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メロイック・サインの布教者「ロニー・ジェイムズ・ディオ」が在籍したバンド『ELF』の作品を今聴き直そう♪

カケレコのユモトです。

よくヘヴィ・メタルのライヴやロック・フェスで見かけるこの指のサインですがご存知でしょうか。

これは「メロイック・サイン」といって「角」を表す指の形です。

魔除け等の意味があるらしいですが、本当のところはよくわからず。でも、これを(無意識に)広めていったのはハード・ロック/ヘヴィ・メタルのヴォーカリスト「ロニー・ジェイムズ・ディオ」であることは、メタル・ファン、ロック・ファンなら知る人も多いはず。ほかには「デビル・サイン」と呼んだり、欧米では「コルナ」と呼んだりします。

ロニー曰く、ロニーのおばあちゃんがやっていた呪いをかけるサインだったそうで、本気で呪うほどの意味はないでしょうが、おまじないみたいなものだったのでしょう。

使い方としては、例えば写真を撮るとき、パンクスは中指を立て、

ヤンキーはVサイン、

メタラーはメロイック・サインをするといった感じで。

あ、Vサインのひとのはピース・サインでした。

それはさておき、声量あるハイトーン・ヴォーカルで、レインボー、ブラック・サバス、ヘヴン・アンド・ヘル、そしてDIOと、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルのバンドを渡り歩き、巷では「Godfather of Heavy Metal」と評される彼ですが、ブレークしたのはディープ・パープル解散でひとりになったギターのリッチー・ブラックモアが、彼を誘って結成したレインボーでのこと。そこから輝かしい音楽遍歴が始まるのですが、それ以前は地元ニューヨークのローカル・バンドのヴォーカル兼ベーシストでした。

そのバンドは『ELF』(エルフ)

このバンドの存在は、ハード・ロック・ファン、オールド・ロック・ファンには周知の事実かもしれませんが、実際にアルバムを所有して聴くほどのロック・リスナーはそれほど多くないのではないでしょうか。

でも、これがけっこう良いのです。だってへヴィ・メタの人でしょ?との偏見など取り去って素直に聴けば、その楽しさと出来のよさに目から鱗でしょう。

そんなELFの作品をご紹介します。

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「ELF」は1967年にニューヨークで結成したハード・ロック・バンド。メンバーはヴォーカル/ベースのロニーのほか、ギター、キーボード、ドラムスの4人(後にベースを入れて5人)。この頃ロニーは本名のロナルド・パダヴォナを名乗っていました。

『ELF / ELF』(1972)

72年作ファースト・アルバムの『ELF』です。
彼らの演奏を、ディープ・パープルのイアン・ペイスとロジャー・グローヴァーが観て気に入り、プロデュースを名乗り出てファースト・アルバムが制作されることになったのですが、リリース元はパープル・レコーズ。ここからディープ・パープル人脈との浅からぬ関係・因縁が始まります。作品完成後、ディープ・パープルのアメリカ・ツアーのサポートを務めました。

それでは、ファーストの1曲目「Hoochie Koochie Lady」をお聴きください。

ちょっと待った! えっ?フーチー・クーチーって? 

ELFにいわゆるハード・ロックを期待してはいけません。このアルバムに収録されているのはどれもホンキートンク・ピアノ大活躍のカントリー・ロック、ブルース、そしてロックンロールなのです。

「Hoochie Koochie Lady」

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ファンキーなピアノに若々しい張りのあるロニーのヴォーカル。ブギウギなハッピー・チューンです。

3曲目のNever Moreは流麗なピアノをバックに、ロニーが朗々と歌うドラマティックな佳曲。

「Never More」

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ちなみにジャケットはエルフ(ヨーロッパの神話を起源とする妖精種族)に仮装したロニー。ファンの間では最高に評判が悪いです。

セカンド・アルバム『Carolina County Ball』はロジャー・グローヴァーの単独プロデュース。今度はパープルのイギリス・ツアーに参加。知名度を上げましたが、さらにパープル人脈にがんじがらめになって行きます。

『Carolina County Ball』(1974)

