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【ユーロ・レーベル探求 第ニ回】ARCANEレーベル~赤いサソリと黒のサソリ(赤サソリ編)

【第ニ回】「赤いサソリと黒のサソリ(赤サソリ編)」

寄稿:ike333さん

赤や緑のカップ麺の話ではありません。

ANGEのマネージメントJEAN-CLAUDE POGNAT氏が設立したレーベルであるARCANEとCRYPTOのロゴのことです。1974年にWEAのEURODISC傘下にARCANEを設立、1976年にCRYPTOとして独立しました(ディストリビューションはRCA)。

そして、前者のレコードのラベルはクリーム色っぽい白地に赤で、また、後者は黄色地に黒で、エレキギターにハサミを付けたサソリの様な図案がマークされています。このレーベルは、英・豪などの売れ筋バンドの仏国内発売で収入を上げつつ、フランスの新人の掘り起こしをしていました。その代表格が、ACRANEからデビューしたMONA LISAでありCARPE DIEMです。これらのバンドはCRYPTOになってから再発されましたが、PENTACLEはなぜか再発されなかったと思われます。

私が物心ついたときにはもうCRYPTOの時代、噂に高いPENTACLE探しの日々が続きました。高校生の時にたまたま井の頭線沿線のレコード屋さんで見かけたのですが2万5千円!、そんなの買えないとぼやいていたら、そのレコード屋のお兄さんが、こっそりカセットテープに録音してくれました(謝)。ということで、それ以来、PENTACLEの音楽は宝物、今、手元にあるチリチリ音の出るPENTACLEレコードも、赤サソリとともに、愛おしいものとなっています。

そこで、この「赤サソリ」のレーベルのアルバム達を簡単にご紹介します。

TANGERINE/VALERY BTESH

Arcaneで最初期に登場したのは女性ボーカリストValery Bteshをフロントに立てたフォークロックバンドのTANGERINEの『DE L’AUTLE COTE DE LA FORET…』”(1975)だと思われます。伊のCELESTEの様なフルートと淡いキーボードがポイントの、美しいアルバムで結構良い感じです。

2作目『MEMOIRE』(1976)はCRYPTOになってからリリースされたもので、Valery不在の普通のフォークロックとなってしまいます。TANGERINEから独立したValeryのソロ『REVVES CRISTAL』(1977) はフランス語の歌数曲を含む基本的に夢見系のフォークで捨てがたいものとなっています。

MONA LISA

そのTANGERINEと同時期に登場したのがDominique Le Guennecがシアトリカルなボーカルで歌いまくる、と言ってもパリの裏町のシャンソン酒場かなにかで演劇をやっているようなイメージのMONA LISAです。

ARCANE時代に2作発表していますが、『L’ESCAPADE』(1974)はかなり素人っぽいダークなアルバム、『GRIMACES』(1975)は一転しておもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドのアルバムです。


CRYPTOになってからピエロがバイオリンを弾くジャケットが素晴らしい、瑞々しいサウンドの傑作『LE PETIT VIOLON DE MR. GREGOIRE』(1977)、さらにパワーアップした少しグロいジャケットの代表作『AVANT QU’IL NE SOIT TROP TARD』(1978)と順調にアルバムを発表しました。Le Guennec氏がバンドを去った後に、F. Poulet (dr)がボーカルに転向し(GENESISみたい)ポップなロックのラストアルバム『VERS DEMAIN』(1979)を発表しています。



なお、1998年に突然MUSEAで活躍していたVersaillesとルゲネ氏によりMONA LISA名義で『DE L’OMBRE A ALA LUMIERE』、を発表していますがベルサイユの音です(このメンバーでライブアルバムも発表していますが、こちらは昔の曲もやっていて少し懐かしさが戻ってきます)。

PENTACLE

ARCANE3番目のアーティストがPENTACLE。アンジュのC.Decampsがプロデュースした唯一作『LA CLEF DES SONGES』(1975)は、ジャケこそ空中浮遊する鍵を抱いた坊さんが間抜けな感じですが、音楽自体はリズム隊もしっかりしていて、儚くもダークな音色のキーボード、しかし、メロディと歌がとてもシャンソン的で実に美しく雰囲気の良い傑作。愛聴盤です。

