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アルティ・エ・メスティエリ来日公演@クラブ・チッタ川崎(7/5)ライヴレポート

「ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロック vol.1,2」と銘打って7月4日/5日に川崎のクラブ・チッタで行われた、オザンナとアルティ・エ・メスティエリの各単独公演。
今回は、7月5日のアルティ・エ・メスティエリの来日公演へ行ってまいりました。3時間超の大熱演となったステージの模様を、オリジナル楽曲の音源を交えてお伝えしてまいります!

アルティ・エ・メスティエリと言えば、アレアと並びイタリアン・ジャズ・ロックを代表するグループ。手数王の異名を持つドラマー、フリオ・キリコを筆頭に超絶技巧を駆使するメンバーたちによる変拍子満載のテクニカルなアンサンブルと、叙情性豊かに紡がれるメロディーが一体となった情感溢れるジャズ・ロックが持ち味で、中でも74年1st「ティルト(TILT)」と75年2nd「明日へのワルツ(VALZER PER DOMANI)」は、イタリアン・ロック史上屈指の名盤として高い人気を誇っています。

今回はなんと、その名盤2作が当時のオリジナル・アレンジによって再現されるとのこと。自分の中では5大プログレと同格に位置しているアルティですので、一ファンとして今回の来日公演は大いに楽しみにしておりました。

来日メンバーは、以下のとおり。

ドラム: フリオ・キリコ(Furio Chirico)
ギター: ジジ・ヴェネゴーニ(Gigi Venegoni)
キーボード: ベッペ・クロヴェッラ(Beppe Crovella)
サックス: アルトゥーロ・ヴィターレ(Arturo Vitale)
ヴァイオリン: ラウタロ・アコスタ(Lautaro Acosta)
ギター: マルコ・ロアーニャ(Marco Roagna)
ベース: ロベルト・プジョーニ(Roberto Puggioni)
ピアノ/アコーディオン: ピエーロ・モルターナ(Piero Mortara)
ヴォーカル: イアーノ・ニコロ(Iano Nicolo)


サックス/フルート: メル・コリンズ(Mel Collins【スペシャル・ゲスト】

この大所帯が、15年作『ウニヴェルシ・パラッレリ(Universi Paralleli)』を制作した現在のラインナップ(Beppe Crovellaはアルバムには不参加)となっており、上から4人が1st/2nd当時のメンバーになります。

そして注目は管楽器奏者メル・コリンズ。ご存知クリムゾンやキャメル、ウォーターズやライトらフロイド・メンバーのソロなどプログレ関係から、ストーンズやクラプトンなどロック大御所まで、数多くのミュージシャンをサポートしてきた名手ですね。アルティの最新作でも2曲に参加しており、今回はスペシャル・ゲストとして参加。

構成としては、パート1:『ティルト』/パート2:新作『ウニヴェルシ・パラッレリ』/パート3:『明日へのワルツ』というセットリストが組まれていました。

交通機関の遅延があり開演からおよそ15分後にようやく会場に入ることができたのですが、会場の扉を開けると、2曲目に当たる「STRIPS」のヴァイオリンによるあの印象的なリフレインがいきなり耳に飛び込んできて早速度肝を抜かれます。

「STRIPS」

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とにかく演奏の迫力が凄まじい!まずは何よりフリオ・キリコの筋骨隆々の両腕から叩き出される重厚なドラミング。オリジナル盤では「速い」という印象はあっても「重い」という印象は強くなかったフリオのドラミングが、ライヴでは速さと重さを驚異のバランスで両立させた神業的プレイを聴かせています。手数的には当時の7、8割と言った感じですがそれを補って余りあるパワフルなプレイは、その見た目の若々しさと相まってとても60歳を過ぎた人物とは思えません。

さらにヴァイオリン、サックス、ギターと各リード楽器の音圧も特筆。これらの楽器が一体となってユニゾンで畳み掛けるパートの連続には、毎回鳥肌を立てずにいられません。会場の空気がビリビリと震えるのが感じられそうなほどの迫力にただただ圧倒されます。

