベース。この「硬」と「軟」が絶妙に一体となった演奏こそYESの真骨頂です。
01年作『MAGNIFICATION』収録、アンダーソンとのツイン・リード・ヴォーカルを取る名曲「CAN YOU IMAGINE」。ベースもシンプルながらツボを押さえた印象的なプレイを披露。円熟という言葉が浮かんでくる演奏です。
10年ぶりのオリジナル・アルバムとなった11年リリース作は、20分超の大曲を含んだ力作となりました。80年作「DRAMA」を彷彿させる作風の中にYES本来のファンタジックな躍動感がしっかりと息づいており、特に大曲での緻密にして勇壮な演奏は全盛期の風格を漂わせます。スクワイアは還暦を過ぎたミュージシャンとは思えないアグレッシヴに演奏に絡んでいく力強いベースプレイを全編にわたり聴かせます。
そして2014年、『HEAVEN & EARTH』を発表。現在進行形のYESの姿を浮き彫りにする、質の高いポップな曲調のナンバーが並ぶ充実作。お聴きいただければわかりますが、スクワイアのよく歌う表現力豊かなベースはいつも通りYES以外には生み出せない「らしさ」をしっかりと主張しています。長い歳月を経ても一聴して彼だとわかるオリジナリティ溢れるプレイは最後まで揺らぐことはありませんでした。
68年の結成以来、生涯をYESのメンバーとして過ごしたスクワイアですが、YES以外の活動でも数は少ないながら高品質な作品を残しました。75年のソロ作を始め、YES以前に在籍したTHE SYNの再結成への参加や、ビリー・シャーウッドとのユニットCONSPIRACY、12年のスティーヴ・ハケットとのユニットSQUACKETTなどが代表的なものとなります。
『RELAYER』リリース後の各メンバーのソロ活動期に制作された75年の実質唯一となるソロアルバム。本作を聴けば、彼こそがYESそのものであるということが明確に伝わってきます。ビル在籍時代の黄金期YESそのものと言うべきドライヴ感いっぱいに躍動するリズム・セクションが感動的。
こうして改めて聴くとこれまでに何十回と聴いているはずの曲でも、こんな凄いことをしていたのか、と気づくパートがたくさん出てきます。リード楽器と比べて表情を出しにくいベースという楽器の可能性を大きく広げた功績がいかに多大なものか、YESナンバーを聴くにつけ実感する思いです。
返す返すもロック界における偉大な才能を失くしたことを、一ファンとして悲しまずにいられません。
できることはただ安らかに眠ってくれることを祈るのみですが、彼がいなくなっても音として残された彼のベースプレイが、今後も世界中のミュージシャンに影響を与え続けることは間違いないでしょう。
世界中のロックファンに素晴らしい音楽体験を届けてくれたベーシストに敬意を込めて。
心よりご冥福をお祈りします。
4枚組ボックス、ブックレット・帯・解説・紙製収納ボックス付仕様、定価9709+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯無
解説無、帯無、ボックスとブックレット無し、CDの圧痕・ソフトケースの圧痕あり
デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲
盤質:傷あり
状態:良好
ビニールソフトケースの圧痕あり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの71年作4th。その内容は次作「危機」と並ぶ、プログレッシブ・ロック史に留まらず70年代ロック史に残る屈指の大名盤であり、STRAWBSからキーボーディストRick Wakemanが加入、文字通り黄金期を迎えた彼らがトップバンドへと一気に飛躍する様が鮮明に残されています。まだ「危機」のような大作主義こそないものの、「ラウンドアバウト」「燃える朝焼け」など彼らの代表曲を収録。また今作から、その驚異的なエンジニアリング技術で彼らの複雑な楽曲製作に貢献することとなるEddie Offord、そしてその後のYESのトレードマークとなる幻想的なジャケット/ロゴを手がけるRoger Deanが参加、名盤の評価をより一層高めることとなります。
デジパック仕様、スリップケース付き仕様、輸入盤国内帯・解説付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック2曲、定価2400+税
盤質:傷あり
状態:並
帯無
帯無
英国プログレを代表するグループ、71年3rd。John Anderson、Bill Bruford、Chris Squireに加えSteve Howeが加入。前作までのPOPさを残しつつクラシック要素が強まり、楽曲構成がより複雑且つドラマティックなものへと変化しています。大作こそ無いもののYESサウンドを確立させたアルバムです。クラシカルなものからフラメンコまで、多様なフレーズを自然に溶け込ませるSteve Howeのギターが圧巻。細かく正確に刻まれるBill Brufordのドラム、メロディアスに高音を響かせるChris Squireのベース、そして天使の歌声John Andersonを加えたアンサンブルは、瑞々しく表情豊かです。本作でバンドを去ることになるTONY KAYEによるハモンド・オルガンも、英国らしいダークな雰囲気を醸し出しており魅力的。『FRAGILE』、『CLOSE TO THE EDGE』に次ぐ人気を誇る代表作。
紙ジャケット仕様、UHQCD、スティーヴン・ウィルソン・リミックス、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
軽微なスレあり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの72年作5th。その内容は前作「こわれもの」と並ぶ、プログレッシブ・ロック史に留まらず70年代ロック史に残る屈指の大名盤であり、20分近い表題曲をメインに据えたコンセプト・アルバムとなっています。Keith Emersonと人気を分かつRick Wakemanによる華麗なキーボード・オーケストレーション、カントリーからフラメンコまでを自在に操る個性派ギタリストSteve Howeの超絶プレイ、難解な哲学詞を伝えるハイトーン・ボーカリストJon Anderson、テクニカルでタイトなBill Brufordのドラム、そしてリッケンバッカーによる硬質なベースさばきを見せるChris Squire、今にも崩れそうな危ういバランスを保ちながら孤高の領域に踏み入れた、まさに「危機」の名に相応しい作品です。
紙ジャケット仕様、HDCD、デジタル・リマスター、インサート封入、定価2000+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
帯中央部分に若干色褪せあり
デジパック仕様、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
