4月26日、東京国際フォーラムにて開催された「ヨーロピアン・ロック・フェスティヴァル VOL.2」を観てまいりました!参加4バンドによる5時間超に及んだステージの模様をお伝えしてまいります!
参加したのはこちらの4バンド。
注目は、カイパとアトールという70年代ユーロ・ロックの中でも最高峰の実力と人気を誇る2バンドのステージ。カイパは2nd「Inget Nytt Under Solen」から、アトールは2nd「L’Araignee-Mal(組曲「夢魔」)」からの楽曲を中心に演奏されることが事前に伝えられており、フェスの目玉として期待していたファンも多かったはず。
フェスが行われたのは3階席まであるCホール。クッションの心地良い座席にゆったりと座り、開演の時を待ちます。
開演時間前に日本のバンドがステージに上がり演奏を始めます。ファンタジー・ロック・オーケストラというグループで、ミュージシャン/コンポーザーとして知られる永井ルイ氏が参加するバンド。美声の女性ヴォーカルを擁したバンドで、声量豊かに歌い上げる歌唱が非常に素晴らしかったです。個人的に日本のバンドをライヴで見る機会は殆ど無いので、その意味でも新鮮でしたね。今年デビューするプログレッシヴ・ポップ・バンドということで、プログレ・ファンにとっては今後の活動に注目したいところではないでしょうか。
そして主催のストレンジ・デイズ岩本さんによる参加バンドの紹介を経て、フェス最初の登場は英国出身の新鋭パイナップル・シーフ。CDで聴く彼らは結成の契機ともなったPORCUPINE TREEの系統に属する音響派プログレ・バンドという印象でしたが、ライヴということもあってか、よりギター・ロック的な、いい意味での荒削り感を持ったサウンドで迫力満点に迫ります。シンフォニック・ロック的な厚みのあるサウンドがもたらす高揚感とはまた違う、ロックの原初的なエネルギーを感じさせるパフォーマンスが圧倒的でした!
そこに時折挿入されるメロトロンシンセがまたセンスがいいんですよね!空間的な音響演出とヴィンテージ・キーボードを用いたキーボードワークは、彼らがプログレ・バンドであるということを思い出させます。
そして要所でフィードバックを効果的に使って演奏をヒートアップさせるフロントマンBruce Soordのカッコいいこと!プログレ的エッセンスを随所に醸しながらも、ロック・バンド本来のタフでパンチの効いたギター・サウンドで勝負する、非常にライヴ映えするパフォーマンスでしたね。フェスの導入として最高に盛り上がる演奏を披露してくれました!
続いてはカイパです。ロイネ・ストルト(g)、イングマール・ベルイマン(ds)、トマス・エリクソン(b)というkey奏者ハンス・ルンデンを除くオリジナルKAIPAの3人に、TFKのメンバーでもあったロイネの弟マイケル・ストルト(vo/g)、マックス・ロレンツ(key)の5人編成で登場!2ndと3rdからのナンバーを演奏してくれましたよ!
と演奏の前にまず目を引くのがロイネの出で立ち。赤地に黄色(?)の柄シャツに真紅のベルボトム、そしてレッドカラーのギターという、普通なら派手だな~!となるファッションなんですが、着こなしは完璧。トレードマークのウェーブのかかったブロンドと相まってそれはもう決まってるんですよね!そう言えば前回のフェスでも濃いピンクのシャツが印象的だったのを覚えています。とにかく御年58歳とはとても信じられません。
静かにギターを構えるロイネ。ボリュームペダルを操りながら丁寧に紡ぎだされる音色は、紛れも無く初期カイパで聴かせてくれた淡く端正な北欧叙情に溢れるあの音色です。初期カイパが蘇った!開始早々感動に打ちひしがれます。
そこにマックス・ロレンツのヴィンテージ感いっぱいのオルガンとシンセの音色が重なると、初期カイパ特有のエレガントかつファンタジックな世界観が会場を包み込みます。至福の時とはまさにこの瞬間のための言葉でしょう。40年近くの歳月を越えて、CDでしか聴いたことがなかったあのサウンドがこうして目の前で演奏されていることをただただ喜ばずにはいられません!
