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COLUMN THE REFLECTION 第62回 ドイツのロックが日本において本格的に紹介され始めた70年代を振り返る① ~ Brain・BASFレーベルから ~ 文・後藤秀樹





第62回 ドイツのロックが日本において本格的に紹介され始めた70年代を振り返る①
~ Brain・BASFレーベルから ~





2023年ももう半分が過ぎてしまった。私が住む北の地でも各種「お祭り」をはじめとして、今まで行われなかった屋外でのイベントも次々に再開されている。一気にこうした流れが来ると、ただ街中を歩いているだけでも人の多さにクラクラしてくる。ただ、多くの人がそうであるようにマスクは外せず、素顔で外を歩いてはいない。どこかで未だ油断しちゃいけないという思いがある。


最近聴く音楽なのだが、ミッシェル・ポルナレフを取り上げて以来、70年代のポップスや、60年代後半からのソフト・ロックものが多くなっている。歳を取ると先祖返りのように洋楽を聴き始めた頃に思いを巡らせてしまうようになるのかなあと改めて考えている。

そんな中で突然気づいたこと。それは、閃きのように頭の中に浮かんだのだが、私はこれまで聞いてきた多くのユーロ系ロックに関してその多くを言葉にして残していないということだった。

多くのリスナーと同様に、PFMをはじめとするイタリア勢には大きな衝撃を受け聞いてきたものの、その前後に聞いたオランダやドイツのロックだって無視できない。オランダに関してはアース&ファイアー本コラムの第20回で、フォーカス『Moving Waves』についても第26回で取り上げたが、ユーロ・ロックに目覚めるきっかけとなったドイツについてはこれまで取り上げてこなかった。


英米のポップスやロックはもちろんすべてではないが、昔から普通に聞けるものが多かった。しかし、ヨーロッパやオーストラリア等他の地域の音楽というのはなかなか紹介されず一部に限られた時代だった。世界中に60年代中期からのビート・サイケ系、ビートルズの影響を受けたもの、ハード・ロックやプログレ等がそれこそ星の数ほどに存在していたわけだ。


それらが70年代の到来とともに日本の各レコードから紹介される機運が高まった。その理由のひとつには、輸入盤として世界各国のポップス、ロックが市場に出回ることで、聞き手のニーズが多様化したことが挙げられる。確かに日本で紹介されていないアーティストの作品に魅力的なものが多かったことは間違いない。しかし、聞いてみたいが手に入らない、そんな時期だった。

そんな中、英国の伝説的な幻の名盤も含めてヨーロッパを中心とした世界の音楽(レコード)が、日本において発売の機運が高まった最初の流れが72年から80年頃までだったと言える。その後もフォーマットがCDに移行する80年代後半にももっと大きな流れが来ることになる。


今回はそんな中から、72年後半からドイツのロックが日本で集中的に紹介されるようになったきっかけと思えるテイチクの『ブレイン・ロック・シリーズ』を中心としたリリースを振り返ってみたい。




BrainとBASFレーベルが日本で紹介された頃を振り返る (72年~74年頃)



◎画像1 ブレイン・ロック・シリーズとしてリリースされた作品群



*ジェーン(Jane)

まずは独ハノーヴァー出身のジェーン(Jane)。そのファーストが72年11月25日にテイチクから<ブレイン・ロック・シリーズ>第1集として発売されている。紹介文は「ジャーマン・ロックの美しき世界、<ジェーン>そのデヴュー・アルバム」だった(UPS-537-EB)

私も当時は中3。数ヶ月に1枚のアルバムしか買えなかった頃だから、その時点で聞くことはなかった。高校に入ってNHKの番組に出させていただいたことを縁に参加したロックサークルで、以前にも本コラム内でその名を挙げた先輩格のUさんに聞かせてもらったのが最初だった。

ドイツのロックといえば、当時国内盤で東芝からTangerine Dream、Amon Duul II、Canが出ていたのは知っていたし、キングからもEmbryo『胎児の復讐』が出されたのもレコード店で見ていた。しかし、どれも積極的に聞いてみたいと思うものではなかった。



