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KAIPAの1st『KAIPA』特集! – ユーロ・ロック周遊日記

70年代のスウェーデンを代表するシンフォニック・ロック・バンドであり、FLOWER KINGSなどで活躍しているギタリストRoine Stoltが在籍していたことでも知られるバンドKAIPAのデビュー作『KAIPA』をピックアップいたしましょう。

まずはデビュー作にいたるまでのバンドのストーリーを整理いたします。バンドの出身は、ストックホルムの70km北に位置するウプサラで、SAN MICHAEL’Sというバンドに在籍していたHans Lundin(Key)とTomas Eriksson(B)の2人を中心に結成されました。

SAN MICHAEL’Sは、71年に唯一作をリリースした後に解散(72年に2ndアルバム用の音源はお蔵入り、09年に発掘CD化)。バンド解散後、HansとTomasの2人は、プロ・ミュージシャンのバック・ミュージシャンとして活動を続けますが、やはり自分たちのバンドで活躍したい、ということで、Thomas Sjoerg(Dr)を迎え、トリオ編成のバンドURA KAIPAが結成されます。ライヴ活動をはじめたものの、キーボード・トリオとしての表現の限界を感じた彼らはギタリストのオーディションをスタート。若干17歳のギタリスト、Roine Stoltが加入します。なお、その間に、癌のために脱退したオリジナル・ドラマーのThomas Sjoerg(Dr)に代わり、Ingemar Bergmanが加入しました。

74年の夏、短くKAIPAと改名。クラシックと北欧民族音楽(フォーク・ミュージック)のエッセンスに溢れた格調高くも温かみある演奏を軸に、ジャズ・ロックにまで発展していきながらめくるめく盛り上がり、シンフォニックにフィナーレを迎える、というサウンド・スタイルをものにし、ライヴを行う毎にバンドのファンが増えていきます。

デビューを目指し、スウェーデンでは2大レーベルと言えるMNWとSILENCEにデモ・テープを送るものの結果は落選。そのテープは幸運にもSAN MICHAEL’Sを担当していたエンジニアLeif Masesを介してMARCUS MUSIC STUDIOSのオーナーMarkus Osterdahlに渡り、気に入った彼のオファーにより、24トラックのスタジオにて録音作業が始まりました。そして、Markusの友人だったELECTRAレーベル(DECCAやRCAのレコードをスウェーデンで配給)のCarl-Eric Hjelmに渡り、そのつてでDECCAとの契約を果たします。こうして75年にリリースされたデビュー作が『KAIPA』です。なお、印象的なアートワークを手がけたのはRoine Stolt!

T1: 「Musiken Ar Ljuset」

オープニングを飾るのは、いきなり名曲と言える「Musiken Ar Ljuset」。クラシカルかつアグレッシヴなハモンドで幕を開け、ギターのヴァイオリン奏法とともにゆったりと幻想世界へと落ち着いたかと思うと、すぐさまキャメルを彷彿させるハード&マイルドなアンサンブルで走り出します。ジェネシスとキャメルから影響を受けたシンフォニック・ロックを軸にしつつ、クラシカルな気品、北欧らしい手工芸品のような温かみを織り交ぜたサウンドは、「ファンタスティック」そのものと言える感じ。ヴォーカルが登場すると、祈るように真っ直ぐに歌われる「高貴」なハイ・トーンの歌声とスウェーデン語の人懐っこい語感でさらにファンタスティック度が増し、その透明感ある美しさにただただ心奪われます。

90年代以降の活躍からRoine Stoltの存在に注目が集まると思いますが、KAIPAのブレインは、作詞・作曲、そしてリード・ヴォーカルもこなすKey奏者のHans Lundinでしょう。元々、キーボード・トリオであったため、特に1stではキーボードの比重が高く、幻想美とキレ味に満ちたオルガン、クラシカルで気品に満ちたピアノの美しい旋律に溢れています。そのテクニックと作曲センスは、キャメルのピーター・バーデンス、グリーンスレイドのデイヴ・グリーンスレイドに比肩している、と言っても過言ではありません。

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T3: 「Ankaret」

「くもりのない純度120%のファンタジー」とでも言えるような透明感と幻想性に溢れたエレピとハモンドによるイントロが絶品。そこにリード楽器のように寄り添うベースもまたKAIPAの魅力のひとつでしょう。明らかにリッケンバッカーと分かるゴリゴリとしたクッキリとヌケの良いトーンが、キーボードが浮かび上がらせる「幻想」の輝きを一層磨き上げている印象です。