オリジナルどおりにスウェーデン語で力強く歌い上げるマイケルも貫録たっぷりだったし、オリジナル・カイパのリズム隊2人は予想していた以上にパワフルかつ躍動感に溢れるプレイを披露していました。ズンッと響くバスドラの音が現役であることを如実に伝えてくれます。
北欧的な美意識を感じさせるクラシカルで繊細なパートから、イエスばりにドライヴする白熱のインストパートまで、カイパ本来の魅力がたっぷりと詰まったステージを楽しませてくれました~。いやー幸せ!
お次はいよいよフラワー・キングスのステージです。前回のフェスでもそのあまりのスケール感とダイナミズムに終始圧倒されたフラキンでしたので、個人的にはカイパやアトール以上に楽しみにしていました。
メンバーは前回来日時と同じで、ロイネ、ハッセ・フレベリ(vo)、トマス・ボディーン(key)、ヨナス・レインゴールド(b)、フェリックス・レーマン(ds)の5人。
登場すると、まずはユニオンジャック柄を大胆にあしらったジャケットを纏うハッセに目を奪われます!赤づくめのロイネもすごいですが、こちらだって50歳。そんな出で立ちといい、長髪を振り乱して歌うロッカー然としたパフォーマンスと言い、2年前のフェスと少しも変わらない姿を見られて嬉しかったですね~。演奏をタイトかつダイナミックに躍動させる、テクニシャンのフェリックス&ヨナスも絶好調。
ボディーンも相変わらずクールな佇まいでオルガンや多彩なシンセの音色を自在に操ってフラキンのサウンドに荘厳な音の厚みを加えていきます。初期のナンバーで使われたハープシコードの音色もたまりませんでした!
13年作「DESOLATION ROSE」からのタイトルナンバーもエッジの効いたロックナンバーでライヴ映えするカッコいい演奏でしたが、個人的には前回フェスで感動的だった12年作「BANKS OF EDEN」からの「RISING THE IMPERIAL」を今回もラストで披露してくれたのが嬉しかった~。クライマックスに向けてひたすらドラマティックに歌い上げるハッセ、ブルース・フィーリングが根底に息づく天上を舞うかのごときエモーショナルなロイネのギター、このコンビネーションはやっぱり「極上」という以外に言葉がありません!
前回のフェス以降も世界中から素晴らしい新鋭バンドによる傑作が数多く登場しましたが、こうして彼らを目の前にすると、やはり彼らこそ現プログレ・シーンの最高峰だと確信できる、そんな堂々たる貫禄と瑞々しい感性をあわせ持つパフォーマンスでした。やっぱり最高ですTFK!
休憩を挟んで最後に登場したのがアトール。
「他のバンドとは全く違います」という岩本さんの意味深な前振りのあと、メンバーがステージに登場。ギター、フルート/サックス、ダブル・キーボード、ベース、ドラムスという6人による演奏が始まります。メンバーは、まだ二十歳前後のようにも見えるミュージシャンを含んだかなりの若手たち。そこにフロントマンのバルツァがオレンジと黄色の派手な装束を身に纏って登場します。
いやはや度肝を抜かれるとはまさにこのことでしょう!正直なところ全盛期メンバーがバルツァのみのアトールに若干の不安もあったのですが、本格的に演奏が始まると、そんな心配を吹き飛ばすかのごとくメンバーの超絶技巧ぶりが炸裂!特にギタリストは、クリスチャン・ベヤの快速フレーズを忠実に弾きこなしつつもロックンロールなフィーリングを加えたテクニカルかつ伸びやかなプレイが本当に素晴らしかったです!タウンゼントを思わせる風車奏法も決まってましたね~。
さて聴き所は何と言っても2ndアルバムの後半を占める「組曲「夢魔」」の再演。オリジナルよりもシアトリカルな要素をたっぷりと含んだバルツァ渾身のヴォーカル・パフォーマンスが繰り広げられます。組曲の各パートごとに衣装を変えて登場し、持ち前の美声で朗々と歌い上げたかと思うと突如絶叫をあげたり、泣き崩れるようにうずくまったり、寝転がって歌ったりと、体全体でストーリーを表現してみせる彼の姿は何かに取り憑かれたかのような鬼気迫るもので、会場中が息を呑みます。
初期GENESIS、同郷ANGEにも通じるシアトリカル・ロックの真髄を堪能させてもらった思いですね。もともとオリジナルでは決してシアトリカルな要素を押し出したサウンドではなかっただけに、まさに想像だにしていなかったステージだと言えますが、これだけのものを見せられれば拍手を送ることに何のためらいもありません!いや~素晴らしいっ!
