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「音楽歳時記」 第九十回 追悼・マニー・チャールトン 文・深民淳





去る7月5日、Nazarethのオリジナル・ギタリスト、マニー・チャールトン(本名マニュエル・チャールトン)が亡くなりました。享年80歳。Nazarethが英ペガサス・レーベルからデビュー・アルバムを発表するのが1971年ですから、デビューの年にはもう30歳に手が届く年齢だったことになります。1950年代の終わりにはスコットランドのローカル・ミュージック・シーンで活動を初めていたそうなので、下積みの期間が長い苦労人だったようです。ギタリストとしては超バカテクといったタイプではありませんでしたが、リフ作りの上手さとバンド・プロデュース能力とオリジナル楽曲とともにバンドの代表曲となった数々のカヴァー曲の選曲眼には光るものがありました。ロックの歴史を振り返ってみてもトップ5に入る異能ヴァーカリスト、ダン・マッカファーティーと共にNazarethの黄金期を牽引した主要メンバーでしたが1990年にバンドを脱退。ソロに転じました。

ブリティッシュ・ハード・ロックの名バンドとして語られる割りには日本盤の発売状況は寂しいものがあり、Nazareth黄金期の作品群を紙ジャケット化したエアーメール・レコーディングスからのカタログは今では高価なプレミア・アイテムとなっていますが、ちょっと作りは雑ですがその後シリーズで出たSalvoレーベルの輸入盤は今でも比較的安価で入手可能かと思います。

今回はNazareth作品を数点、ソロになってからの作品を数点紹介したいと思います。


マニー・チャールトンは1941年7月25日スペイン、アンダルシア生まれ、2歳の時に家族と共にスコットランド、ダンファームリンに移住。早くから音楽活動を始め、17歳の頃には地元のローカル・バンドで活躍するようになり60年代にダンファームリンのセミ・プロ・バンドThe Shadettesに加入。1968年にThe Bandの「The Weight」の歌詞にインスパイアされNazarethと改名。地道なクラブ出演を重ね先に書いたように1971年にアルバム『Nazareth』を発表します。このデビュー作、ブリティッシュ・ハード・ロック然としたサウンドなのですが、1971年というとDeep Purpleは既に『In Rock』を通過して『Fireball』を発表。スピード感溢れるリフ・メインのハード・ロック時代に入っていた時期の作品としては、既にちょっと古臭いイメージも漂う作風。そのどこか鈍臭い感じが、半世紀以上経過した今となっては結構魅力的だったりするのですが、当時は大きな反響を得ることができず、2nd『Exercises』では早くも方向転換。ストリングスの導入、アコースティック・ギターを取り入れた楽曲をフィーチュアするなどの変化を見せます。Nazarethって90年にマニー・チャールトンが脱退するまで何回かサウンドが大きく変化する時期があったのですが、これがまず最初の変化。ストリングス、アコースティック楽曲導入と言ってもThe Moody Blues的なプログレ展開に進んだ訳でも、フォーク・ロック路線に振り切った訳でも、コアを手繰ると1stアルバムからあまり遠くにきた訳でもなく、なんとも中途半端な印象の作品となってしまいます。大体、他のハード・ロック・バンドと明らかに差別化を狙える異能ヴォーカリスト、ダン・マッカファーティーにしっとり静かに歌わせるということ自体がどうだかねぇ、という印象です。

普通だったらここで集団から千切れて消えていく運命だったのでしょうが、最後の挑戦とばかりにDeep Purpleのロジャー・グローヴァーをプロデューサーに迎え、前作で押さえつけられたハード・ロック衝動を思い切り全面に出した1973年発表『Razamanaz』で大躍進。ブリティッシュ・ハード・ロック・シーンにおいて前のめりのロックン・ロールとオーセンティックなアメリカン・ロックへの憧憬を強く打ち出してはいても、レイドバック・フィーリングとは真反対に位置するヴォーカリストが歌うことでブリティッシュ・テイストが逆に際立つという、真剣に考えればかなり有り得ないスタイルのサウンドを一発逆転で確立。同じくロジャー・グローヴァー・プロデュースの1973年11月発表の『Loud ‘N’ Proud』、1974年『Rampant』で最初の黄金期を迎えます。

この3作の中ではやはり『Loud ‘N’ Proud』が光ります。この真性ハード・ロック・バンド時代のマニー・チャールトンはスライド奏法も多用しており、アメリカン・ロックへのシンパシーも強く打ち出し、ブリティッシュ然としたリフ・ワークというより超前のめりのロックン・ロール、ブギー体質が強いのですが、同時期にブレークしたStatus Quoもそうだったようにアメリカン・ロックン・ロールやブギー系の根底にあるルーズさがほとんどなく、とことん律儀でタイト。その馬鹿正直とも取れるタイトさが逆にブリテッシュくささを強く打ち出した形になっているんじゃないかと思います。ロジャー・グローヴァー・プロデュースの最終作『Rampant』にもこのスタイルは継承されていくのですが、スピード感やブギーのグルーヴ感が若干アメリカ市場受けを狙ったものに変化し、再び迷いの時代のスタートラインがうっすらと見え始めた感もあり、そういった点からも一点の曇りもない剛性タイト・ロックン・ロール・アルバム『Loud ‘N’ Proud』をこの時期の推奨盤として挙げさせていただきます。自分たちが演奏していて楽しいサウンドをファンが真っ正面から受け止めまた楽しんでくれるということはバンドのどれだけ幸せなことだったかが今もしっかり伝わる多幸感溢れるブリティッシュ・ハード・ロック(ンロール)アルバムだと思います。

