2019年3月5日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
いよいよ1週間後に迫ったWISHBONE ASHの8年ぶりとなる来日公演(3/16、17@クラブチッタ)。
それを記念して、今回はツイン・リード・ギターの筆頭格と言える英国ハード・ロック・バンド、WISHBONE ASHを特集いたします!
WISHBONE ASHは69年にベーシストのマーティン・ターナーとドラマーのスティーブ・アプトンにより結成された英国のグループ。最初期はマーティンの弟をギタリストに迎えトリオで活動していましたが、彼が脱退してしまったためバンドはオーディションでギタリストとキーボーディストを募集。その結果二人のギタリスト、アンディ・パウエルとテッド・ターナーが最終候補に残り、「じゃあ二人とも加入させてしまおう」という経緯で誕生したのが彼らの特徴的な”ツイン・リード・ギター”体制でした。
彼らは結成して一年も経たずにDEEP PURPLEのリッチー・ブラックモアにそのサウンドを買われ、彼の薦めで70年にMCAレーベルからデビューを果たします。72年には最高傑作の呼び声高い3rdアルバム『ARGUS』をリリースし、UKアルバムチャートで3位を獲得するなど快進を遂げました。
左右に配された二本のギターが時に熱く火花を散らし、時に緻密に絡み合ってハーモニーを生み出す。後のNWBHMやHR/HMにも多大なる影響を及ぼしたWISHBONE ASHのツイン・ギター・サウンドですが、決して彼らが当時このフォーマットの先駆者だった訳ではありません。米国では西海岸のALLMAN BROTHERS BANDやGRATEFUL DEADが既にツイン・リード体制のバンドとして誕生しており、また英国でもYARDBIRDSに在籍していたジミー・ペイジ&ジェフ・ベックが「Happenings Ten Years Time Ago」などでツイン・リード・スタイルを披露しています。
しかしWISHBONE ASHの独自の強みは、「様式美」とも言える計算されたハモりの美しさ。米国西海岸のGRATEFUL DEADやALLMAN BROTHERSらはライヴで長時間のジャムを展開するようにアドリブを主体としていますが、WISHBONE ASHの場合は格調高くドラマチックな旋律美、二つのギターによる掛け合いなど、当時の英国のアート・ロック〜プログレに通ずるクラシカルな構築性も取り入れているのが特徴です。この彼らの作風が、後のHR/HMにも繋がっていくツイン・リード・スタイルを世に浸透させるきっかけとなった事は間違いないでしょう。
さてそんな彼らの今回の来日公演ですが、何と言っても目玉は代表作『ARGUS』の完全再現!結成から50年に渡り現役でバンドを支え続けるアンディ・パウエルを基軸に、前回来日より引き続き参加のボブ・スキート(Ba)とジョセフ・クラブツリー(Dr)、そして2017年に加入した新ギタリストのマーク・エイブラハムズの4名によって紡がれる新たな『ARGUS』は実に期待大です。では、最後にそんな『ARGUS』から数曲をピックアップいたしましょう。
まずはT3「Blowin’ Free」。
左右チャンネルのギターが奏でる軽快なイントロにゴリゴリと力強く刻まれるベース、そして米国のCSN&Yも彷彿とさせる爽やかさと英国的な叙情性を兼ね備えたヴォーカル&コーラス。勢いよく突き進みつつも各パートは繊細に折り重なり何層ものハーモニーを紡いでいて、そのバランスが本当に絶妙ですよね。特にラストの緻密に重なり合っていくギター・ワークはもはや芸術品。
アルバムの中でも特にロック史に残すべき名曲と言えばこの「Warrior」ですよね!
片側のチャンネルからキレのあるリフが流れ、もう片方からギター・ソロがアグレッシヴに切り込んでくるというイントロ、そして静謐なパートを経て徐々に力強いラストへと向かっていく起伏の付いた展開も印象的ながら、やはり圧巻はツイン・ギター、そしてヴォーカル&コーラスが奏でる繊細な「和声」の美しさ。
またきっちりと決められた場面で切り込むギターのハモリや叙情的な歌メロなど、これでもかと心揺さぶる哀愁のフレーズもたまりません。これぞ後のNWOBHMやHR/HMに受け継がれてゆく「様式美」ですね。
アルバムのラストを飾るのが壮大かつ哀愁漂う名曲「Throw Down The Sword」。RENAISSANCEのkey奏者ジョン・タウトがゲストで参加し、作品を締めくくるにふさわしい重厚な奥行のあるサウンドを作り上げています。
二本のギターが一音一音踏み締めるように紡ぐイントロ、寂寥感に満ちたヴォーカルのメロディ、そしてクライマックスで左右チャンネルからこれでもかと流れ出すドラマチックな「泣き」のギターソロ。アルバム屈指であり、同時に英国ロック屈指の美しさとも言える、圧巻のナンバーです。
大半の楽曲が5、6分以上と長尺ながら、フォーク・ロックのような美しいメロディとハーモニー、そして二本のエレキ・ギターのダイナミックなプレイを駆使して聴き手の心を鷲掴みにする傑作『ARGUS』。ハード・ロックの枠に収まらぬスケールと繊細さを併せ持った、決して色褪せることない英国ロックの金字塔ですね。
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