◎画像2 Jane ファースト


そんな中でJaneに興味を持ったのは「ジャーマン・ロックの美しき世界」というそのうたい文句にあった。そしてジャケット。女性をモチーフにしたキュービズム調の抽象的なイラストがそのデザイン。ギターもオルガンもハードでプログレ的ではあったものの、メロディー・ラインとヴォーカルの歌声が全体の暗さを象徴しているように思えた。どこか、ドイツという国の音楽のイメージだった「暗い陰鬱な美的世界観」そのものだった。しかし、嫌いな世界ではない。

当時驚いたエピソードのひとつが、このアルバムのレコーディング前にメンバー間で担当楽器を交替したということだった。それだけ聞くと「一体何を考えているのか?」と疑問が浮かぶのだが、アルバムを聴いてみると違和感は全くなかった。「Daytime」「Wind」「Try To Find」「Spain」「Together」「Hangman」という収録された6曲に付けられたタイトルも魅力的だった。

私が特に気に入ったのが「Wind」のイントロのギター・リフとオルガン、「Spain」の叙情的なオルガンだった。その2曲を聴いていただこう。ギターはKlaus Hess、オルガンはWerner Nadolnyが担当している。



◆音源資料A Jane / Wind

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◆音源資料B Jane / Spain

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当時は国内盤新譜としてディープ・パープルの『ライブ・イン・ジャパン』、T.REXの『ザ・スライダー』、イーグルスのデヴュー・アルバム等々が出され、何よりもイエスの『危機』キャラバンの『ウォータルー・リリー』等の名盤が出ていた。ジェーンと同じテイチクからはアトミック・ルースターの『メイド・イン・イングランド』もジーンズ・ジャケット仕様で登場していた。どう考えてもJaneに飛びつく者がそういるとは思えなかったのだが、50年以上経った今でも何度も日本ではLPとしてアルバム再発を繰り返し、世界的にCDとしてカタログに残っているのは聞き継がれてきた証だろう。


その後、翌1973年には『Here We Are』が日本でもドイツ発売からさほど時間差もなく<ブレイン・ロック・シリーズ>第5集として発売された(UPS-590-EB)



◎画像3 Jane II / Here We Are


当時は精神性を重視した思想が流行となり、今そこにいる自分の存在確認として「Here I Am」「Here We Are」という言葉がよく使われていた。その時代の流れに乗ったタイトルだと思われる。

この作品は私にとっては決定打だった。一度聞いてから何度アルバムを繰り返し聞いたか分からない。基本的に前作と同様の構成なのだが、より静と動のバランスがよく、物思いに耽る時には最適だった。

特に2曲目の「Out In The Rain」の叙情性は素晴らしい。当時の国内盤の宮澤壮佳さんの解説にあった『「アウト・インザ・レイン」の<雨>はまさしくバッド・トリップを洗い流してくれる救いの暗喩なのだ』という言葉が今も印象に残っている。



◆音源資料C Jane / Out In The rain

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その後、ジェーン『III』(‘74)、『Lady』(’75)、『Fire,Water,Earth & Air』(‘76)、『Between Heaven & Hell』(’77)、『Jane Live』(‘77)、『Age Of Madness』(’78)まで日本で発売された。独Brainからはさらに『Sign No.9』(‘79)、『Jane』(’80)、『Germania』(‘82)とリリースが続いた。彼らもその後も紆余曲折がありながらも21世紀になってからもジェーンの名の下に活動していたが、70年代の初期作品群の魅力にとりつかれた者としてはここに挙げた作品だけで十分と言える。


ところで、音源資料Aで聞いていただいた『Wind』イントロのギター・リフの間を縫うオルガンのメロディーを聴いて何か思い浮かぶものはなかっただろうか? 私はこの曲を最初に聞いた時からある別の曲が浮かんで、そのイメージがずっとついたままだ。それが何か・・・については今回のアウトロに記すことにする。




*グローブシュニット(Grobschnitt)

