2014年9月11日 | カテゴリー:プログレ温故知新,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ温故知新
【定番】GREENSLADE-> 【新鋭】ALEX CARPANI
縦横無尽に駆け巡る多彩な鍵盤サウンドが痛快なキーボード・プログレをテーマに、英国を代表するキーボード・プログレ・バンドGREENSLADEの73年1stと、イタリア出身の新鋭キーボード奏者ALEX CARPANIによる10年作『ANCTUARY』を御紹介したいと思います。
プログレファン皆さんはキーボード・プログレと聞いて最初にどんなバンドを思い浮かべるでしょうか。やはり多くの方は英国五大プログレの一つとして知られるEL&Pの名前を出すのではないかと思います。しかしもしEL&Pと答える人が7割いたとするなら、あとの3割の中で最も多いのはこのGREENSLADEなのではないかでしょうか。それくらいキーボード・プログレとして実に個性的で印象深いサウンドを楽しませてくれるバンドなのです。
EL&Pでは時にGREG LAKEがギターを兼任していたのに対し、GREENSLADEはギターが一切鳴らない完全なるキーボード・プログレ。COLOSSEUM出身のDAVE GREENSLADEと実力派ブリティッシュロック・バンドWEB / SAMURAIに在籍したDAVE LAWSONという二人の技巧派キーボード奏者が織り成す、繊細で叙情的、英国らしいロマンティシズムで満たされたサウンドが魅力です。では本作からはこちらの2曲をお聴きいただきましょう。
弾けるように飛び出していくドライヴ感いっぱいのアンサンブルがカッコいい冒頭部から、たおやかで叙情味あふれるヴォーカル・パートへと見事な着地を決めるオープニング・ナンバー。そしてメランコリックなピアノソロ、エネルギッシュに疾走するオルガン、幽玄に立ち上るメロトロンなど、キーボード・プログレの真髄が余すことなく発揮された、一大キーボード絵巻と言うべきラスト・ナンバー。どちらもプログレ史に残る名曲ですよね。
このバンド、英国らしい気品と陽だまりのような温かみ、そしてLAWSONのソウルフルな熱いヴォーカルというユニークな取り合わせながら、そのバランスがほんと絶妙なんですよね。シンセサイザーは鳴っていませんが、ハモンド・オルガンを軸にエレピやメロトロンなどを華麗に操り織り上げられるサウンドは聴き手に地味な印象を一切与えません。
またキーボード・サウンドもさる事ながら、リズム・セクションも強力なメンツで固められている点に注目。ドラムはKING CRIMSONにも在籍した技巧派ANDY McCULLOCH、そしてベースはCOLOSSEUMであの超絶ドラマーJOHN HISEMANとリズム隊を組んでいたTONY REEVES。彼らの経歴をみただけで相当な実力の持ち主であることがわかりますよね。そんな猛者4人が揃ったこのバンド、当時としては経歴・実力ともに鉄壁の布陣と呼ぶべきメンバー構成だったのではないでしょうか。
キーボードが作り出すファンタジックな世界観とシャープでメリハリの効いたリズムとが一体となって、夢と現実の狭間をたゆたうようなサウンドを味わえる極上の一枚となっています。
さて、それでは新鋭の紹介へとまいりましょう。キーボードをメインに据えた新鋭プログレはそれこそ星の数ほどありますが、往年の名バンドたちに匹敵するものとなるとそうそう見つかるものでありません。そんな中で見つけたこれはっ・・という一枚は、イタリア出身のキーボード奏者ALEX CARPANIによる2010年発表の第2作『SANCTUARY』です。
ピアノ、シンセ、オルガンが波状攻撃のごとく押し寄せてくるEL&P型弾き倒しキーボード・サウンドが何ともたまらない厚みのあるシンフォニック・ロックとなっています。ヘヴィーなギターに絡む邪悪なトーンを滲ませたオルガンに、TARKUSを思い出すような野太い音色でうねるシンセサイザー、そしてその合間を軽やかに舞うピアノと、各種キーボードを見事に使いこなして展開される、絢爛豪華なキーボード・ワークが素晴らしい作品です。
そんな押し寄せるようなキーボードの迫力に耳を奪われがちですが、本作を単なる凡百のキーボード・プログレに終わらせないのが、イタリアン・ロックとしてのアイデンティティに根ざした、豊かな歌心とロマンティシズム溢れる曲展開。そのあたりは2曲目をお聴きいただければお分かりいただけると思います。
多彩なキーボード群が躍動する動の展開と、フルートや静謐なピアノが織りなすリリシズムを湛えた静の展開とを匠に配する作曲センスの高さも本作の特筆すべき点。これは00年以降のキーボード・プログレ作品としては最高峰に入る一枚ではないでしょうか。
