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「音楽歳時記」 第八十三回 1月1日正月・いろはかるた(後編) 文・深民淳

歳時記的には1月。2022年を迎えておりますが、実際にはまだクリスマス前。クリスマス・アルバムは先月やりましたが、その後飛び込んできたアイテムをまず紹介。

まず、リー・アーロン。懐かしいよねぇ。先月のオープニングはダイアナ・ロスの新作ジャケット写真でビックリという始まりでしたが、リー・アーロンもデビューは80年代の初めですからかなりお歳をめしたかと思いますが、元気ですね。タイトルは『Almost Christmas』。この人、ヘヴィメタル界にあっては声が如何せん可愛らしく、メタル者からはイロモノ扱いされていましたが、あれから40年近くたってもその声、あんまり荒れてないのよ。そんでもって内容もヘヴィメタルというよりパワー・ポップよりロカビリー・フレーバー乗せみたいな雰囲気で、へぇ、リー・アーロンねぇ、まだやってましたかみたいな上から目線で聴き始めたものの、結構良い出来です。前半アゲアゲ、後半シットリ系中心の作りになっています。


続きましては先月用意していながら書き忘れた1枚。マギー・ライリーのクリスマス・アルバム『Happy Christmas』。鉄板のクリスマス・クラシックに加え、ジョニ・ミッチェル『Blue』収録の「River」なども取り上げています。アドベント・カレンダー風のアートワークもクリスマス・ムード満点っすね。


アルバムは「Do You Hear What I Hear」からスタート。この曲ボブ・ディランの『Christmas In The Heart』にも収録されていますし、Carpenters、キャロル・キング、クリストファー・クロス、ホイットニー・ヒューストンも取り上げています。また、先月取り上げたモーガン・ジェームズの「A Very Magnetic Christmas」にも収録されており、ここ数年よく聴くなぁってことで調べたら1962年にグロリア・シェイン・ベイカー作曲となっています。1962年って旧ソビエトがキューバにミサイルを配置することを巡ってアメリカとの関係が悪化した年でこの曲はそんな世相に対し平和への祈りを込めて作られた曲なんだそうです。印象的なメロディラインを持つ覚えやすい曲ですね。

アルバムの内容ですがマギー・ライリーのあの声は健在で、各楽曲のアレンジもシンセサイザー・メインの安心・安全いつものマギー・ライリー・モードからカントリー・タッチ、リヴァーブ深目のギター・バックのドリーミー・アレンジまで多彩で季節ものとはいえアーティストのこだわりを感じさせる1枚となっています。


U2の5曲入り『I Believe In Father Christmas EP』は配信のみの販売みたいですね。MP3版とFLAC版があります。FLACファイルの.WavやMP3への変換はフリー・ソフトもありますし、簡単ですのでどうせお金を出すなら上位フォーマットのFLAC版で購入して用途に応じ自分で変換することをお薦めします。

ちなみにメインタイトルになっている曲はあれ?っと思った人も多いかと思いますが、そうあれです。グレッグ・レイク作曲・ピート・シンフィールド作詞、Emerson, Lake & Palmer『Works Volume 2』収録のあの曲です。


ポール・ギルバートもクリスマス・マーケットに参戦です。彼は以前にもオムニバスのギター・クリスマス・アルバムに楽曲を提供していますが、今回はフル・アルバムで勝負してきました。

フロント・アートワークの狼のイラストが良い感じにポップで目を引いた『Werewolves Of Portland』(2021年)とリンクした今回のトナカイのイラストも上出来!

内容としてはオリジナルのクリスマス・インスト・ナンバーもありますが基本は誰もが知っている有名クリスマス・ソングのポール・ギルバート流インスト・アレンジ。1曲の中でもアレンジが目まぐるしく変わるものが多く(というかほとんど全曲!)、賑やかさという点では今季一番かと思います。例えば2曲目の「Frosty The Snowman」は最初オルガン・バックにハード・ロックぽい煽りのリード弾き倒しから入り疾走パターンかと思いきや、いきなり粘っこいトーンの演歌ノリ、泣きのインスト・パートへ変貌を遂げ、聴いていて唖然としていると突然キーボードを交えたブライト・ポップ・アレンジへUターン、オイオイなんちゅうアレンジと思うまもなく今度はデヴィッド・ボウイ「The Jean Genie」を思わせるロック・グルーヴをカウンターで当てて、シャッフル気味のロックンロールへ直角に右折。こんな奇想天外・奇天烈な猫の目シフト・チェンジがあちらこちらに仕掛けられていて、次は何やらかすんだろうかと思わずこの騒々しくも楽しいクリスマス・ワールドに引き込まれてしまいました。

まぁ、長い間担当ディレクターとして仕事してきたから、裏事情がよく見えてくるんですけれど、ポール・ギルバート、ここ数年細かいトーン・コントロールや一音一音のピッキングこだわりが凄すぎ! 内容がやたらと濃い。クリスマス・アルバムなんですけど、その濃くてこだわりまくったギター・ワールドは、彼のキャリアの集大成と言っても過言ではないと思いますね。かなり聴きごたえのあるインスト・アルバムでこのとっ散らかりぶりはBGMには向かいないんですが、これギター好きには間違い無いです。頭の中に浮かんだ無茶な妄想インストワールドを正確に再現して作品化できるのは彼ぐらいのもんでしょう! 遅ればせながら今年のクリスマス・アルバム特選盤に推挙させていただきます。いやぁ、楽しかった!!


