2014年9月17日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: ロック&ポップス
今日の「MEET THE SONGS」は、VELVET UNDERGOUNDが68年1月にリリースした2nd『WHITE LIGHT/WHITE HEAT』をピックアップいたします。
バナナのジャケでお馴染みの67年3月リリースの1stが有名で、1stに比べるとこの2ndは大げさではなく1万分の1ぐらいの知名度しかないような気がしますが、そのサウンドのテンションとロックシーンにおける衝撃度で言えば、1stに勝るとも劣らない大傑作でしょう。
1stは、ポップアートの旗手アンディ・ウォーホールをパトロンに、彼の作業場=ファクトリーにて自由に練習を繰り広げ、ウォーホールの紹介で加入したヴォーカルのニコをフィーチャーしたニューヨーク・ポップ・カルチャーのサウンドトラックともいうべき作品だったのに対し、ウォーホールの元を離れ、ニコとも決別して制作されたこの2ndは、ルー・リードとジョン・ケイルの2人の才能がぶつかりあいスパークした、まぎれもない「バンド」の作品と言えます。
メンバーは以下の4人。
ルー・リード: Vo、ギター、ピアノ
ジョン・ケイル: Vo、ヴィオラ、オルガン、ベース
スターリング・モリソン: Vo、ギター、ベース
モーリン・タッカー: ドラム
サイケデリック・ムーヴメントに湧き上がる西海岸のサンフランシスコとは対照的に、人間の内面や都市生活の現実を虚無的に描くルー・リードの歌と歌詞。そして何より素晴らしいのは、現代音楽~アヴァンギャルドを飲み込んだジョン・ケイルの内省的=宇宙的なサウンド。
ジョン・ケイルは、ロンドン大学でクラシックや現代音楽を学んだ後、1963年にニューヨークへと渡り、現代音楽家のジョン・ケイジやラ・モンテ・ヤングと意気投合する中でドローン(持続低音)の音楽的可能性を見出したわけですが、そこでルー・リードに出会った、という奇跡は、ビートルズのジョンとポールの出会いにも負けない、ロック史上を変えた奇跡と言っても過言ではありません。
ニョーヨークの文学/フォーク・シーンの奇才と現代音楽の奇才との奇跡の出会いが生んだ強烈な磁場から発振させられたサウンドが、1stのようにポップにパッケージ化されたのではなく、むき出しで刻まれたのがこの2ndと言えるでしょう。
注)ドローンというとあまりロック・ファンには馴染みがありませんが、民族音楽では一般的で、バグ・パイプにはドローン専門の管が付いていますね。
オープニングを飾るタイトル・トラックから、伝統と革新が無造作に放り込まれた正にプログレッシヴなサウンドで畳み掛けます。
ロックンロール風ギターやホンキートンク風ピアノなど古きよきアメリカン・ミュージックの形態を借りつつも、空間を埋めるファズ・ギターや、まるで制御を失った発振器のように暴走するベースなど、アヴァンギャルドに仕立てあげられたサウンドはもう凄まじいぶっとびっぷり!
左CHに朗読、右CHにメロウなギターを配し、空間をフィードバックのドローンが埋める「Gift」、メランコリックなヴォーカルと宙を舞うヴィオラによるドローンが意識を置き去りにする「Lady Godiva’s Operation」。
ニコが歌うことを想定して書かれた1stを彷彿させるリリカルな「Here She Comes Now」、叩きつけるような硬質なギターとノイジーなフィードバック音が強烈なエネルギーを生む元祖ガレージ・パンクな「I Heard Her Call My Name」と、テンションみなぎる名曲を畳み掛けた後、待ち構えているのが、17分を超えるロック史上に残る傑作ナンバー「Sister Ray」。
尖った歪みのギターが生み出す轟音ガレージなロックンロール・ビート、そこに真っ向からぶつかり合うジョン・ケイルによるギター・アンプで強烈に歪ませたオルガン。ここまで音色をぶっ壊すと、もはやオルガンというより無調の発振器。
オルガンが象徴するカトリック中心の西洋文明とそこから発展した西洋音楽を木っ端微塵にしても、それでもまだまだケイルの勢いは収まらず、「シャワー」という形容がぴったりなほどにノイズが降り注いだり、フィードバックや不協和音が渦巻いたり、ドラムやベースもその勢いに引っ張られてドカスカと暴走するし、ルー・リードのシャウトはもはや乱痴気だし、虚無の暴走ロック、ここに極まれり。
とても『サージェント・ペパーズ』から半年後にリリースされた作品とは思えないし、ビートルズのアヴァンギャルドな名曲「Tomorrow Never Knows」から数えても、たったの1年半で、ここまでの地平へとたどり着いてしまうとは。60年代末の革新のスピード、恐るべし。
遠く先祖の地である英国やヨーロッパを視野に入れ、西海岸の楽天性とは距離を起きながら冷めた目で自己のアイデンティティを模索する中で、西洋文明やクラシックと地続きのアヴァンギャルドと、ビートニクなどニューヨークのアートシーンから生まれたフォークとがぶつかりあってスパークした青白い火花が『WHITE LIGHT/WHITE HEAT』と言えるでしょう。
60年代末のニューヨークだからこそ生まれた、1stにも負けないロック史上に残る傑作!
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ヴェルヴェッツの2ndが気に入ったリスナーのために、ユーロ・ロックのおすすめを1枚ピックアップ。
祖国からアメリカへと渡り、現代音楽ミュージシャンと交流した音楽家がもう一人、ドイツにも居たんです。
その名は、イルミン・シュミット。元々はクラシック畑のミュージシャンだったのですが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを見たことでロックに可能性を見出し、ドイツに帰った後に結成したバンドがカン。
こちらの記事で特集しておりますので、チェック是非!
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VELVET UNDERGROUND『White Light/White Heat』を出発点に、他の作品へとカケハしながら、世界のアンダーグラウンド・ロックをレコメンド!
解説・歌詞対訳元から無し、定価1200、全11曲
盤質:無傷/小傷
状態:並
帯有
カビあり、帯に折れあり、側面部に色褪せあり
今でこそ大名盤と知られる本作ですが、発売当初はなんとビルボード171位が最高。Lou ReedとJohn Caleという希有な2人の才能がぶつかりあってできた時代の先を行きすぎた傑作。「Femme Fatale」や「I’ll Be Your Mirror」などNicoの歌唱も絶品。
John Cale脱退後、新メンバーDoug Yuleが加入し制作された69年発表のメロディアスな3rdアルバムがこちら。John Cale脱退に伴い、より一層、Rou Leedの音楽性が開花した一枚。後のオルタナティヴ・ロックやギター・ポップの祖としても位置づけられる本作は、砂糖菓子のような甘いメロディとヨレヨレのファズ・ギター、オルガンのラフな音像がどこまでも耳に心地良い作品。前作「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」の暴力性とPOPなメロディーが絶妙なバランスで両立した好作!
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