そして、グローブシュニット(Grobschnitt)にも驚かされた。73年<ブレイン・ロック・シリーズ>第2集として発売されている(UPS-556-EB)。帯に書かれた「今、新しい可能性を開く、ドイツ・ロックのスーパー・グループ」という文句には特別感じるものはなかったが、『冥府宮からの脱出』という邦題には大きく興味をそそられた。(バンド名が当初はグロープシュニットと表記されていた。バンド名は実在した軍楽隊の名前だった。)



◎画像4 Grobschnitt


そしてやはり意味深く印象的なジャケットの存在。これが決定的だった。「暗雲立ちこめる中に洋服だけの男、そしてひとつの眼。物語の大きなモチーフと思える横に置かれたナイフ」。これから始まるドラマを感じさせるに十分な1枚の絵画だった。国内盤はシングルジャケットで裏が解説、しかし、後に入手した独原盤ではダブル・ジャケットの内側にもさらにイマジネーションを刺激されるイラストが掲載されている。

曲の邦題もすごい。順に並べると全4曲が<人類を苦笑する交響曲/冥府宮からの脱出/恍惚の鳩/鮮烈な未来への旅路>だった。しかし、数年後の再発時には幾分テンションが落ちて<至福の歌/冥府宮からの脱出/天上の音楽/太陽神話>になっていた。現行のMarqueeからの紙ジャケでも同じ邦題が採用されている。

肝心の内容だが、演奏力の充実と迫力、そして曲の構成力の見事さも冒頭のサウンドコラージュからコーラスに始まる部分から4パートにわたって十分に感じ取ることが出来る。



◆音源資料D Grobschnitt / Symphony

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この作品は私にとってジャーマン・ロックとして最高峰と思えたし、生涯の名盤100枚を選ぶとしてもトップクラスの1枚として記憶している。



◎画像5 Grobschnitt  Ballerman


驚いたのは、74年に発表された2作目の『Ballerman(暗躍するグロープシュニット)』<ブレイン・ロック・シリーズ>第7回として発売(ULS-129~30-EB)。これはなんと2枚組の大作。裏ジャケットにはメンバーが顔に彩色を施したり、面を被ったりした姿があり、彼らがシアトリカルなステージを見せていることがわかった。でも、その事実には不思議と変な予感を浮かべてしまった。そしてその予感は的中。アルバムの導入の「Sahara」はいきなりドイツ語訛りの英語の語りにはじまり、通して聞いてもコミック・ソングかと思ってしまう意外なほど不思議な曲だった。

しかし、2曲目以降は時折ユーモラスな面を聞かせるものの、基本的には前作の流れを汲んだ音楽性で安心した。最後は、彼らの代表曲となる「太陽賛歌(Solar-Music)」が2枚目両面を使って33分を超す演奏となっている。その後は1枚目の雰囲気の音楽に戻るが、幾分リラックスした感じに思えた。ただ私にとっては『冥府宮からの脱出』の宇宙空間に投げ出されたような緊張感に溢れた凄さが忘れられなかっただけに少しばかり物足りなかった。

それにしても何度も聞いているうちに、その「Sahara」も気に入ってしまった。


グローブシュニットの中心メンバーはEROCでバンドではエフェクトやパーカッションを担当。その後、ソロ・アルバムを数枚出し、日本でも紹介されている。近年はジャーマン・ロックを中心に、英国のアイティストの過去作品もリマスターを手がけていることでも有名になった。

EROCの本名はJoachim Ehrigなのだが、彼に限らずグローブシュニットにおいては他のメンバーも当初からFELIX、BAR、LUPO・・のようにニックネームでクレジットされていることも面白い。

その後グローブシュニットは、『Jumbo』(‘75)『Rockpommel‘s Land』(’77)が日本でリリースされたものの、『Solar Music-Live』(‘78)『Merry-Go-Round』(’79)は見送られてしまっている。その後も編集盤を含め本国ではリリースが続いている。特に近年おびただしい数のアーカイヴ・ライヴ・アルバムがCDでリリースされていて面喰らってしまうほどだ。