「Carolina County Ball」

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なにか既視感ならぬ既聴感あるなあ。前作と同様、アルバムはブギウギ、ノリノリなロックンロールで始まります。ファーストの1曲目よりはノリがルーズですが。

「Rainbow」

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曲名からして、なにかを予知しているかのようですが、エコー控えめでロウなヴォーカルと、ドライブするベースが印象的。そしてゴスペル調のコーラスが華をそえます。レコードで聴くならB面の白眉でしょう。

この後、ELFは遂に御大リッチー・ブラックモアとの関係を強めていくことになります。

『Trying to Burn the Sun』(1975)

サードアルバム『Trying to Burn the Sun』は、再びロジャー・グローヴァーのプロデュース。セカンドからロニーはベースを手放し、ヴォーカルに専念しています。なにかジャケットがハード・ロック/メタルっぽいなあ。

「Black Swampy Water」

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アルバム1曲目は今回もノリの良いナンバー。しかし今までよりギターの音が前に出てる?

このアルバムにリッチー・ブラックモアが参加しているといううわさが当時出ていましたが、その根拠はギターのバランスが以前より大きいことではないでしょうか。さらにギターソロのパートもけっこうあり、ピアノの存在感に負けていません。

例えばこの曲とか。

「When She Smiles」

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しかしながら、後にロニーはインタヴューで、リッチーのアルバム参加を完全に否定しています。長いパープルとのツアーのため、サウンドがパープル寄りになっていったということでしょうか。

リッチー・ブラックモアは74年のパープルのアメリカ公演中止のブランク期間に、ソロ作品としてELFとレコーディングに入ります。あまりに出来が良かったため、彼はELFと新バンドを結成することを決意、気持ちの温度差の出てきたパープルから脱退しました。

そのままELFのメンバーたちを自分のバンドに迎えて吸収。そして「Ritchie Blackmore’s Rainbow」をリリース。

『Ritchie Blackmore’s Rainbow』(1975)

しかしレインボーがツアーに出る前に、ロニーを除く元ELFメンバーは解雇となるわけでありました。なんというか…ひどい。

最後に「Ritchie Blackmore’s Rainbow」収録、リッチーがレインボーを結成するきっかけになった曲「Sixteenth Century Greensleeves」を。

「Sixteenth Century Greensleeves」

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裏切られるようなかたちで消滅したELFでしたが、彼らのサウンドは、ロニーのハイトーンで声量のあるヴォーカルが売りであるのは当然だったものの、サウンドのかなめはキーボーディストのミッキー・リー・ソウル(Micky Lee Soule )のピアノにあったと言えます。

ELFというバンドをカテゴライズすればハード・ロックになるでしょうが、アルバム3作とも、彼の弾くホンキートンクなピアノが中心になっているロックンロールやブルース・ナンバーばかり。ブルース・ロック・バンド、カントリー・ロック・バンドと言ってもよいでしょうが、それよりもピアノ・ロックといったほうがぴったりなほどピアノの存在感が大きいです。

ライバルはレッド・ツェッぺリンや兄貴分のディープ・パープルではなく、フェイセズやエルトン・ジョン、はたまたビリー・ジョエルといったところ。

この後、ミッキーは音楽界から去ることなく、イアン・ギラン・バンドやロジャー・グローヴァーのアルバムに参加し、また最近でもネット配信で自身のヴォーカルとピアノ中心の楽曲を発表しています。

「Mickey Lee Soule – We’re Livin’ (Gary’s Song)」

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さて、ロニーですが、レインボー以降の活躍は説明する必要もないほど偉大なものです。

このELFもそうですが、ロニーのヴォーカルを聴いていていつも感じるのは、やっぱり歌のうまいひとの歌を聴くのはいいなあ、ということ。身もふたもないですが。

味のあるヴォーカリゼーションや、デスメタルのグロウル・ヴォイスを良いと感じるときはあっても、うまいヴォーカルを聴くと、やっぱりこれだなあと思ってしまいます。ロックもアイドルも聴くけど、結局演歌に惹かれるみたいなことでしょうか。

張りがあって勢いのある若いころのロニーのヴォーカルと、それに連れ添うファンキーなピアノ。サバスやレインボーを聴き通したら、もう一度ELFに回帰してみてはいかがでしょうか。

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