2015年3月28日 | カテゴリー:ライヴ・レポート,世界のロック探求ナビ
タグ: ジャズ・ロック
ソフト・マシーン・レガシーの2015年3月26日の来日公演@ビルボードライブ東京に行ってまいりましたのでレポートいたしましょう。
開演30分ほど前に会場入りすると、8割ほどはもう埋まっている状況。まさにレガシー(遺産)を残してきたソフト・マシーン歴代の名プレイヤー達とゲスト参加のキース・ティペットによる共演ライヴということで、やはり注目度の高さを感じます。
ステージ後ろは全面ガラス張りになっていて、外には六本木の夜景が。上質な空間の中、ペール・エールのワンパイントを飲みながら待つこと30分。定刻通りに、幕が開くならぬ、バックの夜景に幕が閉じられ暗転。会場袖からメンバーが登場します。会場の脇から「どうも、どうも」と入ってくる感じで、反対側に陣取るベースのロイ・バビントンは、観客席をひょこひょこと横切ってステージに上がっていきましたよ。なんとも微笑ましいかぎり。
来日したメンバーは、
フリーフォームの手数多いドラミングで『5th』以降のソフツ・サウンドを支えた名ドラマー、ジョン・マーシャルが来られなくなったのは彼のドラムのファンとして個人的にすごく残念ですが、ゲイリー・ハズバンドは余りある代役と言えるでしょう。
さぁ、オープニングを飾るのは、充実の2013年最新作から、タイトル・トラックの「Burden Of Proof」。そして、アルバムの順番通り、「Voyage Beyond Seven」と続きます。
「Voyage Beyond Seven」では、クリムゾンの『太陽と戦慄』でのジェイミー・ミューアの世界に通じるような、実験的でいて幻想性もにじむフリーフォームなインプロビゼーションが繰り広げられますが、無調から浮かぶ芳醇な音の断片、そして、柔らかに紡がれる夢想的なフルートに、栄光の「英国プログレッシヴ・ロック」の伝統を確かに感じ感動します。
静謐な空気に包まれた会場を和ますようにジョン・エサリッジによるメンバー紹介へ。テオ・トラヴィスを紹介する際、「ハイ、ハロー」といった感じでにこやかに握手を求めるエサリッジのお茶目さが素敵。最後に自分を紹介しようとしたところで、テオが「僕がするよ」といった感じで割り込んじゃうところも、バンドの仲の良さを感じます。「ロンドンのMARQUEE CLUBで演奏した~」、「いやいや、MARQUEEじゃなくて、SPEAKEASYだよ」みたいな会話があったり、「He’s a Guitar Star !」「いやいや、Starsね」(←たぶん)みたいな会話をはさみつつ、今日の観客への最大のプレゼントというべき楽曲へとなだれ込みます。
エサリッジの口から、次はこれをやるよ、と飛び出したのは、な、な、なんと、「Hazard Profile」!
あの印象的なリフが力強く鳴らされて、ただただ感激。そしてそして、後半に畳み掛けるギターソロの凄いこと!
両ヒザをパックンチョみたいにパクパクと叩きながらリズムを取るスタイルは微笑ましいのですが、放たれるフレーズのテンションは凄まじい限り。時に鷲のような鋭い顔つきになり、超絶的なフルピッキングで高速フレーズをアグレッシヴに畳み掛けていきます。
終わった後、拍手喝采の中を見渡してみると、みなさん「すげぇもん見ちゃったよ」といった感じで、思わず微笑みがこぼれていました。会場全体がここに居られる幸せ、ソフト・マシーンの歴史のまさに最前にある「今」と自分の「今」とがつながっていることへの感動。鳥肌がたちました。
そして、ここで、なんと、ゲストとしてキース・ティペットが登場!
メンバー全員はラフないでたちなのですが、キースはまさに英国紳士といった感じでジャケットを着こなしていて、か、かっこいい!