◎画像6 BASFレーベルからの作品  Flute & Voice  + Black Water Park


上記のジェーングロープシュニットがテイチクからリリースされた時期に、同じ独ロック系作品としてBASF原盤によるフルート・アンド・ヴォイス(Flute & Voice)やブラック・ウォーター・パーク(Black Water Park)もそれぞれ唯一のアルバムがリリースされていた。後者の方はハード・ロックの面白さを聞かせていることから今も人気が高い作品だ。ハード・ロックといえば、スコーピオンズ(Scorpions)72年の最初の作品『Lonesome Crow』翌73年12月<ブレイン・ロック・シリーズ>第3集としてリリースされていた(UPS-581-EB)このアルバムには若きマイケル・シェンカーが在籍しており、その後世界的な人気を得るスコーピオンズ歴史的なデヴュー作品である。


*ジョイ・アンリミテッド(Joy Unlimited)

ジャーマン・ロック攻勢をかけようと試みるテイチク・レコード。新たに注目するグループとして紹介したのがBASF原盤ジョイ・アンリミテッド(Joy Unlimited)だった。

私が最初に耳にしたのは最初にリリースされた73年『リフレクションズ(Reflections)』だった(USP-567-B)。この作品の帯に記された言葉がすごい。「空間を破壊し、宇宙を揺り動かす新たなる世界の出現 現代バレー音楽の創造をはかるジョイ・アンリミテッド!!」 この作品のジャケットもエッシャーのだまし絵の手法がモチーフで魅力的に映った。



◎画像7 Joy Unlimited / Reflections


また、このリリースに伴って当時の音楽雑誌にテイチクの広告に「興味のある方には資料を送るので連絡を」と告知が出ていて、私は速攻で葉書を送り資料を送ってもらった。



◎画像8 テイチク ジャーマン・ロック資料(リーフレット)


資料はちょっとショボイものだったが当時ものとしては貴重。しかし、アルバム「リフレクションズ」は個人的な印象としてはじつに面白かった。当時のFMでアルバムのA面が通してオン・エアされたものをカセットに録音したのだが、こちらも何度聞いたか分からないくらい面白かった。冒頭の朗読がバーズの「ターン・ターン・ターン」と同様に旧約聖書の『伝道の書』の一説が語られていることに気づいたことも大きかったし、基本的にバロック音楽が背景にあるかのようで次々に印象的なメロディーが溢れるように出てくることが魅力的だった。時にブラスロック的になり、ジャズ・ロック的展開もみせ、それでいて牧歌的でもある。ジェーングローブシュニットも良かったが、広く『音楽』に熟知したメンバーが集まっていて豊穣な世界観を聞かせる様はじつに愛すべきものだ。

ヴォーカル担当はケン・トレイラー(Ken Traylor)で、端正な歌声は印象に残る。彼はこの後75年Satin Whaleに参加している。



★音源資料E  Joy Unlimited / Ocean Of Ruins

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日本ではこの『リフレクションズ』に続いて『人類の創生(Schmetterlinge)』が出されたのだが、オリジナル発売とは逆の順序。つまり『リフレクションズ』は彼らの4作目で、『人類の創生』が71年に出されていた2作目ということになる。

その『人類の創生』を聞いてまた驚いた。『リフレクションズ』では全編男性ヴォーカルだったのに、ここでは女性の声。じつはジョイ・アンリミテッドには当初からJoy Flemingという女性ヴォーカリストがいたのだ。それも存在感のある本格的な素晴らしい歌声を聞かせている。

彼らは67年にJoy And The Hit Kidsとしてスタートし、69年にジョイ・アンリミテッドとバンド名を変えていた。つまり、Joyとはそのヴォーカリストの名前だったわけだ。そのJoyが3作目で脱退するのだが、バンド名は変えなかったわけだ。なんか、とてもややこしい。



