2014年6月18日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: フォーク
今日の「MEET THE SONGS」は、英フォーク・バンド、ヘロンの71年リリースのデビュー作『ヘロン』をピックアップいたしましょう。
ヘロンをはじめて聴いたのは20年近く前になりますが、1曲目の「Yellow Roses」を聴いた時の感動は今でもはっきりと覚えています。
優しく奏でられるアコースティック・ギターとリリカルなピアノ、もの悲しくも温かで心に染みるヴォーカルとハーモニーそして何より素晴らしいのが、流れるように美しく柔らかなメロディ。
木漏れ日に包まれたメンバーが写るジャケットからイメージした通り、いや、それ以上に優美でハートフルなサウンドにただただ胸が締め付けられました。
ヘロンは、ロンドンの郊外にあるテムズ河畔の町メイデンヘッド出身で、67年に、Roy Apps(G、Piano、Vo)とTony Pooks(Vo)を中心に結成されました。
何度かのメンバーチェンジの後、ライヴで共演して知り合ったレディング出身のG.T.Moore(G、Mandolin、Harmonica、Piano、Vo)が加入し、トリオ編成となります。
地元レディングでナンバー1のバンドに在籍していた才能溢れるG.T.Mooreの加入で、ソングライティング、アンサンブルの両面でパワーアップし、パイ傘下のDAWNレーベルと契約します。
G.T.の知り合いだったKey&アコーディオン奏者のStephan Jonesが加わって4人編成となり、PYEスタジオでデビューシングルをレコーディング。ディランのカヴァー「Only A Hobo」はラジオで頻繁にオンエアされましたが、レーベル側の問題でリリースが間に合わなかったようで、ヒットのチャンスを逃してしまいます。
シングルがリリースされなかったことは不運でしたが、スタジオでのレコーディングでは自分達の良さが発揮できない、と分かったことはバンドにとって光明で、「野外録音」という方向性を見いだします。
こうして、英南東部バークシャーはアップルフォードの片田舎で野外録音され、70年にリリースされたデビュー作が『ヘロン』です。
なお、プロデューサーは、ドノヴァンやマイク・クーパーやビル・フェイなどを手がけたPeter Eden。
どうしても「野外録音」ばかりが先行してしまいますが、何より素晴らしいのがエヴァーグリーンなメロディライン。Roy Apps、G.T.Moore、Tony Pookと3人のソングライターが居るのが強みで、河のせせらぎや木漏れ日のような柔らかなメロディがアルバムのどこを切っても溢れ出てきます。
3人をリードするのが、創設メンバーでおそらくバンドリーダーのRoy Apps。先ほどピックアップした1曲目の「Yellow Roses」の他、共作を含め6曲を提供しています。
A面ラストを飾る「Upon Reflection」が「Yellow Roses」にも負けないリリカルな佳曲。
Roy Appsは、もっともっと評価されるべきソングライターだと思います。CSN&Yのグレアム・ナッシュあたりと比べても負けていないですよね。
2曲目「Car Crash」はTony PookとRoy Appsとの共作。
2人のハーモニーが絶品ですし、耳を澄ますと、小鳥たちもコーラスに参加していますね。
美しい田園風景に溶け込んだシンプルなバッキングも出色で、野外録音ならではの穏やかな空気感に和みます。
G.T.Mooreの曲もピックアップいたしましょう。「Little Boy」という曲が一番好きなのですが、残念ながら動画がないので、その次に好きな「Goodbye」をピックアップ。
マンドリンとアコースティック・ギターによる柔らかくたゆたうようなバッキングが郷愁を誘います。
ラストの優しい音色のオルガンも絶品。
デビュー作に続いて、マキシシングル『Bye And Bye』をリリースしますが、これがまたグッド・メロディの宝庫。
タイトルトラックの「Bye And Bye」は、1stでのリリシズムや郷愁はそのままにドラムが入り、ヘロン流のフォーク・ロックを聴かせています。
作曲はG.T.Moore!
叙情がこぼれおちるようなピアノや郷愁を誘うアコーディオンは1stの音世界そのままだし、もったり後ノリのドラムもハマってるし、ほんっと良い曲!
アルカンジェロ・レーベルよりリイシューされた国内紙ジャケ盤にはこちらのマキシシングルも収録されていますよ!
ヘロンのサウンドは、「木漏れ日フォーク」とよく形容されますが、まさにその通り。
マイナーな作品ですが、キンクスやCSN&Yやバーズの代表作にも劣らない、パストラルなフォーキー・サウンドが詰まった愛すべき名作ですね。
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