2019年4月18日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
こんにちは。スタッフ増田です。
ジャズ由来のテクニカルなアンサンブルとロックの熱量がぶつかり合った、華麗なるブリティッシュ・ジャズ・ロック。
その元祖と言えば69年の名作『VALENTYNE SUITE』を生んだCOLOSSEUMですが、彼ら以外にも英国らしい叙情がたっぷり詰まったジャズ・ロック・バンドがまだまだ居ますよ。
SOFT MACHINEをはじめとするカンタベリー・ロックについては以下の記事などで度々紹介しておりますので、今回はカンタベリー以外のディープでニッチなバンドをご紹介してまいりましょう!
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ブリティッシュ・ジャズ・ロックの誕生について詳しく知りたいと言う方はこちらも是非↓
まずはジョン・ハイズマン、デイヴ・クレムソン、デイヴ・グリーンスレイドらによって結成されたジャズ・ロックの代表的バンド、解散間際の71年に録音されたライヴ盤。重量級のドラムにむせぶサックス、ソウルフルなヴォーカル・・・すさまじい一体感とダイナミズム。当時の英国で屈指と言える彼らの実力が堪能できる傑作!
ロック・サイドからスリリングに楽器陣が火花散らすジャズへと接近したCOLOSSEUMに対して、ブリティッシュ・モダン・ジャズの領域にロックの手法を取り入れていったのがトランペット奏者Ian Carr率いるNUCLEUS。そんな彼らが70~75年にVertigoよりリリースした全スタジオ作を網羅した6枚組ボックスセットが先日入荷いたしました!
さて、そんな英ジャズ・ロックの名手COLOSSEUMとNUCLEUSを輩出したのが名アンダーグラウンド・レーベルVertigo。という訳で次はVertigo発のブリティッシュ・ジャズ・ロック盤をご紹介いたしましょう。
不気味なキーフジャケ、ヘヴィさと淡い叙情性が共存したブラスとオルガンのアンサンブル…。名key奏者マンフレッド・マンが放つ、「これぞVertigo」な怪しい香りを放つ70年の英国ジャズ・ロック名盤!
ジャケは秘宝感漂ってますが、初期ソフツを思わせるアヴァンギャルドさと流麗なスピード感を併せ持つサウンドは文句なしにクール!英Vertigo屈指のレア・ジャズ・ロック、71年作。
Vertigoレーベルの名作についてはこちらもチェック!
その他にも、忘れてはならない英ジャズ・ロックの名バンドがこちら!
COLOSSEUMやNUCLEUSに比べると影は薄いけど、実力は劣らぬ名グループがIF!グルーヴィー&ソウルフルなアンサンブルのそこかしこからしたたり落ちる、英国らしい陰影と叙情美。まさにシカゴやBS&Tに対する英国からの回答!
ヒロシマ~、ナガサ~キ~のポエトリー・リーディングではじまる英ジャズ・ロックと言えば? 早いパッセージのシャープなリズム隊、英国らしく淡くむせぶ管楽器。演奏の強度、叙情性ともにハイ・レベル!
知名度はちょっと落ちるけど、英国ジャズ・ロック・ファンなら要チェックの作品もご紹介してまいりましょう。
キレのあるサックス、歪んだギターやフルートが粘っこく重厚~に絡み合うサウンドがいいなあ。ハード・ロック、ジャズ、フォーク、R&Bをごった煮にしたハード&メロウな味わい深い英国ジャズ・ロック、70年唯一作。
プロデビュー翌年のジョン・ウェットンが、早くもベースをブイブイ言わせてるブラス・ロック・バンドと言えば?ギターは元コロシアムのJ.リザーランド。アグレッシヴな演奏とポップでキャッチーなメロディがたまらない71年唯一作!
ギターレスながら、ギター並に主張激しく演奏をリードするベースの物凄いこと!攻撃的なサックスや渋いフルート、ブルージーなヴォーカルとのアンサンブルも最高だし、この英国ジャズ・ロック・トリオは痺れます…。73年作。
エネルギッシュでアグレッシヴなジャズ・ロックもいいけど、メロウでムーディーな大人のジャズ・ロックを聴かせるバンドもいいですよね。Mark-Almondで活躍したkey奏者らが結成したグループ、74年作2nd。英国的な淡い陰影が滲むエレピ、太く存在感あるギター、熱くブロウするサックス・・・職人的と言うべきセンスと技巧に唸らされる名品。
こちらは後にMark-Almondで活躍するサックス奏者による69年の初リーダー作。プロデュースは英国ブルース・ロックの立役者としておなじみのマイク・ヴァーノン。ふくよかでグルーヴィーなリズム隊、くすんだ色合いのフルート、ブイブイと逞しく鳴り響くホーン。か、かっこいい・・・。
50年代レトロSF映画のパッケージ風のダサジャケットがマイナー・プログレ・ファンの心をくすぐる76年の英ジャズ・ロック作。ほう、マンダラバンドの2ndに参加するサックス奏者によるバンドなのかぁ。クールなサックスのプレイを軸とするイギリスらしい幻想感と憂いを帯びたサウンドが◎!
こちらも76年作。無名も無名だけど、カンタベリー・ロックやジェントル・ジャイアントを彷彿させる捻りあるセンスと圧倒的なテクニックで展開する技ありジャズ・ロック盤。どの曲も緻密に組み上げられた手工芸品のような完成度を誇っていて、こりゃ素晴らし~!