Not Faking It

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『Rampant』を最後にロジャー・グローヴァーと別れたNazarethはマニー・チャールトンが満を持してプロデューサーに昇格します。初のプロデュース作はアメリカで彼らにとって最大のヒット曲となった「Love Hurts」と同時期に発売となった『Hair Of The Dog』。アルバムもヒットしましたが、ここから数作はプロデューサー、マニー・チャールトン修行時代とでも申しましょうか、アルバム様々なトライ&エラーが繰り返されます。前のめりのロックン・ロール体質から脱却し、丁度同じ頃、北米大陸ドライヴ最適グルーヴをアルバム『Tejas』で確立したZZ TOPにも通じるゆったりとしたグルーヴを持った楽曲が増えていく一方で、Queenの「Brighton Rock」におけるディレイを効果的に使ったギター・プレイを想起させるギター・パートを含むブリティッシュ・ハード・ロック組曲「Telegram Part 1〜4」が同居する『Close Enough For Rock’n’Roll』、大陸的な大らかグルーヴ路線を拡大し、ファンク色も加味した『Play ‘N’ The Game』とこれまでのNazarethのイメージを打ち破る新機軸を盛り込んだ作品を立て続けにリリース。アメリカのロック/AOR系FM局からの支持を得てよりレイドバックした内容のアルバムを制作するもレーベルから発売拒否を受け、作り直した作品を『Expect No Mercy』としてリリース。アートワークは当時の流行であったファンタジー・アートの巨匠フランク・フラゼッタのイラストを使ったハード・ロック然としたイメージとは裏腹に遂に直球型カントリー・ロックまで取り込んだ北米大陸型AORハード路線へと変貌を遂げます。因みにレーベルからNGくらったボツ・ヴァージョンはSalvoレーベル盤にボーナストラックとして収録されています。

Telegram Part 1〜4

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この時期にはバンドのライヴ活動の中心はアメリカ中西部と特に人気の高かったカナダ中心となっていたため、当時のアルバム・プロモーション最大のツールであったAOR系FM局に受け入れられやすいサウンドへと更なる変化を遂げるべく元The Sensational Alex Harvey Bandのピエロ・メイクのギタリスト、ザル・クレミンソンをメンバーに加え、前作『Expect No Mercy』のアートワークが好評だったのを受け、ファンタジー・アート系第2弾で今度はロドニー・マシューズのイラストを使った『No Mean City』をリリースします。マニー・チャールトン在籍時の後半戦のスタジオ作品の中では最も人気が高く、エアーメール盤の紙ジャケットCDは昨今かなりの中古市場でもかなりの高値となっている作品です。FM局でのオンエアーを稼ぎまくったAORヒット「Star」、ブリティッシュ・ハード・ロック・バンド時代のテイストを残しながら、アコースティックとエレクトリックの絶妙なバランスとキャッチーなメロディラインが印象的なロック・アンセム「May The Sunshine」、ザル・クレミンソンを加えツイン・リードも可能な編成になった強みを活かしたThin Lizzyのギター・アンサンブルにも通じる「Simple Solution (Parts 1 & 2)」を中心に『Hair Of The Dog』以降追求してきたNazareth流AORハード・ロック路線を完成させた充実作であり、ここから『Malice In Wonderland』を経て集大成ライヴ・アルバム『’Snaz』に至る時期は第2の黄金期だったと思います。様々なスタイルに果敢にチャレンジしてきたマニー・チャールトンのプロデュース手腕が開花した時代でもありました。

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ヴォーカリスト、ダン・マッカファーティーもキャリアを重ね円熟してきたということもあったと思いますが、70年代前半のハード・ロックン・ロール時代であったら絶対に水と油のようになっていたマッカファーティーのヴォーカル・スタイルをAORハード・サウンドに乗せるスタイルを作り上げたというのはプロデューサー、マニー・チャールトンの功績だったと思いますし、最もAORから遠いところにあるマッカファーティーの声を乗せることで一度聴いたら忘れられなくなるNazarethならではのテイストはこの時期ピークを迎えていたと思います。


先に書いたようにマニー・チャールトンは1990年にNazareth脱退。脱退直後はスコットランドに戻りソロでライヴを行なっていたそうです。その後、1995年から制作を続けていたソロ・アルバム『Drool』を1997年に発表。翌年にはテキサスに移住し、同地でManny Charlton Bandを結成。アルバム『Drool』はヴォーカルにクセのないダン・マッカファーティーといったスタイルのニール・ミラーを迎え制作されました。ニール・ヤングの「Rockin In The Free World」のパワフルなカヴァーをはじめ『Razamanaz』、『Loud ‘N’ Proud』期のハードなサウンドに回帰した作品で、2000年には『Drool』の続編とも言えるソロ第2弾アルバム『Bravado』を発表。その後は旧Nazareth路線はManny Charlton Bandが引き継ぎ、ソロ名義の作品は『Sharp』(2004年)、『Sharp Re-Loaded』(2005年)などディラン、The Beatles、Fleetwood Mac(何故かブルース時代ではなく「The Chain」をカヴァー、同じく2007年のソロ作『American Deluxe』では同じくMacの「Tusk」をカヴァーしています)カヴァー曲集が多くなっていきました。カヴァー曲集『Sharp』、『Sharp Re-Loaded』は2枚組フォーマットで2014年にAngel Airレーベルから再発になっています。



80歳という年齢が今の世の中高齢なのかどうかはなんとも言えませんが、確実にブリティッシュ・ハード・ロックの一時代を築き上げた名バンドを支えたギタリスト兼プロデューサーがいなくなってしまったのは寂しい限りです。また追悼記事になってしましたがNazareth好きでしたねぇ・・・。個人的な追悼盤は「Holiday」が入っている『Malice In Wonderland』にしたいと思います。久々に大音量で聴いてみようと思います。

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