デジパック・スリップケース付き仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
軽微な圧痕あり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの73年作。「こわれもの」「危機」で大きな成功を収めた彼らですが、本作は彼らが更なる高みを目指した1枚であり、Jon Andersonの宗教的なコンセプトをテーマに神秘的な雰囲気と独特の瞑想感、スペーシーな雰囲気で進行する良作です。全4曲から構成され、うち3曲は20分を超えると言う大作主義の極みのような作風は圧巻であり、Bill Brufordに代わりドラムにはAlan Whiteが初めて参加しているほか、Rick Wakemanは本作を最後に脱退。非常に複雑な構成から賛否両論のある1枚ですが、やはりその完成度に脱帽してしまう傑作です。
2枚組、英文ブックレット付仕様、定価不明
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
盤に指紋跡あり、帯はケースに貼ってある仕様です、帯に折れあり
紙ジャケット仕様、2枚組、HDCD、デジタル・リマスター、定価3619+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干スレ・若干汚れあり、解説に軽微な折れあり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの73年ライブ作。名盤「Close To The Edge」を生み出した彼らの自信が感じられる名ライブ作であり、その内容はある種、スタジオ盤以上にファンを虜にしているほどです。もはやおなじみとなったストラビンスキーの「火の鳥」でその幕を開け、「シべリアン・カートゥル」や「燃える朝焼け」「同志」「危機」と、「ラウンド・アバウト」と彼らの代表曲をたっぷりと収録。スタジオ作のクオリティーを完璧に再現するだけでなく、スタジオ作には無いドライブ感の詰まった超絶技巧、名演の数々は全ロックファン必聴です。
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの74年作7th。「こわれもの」「危機」で大きな成功を収めた彼らですが、前作「海洋地形学の物語」でキーボードのRick Wakemanが脱退、後任にはRefugeeの技巧派Patrick Morazが加入しています。その内容はPatrick Morazの参加によってラテン・ジャズ、そして即興色が加味され、超絶なインタープレイの応酬で畳み掛けるハイテンションな名盤であり、「サウンド・チェイサー」ではインドネシアのケチャも取り入れるなど、深化した彼らの音楽性が伺えます。もちろん彼ららしい構築的なアンサンブルも健在であり、大曲「錯乱の扉」の一糸乱れぬ変拍子の嵐など、バンドのポテンシャルの高さが伺えます。大きな成功を経て円熟期に入った彼らを象徴する1枚です。
98年初回盤紙ジャケット仕様、HDCD、デジタル・リマスター、内袋・リーフレット付仕様、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
内袋はついていません
盤質:傷あり
状態:並
軽微なカビあり
デジパック仕様、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲
盤質:傷あり
状態:良好
スリップケースに軽微な圧痕あり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの77年作。前作「Relayer」でRick Wakemanに代わりテクニカルなプレイを見せたPatrick Morazが脱退しRick Wakemanが再加入した作品となっています。それに伴い、Patrick Morazの即興色やジャズ色が影響した前作に比べてRick Wakeman色がバンドに再び彩りを与え、シンフォニック然としたアプローチが復活。YESらしい個性が再び芽吹いた1枚と言えるでしょう。加えて、非常にポップな印象を与える作風へとサウンドが変化しており、Doger Deanの幻想的なアートワークからHipgnosisの現実的なアートワークへの移行が興味深い作品となっています。
紙ジャケット仕様、MQA-CD×UHQCD(すべてのCDプレイヤー再生可/ハイレゾ品質での再生にはMQA対応機器が必要)、復刻巻帯付き、リーフレット付仕様、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
パンク、ニュー・ウェイブ全盛期の中リリースされた78年9作目。大作主義は鳴りを潜め、10分以下の小曲で構成されているほか、音も時代を反映してそれまでよりもかなり煌びやかでポップなものになっています。とはいえ開放感のある瑞々しいメロディや、各楽器が緻密にメロディを奏でていくアンサンブルの構築性は流石のYESと言ったところ。多様な音色を駆使し、生き生きとフレーズを弾きまくるウェイクマンのキーボード。自由奔放かつ繊細さ溢れるハウのギター。地に足のついたスクワイアのベース、タイトかつ柔軟さのあるホワイトのドラム。そこへアンダーソンのヴォーカルが次から次へとメロディを紡ぎ出す、有無を言わせぬ怒涛のプログレッシヴ・ポップ・サウンドは彼らでなければ生み出し得ないものでしょう。「Release Release」など本作を象徴する1stや2ndに入っていそうなスピーディーでストレートなロック・ナンバーも魅力ですが、白眉は「On The Silent Wings of Freedom」。前作『Going For The One』で聴かせた天上を駆けるような夢想的なサウンドと、「ロック」の引き締まったビートが理想的に共存した名曲に仕上がっています。スタイルは変われどもYESらしさは満点と言っていい好盤。
「こわれもの」「危機」を生んだイエス黄金ラインナップからなるABWHと、かつてイエスに在籍した主要メンバー(クリス・スクワイア、アラン・ホワイト、トニー・ケイ、トレヴァー・ラビン)が合体。8人組新生イエスがここに誕生した91年作。
紙ジャケット仕様、K2 24bitマスタリング、ボーナス・トラック1曲、内袋付仕様、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:
帯有
透明スリップケースがついています
定価2500+税、36Pブックレット付仕様
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯特典部分切り取り有り、帯に若干圧痕あり、クリアケース無し
2枚組、紙ジャケット仕様、SHM-CD、ボーナス・トラック2曲、定価4000+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
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