こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
4月21日と22日に渋谷のTSUTAYA O-EAST行われた、エニド(THE ENID)来日公演の22日のステージを観てまいりました!予想を超えるとても素晴らしいライヴでしたので、その模様をお伝えしてまいります!
エニドは、ご存知の通り70年代より活動を続けてきた英国クラシカル・プログレの代表的グル-プ。クラシックの要素を色濃く出した作風ながら、生の管弦楽器を使わずそれらの音を再現したキーボード群を駆使してスケール感のあるクラシカル・サウンドを作り上げてきた異色のグループです。そのエニド、ちょうど1年前に行われた「ヨーロピアン・ロック・フェス vol.2」に出演予定だったものの、中心メンバーであるゴドフリー氏の体調の関係でキャンセルとなった経緯がありました。それだけに、エニド・ファンにとってはこの単独での初来日公演は念願だったことと思います。
今回の初来日公演は、1日目が「夏星の国」2日目が「エアリー・フェアリー・ナンセンス」と銘打たれており、タイトル通り各日程で76年1stと77年2ndの楽曲を組み込んだプログラムとなっていました。今回は2ndの演奏を含む2日目のライヴに参加。
メンバーはこの7人。
Robert John GodfreyとDave Storeyは結成時からのオリジナル・メンバー。Max Readは90年代よりバンドに参加するマルチミュージシャン/エンジニアで、コンポーザーとしても活躍するゴドフリーの片腕と言える存在です。他の4人は09~16年に加入した若手メンバーとなっています。
ステージに上がったメンバーの中で印象的なのはやはりゴドフリー氏。白髭をゆたかにたくわえた、高名なクラシック作曲家を思わせる風貌は、エニドの奏でるサウンドから想像されるそのままの姿です。これから繰り広げられる演奏に、いやがうえにも期待が高まります。
1曲目は新作『DUST』のオープニングを飾る「Born In The Fire」。コラール風の荘厳なヴォーカルパートを経て、ティンパニが轟き金管楽器をシミュレートしたキーボードが輝かしくも重厚に鳴り響く、まさしくジ・エニドの世界が一気に眼前いっぱいに広がります!本当に一瞬にしてその圧倒的な世界観に飲み込まれ、思わず息をのみました。フルオーケストラにも匹敵しそうなこの迫力がたった7人のステージによって作り出されているとは信じられません。大きな役割を果たしているのがティンパニで、ドロドロドロドロ、と地の底から響いてくるような低音がクラシックのあのダイナミズムを加えているんですよね。予想をはるか超えるスケールの演奏が客席を包み込みます。
Joe Payneの声量豊かで表現力溢れるヴォーカルも大変素晴らしく、スタジオ盤よりスケール大きく迫ってくるエニドのサウンドの中で負けない存在感で歌い上げます。雑味のない伸びやかな声質がエニド本来のクラシカルさと一体になり感動を呼びます。エニド以外で特別な経歴はないようなのですが、かなりの実力派ヴォーカリストで驚きました。
続いて、いよいよ2nd『エアリー・フェアリー・ナンセンス』からの曲を演奏。まずは優美でファンタジックな「Bridal Dance」。ゴドフリーによって小気味よく刻まれるエレピを合図に、3台のキーボードが愛らしい音色を重ね、繊細なヴァイオリン奏法のギターが加わります。甘くメロディアスなギターが活躍するメインパートは、タイトル通り思わず踊りだしたくなるような夢のように優雅な演奏です。いや~オリジナルの印象通りの演奏を堪能できました。感動!
