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FUSIOON『FUSIOON II』 – ユーロロック周遊日記

本日のユーロロック周遊日記は、FUSIOONの74年作2nd『FUSIOON II』をピックアップいたしましょう。

FUSIOONは、スペイン北東部の地中海沿岸に位置するカタルーニャ地方出身、70年に結成されたカタルーニャ・ロック(通称ライエターナ・ミュージック)の最初期のグループ。

中心はキーボード奏者&コンポーザーのManel Campで、FUSIOON解散の後には、スペインを代表する女性シンガーMaria Del Mar Bonetをサポートしたり、映画音楽やバレー音楽や室内楽など幅広く活躍しながら30枚以上のアルバムを残すスペインが誇る名ミュージシャンの一人。

彼を中心に、後にICEBERGの名ギタリストMax Sunyerとともにフュージョン・バンドPEGASUSを結成するドラマーのSanti Arisaの他、Manel Campとは兄弟のベーシストJordi Camp、ギターのMarti Brunetによる4人組編成です。

73年のデビュー作『FUSIOON』の翌年、74年にリリースされた2ndが『FUSIOON II』。

デビュー作において、ストラヴィンスキー影響化のスペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャのロック・カヴァーを収録するなど、クラシックや現代音楽のエッセンスとともに、キング・クリムゾンに通じるテンションみなぎる変拍子や、EL&P、レ・オルメ、オランダのエクセプションに通じるクラシカルなオルガンをフィーチャーしたサウンドを確立していましたが、2ndではよりシンフォニックになり、ジェントル・ジャイアントもびっくりなほどの格調高くも痛快なプログレを聴かせています。

スペインというとフラメンコなど情熱的なサウンドを思い浮かべますが、他のカタルーニャのグループと同じく、ジャズ/フュージョンに根ざした洗練されたサウンドが特徴です。

T2: Contraste

このグループの大きな魅力は、シャープかつ跳躍力にも富んだスリリングな変拍子。それを支えるドラム、ベースのキレ味と安定感も特筆です。

そんな躍動するリズムの上で、ピアノやムーグやオルガンなどキーボードとギターから細かいフレーズが次々と飛び出し、緻密かつ奔放に交錯しながら、アンサンブルが予測不能に転がっていきます。

抜群のテクニックとともに、クラシックや現代音楽の確かな素養を感じさせつつも難解さはなく、おもちゃ箱をひっくり返したようなワクワク感やほほえましさに溢れています。

遊び心と実験精神とのバランスは、ジェントル・ジャイアントやカンタベリー・ミュージックのファンにはたまらないでしょう。

エクセプション~トレースに通じるコロコロと温かみのあるトーンのクラシカルな旋律が飛び出したと思うと、曲の後半では、いかにもカタルーニャ的な艶やかなエキゾチズムが香るエレピが入ったり、民族舞踏的な疾走感いっぱいのリズムが飛び出たりとカタルーニャならではの旋律も飛び出してきて、神出鬼没なサウンドにはただただ呆気にとられるばかり。

試聴 Click!

T5: Concerto Grosso

アルバムラストの組曲をピックアップいたしましょう。

変拍子で跳ね回るダイナミックなパート、トレース的クラシカルかつ牧歌的なパート、センチメンタルな歌ものパート、外連味たっぷりに前のめりにつっかかるプログレッシヴなキーボード・ロック・パートなどがめくるめく展開するアンサンブルはこれぞFUSIOONの魅力。

クラシカル、アヴァンギャルド、フォルクローレ、ブリティッシュ・プログレを飲み込んで、圧倒的なアイデアとセンスでくみ上げた名曲ですね。

試聴 Click!

いかがでしたか?

同時期のカタルーニャのロック黎明期のバンドとしては他に、英国で言えばニュークリアスに通じる芳醇なジャズ・ロックを聴かせるMAQUINA !と、マイルスなどエレクトリック・ジャズ寄りのOMが居ましたが、よりプログレッシヴ・ロック寄りなのがFUSIOONと言えるでしょう。

中心のKey奏者Manel Campはさすがは現在まで第一線で活躍するミュージシャンだけあり、エッグ~ハットフィールド&ザ・ノース~ナショナル・ヘルスのキーボード奏者、デイヴ・スチュワートや、トレースのリック・ヴァンダー・リンデンに比肩する才能と言って過言ではありません!


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  • FUSIOON / FUSIOON (1972)

    ジャズ、クラシック、現代音楽の要素を散りばめたスペイン産プログレ、72年デビュー作

    キーボーディストMANEL CAMPを中心とするスペインはバルセロナのプログレッシヴ・ロック・グループ。1曲を除きクラシック古典や自国民謡などのカバーで構成された72年作の1st。しかしただのカバー集に終わっていないのがポイントで、ピアノ、オルガン、メロトロンなどを自在に操り、クラシックはもちろん、ジャズや現代音楽的な要素も散りばめた屈折感あるプログレッシヴなサウンドに仕立て上げています。フルート&弦楽器によるスペインらしい哀愁溢れるパートも魅力的です。1作目にして早くもバルセロナきっての個性派バンドと呼ぶべき一筋縄ではいかないサウンドを繰り広げている逸品!

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