寄稿:ike333さん
音源リスト (写真の位置を右側に記す。なお、中央はデブモンローポスター)
(1) 伊盤LP Numero Uno ZSLN55684 (EKAY 28650 1S1A8/ 28651 1S1B5) 1975 ~左上
(2) 英国盤LP Manticore K53508 (A4/B4:1st press) 1976 ~右下
(3) 米国盤LP Asylam E-1071 (Promotion copy) 1976 ~左下
(4) 日本盤LP Warner-Pioneer P-10089M 1976 ~右上
(5) 独盤CD ND71781 (でぶモンロープラケース)1988 ~中央左上
(6) 日本盤CD BVCM-37501 (でぶモンロー紙ジャケ) 2004 ~中央右上
(7) 日本盤CD VICP-70035 (SHMCD紙ジャケ) 2009 ~中央左下
(8) 英国盤 Esoteric Recordings MANTCD 2008 (2CD) 2010 ~中央右下
第45代米国大統領トランプ氏が就任前に、星条旗を焼いた国民に対して「牢獄行きだ」とtweetしていました。
米国では表現の自由で焼くなどの行為も認められた権利なのだそうです。しかしながら、新大統領のもとでは、もしかすると、PFMの『Chocolate Kings』のManticore盤は発禁処分になってしまいかねないスリーブデザインです。
一方、イタリアのNumero Uno(NU)盤①はでぶなモンロー人形のスリーブデザインとポスター付の、いずれにせよ相当おちょくっている代物。
このアルバムは私にとっては“初めて買ったイタリアンロックのレコード”という意味で思い出深いもの(初めて聴いたのはPFMの『幻の映像』)。国内発売されて比較的すぐに購入しました。彼らは、同アルバム発売直前頃に来日しており、FM雑誌などにも写真など掲載されて記事になっていたのですが、私は、その記事で知ったのでライブを逃してしまい残念に思ったものです。
さて、本作では、Acqua FragileのBernardo Lanzetti氏がボーカルに参加し、英語歌詞のダイナミックなビブラートボーカルを聴かせてくれます。アルバム全体がタイトでダイナミックなロックとなっており、変化自在の時に幻想的、時に陽気な演奏を楽しめたそれ以前のアルバムとはまた異なった、高度な演奏を楽しめるアルバムです。Mauro Pagani氏のバイオリン、Franco Mussida氏のギター、Fravio Premoli氏のキーボードが交互にソロをスリリングに展開していますし、Franz Di Cioccio氏のドラムスやPatrick Djivas氏のベースも暴れまくっていて、緊張感のある素晴らしい傑作アルバムです。
ところで、昔から、購入した日本盤④のレコードを聴いていて、ラストの曲「Paper Charms」において、違和感のあるところがありました。
それは、伸びやかに美しいメロディーラインを歌い上げるランゼッティ氏のボーカルが”the promised wonderland”と一旦終わり、ジャンジャーンと激しい演奏パートに切り替わる部分で、あたかも録音レベルがピークに振り切ってしまいあわててボリュームを絞ったときの様に、急に音圧が下がってしまうということです。この結果、パガーニ氏のバイオリンソロも、ピアノもドラムスもみな遠くでなっているような感じになってしまいます。素晴らしい展開なのにこれは残念。80年代後半、CD化されたものも同様に遠くで鳴っている印象は払しょくされませんでした(1988年リイシュー盤⑤)。
1999年にビクターから発売された、最新の20bitK2ディジタル技術を用いて音質が向上と謳われた紙ジャケCD(VICP-60812)も当時すぐに購入したのですが、この遠くで鳴っている感はなくなりましたが、やはり、やっている音楽のジャンジャーンという激しさに比べて控えめになる現象は若干残っていました。
この様に『Chocolate Kings』については、私にとって思い出深く、また引っ掛かりもあるアルバムでした。
そこで、現在、手元にレコードとCDを合わせて8枚ほどありますので、これらをまとめて聴いて比較してみることにしました。(20bitK2の紙ジャケCDは売ってしまった様でモノは残っていない。)
まず、本アルバムは、冒頭曲「From Under」のバイオリン、ギター、オルガン、ベースの衝撃的なユニゾンで始まるもので、この段階でノックアウトになるはずです。
最初にリリースされたのはイタリアNU盤ですからこれが基本の音と考えるべきかもしれません。しかし、チョッチョ氏のクラッシュシンバルの音などは、英国盤②、米国盤③、日本盤④の方が、キレが良いと思います。