凛とした美しさと微かな哀愁を湛えた小曲「Ondine」。そしてアルバムでは1曲目にあたる「A Heroes Life」を演奏。「A Heroes Life」は2nd中もっともロック色が強く出た曲だけあり、オリジナル・ドラマーDave StoreyとギターのJason Duckerが演奏を牽引します。クラシック要素を担うキーボードの迫力も凄いのですが、やはりロック・バンドとしての躍動感溢れる演奏も非常に魅力的です。そして短いながらピアノソロが挿入される中間部ではゴドフリーの流麗なピアノのタッチに目を奪われます。オリジナルの演奏からすでに40年が経過しているわけですが、それだけの時を経て、いま日本で全く遜色ない演奏が聴けるというのは本当に奇跡的なことだなぁ、と昨年の来日中止のことも想いつつ、感慨深さを感じながら聴いていました。
興味深かったのが、ヴォーカルのない2ndの曲などでシンガーJoe Payneが吹いていた楽器。フルートのような音が出ていたかと思うと、今度はクラリネット風の音色が出たり、トランペットやチューバなど金管特有のズシリと重みのある音色が飛び出してきたりといろんな管楽器の音が鳴るんですよね。よく目を凝らすとコードが繋がっていて電気式の楽器だとわかりました。時々に合う音でリードを取ったり、キーボードとユニゾンして厚みを増したりと八面六臂の活躍を見せていたのが印象的でした。
(※追記 調べたところEWIという電子楽器だったようです。吹奏によってコントロールできるウインド・シンセサイザーというものの一種らしいですね。知らなかった…。)
85年作『Spell』から1曲と再び新作からの曲を挟み、最後はついに2ndアルバムのハイライトと言える大曲「Fand」が幕を開けます!トランペットやチューバ、トロンボーンなどをシミュレートした重厚なキーボードが雄大に折り重なる風格漂うオープニング。壮麗に鳴らされるストリングス・シンセと歌うように饒舌なタッチのギターが優美に交差し、夢の世界のような情景を描き出します。威勢よくドラムがリズムを叩き出すと、ギターもヘヴィなタッチに切り替わりアグレッシヴな全体演奏へ突入。ここでは金管系の太く高らかな音色とフルートなど木管系の軽やか音色、そしてスリリングなストリングスが絶妙に絡みあい、まさにフルオーケストラとロックが一体となったようなエニドの醍醐味を味わわせてくれます。ゴドフリーのシンセサイザーによる独奏が徐々にストリングスやホーンによって厚みを増し、やがて大河のごとき悠久なる音の流れを成す終盤の展開は、CDで聴いていても毎回鳥肌モノなのに、生で聴いた日にはそれはもう感涙を禁じ得ない素晴らしさでした!幾度となく銅鑼が力強く打ち鳴らされ、ビシャッと一糸乱れず締められた瞬間、オールスタンディングの拍手喝采が沸き起こります。まさかこの大名曲「Fand」を生で聴ける日が来るとは!感動で胸がいっぱいになりました~。
その後、2回のアンコールに応えてくれたエニド。ステージを去る前に最前列で手を伸ばすお客さんに握手を返していたメンバーですが、ゴドフリーさんだけはステージの端から端まで歩いて一人一人に握手を返していたのが何だか感動でした。厳めしい顔つき(失礼!)からは想像できない柔和な物腰にほっこりでしたね。今回の来日公演を最後にライヴ活動を引退することが伝えられているゴドフリー氏、最終日となったこの日はやはり特別な思いもあったのかもしれません。
生で彼らのサウンドを聴いて改めて感じた「クラシック」と「ロック」の驚くべき融合度合い、一体感。オーケストラと共演したりクラシック古典をロックにアレンジしたりと、クラシックとロックの融合は過去さまざまな形で試みられてきましたが、そういったアプローチとは一線を画する「クラシカル・ロック」の神髄を今回味わわせてもらった気分です。
本当に最高のステージだっただけに、今後少なくともゴドフリー氏がいる彼らのライヴを観ることができないのは残念に思いますが、最新作『DUST』も充実の内容でしたので、また素晴らしい作品を発表していってくれることを期待します。素敵な一夜をありがとう、エニド!
名バンドBarclay James Harvestの作品のオーケストラ・アレンジを手がけていたRobert John Godfreyを中心に結成され、その純クラシカル然とした楽曲でオーケストラとの華麗なる融合を叶えたイギリスのシンフォニック・ロックバンドの76年デビュー作。彼らの代表作として挙がることも多い名盤であり、いかにも英国然とした格調高いサウンドを繰り広げています。ロックのダイナミズムこそ薄いものの、贅沢なまでにオーケストラ・サウンドをフューチャーし大仰なシンフォニック・ロックを奏でており、全てインストルメンタルで製作されていることが、よりクラシカルな気品をアルバムに与えています。
紙ジャケット仕様、SHM-CD、オリジナル・ヴァージョン、A4ブックレット付仕様、定価3600
盤質:傷あり
状態:並
帯有
紙ジャケにスレ・色褪せ・曇りあり、A4ブックレット無し
紙ジャケット仕様、SHM-CD、オリジナル・ヴァージョン、13年デジタル・リマスター、ボーナス・トラック1曲、定価3143+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯無
帯無、盤に曇りあり、紙ジャケにスレあり
名バンドBarclay James Harvestの作品のオーケストラ・アレンジを手がけていたRobert John Godfreyを中心に結成され、その純クラシカル然とした楽曲でオーケストラとの華麗なる融合を叶えたイギリスのシンフォニック・ロックバンドの77年2nd。その内容は前作より壮大なクラシカル・アンサンブルが放つ極上のシンフォニック・ロックの世界であり、シンセサイザーを用いたクラシックのシュミレーションと言う枠を完全に飛び越えた独自のオーケストラ・サウンドが完成した傑作です。ロックのダイナミックなアプローチとロマンに溢れるクラシカルな響きが融合した、文句なしの名盤と言えるでしょう。
83年作。重厚なキーボードによるクラシカルなアンサンブルはそのままに、ポップなメロディー、ハードかつ甘美なギターをフィーチャーしたゴージャズなクラシック・ロック/ポップ作品。
96年作。ロバート・ジョン・ゴドフレイによるまるでオーケストラのような重厚かつクラシカルなキーボード・ワークに哀愁のリード・ギターが絡むアンサンブルは、これぞクラシック・ロック。名作1st&2ndにも引けを取らない完成度。
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