それにしてもこの愛くるしいリリシズムはなんとも北欧ならでは。イギリスだと淡く陰影がかるし、イタリアだと外に向かってエネルギーが熱く放たれるし、ドイツでは内省と森羅万象と宇宙がうずまきだします。この音の味わいは、くっきりと鮮やかな色彩と木の温もりが調和したスウェーデンの工芸品にも通じるものがあるな、と思って調べてみました。寒いスウェーデン、特に北部では、長い季節を雪に覆われて過ごすため、家の中でも自然やその温もりを感じられるように、動植物をモチーフに鮮やかな色彩を用いたデザインの工芸品が生まれたようです。家の中で過ごすことが多ければ、きっと空想にふける時間も多くなるでしょうし、そんな中で、北欧神話のような文学も生まれたんだろうな、と思います。自然を敬う謙虚さ、家の中に溢れる温もり、そして、育まれた空想の力。KAIPAをはじめとする北欧のプログレに流れる温かみやクリアさ、そして幻想性の由来が分かる気がします。

T8: 「Oceaner Foder Liv」

アルバムのラストを飾るのが、Roine Stolt作曲による「Oceaner Foder Liv」。オープニングから、IL VOLOを彷彿させるようなジャズ/フュージョン寄りの軽快かつ洗練されたアンサンブルにびっくり。そこに色合いを乗せるような繊細なタッチのRoineのギターの円熟味はこの時まだ10代とはとても思えません。手工芸のタペストリーが織り込まれるように、精緻に紡がれていくハモンド・オルガンやハープシコードも絶品だし、ロック的な疾走感を生み出すベースとドラムのリズム・セクションも特筆。

素直にジェネシスへのオマージュを溢れさせた後、けたたましくキメを一閃させ、Roineらしい色彩豊かなリードが描くパートへとスイッチ。複数の演劇的な声がコラージュされたアヴァンギャルドなパートを通り過ぎると、まるで『こわれもの』期のイエスへのオマージュのように、ドラムとベースが前のめりに疾走し、ハモンドが速弾きで勢いを増幅させます。再び、ヴァイオリン奏法とともにイントロに通じるジャズ/フュージョンのパートへと切り替わって落ち着くかと思うと、突如のリズム・チェンジでピアノがクラシカルに高鳴り、ギターが伸びやかにリードを奏でながら感動的なフィナーレを迎えます。各楽器により精緻に紡がれた音色が次々と折り重なり、めくるめくストーリーを描いていく構成美は、FLOWER KINGSの大作で花開くものの原型と言えるでしょう。

FLOWER KINGSの2013年の来日ライヴを見た時、Roineの作る楽曲はまるで壮大な文学のようで、楽曲を形作る各パートはまるでひとつひとつの場面を描いた絵画のように色鮮やかで、ギターの音色には色彩があり、「フレーズ」というより「筆致」と言った方がしっくりくる、と感じましたが、作曲家の前に作家であり、ギタリストというより、色彩をギターで操る芸術家と言えそうなRoineの個性はKAIPAの時点で既に出来上がってる印象です。

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ジェネシスやキャメルなどブリティッシュ・プログレからの影響を土台にしつつ、素朴な温かみ、幻想性、そして柔らかな色彩に彩られた、北欧ならではと言えるファンタジー純度120%のシンフォニック・ロックに仕立て、世界に高らかに提示した傑作。Hans LundinとRoine StoltのKey奏者&ギターのコンビは、ジェネシスのトニー・バンクスとスティーヴ・ハケット、キャメルのピーター・バーデンスとアンディー・ラティマーに勝るとも劣らない愛くるしく魅力的なコンビと言えるでしょう。

KAIPA他、関連作在庫

  • FLOWER KINGS / UNFOLD THE FUTURE

    30分と24分の超大作を含む02年作

  • KAIPA / VITTJAR

    北欧を代表するシンフォ・バンド、12年作

  • FLOWER KINGS / WAITING FOR MIRACLES

    現プログレ・シーンの王者と呼ぶべき、ギタリストRoine Stolt率いる人気グループ、6年ぶりとなる19年作!

    ご存じ現プログレ・シーンの王者と呼ぶべき人気グループによる6年ぶりとなる19年作。2015年にキーボードのTomas BodinとドラムのFelix Lehrmannが脱退して以来初のスタジオ作となっており、新メンバーにはZach Kamins(key/g)とMirkko DeMaio(dr)を迎えています。特筆はキーボードの活躍。冒頭からピアノとメロトロンがリリカルに舞うインスト小曲で幕を開けると、力強く溢れ出すヴィンテージ・トーンのオルガンでTFKサウンドに厚みをもたらします。前任者T.BodinよりはKAIPAのkey奏者Hans Lundinに近い柔らかくも芯のあるタッチのプレイが印象的です。メロトロンも随所で北欧プログレらしい透明感を描き出していて、全体のサウンド的にもKAIPA的なファンタスティックさが従来よりも強めかもしれません。もちろんRoineのエモーショナルな入魂ギターを筆頭にスケール大きく展開するTFKらしいスタイルは健在。キーボードのカラーの変化を原動力にして軽やかなファンタジーが全編を覆うさすがの力作です!

  • FLOWER KINGS / ISLANDS

    ギタリストRoine Stolt率いる人気グループ、KAIPAファンにもオススメのドリーミーでファンタジックな2枚組力作!