CDを比較すると、でぶモンロー紙ジャケ⑥はリマスタリング段階で全体的にブースト処理した感じでブーミーで少し耳障りに音が大きい感じがします。SHMCD⑦やEsoteric Recordings(ER)盤⑧はいい感じで始まります。
2曲目の「Harlequin」は、アコースティックな演奏をバックにarlequin(Hの音がランゼッティ氏のボーカルでは聞き取りにくい)と歌いだすのですが、NU盤①はこのアコースティックなパートでベース、ドラムスなどの音が強くカッティングされていて少し籠った感じもありますが力強く聴こえます。
米盤③がこれに次ぎ力強く、英盤②と日本盤④はだいぶ控えめな歌と演奏になっています。その後、突如メンバー全体が暴れまわる力強いパートに切り替わりますが、ここは、どの盤でもラウドで力強く聴こえます。CDでは日本盤の⑥、⑦いずれも力強い音で音楽が始まり、NU盤LP①の籠った感じを取り除いたらこんな音になるだろうといった感じです。それに比してER盤⑧は英国盤LP②に近く穏やかに曲が始まります。中盤以降の激しいパートは⑦、⑧いずれもいい感じに暴れまくります(⑥は若干耳障りに音が大きい)。
3曲目タイトル曲は、陽気でタイトな楽曲で、初期CD技術の故にとても控えめな仕上がりになっているCD⑤以外は、いずれも概ね同様に明るく楽しめる音質です。
4曲目(レコードならB面に裏返し1曲目)の「Out of the Roundabout」はしばしばライブなどでも取り上げられる定番曲となりました(アルバムリリース時はそうなるとは私は想像もできなかった。)が、ムッシーダ氏のギターのアルペジオの調べをバックに歌が入る前半部、NU盤①はやはりベースの音が大きいです。他のLPは大体、似た感じにアルペジオと歌を穏やかに聴かせてくれます。CDはSHMCD盤⑦とER盤⑧が同様にいい感じで、でぶモンロー紙ジャケ⑥は音圧が高くなって、より明るく聴こえてきます。その後盛り上がるパートはNU盤①に比べ他のLP②~④は音が控えめに処理されています。
そして問題のラスト曲は、日本盤LPなど(④、⑤等)は上述のとおりですが、レコードを比較すると、NU盤①はジャンジャーンの部分で音圧が下がることはありません(このレコードは全体に音が均一レベル)、英国盤②と米国盤③は気持ち下がるのみで、さほど日本盤④ほど違和感があるような低下ではありません。CDはでぶモンロー紙ジャケ⑥はNU盤①と同様に音圧が下がることはありません。一方、SHMCD⑦とER盤⑧が気持ち音圧が下がります。
以上をまとめます。
今回初めて、所有の『Chocolate Kings』をいっきに聴いて比較してみました。
従来、印象ではありましたがNU盤①は丸い音質だと思っていました。しかし、他と比較してみると、若干籠った感じもありますが、ベースなど低音が強調されてアルバム全体に均質に音圧レベルが揃っています。おそらく、このことから丸い音質と感じられていたと思います。
一方、英国盤LP②は、メリハリがはっきりしていて、アコースティックで静かなパートは穏やかに、激しいパートはそれなりに激しく音がなっていて、キレも良いと思います。
米国盤LP③は②に次ぐ感じで、日本盤④も「Paper Charms」を除けば③と同様に相応にいい感じがしました。
CDについては、独盤⑤は流石に他と比較するのはかわいそう、ディジタル初期の音で音圧低いです。20bitK2は、今は所有していませんが、⑤からは音質が圧倒的に改善されていますし、おそらくブーミーになってしまったでぶモンロー紙ジャケ⑥よりよい音質(バランス論)だと思います。
SHMCD⑦は音のバランス、音質もよく、優れていると思います。ER盤⑧も⑦と同様で、⑦より若干音圧低めの気もしますが、これは英国盤LP②に近いものと考えてよいと思いました。
Chocolate Kings LPの音圧(縦軸:電圧、横軸:時間)
『SUONARE SUONARE』リリース後、80年11月25日にテレビ放送用に収録されたスタジオ・ライヴ音源&映像。新たに加入したヴァイオリン奏者のルキオ・ファブリの躍動感いっぱいのヴァイオリンが気持ちいい「Celebration」をはじめ、往年の代表曲も良い感じ!収録曲は、1:LA LUNA NUOVA、2:VOLO A VELA、3:IL BANCHETTO、4:TANTI AUGURI、5:MAESTRO DELLA VOCE、6:SI PUO FARE、7:CELEBRATION
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの71年デビュー作。イタリア盤としてリリースとなった本作はイタリアン・シンフォニック・ロックの職人気質の極地といった趣の傑作。当時のブリティッシュ・ロックフィールドのアーティストたちと比べてもその技巧は抜きん出ており、クラシカルに、丹念に編みこまれたアンサンブルの妙技に酔いしれるばかりの名盤です。