後半は3rdアルバムからの楽曲を披露。中でも個人的に「おおっ!」となったのが「TUNNEL pt.1&2」の完全再現!ギターを中心とした最高にスリリングな変拍子アンサンブルは息つく暇もないという表現がピッタリな完成度。そこにバルツァが渾身のシャウトを響かせます。ギターがヒートアップしサックス奏者も饒舌なソロを聴かせ、演奏のテンションが最高潮に達した所で荘厳なコーラスが入って締め。オリジナル通りです!「組曲夢魔」もそうですが、まさか生でこの名曲をこの再現度で聴くことができるとは・・・!と感動もひとしおでした~。「パリは燃えているか」もやってくれましたよ!(もちろん「Tokyo!」の部分で大歓声!)
バルツァによる魂の熱唱と超絶アンサンブルとが一体となって、70年代に活躍したアトールというバンドを現在の形で見事に蘇らせていました!原曲を忠実に再現するだけでは決して味わえない、「Andre Balzer ATOLL」だからこそ生み出せるATOLLだったと感じますね。それもあの超絶技巧集団ATOLLをここまで完璧に演奏し切ってしまうメンバーの力量あってこそのもの。カイパもそうですが、発表から40年を経た作品がこれほどのミュージシャンたちによって現代に蘇るというのは本当に貴重なことだと思います。ただただその場に立ち会えたことを感謝せずにはいられません。
16時に開演したフェスですが、終了したのはなんと21時過ぎ!5時間超に及ぶ長丁場のフェスティヴァルとなりましたが、本当あっという間に過ぎてしまった印象でしたね~。時間の経過を感じさせないほどに各バンドのパフォーマンスが素晴らしかったということなのでしょう。それでは、vol.3の開催に期待を込めて!
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DVD、2枚組、帯・解説付仕様、NTSC方式、リージョンフリー、定価4800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯に軽微な色褪せ・ケースに若干汚れあり
ご存じプログレッシヴ・ロック界を代表するギタリストRoine Stolt率いる人気グループ、久々となる2枚組の2020年作。前作より加入した鍵盤奏者Zach KamminsによるHans Lundinを思わせる柔らかくも芯のあるシンセやオルガンのプレイと、Roineによる歌うように情感豊かなギターがエモーショナルに交歓する、ハードさよりもドリーミーな面を強く感じさせるシンフォニック・ロックを繰り広げます。抜群の安定感でタイトにアンサンブルを支えるリズム隊もいつもながら素晴らしいし、ハスキーながら伸びのある歌声が魅力のHasse Frobergも、熱く歌い上げる力強い歌唱と囁くようにジェントルな歌唱を織り交ぜ、表現力豊かに歌っていてさすがの一言です。S. Hackett周辺で活動するサックス奏者Rob Townshendによるジャジーで軽やかなソプラノ・サックスをフィーチャーしたナンバーも聴き所。ロジャー・ディーンの幻想的なジャケット通りと言える、夢の世界を冒険するようなどこまでもファンタジックなサウンドが胸に迫る作品。KAIPAファンなら是非!
