2014年9月1日 | カテゴリー:プログレ温故知新,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ温故知新
【定番】SERU GIRAN-> 【新鋭】LA FINCA DE LAURENTO
南米特有のたおやかな詩情に溢れたアルゼンチン・プログレをテーマに、
SERU GIRANの2nd『LA GRASA DE LAS CAPITALES』と、新鋭からはLA FINCA DE LAURENTOの08年デビュー作『CIENCIA FILOSOFIA Y CONGA』をご紹介いたします。
アルゼンチンの音楽と言えばまずタンゴを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし実はこのアルゼンチン、南米の中でもとりわけロック・ミュージックが熱い国としても古くから知られているんです。そんなアルゼンチン・ロック界において、70年代~現代にわたって中心的人物として活躍するアーティストが、今回ご紹介するSERU GIRANのリーダー、チャーリー・ガルシアです。
1951年に生まれたチャーリー・ガルシアは、絶対音感の持ち主であったこともさることながら、若干12歳にして音楽教師の資格を得てしまうほどに豊かな音楽的才能に恵まれていたと言います。おそらくは日本においては神童と呼ばれるたぐいの人物だったのでしょうね。
彼は70年代初頭にフォーク・デュオSUI GENERISとしてデビュー、大人気を博しその後のキャリアへの弾みをつけました。ロック色の強いLA MAQUINA DE HACER PAJAROS時代を経て、それまでの集大成的な音楽性を持つグループとして78年に結成されたのがSERU GIRANです。
そのサウンドは、聴く者の誰をも惹きつける普遍性を持ったメロディ・ラインにラテン・ロック特有のノリの良さ、そしてシンフォニックな高揚感が見事に溶け合った、南米のプログレとして最も理想的な形と言ってもよいもので、本国において彼らは国民的人気を誇るバンドとなります。
79年に発表されたこの2ndでは前作の王道的南米シンフォニック・ロック路線から、クロスオーヴァー色を大胆に取り入れて陰影豊かなラテン・プログレへと進化したサウンドを聴かせてくれています。
では冒頭の一曲、ラテン調のメロディとパンチの効いた演奏に抜けるような爽やかさが加わるこの必殺のナンバーをどうぞ。
次はのちにパット・メセニー・グループで活躍することになるベーシスト/ヴォーカリストのペドロ・アズナール作、天使の歌声とも評される彼のヴォーカルと洗練を極めた大人の叙情が何とも素晴らしいこちらの一曲をお聴きいただきましょう。
SERU GIRANは90年代の再結成時の作品を除けば、4枚のオリジナル作を残しています。それぞれ多少ベクトルは違えど、いずれも甲乙つけがたい魅力を備えた名盤となっていますので、是非お聴きいただければと思います。
さて、近年このSERU GIRANの卓越したメロディ・センス、詩情溢れるサウンドを見事に受け継ぎ独自の音を練り上げた新鋭が登場していますので、ここでご紹介しなければならないでしょう。アルゼンチン出身、04年結成のグループLA FINCA DE LAURENTOです。
08年のデビュー作となる本作は、一聴してメロディに70年代アルゼンチン・ロックの薫りをふんだんに嗅ぎ取ることができる楽曲が軒を連ねます。そこに現代プログレらしいへヴィなギター・サウンドが加わり、アルゼンチンらしい詩情に満ちたメロディーとダイナミズム溢れる演奏を組み合わせた、言わば新古折衷と表現すべき内容となっています。
それではまずはこちらのオープニング・ナンバーをどうぞ。
ヘヴィなギターが轟々と鳴り響くおどろおどろしいアンサンブルを経て、これぞアルゼンチン!な詩情を湛えたキーボードが飛翔していく展開がたまりませんねぇ。キーボード奏者はまさにチャーリー・ガルシアの後継者といっても良いほどの逸材ではないでしょうか。
叙情美という点ではこちらの一曲も負けてません。哀愁たっぷりのキーボードソロ&ギターソロもバッチリ決まってますねぇ。ずばり名曲!
このグループは12年には2ndアルバムを発表、順調に活動を続けています。今後もこういう70年代アルゼンチン・ロックの味わい深いサウンドを取り入れたバンドがたくさん登場してくれるなら、南米プログレ・ファンとしては嬉しいところですよね。
さて、今回はアルゼンチン・ロックのテーマにお送りして参りましたがお楽しみいただけましたか?一筋縄ではいかない個性派たちが揃う南米プログレ・シーン、探求し甲斐が半端ではありませんよ。ぜひこれを機にプログレ秘境南米へ足を踏み入れてみてください!
チャーリー・ガルシア、デヴィッド・レボン、ペドロ・アズナール等によるアルゼンチンを代表するグループ。79年作の2ndアルバム。冒頭から、パット・メセニ・グループにも参加したペドロ・アズナールのベースがスピーディーにウネリを上げ、ガルシアのピアノが鍵盤の上を流れるように舞い、変調したシンセが天へと昇る!テクニカルなアンサンブルの合間に、南米らしい「詩情」溢れるメロディを違和感なく聴かせるところはさすがのセンス。2曲目以降も、クロスオーヴァーと「詩情」が見事に融合した佳曲揃い。各メンバーの溢れる個性とバンドとしての調和を絶妙にバランスさせるところは、さすがチャーリー・ガルシアでしょうか。1stに負けず劣らずの傑作。
アルゼンチン産新鋭シンフォ・グループ、08年のデビュー作に続く12年作2nd。タイトなリズムセクションとクールに音を刻むエレピに、ハードな唸りを上げるギターなど現代的なへヴィネスも加えたスリリングなアンサンブルと、南米的な詩情に満ちたメロディを切々と歌うヴォーカルパートとが絶妙なバランスを見せるメロディアス・ロック。軽やかに舞うフルートや劇的に響くピアノなどもアンサンブルに南米らしさを付与。その高い演奏力のみならず、陰影に富んだウェットな音使いなどからは、SERU GIRANの2nd辺りの作風をよりハードにしたかのような印象を受けます。アップテンポの曲ではアルゼンチン特有の洒落たポップセンスが聴かれるのも魅力。70年代南米シンフォからの影響を現代的なサウンドによって見事に昇華した力作です。(レーベル管理上の問題で、ケースツメ跡が付いております。予めご了承ください。)
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!