    ご存じプログレッシヴ・ロック界を代表するギタリストRoine Stolt率いる人気グループ、久々となる2枚組の2020年作。KAIPAのHans Lundinを思わせる柔らかくも芯のあるシンセやオルガンのプレイと、Roineによる歌うように情感豊かなギターがエモーショナルに交歓する、ハードさよりもドリーミーな面を強く感じさせるシンフォニック・ロックを繰り広げます。抜群の安定感でタイトにアンサンブルを支えるリズム隊もいつもながら素晴らしいし、ハスキーながら伸びのある歌声が魅力のHasse Frobergも、熱く歌い上げる力強い歌唱と囁くようにジェントルな歌唱を織り交ぜ、表現力豊かに歌っていてさすがの一言です。S. Hackett周辺で活動するサックス奏者Rob Townshendによるジャジーで軽やかなソプラノ・サックスをフィーチャーしたナンバーも聴き所。ロジャー・ディーンの幻想的なジャケット通りと言える、夢の世界を冒険するようなどこまでもファンタジックなサウンドが胸に迫る作品。KAIPAファンなら是非!

  • KAIPA / INGET NYTT UNDER SOLEN

    ロイネ・ストルト在籍、北欧を代表するシンフォ・グループ、76年作2nd

    スウェーデンのみならず北欧を代表するシンフォ・グループ、76年2nd。FLOWER KINGSのリーダー、Roine Stoltが在籍することで知られています。本作は、デビュー作での牧歌的なメロディやクラシカルな持ち味はそのままに、冒頭に21分の組曲を配するなど楽曲構成力を発揮した名作です。Roine Stoltによる端正なギター・アルペジオのイントロから、瑞々しい音色を奏でるエレピと情熱的にむせび泣くヴォーカルによる哀愁溢れる導入部。軽やかにリフを刻むベースとオルガンが絡み合い疾走したかと思えば、テンポを落とし、シンセサイザーと泣きのブルース・ギターがユニゾンする雄大且つメロウなパートが湧き上がるなど、終始惹きつけられる構成が素晴らしい。GENESIS、YESを彷彿させるファンタステイックな叙情を堪能出来る名盤です。

  • KAIPA / SOLO

    北欧を代表するシンフォ・グループ、ロイネ・ストルト在籍最後の78年3rd

    スウェーデンを代表する名シンフォ・グループ、Roine Stolt在籍最後の作品となった78年作3rd。前2作で聴かせたクラシカルな格調高さを持ったシンフォニック・ロックと比べ、ジャケットにも表れるより親しみやすいハートウォームなサウンドが主となっています。透明感のある音色を重ね優美な広がりを作り出すキーボード、躍動感とタイトさがバランスするリズム隊、どれも素晴らしいですが、特筆はやはりRoineのギター。のちのTHE FLOWER KINGSに通じるブルージーでエモーショナルな高まりを見せる独自のプレイをすでに披露しており、作品を通じての温もりのあるファンタジックな世界観に対し、叙情的でありながらシリアスで深みもあるギターのタッチが素晴らしい対比を生んでいます。1st、2ndとともに北欧シンフォの最高峰に位置する名作です。

  • KAIPA / NATTDJURSTID

    スウェーデンを代表する名グループ、ニューウェーブ然とした82年作

    スウェーデンを代表する名グループ、82年リリースの5作目。打ち込みを大幅に導入した80年代然としたニューウェーブ/エレポップ・サウンドを展開。

  • FLOWER KINGS / RETROPOLIS

    元KAIPAのギタリストROINE STOLT率いるスウェーデンのシンフォ・バンド、96年の傑作コンセプトアルバム!

    現代北欧プログレを代表するバンドによる96年発表の3rd。ファンタジックで雄大な音の広がりとダイナミズムたっぷりのアンサンブルはデビュー作から変わらず健在ですが、本作ではシンフォニック・ロックというよりはプログレッシヴ・ロック的な骨太さがより強調された演奏が特徴的。シンフォニックで荘厳なシーンとハードタッチなサウンドで突き進むシーンとを巧みに配して劇的に進行していくアンサンブルが見事に決まっています。コンセプト作ならではと言うべき、起伏豊かなドラマ性を湛えたストーリーテリングもまた素晴らしいもので、これこそあらゆるプログレ・ファンに聴いていただきたいと思えるシンフォニック・ロックの傑作です。

  • KAIPA / KAIPA

    ロイネ・ストルト在籍、北欧を代表するシンフォ・グループ、北欧ならではの澄みわたるシンフォニック・サウンドが素晴らしい75年1st

    北欧ロックを語る上では欠かせないアーティストROINE STOLTが在籍したていたことで知られるスウェーデンのグループ。75年作の1st。CAMELを彷彿させる優美で温かみあるアンサンブルに、北欧らしい透明度の高い音色が加わった、ユーロ・シンフォニック・ロックの名作です。

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