現代北欧プログレを代表するバンドによる96年発表の3rd。ファンタジックで雄大な音の広がりとダイナミズムたっぷりのアンサンブルはデビュー作から変わらず健在ですが、本作ではシンフォニック・ロックというよりはプログレッシヴ・ロック的な骨太さがより強調された演奏が特徴的。シンフォニックで荘厳なシーンとハードタッチなサウンドで突き進むシーンとを巧みに配して劇的に進行していくアンサンブルが見事に決まっています。コンセプト作ならではと言うべき、起伏豊かなドラマ性を湛えたストーリーテリングもまた素晴らしいもので、これこそあらゆるプログレ・ファンに聴いていただきたいと思えるシンフォニック・ロックの傑作です。
オリジナルkey奏者Hans Lundinを中心に、MATS/MORGANのMorgan Agren(dr)、RITUALのPatrick Lundstrom(vo)など強力メンツによる07年作!
デジパック仕様、直輸入盤(帯・解説付仕様)、定価2600+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
ブックレット取り出し口に若干破れあり、若干圧痕あり
スウェーデンを代表する名グループ、82年リリースの5作目。打ち込みを大幅に導入した80年代然としたニューウェーブ/エレポップ・サウンドを展開。
名実ともに北欧のレジェンドと言えるシンフォニック・ロック・グループ、24年リリースの15thアルバム。女性ヴォーカルAleena Gibsonの物悲しい歌唱から幕を開け、北欧の雪原や雪深い森を映し出すような叙情的で粛々とした演奏が続く序盤から、悠然と立ち上がっていくKAIPAの世界観に惹きこまれます。Patrik Lundstromのヴォーカルも加わって、男女のヴォーカルがエモーション溢れる歌声を引き継ぐと、力強く躍動し始めるギターとシンセサイザー。この1〜2曲目にかけて徐々に熱くドラマティックに盛り上がっていく展開が言葉を喪う程に素晴らしい。この揺るぎなき音世界は彼らにしか見いだせない境地と言っていいでしょう。Hans Lundinの色彩溢れるキーボードも最高の、北欧シンフォ然としたファンタスティックで気品高い3曲目も絶品です。持ち前の圧倒的スケールと情景描写力が見事に発揮された、今作も傑作と呼ぶべき内容です。
構築的な楽曲アレンジ、美しいコーラス・ワーク、そして華やかな音像で「フランスのYES」などと評されている、フレンチ・シンフォニック・ロックを代表するグループの74年デビュー作。その内容は一聴してテクニカルさが分かる高度な演奏技術に裏打ちされたシンフォニック・ロックとなっており、デビュー作とは思えない完成度を誇る傑作です。フランス産グループに多く見られる輪郭のぼやけた雰囲気は一切無く、リズム隊を中心にした荒々しいサウンドとストリングス・シンセサイザーを中心とした叙情性で一気に畳み掛ける圧巻のサウンドです。
紙ジャケット仕様、02年デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲、ブックレット付仕様、定価2500+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
構築的な楽曲アレンジ、美しいコーラス・ワーク、そして華やかな音像で「フランスのYES」などと評されている、フレンチ・シンフォニック・ロックを代表するグループの75年2nd。前作での構築的なサウンドはさらに磨きをかけながら、ギタリストChristian Beya、ヴァイオリンのRichard Aubertの新加入が大きくバンドに影響を与え、YESの構築美やジャズ・ロックアンサンブルに加えてKING CRIMSONの屈折したヘヴィネスまで織り交ぜて聴かせています。多少荒さのあった前作から比べると、フランス産らしい耽美な質感も現れており、まさしく彼らの代表作とするにふさわしい名盤です。デジタル・リマスター、ボーナス・トラック1曲。
構築的な楽曲アレンジ、美しいコーラス・ワーク、そして華やかな音像で「フランスのYES」などと評されている、フレンチ・シンフォニック・ロックを代表するグループの78年3rd。ギターリフが印象的な彼らの人気曲「パリは燃えているか」で幕を開ける本作は、その技巧を武器に、よりタイトな演奏が光る名盤となっており、彼らの作品の中でも最もシンフォニック・プログレッシブ・ロックと呼ぶにふさわしい作品。ジャズ・ロック的なアプローチは楽曲に自然に馴染み、ストリングス・シンセサイザーなどのシンフォニックな彩りで聴かせる作風へと変化しています。
紙ジャケット仕様、02年デジタル・リマスタリング、ブックレット付仕様、定価2500+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯無
帯無、解説に若干折れあり、軽微なスレあり
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