さて、それでは去年の続き、書いている本人大後悔企画「いろはカルタ」後半戦へまいりましょう!今年は「う」からスタートです。


う:牛を馬にする(大阪)
普通、「う」は江戸版の嘘から出た実(まこと)を採用するのだろうけど、大阪版の聞いたことのない格言に思わず目移り。意味は歩みの遅い牛を捨てて速い馬に乗り換えるように、不利なほうをやめて好都合な方に便乗するってことだそうだ。知らなかったなぁ、これ。ま、それで牛を馬にしちゃうのですよねぇ、と考えていたらロクでもない妄想が頭に浮かびそこから1mmも動けなくなっちゃった。Henry CowをCrazy Horseにするのは無理だろうなぁ、Henry CowがCrazy Horseの曲を演奏するなんてありえないし、その逆も無理だろう。接点はどっちも音楽やっている程度で両極端に位置する存在だし。一発目からどうしようもないこと書いて申し訳ない。反省していますがもう書いちゃったから・・・・。


ゐ:炒豆(いりまめ)に花が咲く(大阪)
一度衰えていたものが再び勢い盛り返すこと。 ありえないことが実現することの例えなのだそうな。コンスタントにアルバムを発表し、ツアーも精力的に行っているバンドにこういうことを書くのは失礼なのを承知で行きます。Yes、2021年発表のニュー・アルバム『The Quest』結構好き! 『Fly From Here』あたりからほぼ惰性で買い続け、ああ、そうですかみたいな感想しか浮かばず、ふるさと納税や町会費の集金みたいに思っていましたが、今回の『The Quest』はかなり楽しめました。筆者は大判サイズのアートブック仕様盤で購入。アートブックっていうからロジャー・ディーンのイラスト満載なのかとおもえば、シワや毛穴までリアルな爺ィのどアップ写真満載で悶絶しましたが、内容は久々満足感ありの好印象。

何が功をそうしたのかを考えると、このアルバム、現メンバーの今のプレイアビリティを正確に把握し、その能力を最大限に発揮できるBPM、グルーヴ内で曲作りを行った結果のように思う次第。BPM的にはどちらかといえばかったるいスピードの曲だらけで、往年の疾走感とかはほとんどないのですが、安定感と説得力は抜群で演奏に無理がないため、聴いていて「あぁ、こういうところ、昔のYesだったらこうはならない」みたいな雑念なしでサウンドに集中できるのが良い。
 老いていく過程で失いつつあるものにしがみつかず、経験の蓄積を得難い財産として、それを良い形でサウンドに落とし込む「型」が明確に打ち出された、そんな印象を抱く聴きごたえのある作品でした。


の:鑿と言えば槌(京都)
鑿(のみ)を持ってこいと言われれば、それを使うのに必要な槌(つち)も一緒に持ってくる。 万事に気が利くことのたとえだそうです。毎年、寒くなってくるとなぜか、ロリー・ギャラガーを引っ張り出してきて聴くんですが、今年はソロ・デビュー作の50周年記念ボックス等の発売があったこともあり、例年より再生回数が増えています。ここ数年よく聴くのが1975年発表の『Against The Grain』。73年発表の『Tattoo』がヒットし、ソロ・キャリア初期の総決算的ライヴ・アルバム『Irish Tour ’74』も注目を集め、いよいよ次のステージにジャンプ・アップしようと時期の重要な勝負作だったのですが、評価・セールス共にちょっと躓いた感がある作品です。

続く76年『Calling Card』からは「Moonchild」がヒットし70年代後半のパワー全開ハード・ロック路線へのシフトを予感させる内容だったのに対し、『Against The Grain』はちょっと焦点が絞りづらいアルバムだったように思います。ただ、パーツは悪くなく、このアルバム固有の雰囲気は捨てがたいものがあります。ジャズっぽいアプローチの「Cross Me Off Your List」、彼のバラード・クラシックとなった「A Million Miles Away」の滑らかさと正反対に位置するひっかりの多いバラード「Ain’t Too Good」、アメリカン・ロックを意識したかのようなアプローチの「At The Bottom」、新たなトライアウトといった感がある非ブルース・ナンバー「Lost At Sea」、スキッフル時代への先祖返りといった印象の「My Baby, Sure」など意外性に満ちたナンバーの含有率が他より高めなんですね。音楽的に冒険した作品だったと思うのですが、この冒険を可能にしたのがソロ時代全般を支えたパートナーであるベースのジェリー・マカヴォイ。ベースが一歩間違えば散漫になりかねないアルバムを繋ぎ止めているのです。まさに「鑿と言えば槌」の阿吽の呼吸。その絶対の信頼関係が視界良好で見えることもあり、このアルバムをよく聴くのです。