◎画像9 Joy Unlimited / Schmetterlinge


しかし、『人類の創生』はジャケットこそドイツ・ロックにありがちな昆虫標本の暗い写真で聞く気をそがれてしまうのだが、こちらも堂々とした素晴らしい作品だ。3つの組曲からなる大がかりな構成だが、当時も今聞いても感じるところが多い。さらに全体の演奏力もじつに高いものがある。原題の「蝶」を飛んでいる虫としてではなく、標本箱に収まった「蝶」にしたところが何かドイツ的な感性に思えて興味深い。アルバム中の2番目の組曲「マニフェステイションズ(Manifestations)」は、戦争をテーマにしたドラマチックな作品だが、そちらも印象深いものがある。「過去としてのとらえ」ではなく今の時代においても聞かれるべきであるように思われる。

しかし、ここでは、組曲『Contacts』の中の1曲「Rudiment」を聞いていただこう。もちろんJoyのヴォーカルということになる。



★音源資料F Joy Unlimited / Rudiment

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彼らのドイツでのデヴュー作70年の『Overground』なのだが、このアルバムは英Page One から『Turbulence』というタイトルで発売されている。また米Mercuryからは『Joy Unlimited』というバンド名と同じタイトルで出ている。同じアルバム(曲の並びは一部違う)なのに、タイトルもジャケットも違うのが困ったものだ。しかし、米国でも紹介されていた事実は注目に値する。ちなみに日本では『リフレクションズ』『人類の創生』の2枚が出されたのみだ。



◎画像10 Joy Unlimitedの1枚目(‘70)3種 + 『Instrumental Impressions』(’72)


彼らには72年にイタリアからの依頼でレコーディングした『Instrumental Impressions』というインスト作品が存在する。レコード時代には入手の難しいものだったが、CDになってからは3枚目の作品としてカウントされている資料が多い。

『人類の創生』『リフレクションズ』の両作品ともに現代バレーのための音楽として作曲されたもので、その間に入る『Instrumental Impressions』もじつは「マルチ・メディア・ショー」というイべントのための音楽だったようだ。

前身にあたるJoy And The Hit Kids69年には独国内のベスト・ポップ・グループに選ばれているが、バンド名を変えてから舞台、演劇的な音楽の担当をするようになったのは驚きだが、メンバーの音楽的力量によるものなのだろう。何より、今述べてきたバイオグラフィーは後になって知ったことだが、最初に聞いて凄さを感じ、トップ・グループ的な扱いでドイツ・ロックを紹介したテイチクのスタッフの慧眼の凄さも私は感じ取ってしまう。

日本で発売されていた2作品はGarden Of DelightsからCD化され、多くのボーナス曲(それらも素晴らしい内容)を含んでいるので、未だ聞いたことのない方がいたら是非聞いてみることをお勧めする。

また、彼らにはもう1枚75年の『Minne』というアルバムがあることも付け加えておく。(日本未発)


*グルグル(Guru Guru)

<ブレイン・ロック・シリーズ>は73年にグルグル(Guru Guru)の2作品をリリースしている。第4集『カンガルー(Kanguru)』(‘72)を、そして第6集『不思議の国のグルグル(Guru Guru)』(’73)を発表し、また独特なジャーマン・ロックの深い森があるのだなと教えられた覚えは間違いなくある。



◎画像11 Guru Guru / Kanguru + Same


ドラマーのマニ・ノイマイヤー(Mani Neumeier)を中心にしたトリオ編成だが、一言では言い表せない不思議な音世界を聞かせていた。



★音源資料G GuruGuru / Samantha’s Rabbitt

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グルグルはブレインに移る前に、独Ohrから『UFO』(‘70)と『Hinten』(’71)を出していたのだが、それらも不思議な作品だった。『UFO』の方は彼らの出発点であるフリー・ジャズから前衛的のノイズまで含まれた混沌の中に、ほのかな幻想も見せていた。2作目『Hinten』は「後方、後ろ」という意味なのだが、ジャケットに「尻」がそのまま写真として掲載されていることにも唖然としてしまった。「ジャーマン・ロック恐るべし」と思ったのは私だけではないだろう。前作に増してフリーキーでノイジーな中にロックらしいビートが刻まれているが、やはり混沌が基本であることは疑いがなかった。

