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スティル・ライフの71年唯一作『Still Life』 – MEET THE SONGS 第134回

今日の「MEET THE SONGS」は、英VERTIGOレーベル屈指のオルガン・ロック・バンドSTILL LIFEの70年唯一作『Still Life』をピックアップいたしましょう。

内ジャケにメンバーの写真が掲載されているのみでメンバークレジットはなく、ヴォーカルの声質が似ていることもあってVAN DER GRAAF GENERATORの変名バンドという噂が出るほど長らく謎に包まれていました。

それがなんと2002年、バンドの謎に迫ろうとサイトを運営していたイタリア人音楽ファンの元に、ドラマーだったAlan Savageからメールが届き、バンドの情報、当時の状況が明らかになったのです。

明らかになったアルバム録音時のメンバーは、

Martin Cure: vocal
Terry Howells: keyboards
Graham Amos: bass
Alan Savage: drums

出身地は、バーミンガムにほど近いコヴェントリーで、63年に前身バンドSABRESが結成されました。その後、バンド名を何度か変更しながら活動を続け、68年にはRAINBOWSというバンド名で、CSBに2枚のシングルを残し、ハンブルグでもライヴを行います。

「RAINBOWS / Nobody But You」

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その当時のギタリストRoy Albrightonは、ハンブルグ公演のあとそのままドイツに残り、NEKTARを結成。STILL LIFEとNEKTARがこうしてつながるとは!

イギリスに戻るとドラマーがAlan Savageに交代し、アルバム録音時のメンバーが揃います。バンド名をSTILL LIFEと変更。Nova Sound Recording Studioにて録音され、71年にVERTIGOレーベルよりリリースされた作品が『Still Life』です。

キーフによる淡い色合いのジャケットの通りの幻想的なオルガン・ロックで、1曲目の「People In Black」から強力。

「People In Black」

オープニングのミスティックなフルート、それに続く幻想的でエモーショナルなヴォーカルから期待が高まります。それにしても、大きくダイナミックに揺れるハイ・トーンのヴィブラートが心を揺さぶるヴォーカルは無名で終わったとは思えない素晴らしさ。ピーター・ハミルやデヴィッド・バイロンにも比肩すると言っても過言ではない本格派と言えるでしょう。いやはや、この時代の英ロックの底力たるや恐るべし。

そして、ヴォーカルとともに魅力的なのが、ストレートでナチュラルな音色の淡いオルガン。クラシカル&ジェントルなフレーズとともに、音色はそのままにグワーンとワイルドに弾き倒すアグレッシヴな演奏がなんともカッコ良い!音色とは正反対の「けたたましい」と形容できるほどのアグレッシヴな演奏に痺れます。鋭角なリズム・チェンジとともにオルガンがワイルドにうねるクラシカルなキメはこのグループの持ち味と言っていいでしょう。

後半に向かって熱を帯びていき、5分過ぎには、オルガンによるクラシカルな高速フレーズが炸裂。幻想的なパートとワイルドなパートの間をダイナミックに展開していきます。

英国的なメロディ・ラインも素晴らしく、VERTIGOレーベルの中でも屈指と言える名曲でしょう。

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「Don’t Go」

2曲目は一転して、PROCOL HARUMばりのクラシカルなハモンドとTRAFFICに通じるアーシー&スワンピーなエッセンスが効いたR&Bロック。

スティーヴ・ウィンウッドばりのソウルフルな歌声を聴かせるのは、クレジットはないものの、1曲目とは異なるヴォーカリストでしょうか。こちらもまた魅力的。1曲目のヴォーカルによるハイ・トーンのハモリがまた幻想的でグッときます。

1曲目でのドラマティックなハード・ロック的エッセンスの根っこに、R&Bの確かな素養があるのが分かります。サウンドから香る芳醇さは、同じような出自を持つアフィニティとも共通しているでしょう。

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アフィニティも60年代はじめから活動していましたが、R&B~サイケデリック・ロックに湧いた60年代を下積みとして通過しながらライヴでたたき上げた確かな実力と、革新を続けるロック・ムーヴメントの空気とが合わさりつつ、もしかするとバンドのラスト・チャンスかもしれない、と言ったデビュー作らしからぬ悲壮感とが化学反応をおこし、この71年という時代ならではの「淡く」「陰影に富んだ」サウンドを生みだしているのかもしれません。

栄光の大英帝国ロックの影でその実力を粛々と刻み込んだ、愛すべきブリティッシュ・ロック名品!

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  • STILL LIFE / STILL LIFE

    71年発表、VERTIGO発、クラシカルかつ陰影に富んだ英国オルガン・ロック、名作!

    VERTIGOレーベル発のプログレッシブ・ロックを代表するグループの71年唯一作。メンバー編成すらクレジットされていないため長らく謎に包まれていたグループですが、その内容はCRESSIDAなどと並ぶ英国ロックの代表作であり、イギリスらしい重厚な質感を持ったブリティッシュ・ロックという趣です。ブルージーでハードに盛り上げながらもジェントリーな響きを持ったバンド・アンサンブルは英国然とした湿り気と翳りを内包させており、ギターやフルートの彩りを交えながらもそのバンド・アンサンブルを引っ張るのはアグレッシブに弾き倒しを見せつつ懐の深いプレイを聴かせるハモンド・オルガン。英国の芳醇な香りを放つ名盤です。

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