Cross Me Off Your List

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お:鬼に金棒(江戸)
2000年4月28日武道館でのSantana公演。この時ちょうど、担当していたウォーレン・ヘインズのGov’t Muleが来日中で運よくこの日はオフ。バンドがSantanaをどうしても観たい、今日はエリック・クラプトンがサプライズで参加するらしい、ということでメンバーと武道館へ。この日の共演何が凄かったって2、3曲ジャムって終わりではなく、クラプトン、後半ほぼ出ずっぱりだったこと。カルロス・サンタナの呼び込みから「Batuka」で共演はスタート。先日遂に発売となった4chミックス収録のSACDコンパチブル版『Santana III』でも圧巻だった「No One To Depend On」、鉄板の名曲「Black Magic Woman〜Gypsy Queen」、「Oye Como Va」をはじめ「Soul Sacrifice」、「Jingo」(オリジナルは1st収録ですが1990年発表の『Spirits Dancing In The Flesh』で 「Jin-Go-Lo-Ba」というタイトルでリレコしており、こちらはアフリカ・テイストのヴァージョンになっております。あまり人気のないアルバムですが、かなりいい出来ですよ)どれも凄かったんですが、『Santana III』収録の「Taboo」のイントロからサンタナ、クラプトンの静かなギター・カンバセーションから次第に熱を帯びていく『Supernatural』収録の「The Calling」が今も印象に残っています。正に鬼に金棒のスーパー・セッション、しかも隣で見ていたのはもう一人のギターの鬼ですからねぇ、今も鮮明に覚えています。可笑しかったのはエンディング。R&Bのスターのように最後の曲ではバンドが演奏しているうちにカルロスがステージを降り、残されたバック陣がショウを閉めるという展開なのですが、この日はSantanaのショウをクラプトンが閉めるという形になりまして、なんとも贅沢なエンディングでした。

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く:臭い物に蝿がたかる(京都)
読んで字の如し。80年代の初頭、初めてのNY旅行時、ナッソー・コロシアムでFoghatとBlue Öyster Cultのパッケージ・ショウを観まして・・・。ロクに英語も読めない、話せない、地理もわからん状態でなんとかマンハッタンからバスに乗って行ったわけですが、もうバスの中から臭いのよ。ライヴ観に行く連中で満杯状態で酒・汗・マリファナ・その他やばいもの全般の臭いが入り混じってクラっとくる感じ。デカいアリーナの会場は更にカオス。Blue Öyster Cultってバイカーにも人気あったので体臭キツイでぶ大量発生、堂々とアシッド売っている奴はいるし通路は溢れたビールでベトベト、ロクに掃除をしない酒屋の饐えた臭いが充満。ライヴが始まればあたり一面、紫の煙でもらい飛び。「臭い物」というといまだにこれを思い出します。無茶な嗅覚体験でありました。こんな連中と戦争して勝てるわけないじゃん、日本と思いましたね。


や:安物買いの銭失い(江戸)
つい先週の話。Starship名義で『Greatest Hits Relaunched』というアルバムが出てまして、CD、LPもあるんですが、注文するのも面倒なのでMP3のダウンロードで購入したわけです。

90年代以降のStarship(Jefferson Starship)関連の人脈は入り乱れまくっており、ポール・カントナーとマーティ・ベイリンがやっていたJefferson Starship、ポール・カントナー中心でサウンド的にはJefferson Airplaneに近いJefferson Starship、デヴィッド・フレイバーグにピート・シアーズにカントナーとグレース・スリックの娘チャイナ・ウイング・カントナーを加えたJefferson Starshipが存在する一方で1979年の『Freedom At Point Zero』からStarshipに名義変更して活動停止するまでヴォーカルとして活躍したミッキー・トーマスがStarship名義で活動していたりととにかく煩雑。

ダウンロード版で購入したのでクレジットとかがなくて誰がメンバーなんだかさっぱりわからないのだけど、声はミッキー・トーマスっぽい。アルバム・タイトル通り『Freedom At Point Zero』以降Starshipまでのヒット曲のリレコ・アルバムなわけですが、これがねぇ、安っぽいのよ。時代に則したアレンジなんてどこにもなく、ひたすらイージーなカヴァー・ヴァージョン・オン・パレードに閉口しました。CDで購入していればカケレコに売り飛ばし見知らぬ誰かとこの「なんだかなぁ・・・」感を共有できたのに・・・残念。安物買いの銭失いとはまさにこれだね。



ま:待てば甘露の日和あり(大阪)
2021年12月7日King Crimson最後のライヴと噂される渋谷オーチャードホール公演が終わった後、何人かの友人から「終わちゃった、クリムゾン・ロスになりそう」というメールをいただきましたが、12月3日にマネージャーのデヴィッド・シングルトンと打ち合わせを兼ねた夕食を共にした際の話では「今の時点では分からない」。要するに終了決定には至っていないという状況なのだそうだ。ただ、2022年の活動はギャビン・ハリソンが1年間以前在籍していたあのバンドに押さえられているので稼働ができないのは事実。フリップ翁も22年8月22-26日ニューヨーク州グレンコーヴで「The Guitar Circle With Robert Fripp」なるイベント開催を発表。現在、参加者募集中。22年は細かい活動に勤しむ決意のよう。というわけで22年は無理だし、メンバーが高齢のため未来のことはわからないが、クリムゾン活動再開はありえない、というわけではないみたい。「甘露の日和」を夢見て待ちましょう。