昨年イタリアで行われたプログ・フェスに、ARTI、GOBLIN、IBDBら往年の名バンドに混じって出演していた彼ら。前述のバンドたちに比べても遜色のないパフォーマンスを披露していたのが印象的でした。今後の活躍にますます期待がかかるところですね。
今回はキーボード・プログレをテーマにお送りしてまいりました。一言にキーボード・プログレと言っても、多彩なキーボード群を引き倒すバンドから、繊細に音を重ねて独自の世界観を演出するバンドまで実に様々なタイプがありますよね。これだけ多彩なキーボード・プログレ、是非皆さんそれぞれの感性にぴったりとはまるキーボード・プログレ作品を探求してみていただきたいと思います。
ツイン・キーボードを擁した独自のサウンドで人気の高いグリーンスレイド、2001年の最新ライヴ。新曲のみならず往年の代表曲を存分に交えたセット・リストを全盛期に肉迫する熱演で聴かせるファン必聴のライヴ。音質もGOOD(国内盤:帯より)
COLOSSEUMのDave Greenslade、Tony Reeves、KING CRIMSONのAndrew McCulloch、SAMURAIのDave Lawsonというテクニシャンが集結し、ギターレスのダブル・キーボードの強みを生かしたプログレッシブ・ロックを聴かせたイギリスのグループの73年2nd。前作と布陣を同じくして製作された彼らの最高傑作と名高い本作は、前作からさらにダブル・キーボードのアプローチが洗練され、ピアノ、オルガン、アナログ・シンセサイザー、メロトロンが多彩な表情を見せる名盤です。メロディーに溢れるポップ・テイストにも磨きがかかり、デビュー作から一貫する英国然とした質感も健在。よりスケールアップした名演で迫る傑作となっています。
COLOSSEUMのDave Greenslade、Tony Reeves、KING CRIMSONのAndrew McCulloch、SAMURAIのDave Lawsonというテクニシャンが集結し、ギターレスのダブル・キーボードの強みを生かしたプログレッシブ・ロックを聴かせたイギリスのグループの73年デビュー作。彼らの作品の個性と言えるキーボードはピアノ、オルガン、メロトロンを中心にクラシカルな雰囲気ではなく、ブルージーないぶし銀のプレイを基本にポップ・テイストを乗せた素晴らしいアプローチを披露。スリリングなパフォーマンスも見せますが、アンサンブル主義のさじ加減が絶妙であり、英国的なマイルドさとファンタジアに溢れています。適度なユーモアを含んだ作風も個性的な、次作とあわせて名盤と言えるでしょう。
COLOSSEUMのDave Greenslade、Tony Reeves、KING CRIMSONのAndrew McCulloch、SAMURAIのDave Lawsonによって結成されたブリティッシュ・プログレ・グループ、74年作3rd。デビュー作からギターレスのダブル・キーボード体制を特徴としてきた彼らですが、本作ではCOLOSSEUMやHUMBLE PIEでおなじみのClem Clempsonや名セッション・プレイヤーAndy Robertといったいぶし銀のギタリスト達が一部の曲で参加。過去作と変わらず明るくファンタスティックな色合いを醸し出すGreenslade&Lawsonのキーボード群をたっぷりとフィーチャーしつつ、小粋なフュージョン・テイストやトラッド感のあるアコギの音色、クラシカルなヴァイオリンなど多彩な表現を取り入れて完成度の高いサウンドを聴かせています。荘厳なメロトロンやチャーチ・オルガンが轟々と響き渡ったり、縦横無尽に駆け巡るダブル・キーボードと手数の多いリズム隊がスリリングに絡み合うテクニカルなパートも披露しつつ、全体的には軽やかでどこかマイルドなユーモラスさが漂っているのがポイント。技巧的ながらも肩の張らない演奏が耳愉しい好盤です。
緩急メリハリのあるサウンドは、アルバム以上にドラマティックで、英国然とした叙情性とテクニカルな攻撃性という彼らの持つ2つの側面が一層際だっています。「DROWNING MAN」の抜群の展開に改めて涙!
元COLOSSEUMのDave Greensladeと元SAMURAIのDave Lawsonという2人のキーボーディストが在籍したブリティッシュ・プログレ・グループ、最終作となった75年作4th。オリジナル・ベーシストのTony Reevesが脱退し、Martin Brileyという新たなメンバーに代わっています。過去作に比べてやや軽快なハード・ポップ・テイストが増したサウンドに仕上がってはいますが、オルガンやシンセ、エレピにメロトロンなど多彩なキーボードを駆使した煌びやかでファンタスティックなアンサンブルは相変わらず。作品としてのまとまりは過去作に劣るものの、カラフルなアレンジが光るレベルの高いサウンドで楽しませてくれる好盤です。
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