CARPE DIEM

4番目のアーティストはCARPE DIEM。『EN REGARDANT PASSER LE TEMPS』(1975)は、幻想的な白黒の城のジャケが素晴らしいし、音楽自体も、きわめてオリジナリティの高いものです。少しジャズっぽいリズム隊を基に、淡く同時にきらびやかな音色のキーボード、伸びやかなソプラノ・サックスと甘いトーンのギターのリードによる進行、さらに、わずかにもの悲しく、シャンソン的なボーカルが入ると感動もひとしおの大傑作。

2作目『CUEILLE LE JOUR』(1976)はCRYPTOから出ていますが、前作の延長線上にあるも、レコードB面は20分を越える大曲で淡々と演奏が続き徐々に盛り上がっていく渋い傑作アルバムです。

なお、このバンドは2作のみで解散しましたが、KeyのC.Truchiが80年代仏プログレの傑作アルバムを発表しているSTEP AHEADに一時期参加していたようです。ただし、唯一のアルバム(S/T)(1982)には残念ながら参加しておらず、(レコードにはクレジットされてませんが)彼の姉?妹?さんが似たような音色のキーボードを聴かせてくれます。

LITTLE BOB STORY

ARCANEから次ぎに登場したのが問題のLITTLE BOB STORY。BOBことRobert Piazzaが英語でロックンロール歌っています。デビューアルバム『HIGH TIME』(1975)のレコードを500円位で入手しましたが、(THE WHOには及びませんが)予想外に格好良かったというのが感想です。

その後、このバンドはCRYPTOからも数枚のアルバムを発表しています。(次回「黒サソリ編」へ続く)

【ユーロ・レーベル探求 第三回】「赤いサソリと黒のサソリ(黒サソリ編)」はこちら!
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ARCANEレーベル

ARCANEレーベル

TANGERINE

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TANGERINEの75年第1作。たおやかな響くアコギ爪弾きに女性ヴォーカルVALERYの美しいヴォーカル、それらを彩るフルートの音色が素晴らしいフォーク・ロックの名品。切なくも力強くしかしどこか拭えぬ翳りを持つその音楽性は、フランス産ならではの魅力に満ちています。

VALERY BTESH

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VALERYによる77年ソロ作。音楽性はTANGERINEを引き継ぐフォーク・ロックですが、VALERYの歌の魅力がより引き出された珠玉の逸品となっています。夢の世界のような淡い幻想を描きだす演奏に乗って、VALERYの透き通るような美声が何とも心地よく響く一曲です。

MONA LISA

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ANGEと並び称されるシアトリカルなフレンチ・プログレの代表格、74年デビュー作。若干音は軽いものの演奏自体はなかなか重厚で、全編自己陶酔気味に歌い上げるヴォーカルも相まって、フランス以外にはあり得ない耽美な世界観を作り上げています。

MONA LISA

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CRYPTOより77年に発表された3rdアルバム。瑞々しく繊細な音使いとシンフォニックな高揚感の両方が味わえる充実のアンサンブルと、エキセントリックな域に達するヴォーカル・パフォーマンスがこれまでになく冴え渡る傑作に仕上がっています。

PENTACLE

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ANGEのVo、C.DECAMPSプロデュースによる75年唯一作。アクの強いフレンチ・プログレ勢にあって、独特の儚さが漂うユーロ・プログレらしい異国的叙情美を湛えたフレンチ・シンフォを展開します。ヴォーカルのどこか物悲しく情感豊かに響く歌声も聴き所です。

CARPE DIEM

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キーボード、ギター、サックスが絡み合いながら進行する、しなやかなシンフォニック・ジャズ・ロックを繰り広げる75年作。高い芸術性を誇る美しき演奏から溢れ出てくるドラマティシズムが堪能できる点は、まさにユーロ・ロックならではの醍醐味と言えます。

CARPE DIEM

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前作における流麗なアンサンブルはそのままに、よりドラマティックな構成力が発揮されたCRYPTOより発表の76年作。こちらの21分に及ぶ大曲も、繊細さとダイナミズムが見事に同居する演奏の中にフランスらしい耽美さが濃厚に薫るユーロ・ロック・ファンには必殺と言える傑作組曲。

LITTLE BOB STORY

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プログレ的な音の厚みも仕掛けも一切無く、オーソドックスでスリージーなロックン・ロールを演奏するこのバンドも、ARCANEより世に出たバンドの一つ。こういうバンドもデビューさせてしまうあたり、単なるプログレ系レーベルとは言えない懐の深さが感じられませんでしょうか?

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