け:芸は身を助ける(江戸)
未CD化作品の中でも特に気に入っており何度か取り上げたHeadstoneの2作品が今年、遂にCD化されましたな。早速入手して聴きましたが、音源は恐らく板起こしみたいね。ジャケットの方も特に1stはオリジナルのPP貼りのテカテカの質感が全く再現されておらず、ただ作れば良いってもんではないでしょう、と思いますが、再び世に出たことはうれしく思います。


何度か取り上げているので覚えている方もいると思いますが、元Atomic Roosterのギタリスト、スティーヴ・ボルトンと元Rare Birdのドラマー、マーク・アシュトンが結成したハード・ロックで括れないしパワー・ポップとも違うしプログレでもない不思議な立ち位置のサウンドを持ったバンドでした。

バンドの中心はこのバンドの前はドラム担当だったマーク・アシュトン。記憶に残る声と独特のグルーヴ感を持ったサイド・ギターへのコンバートは「芸は身を助ける」を地でいった感じだったと思います。

時代的にグラム・ロックが衰退し、10CCをはじめとしたインテリジェント・ポップが台頭してくる谷間にひっそりと存在したバンドですが、ブリティッシュ・ロック好きだったら未聴で済ますには惜しいくせ者。いつの間にか絶版になっていることが多いレーベルから出ていますから早めに手を打った方が良いかと思います。

そして、このバンドのレコーディングでベースを弾いていたのが、フィル・チェン。ジェフ・ベック『Blow By Blow』、70年半ばのロッド・スチュワート・バンド、ブライアン・メイの『Star Fleet』をはじめとして数多くのバンド、セッションに参加した名ベーシストでしたが、この原稿を書いている最中、12月14日に訃報が飛び込んできました。武道館で観たロッド・スチュワート「Blondes Have More Fun Tour」を思い出しました。ドラムにカーマイン・アピス、ギターにジム・クリーガンと元Striderのゲイリー・グレインジャー、そしてチェン。飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時のロッドに相応しい華のあるバンドでした。小柄でフェンダー・ベースが大きく見えましたが、楽しそうにプレイしていた姿を思い出します。ご冥福をお祈りいたします。



ふ:貧乏暇なし(江戸)
なんだ、俺のことか・・・。何を今更・・・。



こ:志は松の葉(大阪)
これも馴染みのない格言でした。たとえ松葉にくるむほどのわずかな物でも、贈る人の心がこもっていれば、りっぱな贈り物となることを例えたものだそうです。

コロナ禍の今年、夏あたりは本当に仕事もあんまりなくマッタリとした時間を過ごしていたのですが、10月、11月はクリムゾンの来日、12月発売作品の編成作業が重なりかなりタイトな状況となり、毎度のことではありますが、なんで全てのことがいっぺんに起きるのかと文句タラタラの日々を過ごしておりました。編成の方はマスター確認等でかなり集中してチェックしなければならないのもあり、この作業が歳のせいか年々きつくなってきています。特に今年はフリップ翁が2020年5月から2021年4月までの1年間毎週金曜更新で行ってきた「Music For Quiet Moments」プロジェクト全トラックをCD8枚に収めたボックスが含まれており、この作品自体は出荷予想枚数も考慮すると、国内プレスでは定価が1万円超えでも利益が出せないとなり輸入アセンブルとなったのですが、それでも内容確認はしなければならないため、集中してチェックしました。途中、根詰めすぎて「先生・・・お彼岸が見えます」みたいな状況に陥り、一休みして今手掛けている仕事とまったく関係のない音楽を聴こうと思い、深く考えもせずJ.J.ケール1971年作『Naturally』を聴き始めたのですが、これが沁みた。

J.J.ケール、その名前、代表曲はよく知られていると思いますが、それはどちらかというとエリック・クラプトンをはじめとするアーティストが取り上げたヴァージョンを通してという形の方が圧倒的に多く、J.J.ケール本人の作品に触れたことの無い方も多いのでは無いでしょうか?  『Naturally』はホーンが入った曲もありますが、基本、最小限のバンド・サウンド、曲によってはドラムレスで代わりにリズムボックスが鳴っている、ほとんどデモ・テープのようなトラックもあります。低予算制作の極地といった作りの作品ですが滋味深い。まさに「志は松の葉」の精神が貫かれた作品と言えるでしょうね。ロック・クラシックとなった「After Midnight」、「Call Me The Breeze」の本人ヴァージョンはこのアルバムに収録されています。

After Midnight

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誤解を招くとまずいので書いておきますと『Music For Quiet Moments』が嫌いなわけではありません。数日間で小さなデジタルノイズも聴き漏らさず徹底的にチェックするには重たい組数だったということです。『Music For Quiet Moments』の方は個人的には30週(CD5 Track1)あたりからラストに至る流れがサウンドスケープによる歳時記、冬の始まりから春の訪れまでを感じさせてくれるような流れになっているように聴こえ気に入っています。