そんな彼らが、ブレインに移籍して日本盤として出たわけだ。当時は結構興味深く面白く聞くことができたのだが、今回改めて聞いて「こりゃキツいかな。」と思ってしまった。その時の気分によって彼らのユーモアとアイロニーも理解しきれないことがありそうだ。彼らの音楽を「ロックを一度解体して再構成したもの」なんて言い方もされたことがあるが、やはり時代が生んだ産物だったという気がする。

95年のCD再発の際は「ジャーマン・ロック・モンド・ミュージック編」として『カンガルー』『不思議の国のグルグル』の2枚とも出され、人気もカルト的だ。個人的には少々キツくなってきたもののジャーマン・ロックを考える時には必ず出てくるグルグル。今後もその名は残っていくだろう。




今回のアウトロ

久しぶりにジャーマン・ロックを聴きながら、当時のことも思い出していました。なんたって72年から73年にかけては、記事中にもいくつか書きましたがロックの名盤が次々と生まれた時代です。そんな中でマニアックな物を追いかけるなんていうのは至難の業です。

それらを当時聞くことが出来たのは、その頃のNHK-FMの充実と、友人たちのおかげでした。

当時から50年も経っているのに、改めて聞いているうちにその頃の状況が浮かんでくるのは、音楽の持っている『力』なのだろうと思います。そして、誰にも負けないと自負した『聞いてやろうという思い』がその『力』に反応できたのだろうと思います。


今回はBrainBASFを取り上げましたが、ちょうど73年にはVirginが生まれたことで、ジャーマン・ロックのリリース状況は少々複雑になります。Tangerine DreamKlaus Shulze、Canといった大物の新旧の作品が出され、Faustが注目されるようになります。その後、PilzOhrといったレーベルのかつての名盤の再発が静かな嵐のようにやってきた時期もありました。

一方のBrainレーベルも活発になり、Neu、Cluster、Harmonia、Birth Control、Lilliental等は日本でもリリースされました。新たにSkyレーベルも生まれています。

どうも音響系というかコズミック・サウンドのウケが良くなってしまったように思えますが、一方でNovalis、SFF、Ruphus、Hoelderlin、Trianvirat等のシンフォニック、ファンタジー系も登場しています。

次回はテイチクが75年以降リリースした物を整理し、NovalisSFFあたりをまとめて見ていこうかなと考えています。そしてLP時代には国内発売されなかったけれど個人的に思い入れの強いEmergencyThirsty Moon、Anyone’s Daughterも取り上げるつもりでいます。
 

**********************************************

ところで、ジェーンの「Wind」のオルガンのフレーズですが、思い当たった方はいましたか。

私は、このメロディーを聞いて思い出してしまうのは、チンドン屋がテーマ曲のように奏でていた「サーカスの唄」なのです。「えっ?」と思われた方もあるかと思います。

しかし、この曲「サーカスの唄」の原曲は俗曲のように見えますが、じつは歌詞もついた由緒正しい作品で、日本で最初のワルツ曲(3拍子)として1902年(明治35年)佐世保の地で作曲されたものだそうです。当時、女学校での愛唱歌のひとつとして歌い継がれたものだったそうです。それが、どんな経緯から全国のチンドン屋が演奏するようになったのかは明らかにはなっていません。

ジェーンがドイツのバンドであることを考えると、歴史上どこかで日本のこのワルツ曲が伝わっていて、キーボード・プレイヤーのWerner Nadolnyも耳にしていたのかもしれません。「Wind」のイントロとエンディングはやはりワルツになっています。

裏付けは全くないのですが、そう考えてみるのも面白いと思って紹介してみました。本当に同じ思いで聞いていた人がいると心強いのですが。

(こう書いても「チンドン屋」がどういうものか知らない方も多いかもしれません。70年代まで店の新規開店の際に白塗りで時代がかった着物を着て周辺を演奏しながら知らせて回っていた一団でした。今では見かけることがありませんが、私の学生時代には普通に見られた光景でした。)







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