「静」と「動」の対比が鮮やかなナンバー「NEGATIVO/POSITIVO」では、ギターのヴェネゴーニが大活躍。驚くべきはギターソロのパート、もしかするとオリジナル以上か?と思うような猛烈なテクニックで速弾きを披露!しかもまだまだ余裕たっぷりに見えます。見た目は完全におじいちゃんなのですが、楽器を弾いているその姿からは溢れんばかりの現役オーラが放たれていて、こちらもフリオに負けず劣らずの尖りっぷり。いやはや恐るべしです・・・。

「NEGATIVO/POSITIVO」

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サックスの切なげなテーマから、しなやかなジャズ・ロック・アンサンブルへと引き継がれる演奏が素晴らしい「IN CAMMINO」。そのテーマをサックスとヴァイオリンが哀感たっぷりにユニゾンで聴かせます。陽光輝く地中海の情景が浮かんでくるようなイマジナティブな演奏にしばしうっとりしていると、フリオのドラミングが手数多く切れ込んできて、芳醇でメロディアスなジャズ・ロックへ突入!全くもってオリジナル通りです。感動~!

「IN CAMMINO」

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前衛的なアルバム最終曲「TILT」はかなり長尺になっていて、不穏なメロトロン・ストリングスのサンプリング音源が揺らめく中、即興風の掛け合いが続き、ステージには若き日のメンバーの写真が映し出されます。メンバーの風貌からはさすがに40年という歳月の流れを感じさせますが、そんな中フリオさんは当時よりかなり筋肉質になっている印象でしたね。こんな63歳がいていいんでしょうか・・・!

「TILT」

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ここまでの演奏を聴いていて特におっ!となったのがラウタロ・アコスタが奏でるヴァイオリン。05年に加入した若手なのですが、その音色は不思議なほどにアルティ・エ・メスティエリのあのヴァイオリンそのものなんですよね。間違いなく今回のラインナップで最もアルティらしさを醸し出しているのが彼のヴァイオリンだと言えると思います。

冒頭の「GRAVITA 9.81」を聴き逃したのが若干心残りではあったものの、テクニック面でもアレンジ面でもオリジナル録音にここまで忠実な形で演奏されるとは思わなかったので、この時点でかなり興奮気味。
オリジナルアレンジによる過去曲の再現というテクニックの衰えが最も顕著になりやすい演奏において、この全くと言っていいほどパフォーマンスの低下が見られないオリジナル・メンバーたちは本当に驚異的と言う以外にはありません。


続く2部では最新アルバムからの演奏を披露。
これが決して大げさではなく、多くのナンバーがあの『TILT』に入っていてもおかしくないクオリティでとにかく驚き!このキレのあるヴァイオリンと怒涛のドラミングが牽引するスリリングにして芳醇な聴き心地を持つジャズ・ロックの数々が、アルティ以外に紡ぎだすことができないものであるのが生で聴いていてこれでもかと伝わってきます。そしてヴァイオリンとサックスがユニゾンで奏でるメロディがもういちいち美しいんですよね~。

アルバムのオープニングナンバー「ALTER EGO」。どこか「GRAVITA 9.81」を彷彿させる名曲ですよね。

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フリオ・キリコのドラム・ソロもありましたよ~。最初は往年の7、8割かななどと思っていた手数もソロとなると猛烈に増してきて、手数王の異名はまだまだ健在であることを思い知らされます。終始一心不乱に叩きまくるフリオの勇姿に目が釘付けでした。

そしてハイライトの一つといえる、メル・コリンズを迎えてのイタリア語版「STARLESS」!メルのむせび泣くサックスが、「あのテーマ」を情感たっぷりに歌い上げた瞬間、もう感動に打ちひしがれてしまいました!各メンバーはクリムゾンになりきってオリジナルに忠実な演奏を繰り広げます。フリオが中間部の即興風パートでブルフォードのプレイ一音一音を忠実に再現していたのが印象的でしたね。情感たっぷりに歌い上げるイタリア語のヴォーカルも曲調に合っていてかなり良かったですよ。プログレッシヴ・ロックを代表する名曲へのリスペクトがひしひしと伝わってくる素晴らしい演奏、堪能いたしました~。