え:得手 に 帆 ほ を 揚 げ(江戸)
得意なわざを発揮できる好機が到来し、調子に乗って事を行う・・・。そうですか・・・。ビル・ネルソンを思い出しました。Esotericのデラックス・エディション・シリーズって間違いなくアーティスト依存度が高いよね。打診したアーティスト側が大量に音源保存してれば箱が大きくなり、なければBBCやらラジオ音源ライヴつけて小さな葛籠で終わる。ビル・ネルソン、ルックスからして几帳面そうだと思ったら案の定。Be Bop Deluxeのデラックス・エディション・シリーズは痒いところに手が届く内容と御本人様のこだわりのニュー・ミックスでその充実ぶりは大したものだなぁ、と感心していましたが、まぁ、スタジオ・アルバム5作品は大きなボックスもあるだろうけど、『Live! In The Air Age』はCD3枚組くらいの小さいパッケージで終わりだろうと思ったら、まさかの最大規模ボックスで攻めてきちゃった。CDだけで15枚これにDVDが追加なんでもう大変。『Live! In The Air Age』制作のためにRolling Stonesのモービル・ユニット借りて録音したマスターを大放出という大盤振る舞いとなりました。結局、シリーズ全部付き合いましたが、個人的に期待した『Modern Music』が案外淡白で逆にあんまり期待しなかった『Drastic Plastic』が興味深かったです。ニューウェーヴの台頭で新型ビル・ネルソンに変貌を遂げようとするビル・ネルソン人格Aと実はギター・ヒーロー体質が顕著な旧人類型ロッカー、ビル・ネルソン人格Bのせめぎ合いが初出し音源に如実に現れており、凄く楽しいです。それほど好きではなかった『Drastic Plastic』に対するイメージが思い切り変わりました。

で、『Live! In The Air Age』の大箱ですが、思っていた以上に演奏能力高くて、再現力も一級品なのですが、大体毎公演、よりによってそこ間違えるという、お茶目なミスが発生しており、なんか吸血鬼みたいだよね、と思っていたビル・ネルソンに親しみを覚えました。



て:亭主の好きな赤烏帽子(江戸)
烏帽子は黒塗りが普通であるが、亭主が赤い烏帽子を好めば家族はそれに同調しなければならないということから一家の主人のいうことには従わなければならない、という大変に江戸時代っぽい格言に由来するそうです。今時こんなこと言ったら即、裁判だ、調停だって話になりかねないよねぇ。

この格言から連想されるのはピーター・ゲイブリエル時代のGenesis。ゲイブリエル在籍時のライヴ映像を見ていると、当時のプログレ界にあって最高峰の演奏精度を誇った楽器隊をさし置き亭主ゲイブリエルやりたい放題。亭主の妄想ワールドが行くところまで行っちゃった『The Lamb Lies Down On Broadway』制作時のすったもんだが、永らく燻っていた確執の火種に油を撒く形となり、ゲイブリエル脱退に発展。解散の危機を救ったフィル・コリンズ時代が始まったことは誰もが承知。

そのフィル・コリンズ期のGenesisもリユニオンを果たしたもののコロナ禍でそのツアーは1年延期。ようやく始まったと思ったらロンドン公演が来年3月に延期になったりと波乱は続いております。ツアーの模様はyouTubeやFLACダウンロード・サイト確認できますが、フィル・コリンズ、声が変わちゃったねぇ。全盛時の歌声は甘味と苦味半々だったのが、今は枯れちゃって塩辛い苦味が立った声質になっちゃいました。

ショウ構成は『Duke』以降のヒット曲に亭主がいた時代の代表曲を取り混ぜたもので、終盤の盛り上げは『Invisible Touch』と『We Can’t Dance』からのヒットに頼っているものの、ショウのキモとなっているのは1983年発表の『Genesis』。音楽シーンが思い切り浮ついていた83年にあって妙にダークな側面を秘めたアルバムで、当時は聴き流していたんですが、今年のツアーのライヴ音源聴いて、その軽くダークな色合いが今の時代にマッチしている印象を受けましたね。印象がガラッと変わりました。

もうひとつ気が付いたのは日によってセットリストは変わるのだろうけど、『Abacab』収録曲がハブられていること、なんでなんだろうね?

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あ:阿呆につける薬はない(大阪)
それも俺だ! 「炒豆(いりまめ)に花が咲く」のところでYesの『The Quest』のアートブック仕様盤買ったら中身はロジャー・ディーンのイラストじゃなくて爺さんたちのドアップ満載で悶絶体験をしてしまったにも関わらずエリック・クラプトン『The Lady In The Balcony: Lockdown Sessions』も大判のデラックス・エディションで買っちまった! 学習能力ゼロだわな。こっちだって全員爺さんだもの、爺さん写真の金太郎飴で再度悶絶でした。ブルーレイはクラプトンとジョージ・ハリソン命のうちの奥さんと見ましたが、奥さんの感想は「ため息が出るほど地味ねぇ・・・クラプトン、昔から顎が小さいと思っていたけど、歳とったら余計目立つわねぇ。それよりスティーヴ・ガット大丈夫なの?」だそうで・・・。