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの73年3rd。本作はまさにそのMANTICOREからの世界リリース作となった、ヨーロピアン・ロック屈指の1枚であり、Pete Sinfieldが英語詞を担当した傑作です。先にイタリアでリリースされていた2nd「Per Un Amico」の再録音と、デビュー作「Storia Di Un Minuto」より1曲、そして前2作には未収録の新曲1曲で構成されており、イタリアらしいバロック色とダイナミックなロックを融合した奇跡的なサウンドを提示。テクニカルな変拍子と呼応する凄まじい叙情の嵐は唯一無二のものです。
紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、定価2100+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
情報記載シール付き、側面部に色褪せ・軽微なカビあり
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの74年4th。バロックを強く意識したクラシカルな前作から、プログレッシブな魅力はそのままに、よりポピュラリティーを持ったサウンドを提示した傑作であり、前作同様、イタリアのシンフォニック・ロックを代表する1枚となっています。本作は、イタリア語盤。シンフィールド作詞の「Is My Face On Straight」以外はイタリア語詞。英語版収録の「World Became The World」は収録されていません。
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの74年4th。AREAのPatrick Djivasを新ベーシストとして迎えた世界リリース2作目であり、イタリア盤も製作された名盤。前作が旧作からの再録音を中心にしていただけに、PFMの真価が問われることになった本作は、バロックを強く意識したクラシカルな前作から、プログレッシブな魅力はそのままに、よりポピュラリティーを持ったサウンドを提示した傑作であり、前作同様、イタリアのシンフォニック・ロックを代表する1枚となっています。
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの75年作。ACQUA FRAGILEからBernardo Lanzettiを迎えて製作されたその内容は、それまでの彼らの個性であったクラシカルな側面が落ち着きを見せ、よりロックのダイナミズムを押し出した作風へとシフトした良盤であり、星条旗に包まれたチョコレートが印象的な英語盤ジャケットからも分かるとおり、アメリカの音楽産業を意識した明快でパワフルなサウンドが素晴らしい傑作となっています。
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの75年ライブ作。「The World Became The World」をリリースしたツアーからアメリカ公演の模様を収録しており、スタジオ作の丹念な織物のようなアンサンブルから一転、凄まじいドライブ感とダイナミズムを持った名演を披露しています。非常にテクニカルにもかかわらず全くブレることなく、地中海ロックのダイナミズムとイタリア叙情をを聴かせながら突っ走る様子は、さすがの一言です。
QUELLIを母体に結成され、後にバンドの顔となるMauro Paganiを迎えて改名。英国とはまた違ったイタリアの素晴らしい叙情性を放ち、EL&PのMANTICOREからPete Sinfieldの戦略で世界デビューまで果たしたイタリアン・シンフォニック・ロック代表グループの77年作。Mauro Paganiが脱退したあとの本作は、ヴァイオリニストにGregory Blochを迎えてラテン・フレーバーを散りばめたジャズ・フュージョン色濃いサウンドを提示。前作からの流れでシンフォニックな音像は姿を消していますが、軽快でテクニカルなジャズ・フュージョンサウンドの中にもイタリアの叙情をほのかに感じられるなど、過渡期とは思えない個性はやはり彼ららしい佳作と言えるでしょう。
1987年作。ゆっくりと制作が続けられて世に出たアルバム。80年台、試行錯誤を繰返していきついた音楽性が打ち出されている。ホーン、コーラスなども加え当時のポップスの中にもPFMの姿勢をはっきりと示した。しかしこのアルバムを最後に10年間活動を休止する。
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