デヴィッド・クロスも加えた11年ライヴでの「STARLESS」

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ラウタロ・アコスタのヴァイオリン、ヴェネゴーニのアコギ、クロヴェッラのピアノのアコースティックセットによる2nd収録「NOVA LUNE PRIMA」~VENEGONI&CO「BONAVENTURA MOON」の演奏も美しかったなぁ~。
例えテクニカル・ジャズ・ロックという要素がなかったとしても魅力溢れる音楽として成立してしまうであろう、このロマンティックでエレガントな旋律。ため息が出る美しさとはまさにこのことでしょう。

「NOVA LUNE PRIMA」-「ZOETROPE」-「BONAVENTURA MOON」

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さらに2nd『明日へのワルツ』の再現も絶好調!
冒頭を飾る軽快にして優雅な「VALZER PER DOMANI」~地中海叙情溢れる美しいテーマを持つ「MIRAFIORI」と、オリジナルと寸分違わぬ素晴らしい演奏が続きます。
個人的には『TILT』と全く同じくらい好きなこの2ndなだけに、何十回と聴いてきた作品をオリジナルメンバーが生で演奏している事実が再び感動を呼びます。

「VALZER PER DOMANI」

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「MIRAFIORI」

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「MESCAL」「DIMENSIONE TERRA」とテクニカルでスピーディーなナンバーも難なくオリジナル通り忠実に演奏してしまうメンバーのカッコ良いこと!この時点ですでに総演奏時間にして3時間は経過していたはずですが、切れのある演奏が続いており、疲れからくる鈍りなどは一切感じられません。

「MESCAL」

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「DIMENSIONE TERRA」

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そして最後はアルバム最終曲にして名曲「TERMINAL」で締め!「TILT」同様あまりの完全再現ぶりに、ただただ凄いという感想しか出てきません。

「TERMINAL」

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再現と謳っていても多少はアレンジを甘くするバンドがほとんどな中、彼らは真正面から寸分違わぬ完全再現をしてしまうのです。この超絶技巧満載の2作品においてそれがどれほど高度なことか、アルバムを聴いたことがある方であればおわかりかと思います。

アンコールでは、聴き逃してしまった代表曲「GRAVITA 9.81」もリプライズしてくれて嬉しかった~。

「GRAVITA 9.81」

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いやはやすごいものを見てしまった、という感じですね。1st/2ndに関しては、技巧的な面での完璧な再現性にライヴならではの音の厚みや迫力が加わって、70年代当時のライヴを観ているのとほぼ同等の体験だったのではないかとさえ思えます。
オリジナル・メンバーと若手メンバーの相性が非常に良いことは、再現パートは勿論、新作パートでの素晴らしい楽曲の中でも伝わってきましたし、ぜひ今後もこのメンバーで長く活動して傑作をリリースしていってくれたらと思います。

本当に本当に、文句の付けようもない素晴らしいステージでした!
また新作をひっさげての来日を楽しみに待っています!

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  • ARTI E MESTIERI / ACQUARIO

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    アレアらと並びイタリアン・ジャズ・ロックの最高峰に位置するバンド。超絶ドラマーFurio Chirico以外のメンバーを一新し、83年にスタジオ・ライヴで録音された4thアルバム。疾走するFurio Chiricoのドラムは言わずもがな、ドラムに煽られるかのように次々とスリリングなフレーズを応酬させるサックス、エレピ、ギターのテクニックも抜群。アンサンブルのまとまりとテンションは前作以上で、テクニカルなジャズ・ロックとして間違いなく一級品と呼ぶべき快作です。

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    アレアらと並びイタリアン・ジャズ・ロックの最高峰に位置するバンド。85年作の5thアルバム。前作以上にメロウかつファンキーな作風が印象的ですが、フリオ・キリコのドラムは相変わらず鋭利なフレーズを連発。主にサックスが担うジャズ/フュージョン然とした滑らかなメロディとドカドカと遠慮会釈なくタイトに叩き込むリズムとの温度差がこの作品ならではの独特なテンションを生み出しています。10分を越える大曲「Waiting For Laura At Banfora Hotel」が聴き所。

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