確かに枯れまくったパフォーマンスで、ここまで枯れると以前のサウンドには感じなかった鈍く光るツヤ(ツヤだよ艶、通夜じゃねぇって、変な変換するなよこの馬鹿ワープロ!縁起でもない)みたいなものが出てきて不思議な幸福感感じちゃいました。

曲は「Believe In Life」が良かったなぁ。オリジナルは『Reptile』収録。クラプトンのフォーク、クラシック、ジャズをサクッと混ぜてふんわり仕上げた曲って味があって、例えば『Unplugged』の「Signe」とか『Pilgrim』収録の「Circus」同様この曲のオリジナルも好きだったんだけど、「Believe In Life」は今回のヴァージョンの方がほんのり感と黄昏感が絶妙にブレンドされた雰囲気で好きですね。

Believe In Life(from『The Lady In The Balcony: Lockdown Sessions』)

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さ:竿の先に鈴(京都)
意味は騒がしいこと、おしゃべりなことの例えなのだそうですが、竿の先に鈴というけったいなヴィジュアルを考えると何故かKing Crimson時代のジェイミー・ミューアのパーカッションの壁を思い出してしまいます。当時のミューアの役割を現在のクリムゾンで担っているのがパット・マステロット。ドラムセットの傍にセットされたガラクタを並べたテーブルはかなりの見もの。こんなものまで使うのかといった感じの謎のおもちゃ、叩きすぎて元の形が判らない金属製の物体やらが散乱しております。

2021年ツアーでの「太陽と戦慄 パート1」はデヴィッド・クロスのヴァイオリン・ソロ・パートを除き可能な限りオリジナルの構成に近い形に戻したアレンジでしたが、マステロットが演奏中に赤くて細長い風船のようなものを頭上でブンブン振り回していた姿はかなりインパクトがありました。振り回すと奇妙な音が出る物体なのですが、名前が判らないのでその色と形状から筆者は「赤マムシ」と命名させていただきました。ステージ上ならプログレの結界内だから良いけど、いきなり道で「赤マムシ」振り回したら危ない外人だよね。



き:聞いて極楽見て地獄(江戸)
雑誌編集者時代の話です。とあるアーティストのインタビュー取材でLAに行った時のこと。記憶が定かではないのですが、91、2年のことだったと思います。確かRoxyだったと思うのですがThe Hootersを観に行ったらアンコールでスティーヴィー・ニックスのそっくりさんが登場。ヒラヒラの白レースに厚底ソールの白ブーツ、気合の入ったコスプレ、声もそっくりだが、記憶の中にあるスティーヴィー・ニックスとは似ても似つかぬ太め体型。いやぁ、アメリカのそっくりさんは凄いなぁ、と感心して見ているうちに、もしかしてこれは本物?となってきた。実際、御本人様だったのだが、あの太さは衝撃でありました。その後のFleetwood Macのツアーではキッチリと絞った体型に戻していましたが、あれはちょっとショックだったです。



ゆ:油断大敵(江戸・大阪)
昨年からのコロナ禍でおうち時間が増えたし、オンラインショッピングも一気に浸透したのでCDを始め音楽ソフトの売り上げは増え・・・・ません。逆です。収縮傾向に歯止めがかかりません。どこのレーベルもイニシャル出荷めっきり落ちています。CDなんかいつでも見つかると思うのは最早昔話か神話だと思った方がいいかと思います。最近、中古盤店行きました? 棚どうなってます? スカスカのところ増えてませんか? 油断大敵の時代が始まってますよ。一年の計は元旦にあり、2022年はみなさん「聴きたいと思った時が買い時」で行きましょう!



め:目の上の瘤(江戸・大阪)
有名なので説明は不要かと思います。ボケ〜っと考えていたらそういえばTOTOのお家騒動、スティーヴ・ルカサーがTOTOの名称使用権を巡ってジェフ・ポーカロ、マイク・ポーカロの未亡人から訴訟(著作権問題も絡んでいるみたいですね)を起こされたって話はその後どうなったんだろうね?今年の初めくらいに日本にTOTOを何度も招聘してきたUDO MUSICの関係者と話した時は「それ、今禁句になってます。ルカサー対ポーカロ一族泥沼状態みたいです」という話は聞いたのだけど、その後どうなっているんだろう? ルカサーはジェセフ・ウイリアムズと組んで去年の11月に行ったネット配信ライヴを今年『With A Little Help From My Friends』というタイトルでリリースしたのだけれど、このアルバムの収録曲がもう騒動を反映して徹底していますよね。デヴィッド・ペイチ、ボビー・キンボール、ジョセフ・ウイリアムズ、外部コンポーザー楽曲はOKだけどポーカロ絡みは排除と徹底しています。

ルカサーにとって目の上の瘤なのは訴訟を起こした未亡人たちではなく、彼女たちを焚きつけた弁護士なんだろうなぁ、と思います。エグい世界ですからねぇ。誰もが付け入る隙を伺っていて火のないところにガソリン撒いて火をつけるみたいなことが平気で起っちゃう国だからねぇ。

