2023年10月24日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
カケレコ・ユーザーの皆さん、こんにちは!
2000年代以降のポーランドのプログレ・シーンの勢いは、目を見張るものがあります。
その震源は、同国トップ・グループのMILLENIUMを率いるRYSZARD KRAMARSKI、そして彼が運営するレコード・レーベルのLYNX MUSICでしょう。
現在ポーランドから登場する新鋭の多くは、このLYNX MUSICを通じて世界に配給されています。
しかしこういった場合、どうしてもLYNX MUSIC以外のレーベルから登場するアーティストを見落としがちですよね。
カケレコにはLYNX MUSICに所属していない優れた音楽性のアーティストによる作品も入荷していますので、その中から今回はTHE POKSをご紹介します!
2015年にポーランド南部の都市クラクフで結成されたのが、THE POKSです。
メンバーは、ギター・ヴォーカリスト、ギタリスト兼キーボーディスト、ベーシスト、ドラマーの4人編成。
彼らは、ブリティッシュ・インディー・ロック、フォーク、アイスランドのポスト・ロックなどから影響を受け、独自のポスト・ロックを作り上げました。
リリースは、ポーランドのOSKAR(ポーランドのAMAROKやオランダのFLAMBOROUGH HEAD周辺のアルバムなどをリリース)です。
THE POKSはこれまでに2枚のミニ・アルバムを発表していますが、本格的にプログレ・シーンに登場するのは2023年のフル・アルバム『JA CZLOWIEK』が初めて。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)とパンデミックにより自由な行動が制限されていた間、彼らは本作の制作に注力していたようです。
本作のアルバム・コンセプトは、「矛盾に満ちた人間という存在」。
アルバムには、成熟した文明社会の中で欲望と所有に囚われている現代の人間を冷静に見つめた楽曲が収められており、自分以外の他者や地球を敬う重要性を示しています。
それでは、アルバムから数曲を試聴していきます。
まずは、アルバムのオープニングに収められた「Cale Zlo」を聴いてみましょう。
THE POKSの音楽的特徴は、1曲目から顕著に表れています。
荒涼とした大地を想起させるアトモスフェリックな音色からは、確かにSIGUR ROSやMUMなどアイスランドの音楽グループたちを思い浮かべるでしょう。
もちろん、ポーランドのプログレッシヴ・ロック・アーティストらしい物憂げなサウンドも持ちあわせています。
続いて、2曲目の「Czlowiek」を聴いていきましょう。
まさにポスト・ロックという趣の曲ですね。
1曲目に続いて、やはり北欧の新鋭プログレ・バンドのようなサウンドに、東欧のメランコリーが漂います。
では続いて、4曲目の「Anyone」を聴いていきましょう。
この楽曲で注目したいポイントは、現代的な音色の使用です。
ポーランドのプログレッシヴ・ロックのひとつの特徴として、70年代懐古的なサウンドではなく現代的な音色を使用する傾向が強い点が挙げられます。
特にシンセサイザーなどのデジタル機材については顕著で、メロトロンやハモンド・オルガンよりもデジタル・シンセサイザーを好んで使用するミュージシャンが多いようです。
この曲でも、ダンス・ミュージックに使用されるようなデジタル・シンセサイザーのアルペジオが使われています。
では最後に、7曲目の「Ton」を聴きましょう!
本作はスロー・テンポの楽曲がほとんどであり、飽和するようなサウンドにゆったりと身を委ねることができます。
メロディーも美しいですし、ファルセットも素晴らしいですよね。
本作は、アルバム全体が統一感のあるカラーで仕上げられているのがとてもプログレッシヴ・ロック的で好印象です。
いかがでしたか?
ポーランドでは、LYNX MUSIC所属アーティスト以外にも素晴らしいアーティストたちが活動していることがお分かりいただけたかと思います。
カケレコでもそういったアーティストたちの動向を注意深くチェックし情報発信していきますので、今後ともよろしくお願いします!
15年結成、ポーランドはクラクフ出身の4人組グループによる23年1stフル・アルバム。英国のインディー・ロック/フォークの他、アイスランドのポスト・ロック・シーンに影響を受けたと紹介されており、静謐に奏でられるピアノやエレクトロ音響が作り出す格調高くもメランコリックなサウンドは、なるほどSigur Rosを想起させる彼岸的美しさを湛えています。一方で曲によっては『WISH YOU WERE HERE』あたりのPINK FLOYDを電子音響によって再解釈したような印象も抱かせ、プログレ的なダイナミックでスケール大きい曲展開を随所で見せていて素晴らしいです。哀愁を帯びたポーランド語ヴォーカルを粛々と聴かせていたと思うと、ここぞではファルセットを用いた美しいスキャットも披露する、劇的な男性ヴォーカルの歌唱も見事。厳かさと美しさ、劇的さが渦巻くような孤高の音世界に惹きこまれる注目作です。
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