アルティ・エ・メスティエリ彷彿のスピードとテクニック、そしてカンタベリー・ロックに通じる柔らかくしなやかな音色使い…。両者が完璧に調和したこんな凄いジャズ・ロックが77年のイギリスに存在したなんて!ずばり全ジャズ・ロック・ファン必聴作。
71年リリースのライヴ盤で、通算で4枚目となるラスト・アルバム。スタジオ盤でのダイナミズムがさらに増幅された演奏はただただ圧巻。ジョン・ハイズマンの超重量級でいてシャープな怒涛のドラム、ディック・ヘクストール=スミスの熱すぎるサックス、デイヴ・クレムソンの渾身のブルース・ギター、デイヴ・グリーンスレイドの淡くむせぶハモンド・オルガン、そして、クリス・ファーロウのソウルフルなヴォーカル。すさまじい一体感とダイナミズム。間違いなく当時の英国で屈指と言える実力派だったことでしょう。傑作です。
1974年に英ブリストルで結成、2人の管楽器奏者を擁する7人組ジャズ・ロック・バンドによる77年の唯一作。このサウンド、ずばり「アルティ・エ・メスティエリ meets カンタベリー・ロック」!手数多くも精密に刻む技巧的なドラミング&ベースが作り出すタイトかつスピーディなリズムに乗って、流れるように快速フレーズを繰り出すギター、ふわりとファンタジックな音色を紡ぐエレピ&シンセ、そして艶のあるしなやかな音色で駆け抜けるフルート&サックスが躍動。アルティばりのスピードとテクニックでひた走るテクニカル・ジャズ・ロックに、カンタベリー風の優雅で芳醇な管楽器群を重ねたこのアンサンブル、ジャズ・ロック然とした強度と、柔らかく軽やかなタッチが見事に一体となっていて、もうとにかく素晴らしすぎます。アルバム後半で聴けるアコースティック・ギターをメインとする地中海的エキゾチズム薫るアンサンブルも極上。こんな大変な傑作がまだイギリスにあったなんて!と驚かずにはいられない逸品です。
70年にDawnレーベルよりリリースされた唯一作。サックス、オーボエ、フルートなど管楽器をフィーチャー。ハード・ロック、ジャズ、フォーク、R&Bをごった煮にしたハード&メロウな味わい深いジャズ・ロックを聴かせています。哀愁のメロディー&ハーモニーも印象的。名作。
71年にVertigoレーベルよりリリースされた唯一作。サックス、フルートの軽やかなタッチの演奏が心地よい、洗練されたジャズ・ロック。Vertigoレーベルというと、けだるいサウンドが特徴のグループが多いですが、そういった雰囲気は無く、クールななサウンドが持ち味。
アイルランド出身、ギター、キーボード、ベース、ドラムの4人からなるプログレ/ジャズ・ロック・グループ、76年の唯一作。安定感あるリズムと流れるようなタッチのギター&エレピが紡ぐ端正なジャズ・ロックがベースとなっていますが、その音楽性は実に多彩。77年に唯一作を残した美声女性SSW、Rosemarie Taylorをフィーチャーしたカンタベリー・ロックに通じる柔らかくロマンチックな3曲目、GGのケリー・ミネアの作風を思わせる浮遊感あるプログレ・ナンバー、バグパイプ風のキーボードのプレイがカッコいいアイリッシュ風味香るテクニカル・ジャズ・ロックなど、バラエティに富みつつもどの曲も緻密に組み上げられた手工芸品のような完成度を誇っており実に素晴らしいです。ラストは初期GGのアルバムに入っていてもおかしくないほどの凝りに凝った展開とコーラスに彩られたナンバーでハイライトの一つ。底知れぬ技巧と捻りあるユニークな音楽センスを備えたグループによる名盤です。
Ian Carrを中心とするブリティッシュ・ジャズ・ロックの代表的バンドNUCLEUS。彼らがVertigoよりリリースした71年作『ELASTIC ROCK』から75年作『ALLEY CAT』に至る8スタジオ作品(IAN CARR WITH NUCLEUS名義を含む)にIan Carrの72年ソロ作『BELLADONNA』を加えた9作品を収録。英国ジャズ・ロック・シーンに多大な影響を及ぼした彼らの軌跡を知るにはうってつけの一枚です。
6枚組ボックス、各CDはペーパーケース・ブックレット付仕様、19年デジタル・リマスター
盤質:傷あり
状態:良好
軽微なスレあり、軽微な汚れあり
マンダラバンドの2ndに参加するサックス奏者Phil Chapmanや、後にセッション・ミュージシャンとして数多くの名ジャズ・プレイヤーと共演するドラム/パーカッション奏者のDave Hassellが在籍したイギリスのプログレ・バンド。76年唯一作。時にパーカッションをフリーフォームに叩いては空間を埋め、時にタイト&シャープなドラミングでアンサンブルを引き締めるリズムを土台に、スペーシーかつメロディアスなエレピのバッキングが色彩を放ち、その上でサックスが流麗なリードを次々にキメていくスタイルのジャズ・ロックが持ち味。サックスとキーボードがミニマルなキメのフレーズを炸裂するところは、ソフト・マシーン『6th』あたりのサウンドも彷彿させます。
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