せっかくWithコロナの世界でバンドのツアーを再開させるためのやり方が確立されてきて2022年はツアー・ビジネスにとって新たな始まりの年になりそうな希望が見てきた中、TOTOのようなヴァリューもクオリティも高くエンタメ性も高いバンドが訴訟で燻っているっているのは全くもって勿体無い話です。



み:身から出た錆(江戸)
しかし、終わりが見えねぇな、今回。なんで、こんなに書いているのに終わらない? 現在、身から出た錆を身をもって体験しております。



し:知らぬが仏(江戸)
知れば腹が立ったり悩んだりするようなことでも、知らなければ平静な心でいられるということでこれはよく知られた言い回しですね。は〜い、つい先週ありました。12月22日発売の予定だった『McDonald & Giles』の紙ジャケット仕様盤、紙ジャケットの仕様が色校正・モックアップで確認したこちらの指定した形式になっていなかったため、急遽全ロット、ジャケット作り直しとなり2022年1月19日に発売延期となりました。久々の紙ジャケット仕様での発売、しかも旧ワーナー盤はアメリカ仕様のA式見開きジャケットでしたが、今回は初の英国盤仕様E式見開きということで楽しみにしていた方もいらっしゃるかと思います。申し訳ありません。

紙ジャケットの仕様を文字でうまく説明できるか不安ですが、こういう問題が起きた次第。『McDonald & Giles』の英アイランド盤って、見開きの背の部分がKing Crimson『Lizard』の初回盤と同じ仕様、通称ワイド・スパイン(通常の見開きジャケットより背幅が広い)と呼ばれるものが採用されています。『Lizard』の背文字が下から上に表記されているタイプのものです。この仕様は一度紙ジャケット化していますのでお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
 このワイド・スパイン・タイプはクリムゾン、McDonald & Gilesを出していたアイランド・レーベルでちらほら、B&Cレーベルの見開きジャケットは多め、Chicken Shack『Accept Chicken Shack』もこのタイプでしたがあまり浸透しませんでした。

E式紙ジャケットは基本、表1、4側(ジャケット表・裏)に折り返しの糊しろがありそれを内側に折り込んだ所にジャケット見開き部分が貼り付けてあります。これを上から見ていただくと、背の部分内側が半円状にラウンドしているのが分かります。ジャケットを開いた時にこのラウンド状の遊びというかマチの部分がないとうまく開かなくなるからです。ワイド・スパイン・タイプはこのラウンド部分がなく背の部分も糊付けされているわけです。そのため通常の見開きより背幅を広く取る必要が生じるのです。

アナログ盤時代にこのワイド・スパイン・タイプがあまり浸透しなかった理由は簡単で、背幅を広くとっても背の部分を貼り付けてしまうとどうしても見開き内側に無理が生じてシワが発生したり、背の貼り付け部分近く、貼り合わせ部分が浮いたり、剥がれたりすることが多発し、具合がよろしくなかったからです。

とはいえ、オリジナルのアナログ盤がワイド・スパイン・タイプを採用している以上、これを再現するのが紙ジャケット製作のキモとなります。うちは紙ジャケットを印刷・製造する印刷会社3社と契約していますが、このワイド・スパイン・タイプは3社の中では最も製造価格が高い会社しか製造できないため、製造費高いなぁ、と思いつつもそこに頼んだわけです。印刷工程が進み色校正・本紙構成見本から作ったモックアップまではこのワイド・スパイン・タイプがきちんと再現されていたのですが、納入されたサンプル盤は普通のE式見開き!高いのを承知でワイド・スパイン・タイプ製造可能な印刷会社を選んだ意味が全くなし!

分かりにくいと思うので、うちのハウスデザイナーK嬢が何が問題なのか理解できていない印刷会社担当に一目でわかるよう作った画像を添付しますのでご覧ください。

小さなことですが、日本製紙ジャケットはこういう細かい部分にも気を配ってきたからこそ世界最高レベルを実現できたんですね。ビジネス考えればそのまま出しちゃうのが吉だったんでしょうが、知ってしまった以上作り直ししか選択肢はありません。印刷会社のミスとはいえ、セットアップ済みで倉庫に入ったものを作り直すのは気が重く、どんよりしてきます。ホント、知らぬが仏、知らぬが花でしたねぇ・・・。



ゑ:縁の下の力持ち(大阪)
これは説明不要。クリムゾンが最後のツアーとか言われていたこともあり、そのせいか感慨深くなり、ここひと月くらい、これまで見たライヴのことを色々と思い出しています。今回いくつか書いてますよね。これは確か1999年Woodstock 30、Metallicaが出た時のWoodstock直前のこと。結局Woodstock 30への出演はキャンセルとなってしまったのですが、Mountainがレガシー枠で出演することになっており、そのウォームアップでマンハッタンのディスコでライヴを行うって告知があり行ってみたら、入り口で係のおねぇさんが「ごめんなさい、Mountainキャンセルなの、代わりのバンドはマーク・クラークのセッションとジョン・エントウィッスル&フレンズよ」。観るに決まっているじゃないですか。で、マーク・クラーク初体験だったんですが、キャラクター的にはフロントマン張るタイプでないことは見ていて感じたのですが、周りの演奏者立てるのがうまいのよ。ステージ捌きが巧みなのね。ベースのトーンも芯が太くて押しが強い。決して華がある声ではないけどヴォーカルも悪くない。ジョン・ハイズマンがColosseum、Tempestでこの人を重用し、人生最後のJCMでも起用したのも当然と思える強いインパクトを受けました。縁の下の力持ちと見た瞬間この人の顔が浮かびましたね。



