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アシュ・ラ・テンペル『ファースト』 – ユーロロック周遊日記

本日の「ユーロロック周遊日記」は、アシュ・ラ・テンペルの記念すべきデビュー作『ファースト』をピックアップいたしましょう。

アシュ・ラ・テンペルは、弱冠18歳のギタリストのマニュエル・ゲッチング、タンジェリン・ドリームを1st録音後に脱退したドラム&Keyのクラウス・シュルツェ、そしてベースのヘルムート・エンケの3人で71年にベルリンで結成されました。

3人は、コンラート・シュニッツラーが結成し、70年から71年の短期間に活動していたバンド、ERUPTIONに参加したことで知り合い、ゲッチングとエンケの2人は、1970年にSTEEPLE CHASE BLUES BANDとしても活動しています。

バンド名は、

アシュ:灰、残骸
ラ:エジプトの太陽神
テンペル:休息と思索の場

という意味を配し、アシュ・ラ・テンペルに。結成まもなく、新しいジャーマン・ロック・ミュージックのためのレーベルとして1970年に発足したOhrと契約。71年の6月にリリースされたデビュー作が『ASH RA TEMPLE ファースト』です。

20分を超す大曲2曲で構成され、音が混沌として渦巻くヘヴィ・サイケデリックなパートから瞑想的なドローンまで、60年代のサイケデリック・カルチャー、ヒッピー・カルチャーにどっぷりつかったサウンドが特徴。

英米のサイケデリック・ロックが、ロックというフォーマットの中に視覚や聴覚の拡張といったサイケデリック体験を落とし込んでいったのに対し、ここで聴けるのは、サイケデリック体験そのものの音像化と言っていいでしょう。エレクトリック・ギターやベース、ドラムというロック・ミュージックに用いられる楽器を拝借してはいますが、ロックというフォーマットにはとらわれず、LSDなどドラッグによるサイケデリック体験=「感覚・意識の変容により現れる理性を超えた原初世界」をそのまま音にしたような、ドラッギーなフリー・インプロヴィゼーションが炸裂しています。

まず聴こえてくるのは、シンセによるドローン(=民族音楽などにある変化のない持続音)。時間・空間の感覚が減衰させられ、その分、内省へと意識が研ぎすまされていき、理性という自我と、理性を超えた奥深くに眠る内的な非・自我との境界が歪み、理性での認知を超えたあるがままの世界へとたどり着けるような、無機的でありつつもどこか生温かいサウンド・スケープはメディテーショナル・ミュージックの極地。

パーカッション、そしてドラムが入り、ゲッチングがブルース・ロックから音色を拝借しつつも「ブルージー」さはなく、まるで内宇宙そのもののような観念的なギターを炸裂させると、アンサンブルは一気にエネルギーを爆発させ、「彼岸」へと加速していきます。圧倒的な手数で一心不乱に叩きまくるシュルツェのドラムと宇宙と一体化してしまったようなゲッチングのギターにみなぎるのは、内的な非・自我が森羅万象を飲み込みながら、宇宙へと至り、同化してしまうような、そんな誇大妄想が生む恍惚。恐るべき深みへと跳躍するサウンドは唯一無比のスケールと言えるでしょう。

サイケデリック体験の音像化であり、その音像がそのまま聴き手にサイケデリック体験を引き起こす媒体(=ドラッグ)としても機能するような、「サイケデリック」そのものと言える傑作であり、「Turn on, Tune in, Drop out(LSDにより意識を拡張せよ、高次元の意識に波長を合わせよ、画一化された社会から抜けて個人を解放せよ)」というティモシー・リアリーによる言葉をそのまま飲み込んで音という波動にのせたようなロック史に残る大傑作。

試聴 Click!

クラウス・シュルツェは、本作のみで脱退し、ソロとしてシンセサイザーを駆使しながら、そのロマン主義的誇大妄想に磨きをかけたエレクトリック・ミュージックを極めていきます。ゲッチング主導で活動を続けたバンドは、3rdアルバム『Seven Up』で、LSDの伝道師ティモシー・リアリーと共演し、サイケデリック・サウンドをつきつめます。その後、エンケはドラッグの後遺症で廃人となり脱退。ゲッチングは、74年にスティーヴ・ライヒやテリー・ライリーなど「ミニマル・ミュージック」と出会い、75年にギターによる反復音がきらめく『Inventions For Electric Guitar』をリリース。ギターとミニマル・ミュージックとが出会ったトランス・ミュージックをシーンに提示します。

ASH RA TEMPELの在庫

  • ASH RA TEMPEL / ASH RA TEMPEL (FIRST)

    Ohrからリリースされた71年デビュー作

    ジャーマン・ロック界の超重要人物Manuel GottschingやKlaus Schulzeを中心にデビュー後、ジャーマン・エレクトロの名作を次々にドロップしていくこととなるグループの71年デビュー作。時代を反映したサイケデリックな音像と、ドイツならではのスペイシーで酩酊感に溢れたサウンドが収められており、どちらかというとKlaus Schulzeの音楽的志向が濃く反映されたサウンドと言えますが、当時まだ10代であったManuel Gottschingのエコーたっぷりの凶暴なギターワークと、Klaus Schulzeによる重戦車のような豪快なドラミングは圧巻であり、スペース・ロック作品として個性的な輝きを放っています。

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