静謐でいてテンション溢れるインプロビゼーションとともに、『Soft』収録の名曲「The Tale Of Taliesin」の印象的なテーマへと流れこんでいきます。カール・ジェンキンス作曲のメロディを弾くキース・ティペット。考えてみるとすごいコラボレーション。
原曲は、途中、ギアをいきなり上げて、怒涛のギターソロへと突入するのですが、今夜ソロを取るのは偉大なるインプロヴァイザーのキース・ティペット!
淀みなく流麗に紡がれるフレーズのなんと瑞々しく躍動的で、なおかつ格調高いこと!キング・クリムゾン『リザード』での名演なんかも思い出しながら、目の前で繰り広げられる、英国プログレ/ジャズ・ロックのレジェンドといえる彼の演奏に息を呑みます。
「次は、ヒュー・ホッパーが作曲した、ソフト・マシーンの偉大な名曲を演奏するよ。」という紹介ではじまったのは『3rd』収録の「Facelift」。そして、続くのは、これまたヒュー・ホッパーの曲で「Kings & Queen」!
どちらも実験的で幻想的なインプロビゼーションが間に繰り広げられますが、やはりキース・ティペットが加わるとアンサンブルの艶もまして絶品のひとこと。
ディレイをかけて、まるでシンセのような音を出すロイ・バビントンのベースや、弦をこするようにノイズを放つ奔放なエサリッジのギターなど、テクニックだけではない空間を彩るマジカルな音のセンスに、あらためて凄いメンバー達がまさに目の前に居るんだということを実感します。
早いもので、もうラスト。ラストは、新作からのナンバーで初期クリムゾンばりの荒々しいサックスが強烈な「Fallout」、そして、ドラムソロ、ギターソロ、『6』から「Gesolreat」とメドレー形式で畳み掛けます。
「Gesolreat」は、原曲とくらべてファンキーなアップテンポのアレンジで演奏されていて、これが最高にカッコいい!エレピとサックスのユニゾンだった変拍子の浮遊感あるテーマリフが、ギターとサックスのユニゾンで力強く奏でられ、ファンキーに跳ねるベースとドラムとともに最高にグルーヴィー。キース・ティペットによる鋭角に切れ込む和音、そして流麗なオブリガードも最高だし、会場を巻き込み、一体となって跳ね、強烈なインプロのコールレスポンスで畳み掛け、最高潮に盛り上がったところで本編終了。あたりまえのようにアンコールの拍手がなりやみません。すぐにメンバーがあらわれると、最後のナンバーは『Alive & Well』より「Nodder」!テオ・トラヴィスの強烈なサックスブローが凄かった・・・。
先に行われた大阪公演の感想をTwitterで目にして、ライヴの充実は知っていましたが、まさかここまでとは。ライヴ終了の後、最前列の観客が喜びいっぱいの表情でスタンディングで拍手していましたが、僕は恥ずかしくて立てなかったけど、気分は同じでしたよ。
是非、また元気なジョン・マーシャルとともに再来日してほしいし、今回の来日は彼らの最新作をリリースしたアメリカのMOONJUNEレコードも関わっているみたいだから、その時は、DEWA BUDJANAやSIMAK DIALOGなど、同じMOONJUNE仲間のインドネシア産ジャズ・ロックの好バンドたちも対バンで連れて来ちゃってください!
新たな「遺産」が生まれた瞬間に立ち会えた最高の夜でした。
all photos by jun2
1. 「Burden Of Proof」 from 『Burden Of Proof』
2. 「Voyage Beyond Seven」 from 『Burden Of Proof』
3. 「Hazard Profile」 from 『Bundles』
4. 「The Tale Of Taliesin」 from 『Softs』
5. 「Facelift」 from 『3rd』
6. 「Kings And Queens」 from 『4th』
7. 「Fallout」 from 『Burden Of Proof』 -> Drum Soro -> Guitar Solo -> 「Gesolreat」 from 『6th』
Ancole: 「The Nodder」 from 『Alive & Well』
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