ひ: 貧乏暇なし(江戸)
大阪版で「貧相の重ね食い」=貧乏で食べるものに困った者が、同時にたくさんの食べ物をたべることのたとえ。 又、いつもいいことが、ないのに、まとめていいことが起きてしまうことのたとえ、というミュージック・コレクターの性を端的に言い表した美味しい格言があるのですが、もうエンドレス原稿で頭の中が砂の惑星。まったく、毎日チェックしても全然欲しいものがアップされないなぁ、カケレコ、どうなってんのよ。なんて言っていても年に何回かは何もまとめて放出することはないだろう、御予算がぁ!という日があります。そういうことです。その日にために我らは「貧乏暇なし」で働かねばならない。そういうことです。お粗末なシメで申し訳ない。そういうことです。



も:門前の小僧習わぬ経を読む(江戸)
クリムゾンのマネージャーでDGMの社長、プロデューサー、エンジニアであるデヴィッド・シングルトンはThe Vicarというエイリアスを持っており、2013年には音楽・小説・コミック・映像をミックスしたプロジェクトを立ち上げ『The Vicar Songbook』をリリース。フリップ翁にお仕えするうち、まさに「習わぬ経を読む」こととなる。

本人はロンドンでマスコミ向けのローンチ・パーティを開くなど大々的にやった。当然日本もも参加するよね、と圧力かけられたが、海外出張するほどの予算取れずと返すと、そこからイジイジと「日本は何もしてくれない」と不幸のメールが山のように送られてきて、流石にインディーズ・レーベル界の東インド会社と言われるだけあってプレッシャーのかけ方がエグい堪らずギブアップ。急遽、The Vicar様のプロモ来日が実現。結果、筆者がロンドン出張する予算の3倍以上の出費となる。よって筆者の頭の中では「門前の小僧習わぬ経を読む」は「後悔先に立たず」と直結しているのであった。

しかし、2015年以降の来日時に会ってもシングルトンはThe VicarのVの字も言わなくなったが、俺は忘れてねぇぞ! 『The Vicar Songbook』の2はどうなったんだよ!



せ: 背に腹は代えられぬ(江戸)
こんな時代なので収入は下降線。CD買うのに予算計上が難しく、背に腹は代えられぬって感じで(使い方完全に間違っているけどね)アナログでも売るかと。ふーん、ジョニ・ミッチェルの『Blue』こんな値段で買い取るのとか雑誌広告見て、それってあるよなぁ、と探せばあった。アメリカ盤でジャケットも綺麗。でも盤を見てやめた。いつ買ったか全然覚えていないんだけど、プロモの白レーベル。勿体無いのでそのまま棚に戻す。問題はその後、ジョニ・ミッチェルのLP群の中にジョニのジャケットにしては変なものが1枚挟まっている。こんなところに混じっていたか、Tear Gasの1st『Piggy Go Getter』英Famousレーベル盤。アナログ・コレクターの方は分かると思いますが、『Piggy Go Getter』って米Paramaountは大して珍しくなく二束三文価値。でもイギリス盤は滅多に出ないのよ。レア盤で有名な2ndより出てこない。

Tear GasはRegal Zonophoneに移籍した出した2nd『Tear Gas』が70年代ブリティッシュ・ハード・ロックの名盤として人気が高く、バンドはアレックス・ハーヴェイと合体してThe Sensational Alex Harvey Bandになるわけですが、この1stはまだハード路線に切り替わる前のサイケ臭を残した上、フォーク・ロック方面にも色目を使った思い切り煮え切らないブリティッシュ・ロック。まるでけなしているように思えるかもしれませんが、直球よりもフォーク、スライダー、カットボールを好む英国マニアのみなさまには「サイケ臭」、「フォーク・ロック方面」、「煮え切らないブリティッシュ・ロック」と美味しいキーワードが目についたはず。Tear Gasは決して2ndだけじゃないのであります。

I’m Fallin’ Far Behind

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す:雀百まで踊り忘れぬ(京都)
おぉ!最後まできたぞ。踊り出したい気分じゃ! 何を聴こう? それじゃぁ、Average White Band、1980年発表『Shine』収録イケイケDiscoの名曲「Let’s Go Round Again」でいってみよう! いやぁ、この時代ならではの能天気な軽さが堪らないねぇ。でも演奏はさすがにうまいねぇ、と書きつつ、サビの部分で「Let’s Go Round Again, One More Time」って繰り返されるのはどうなんだろう・・・。

「もういっぺん行ってみよう!」・・・・・・さすがにそれはイヤです。

Let’s Go Round Again

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