大陸的スケール感と抜けの良いキャッチーさが魅力の北米プログレをテーマに、アメリカン・プログレの最高峰KANSASの「LEFTOVERTURE」、新鋭からはカナダ出身の技巧派グループDRUCKFARBENの14年作2nd「SECOND SOUND」をご紹介してまいります。
英国や他のユーロの国々にはないアメリカン・プログレならではの魅力と言えば?パワフルかつワイルドに歌い上げるヴォーカル、ワンフレーズで聴き手を引きつけるヌケが良くキャッチーなメロディ、大陸的スケール感を感じさせる雄大な曲構成などが挙げられるのではないでしょうか。
そしてそれらすべてを見事体現した、これぞアメリカのプログレ!というべきバンドを挙げるなら、やはりこのKANSASしかありませんよね。
KANSASは70年に結成され、現在に至るまでアメリカン・プログレの頂点に立ち続けるグループ。
そのサウンドは、火花を散らして拮抗するキーボードとギター、時にスリリングに疾走し時にロマン溢れる旋律を響かせるヴァイオリン、そしてフック満載のメロディを力強く歌うヴォーカルによって描き出される、壮大なスケールを誇るファンタジック・プログレです。
テクニック、構築性ともにまぎれもないプログレッシヴ・ロックでありながら、プログレ特有の複雑で小難しい印象を全く抱かせない抜けるようなサウンドはアメリカン・プログレならではの魅力。そんな彼らの音楽性が一枚に集約された76年発表の「LEFTOVERTURE」から、KANSASを、ひいてはアメリカン・プログレそのものを代表するこの一曲をお聴きください。
ハードに唸りを上げるギターとSteve Walshのロック然とした気高きヴォーカルが胸を熱くさせる素晴らしいナンバー。プログレ的構築美とキャッチーかつドラマティックなメロディが完全な融合を果たした、全米11位の大ヒットも納得の名曲ですね。
こちらも名曲。ヴァイオリンが活躍するファンタジックなアンサンブルから後半の超絶インスト・パートへと切り替わる瞬間のスリルと言ったらありません。
70年代にはプログレ不毛の地とも言われたアメリカが現在良質なプログレ・バンドたちの宝庫となっているのは、ひとえに彼らを始めとするバンドの活躍により、プログレという音楽が脈々と現代へと引き継いがれていったからなのではないでしょうか。それを考えながら彼らの音を聴くと、なかなか感慨深いものがありますよね。
さて、そんなKANSASを受け継ぎつつも英国プログレの名バンドたちからの影響も同時に感じさせる新鋭グループをご紹介いたしましょう。
DRUCKFARBENは、カナダのトロント出身の5人組技巧派プログレ・グループ。Billy Sheehan’s Talasに在籍していたヴォーカリストPhil Naroが参加しているバンドです。11年にデビュー作をリリースし、14年リリースの本作が第2作となります。
彼らのサウンドは、KANSASやRUSHなどの北米プログレの代表的バンドたちからの影響下にありながらも、YESやGENTLE GIANTら英国プログレの名バンドのサウンドからもヒントを得ているのが特徴。
流れるようなヴァイオリンを伴って圧巻のテクニックで突き進むプログレ・ハード的アンサンブルはまさしくKANSASを、変拍子が入り乱れてよりアグレッシヴな展開へと進む場面はRUSHを、スッと緊張感が抜け抑制されたクールネスと陰影豊かなリリシズムが生まれてくる所では、英国プログレの要素をそれぞれ感じさせます。
英米プログレの美味しいところを一つにしたとも言えるサウンドですが、その融合を可能にしているのはバンド自身の類まれなるテクニックと音楽センスによるものなんですよね。
ではその辺りがよく現れた本作からの音源をお聴きください♪
ギターの緊密なプレイとヴァイオリンの美しくしなやかをプレイを軸に変幻自在に紡がれるテクニカルなアンサンブル、ハードな演奏にもファンタジックな煌びやかさを加える絶妙なセンスのキーボード、ジョン・アンダーソンを思い出さずにいられないハイトーンのエモーショナルなヴォーカル、そしてひたすらキャッチーで飛翔館に溢れたメロディ。ずばり絶品ですね~。
キャッチーでヌケの良い北米プログレをテーマにお送りいたしました。シンフォ系からレコメン系まで、ハイレベルかつ多様な音楽性がひしめき合う北米プログレシーン。一体次にどんなサウンドが生まれ注目を集めるのか、目が離せませんね!
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