2021年10月7日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
今回は、ノルウェーのプログレ新鋭グループAIRBAGにフォーカスしてまいりたいと思います。
AIRBAGはノルウェーの首都オスロの出身。学校のクラスメートだったミュージシャンによって04年に結成されます。
自主制作で06年に1stEP『Come On In』、同年に2ndEP『Sounds That I Hear』、08年に3rdEP『Safetree』をバンドのサイト上にフリーで公開したところ、何十万回ものダウンロードを記録するなど、世界各国のプログレファンから注目を集めます。
09年のはじめにノルウェーのKARISMAレーベルと契約し、同年リリースされたメジャーデビュー作が『Identity』です。
柔らかく幻想的にたなびくキーボード、繊細なタッチで夢想的にゆったりと伸びやかに奏でられるリード・ギター、エモーショナルかつ透明感ある美しい歌声、そしてメランコリックな詩情溢れるメロディ。
ピンク・フロイドに通じるどこまでも映像喚起的でメロディアスなアンサンブルを、北欧らしい透き通ったサウンド・プロダクションで仕立てたサウンドはデビュー作とは思えない圧倒的な完成度。
まるでキャメルが描く幻想世界にギルモアのギターがとめどなく鳴り響き、ポーキュパイン・ツリーのスティーヴ・ウィルソンがモダンな音響センスを加えた感じ。
本当に気持ちよすぎるサウンドです。
メジャーデビュー後はライヴ活動も勢力的に行い、MARILLION、RIVERSIDE、RPWL、GAZPACHOらとツアーを共にします。
1stからシングル・カットされた「Colours」は、ポーランドのラジオチャートでトップ3に入るなどヒットします。
デビュー作から2年後の2011年、2nd『All Rights Removed』をリリース。
17分を超える大曲「Homesick(I-III)」で聴けるように、デビュー作のピンク・フロイド直系のメロウなサウンドはそのままに、エッジの立ったギターが無機的かつエモーショナルに炸裂したり、艶やかなストリングスが伸びやかに旋回したり、ムーグ・シンセが夢想的にたゆたったり、鮮やかな音像が次々と描かれる、よりスケールを増したサウンドが印象的。
各音が心地よくも目の覚めるようなキレ味とともに体中を駆け抜けていく深淵かつ爽快な傑作!
そして、2013年にリリースされた3rdアルバムが『Greatest Show On Earth』。
デビューからの持ち味である幻想的にたゆたうようなメランコリックな音像とともに、よりヘヴィネスを増したギターとよりエモーショナルを増した力強いヴォーカルによるアグレッシヴなパートも巧みに配し、ひと際、スケールとダイナミズムを増した構成が印象的。
音が現れては虚空へと消えていくような儚さとともに、ロック的ダイナミズムも併せ持つアンサンブルのスケールは、本家ピンク・フロイドに比肩すると言っても過言ではないでしょう。
これはまさにグレイテスト!
前作より3年を経た16年に、4thアルバム『DISCONNECTED』をリリース。
エコーに包まれたリズムギターや幻想的に広がっていくシンセによる音響感覚豊かなアンサンブルはますます冴え渡っています。
デビュー以来の魅力である、フロイドからの影響にポーキュパイン・ツリーあたりのモダンな感覚を織り交ぜたサウンドはそのままに、今まで以上にしっとりと艶やかな叙情美が増したメロディが胸に切なく響き渡る佳曲ぞろい!
『炎』『アニマルズ』『ウォール』あたりの叙情的なナンバーが好きならグッとくること間違いなしの、ずばり彼らの最高傑作。
前作より4年、2020年にとうとうリリースされた5thアルバムもさすがの出来栄えでしたね。
PINK FLOYD影響下の仄暗くメランコリックな叙情美はそのままに、本作ではエレクトロニクス要素を大幅に導入し、一層スタイリッシュに洗練されたサウンドを展開。
強靭かつ反復的なリズム隊のビートにスペーシーなシンセサイザーのシーケンスが合わさったパートなどはかなりモダンな仕上がりを見せていて新境地。
一方で優美で切ないメロディやギルモアを思わせるエモーショナルなギター・ソロ、しっとりと翳りを帯びたヴォーカル、そして壮大で起伏に富んだダイナミックな曲展開など、従来のスタイルをより突き詰め完成度を高めてきた印象も強いんですよね。
PINK FLOYDファンはもちろん、PORCUPINE TREEやSteven Wilsonのソロが好きな方にも是非オススメの充実作です。
バンドのサイドワークとしてはギタリストのBjorn Riisの活動が特筆。2014年と17年の2枚のソロをリリースしていますが、これがまた素晴らしい!!
ギルモア直系のエモーションはそのままに、ブルース色をなくし透明度高く幻想的にしたようなギターサウンドを駆使した、雪深い北欧の自然世界が眼前に映し出されるかのような映像喚起的な魅力を持つ一枚に仕上がっています。
まさに北欧からしか生まれ得ない音世界を構築した名品と言えるでしょう。
「ピンク・フロイド+北欧らしい静謐な叙情美」と言える貫禄の19年作。
ジャズ色も織り込み静寂を描写するような繊細な音世界がひたすら素晴らしい…。
AIRBAGや前ソロでも印象的だった、ギルモア直系のエモーショナルなギターも炸裂!
いかがだったでしょうか?
フロイド・タイプの新鋭と言えば現在ポーランドが強いですが、このAIRBAGはじめ北欧からも良いバンドがどんどん登場してきてますね!
下記特集ページから世界のフロイド・タイプの新鋭をまとめてチェック☆
90年代に結成されたノルウェーの新鋭プログレ・バンド、09年デビュー作につづく11年作2nd。キャメルが描く幻想世界にギルモアのギターがとめどなく鳴り響くような映像喚起的なデビュー作の延長線上にあるサウンド。メランコリックかつ北欧的な透明感も感じる美声のヴォーカル、ゆったりとメロウに紡がれるギルモア直系のギター、透き通ったトーンで視界がパッと開けたように気持ちよく広がるキーボード。そんな『狂気』以降のフロイドのサウンドを彷彿させる幻想的なパートを軸にしつつ、エッジの立ったギターが無機的かつエモーショナルに炸裂したり、艶やかなストリングスが伸びやかに旋回したり、次々と鮮やかな音像を描きます。各音が心地よくも目の覚めるようなキレ味とともに体中を駆け抜けていく深淵かつ爽快な作品。デビュー作からさらにスケールを増した傑作です。
04年結成、ピンク・フロイドからの影響が色濃いノルウェー出身のプログレ・バンドによる、2020年秋にレコーディング・スタジオで行なわれたアコースティック編成の配信ライヴの模様を収録。フロイドのアコースティックなナンバーに北欧らしい雪原が浮かび上がる荘厳さを加えたようなアコギ・アンサンブルに、繊細で情緒豊かな英語ヴォーカルが切ない歌を乗せます。名手Bjorn Riisと思われるブルージーなソロは、アコギながらギルモアの面影が宿るエモーションを湛えていてやはり素晴らしい。20年作『A DAY AT THE BEACH』からのナンバーを中心に、09年デビュー作『IDENTITY』のナンバー、そして未発表曲もプレイ。数多いフロイド憧憬の新鋭でも屈指の実力派による息をのむようなアンプラグド・ライヴです。
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