2018年12月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ増田です。いよいよ2018年も残すところわずかですね・・・。
予報によると、年末にかけて全国的に寒さが厳しくなっていくとか。
今回は、そんな空気張り詰める冬にこそ楽しみたいプログレ作品をカケレコ棚よりチョイスいたしました。どうぞお楽しみ下さい♪
まずは英国より、アニー・ハズラムが加入した新生ルネッサンスの3rdにあたる74年作。前作「燃ゆる灰」で作り上げた優美なシンフォニック・サウンドにさらに磨きをかけ、より幻想的かつスケールの大きい音世界を展開しています。特に「アルビノーニのアダージョ」を原曲とする「冷たい世界」から、最終曲「母なるロシア」にかけての荘厳さといったら!吹雪舞う美しくも険しい氷の大地が目に浮かんできます。
イギリスの次はアメリカから、米国のシンフォ・グループASIAの前身バンドの76年唯一作。秘宝感漂うジャケ通り、繊細なアコギにメロトロンがこれでもかと響き渡る幻想性たっぷりのサウンドを聴かせています。かつ合間にはアメリカらしいキャッチーなメロディを伴って突き進む痛快なプログレ・ハード曲もあって、バランスよく構成された米プログレの隠れ好盤。
次はフランスから75年の名作。ギターやヴァイオリンがスリリングに畳みかけるKING CRIMSONばりのパートもあれど、冷ややかなシンセやフルートが醸し出す幻想色が凶暴性を柔らかく包み込んでいて、実にファンタスティック。
同じくフランスから、フレンチ・シンフォの代表格PULSARのメンバーが結成したグループの17年作。PULSARにも通ずるひんやりとした浮遊感ある音像と、キャメル的幻想美が一体となったドリーミーなシンフォニック・ロック!清楚で透明感あふれる女性ヴォーカルもサウンドにマッチしています。
フランス語圏といことで、次はカナダはケべックから。これ、02年作なの!?メロトロンをバックに柔らかく舞うフルートやリコーダー、どこまでもリリカルなフレーズを紡ぎ出す煌びやかなギターやシンセ。ジェネシスやイエスからの影響を感じる「動」のパートと、PFMのように優美で幻想的な「静」のパートとが織り成す、文句なしの叙情シンフォ一級品。
PFMが出てきたので次はイタリアから。PFMでも知られる名シンガー率いるグループ、43年ぶりの新作となった17年作3rd!気高く鳴るピアノに煌めくアコギ、美しく躍動する弦楽器に熱く劇的なヴォーカル。力強くも繊細さとクラシカルな優美さを兼ね備えたサウンドはそのままに、よりまろやかな円熟味が増していて、暖炉の前なんかでついジッと聴き入りたくなってしまいます。
冬と言ったら北欧でしょ、ということで、北欧の暗い森の奥から聴こえてきそうなこの作品をご紹介。ノルウェーのデュオによる17年作なのですが、例えるなら土臭さと哀愁たっぷりのANGLAGARD!?北欧の薄暗く神秘的な森を想起させるミスティックかつミステリアスな世界観を見事に描き出していて、北欧プログレファンはたまりません。
最後はさらに北から、グリーンランドのロックでお別れいたしましょう。キレのあるギターやどこか抜けたサックスが綴る、暖かくも哀愁たっぷりの旋律がたまらないなあ。遠い北の大地に思いを馳せながら聴きたい、愛すべき77年の名作。
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『雪景色にぴったりの幻想プログレ紀行』と題しまして、透明感あるファンタスティックでリリカルな作品を求めて、世界中をご案内!
YARDBIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は74年にリリースされた3rd。前作「燃ゆる灰」で作り上げた優美なシンフォニック・サウンドにさらに磨きをかけ、また、バンドのプロダクションに大いに貢献してきたMichael Dunfordがついに正式加入。「アルビノーニのアダージョ」を取り上げた「冷たい世界」や前作には無かったスケール感を持つ「母なるロシア」などを収録し、バンドは一気にその人気を不動のものとします。
ANGEのマネージャーが設立したCryptoレーベルよりデビューし、フランスらしい耽美な幻想色を持ち、緊張感を持たせながら浮世離れしたファンタジックなサウンドを作り出したグループの75年デビュー作。各種浮遊感のあるエフェクトを駆使しながら独特のサイケデリックな質感を漂わせ、シンフォニックな味わいを感じさせるジャズ・ロックアンサンブルを聴かせます。KING CRIMSONを髣髴とさせるダークな変拍子なども登場し肉感的に迫るような局面もありますが、KING CRIMSONのようにハードに聴こえさせないのは前に押し出されたサックス、フルートの流れるような幻想色。冷たい狂気を内包させた名盤と言えるでしょう。
70年代中期にはPFMのヴォーカリストとして活躍、Mangala Vallisをはじめ近年のプログレ・シーンにも積極的に関わるレジェンドBernardo Lanzettiが70年代前半に率いたバンド。2nd『MASS-MEDIA STARS』より、43年ぶりに届けられた17年3rdアルバム!Lanzettiとリズム隊の2人というオリジナル・メンバー3人による復活作で、ギターや一部キーボードなどはゲスト・ミュージシャンが担当。ピアノが気品高く鳴らされ、アコースティックギターが煌めき、弦楽が美しく躍動する、実にイタリアン・ロックらしいたおやかなサウンドが溢れ出す1曲目から早くも感動してしまいます。P.ガブリエルに似るアクが強めな声質が特徴のLanzettiのヴォーカルも絶好調で、クラシカルな弦楽に映える厳かな歌唱から、リズミカルでハードなナンバーで聴かせる張りのあるパワフルな歌唱まで、存在感たっぷりに歌い上げていて伊ロック・ファンなら胸が熱くなること必至。ギターとキーボードがテクニカルに入り組む、現代的に洗練された切れのあるアンサンブルを軸にしますが、1曲目で聴けたPFMにも通じるたおやかな地中海エッセンスが芳醇に全体へと行き渡っていて、70年代の彼らの面影を浮かび上がらせます。5曲目「Rain Drops」は英語で歌われる叙情溢れる粛々と美しいバラード・ナンバーで、ちょっぴり初期クリムゾンに似ていると思ったら、作詞はなんとPete Sinfield。曲も意識的に寄せているのかもしれません。43年という歳月を経たとは思えない、力強くも優雅なイタリアン・ロックが詰まった名品に仕上がっています。これは見事な復活作!
マルチ・プレイヤーのHakon OftungとドラマーKristian Frolandによって2014年に結成されたノルウェー出身の新鋭シンフォ・デュオ、通算4作目となる17年作。このサウンド、例えるなら緊張感をやや緩和して土臭さと哀愁を加えたANGLAGARD!北欧の薄暗く神秘的な森を想起させるミスティックかつミステリアスな世界観を見事描き出していて、北欧ファンにはたまらないはず。ヴィンテージトーンで湧き上がるオルガン、ひんやりしたシンセ、クールさと激情を併せ持つ技巧的なギター、妖しく囁くフルート、そしてうっすらとたなびくメロトロン…。ドラム以外はマルチ・プレイヤーのHakonが演奏していますが、バンド・アンサンブルのような呼吸を感じさせる演奏が素晴らしい。太古の呪文のようなノルウェー語の響きも雰囲気抜群です。一方フルートや歪んだギターをメインに泥臭く畳み掛けるパートはJETHRO TULLも彷彿。ANGLAGARDファンなら一聴の価値ありの北欧らしさ満点のシンフォ好盤!
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