2023年8月4日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
名盤からディープな作品、そして注目の新鋭まで、ユーロ諸国で誕生した様々なプログレ/ロック名作を掘り下げていく「ユーロ・ロック周遊日記」。
今回は、カケレコ一押しのイタリアン・プログレ23年作を取り上げたいと思います!
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21世紀のイタリアン・プログレッシヴ・ロックを語る上では絶対に外せないミュージシャンのひとり、Fabio Zuffanti。
彼はFINISTERREやHOSTSONATEN、LA MASCHERA DI CERAなどのバンドを主宰し目覚ましい活躍を果たしていますが、その背景には、彼が全幅の信頼を寄せるバンド・メンバーたちの貢献があります。
今回は、古くからFabio Zuffantiのプロジェクトに参加しているキーボード・プレイヤーLuca Scheraniの23年ソロ・アルバム『Everything’s Changing』を取り上げていきましょう!
ジェノヴァ出身のキーボード・プレイヤーLuca Scheraniは1998年、ネオ・プログレ・グループのTRAMAのメンバーとしてMellow Recordsからデビューしました。
TRAMAはわずか1枚のスタジオ・アルバムを残し活動を終えてしまいましたが、その後、2018年にLuca Scheraniを含む編成で復活作『Oscure Movenze』を発表しています。
Luca Scheraniは2000年、Fabio ZuffantiとVictoria Hewardの連名によるロック・オペラ『Merlin』にキーボード・プレイヤーとして参加すると、FINISTERREやHOSTSONATEN、ARIESなどFabio Zuffantiのプロジェクトに次々と参加し、プログレ・ミュージシャンとして頭角を現していきました。
また彼は、2007年に結成されたLA COSCIENZA DI ZENOに正式メンバーとして参加している他、近年では、フィンランドのプログレ・プロジェクトSAMURAI OF PROG関連作にも常連メンバーのひとりとして名を連ねています。
さて、ソロ・アーティストとしてのLuca Scheraniはこれまでに3枚のスタジオ・アルバムを発表していますが、特に2012年の3rdアルバム『Everything’s Waiting』はプログレ・リスナーから高評価を受けました。
それから10余年を経て発表されたのが23年作『Everything’s Changing』です。
Track1 『Piccole gocce』
23年作『Everything’s Changing』の特筆すべき点は、Luca Scheraniによる本格的な楽曲、そしてヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、ハープ、フルートといったクラシカルな楽器のプレイヤーたちによるシンフォニックな味付けにあります。バンド楽器を排し、室内楽的なアプローチで聴かせるオープニングから、Luca Scheraniのハイ・レベルな才能が感じられます。
Track2 『Il discorso』
この楽曲は、まさにイタリアン・シンフォニック・ロックならではと言える素晴らしい展開が魅力!クラシカルな気品と艶やかさで聴かせる前半、ワルツのリズムがゴシックな印象を与える中盤、そしてバンド・サウンドがダイナミックに主張する後半を飽きさせずに聴かせます!
Track5 『Un viaggio verso un sogno』
Luca Scheraniはマルチ・プレイヤーで、キーボードの他にアコースティック・ギターやベースなどもプレイしています。
この楽曲には、なんとDELIRIUMのサックス・プレイヤーMartin Frederick Griceがゲスト参加!
Track12 『Il Cosmo』
アルバム終盤もドラマティックなシンフォニック・ロックを展開!MIKE OLDFIELDの天上の響きにも通じるような雄大なサウンドが素晴らしい!
いかがでしたか?HOSTSONATENやLA MASCHERA DI CERAは知っていたけれど、メンバーのソロ・アルバムまではチェックしていなかった、という方も少なくないのではないでしょうか。
本作にはHOSTSONATENやLA MASCHERA DI CERAのアルバムにも名前が登場するミュージシャンたちが多数参加していますし、音楽的にも共通点が感じられる内容となっています。
イタリアのクラシカルなシンフォニック・ロックがお好みの方には、自信を持って推薦させていただきます!
HOSTSONATE、LA COSCIENZA DI ZENOなど現イタリアン・シンフォの有力グループで手腕を振るうキーボーディストによる23年3rdソロ作。クラシカルなシンフォがお好きなら本作は絶対聴いて欲しいです。冒頭、リリカルな気品に満ちたピアノ、七色に輝くシンセ、淡く湧き上がるオルガンらキーボード群と美麗な管弦楽器が絡み合い描くクラシカル・シンフォで、早速聴き手を途方もなくロマンティックで格式高い音世界へと惹き込みます。細やかで流麗な音運びのピアノ、ピッチとトーンを自在に操るセンスみなぎるシンセのプレイが特に素晴らしい。管弦をメインに本格派の室内楽を聴かせる楽曲の美麗さも特筆だし、重厚なリズム・セクション&管楽器をフィーチャーしパワフルで少しジャジーに展開するナンバーもまたカッコいいです。インスト中心ですが、数曲でドラマチックに歌い上げる男女の伊語ヴォーカル、最終曲の本格的なオペラ・ヴォーカルとイタリアン・プログレらしい歌もちゃんと楽しめるのも嬉しいところ。さすがはHOSTSONATENのキーボーディストと唸らずにはいられない、一キーボーディストの才能に留まらぬ完成度で作り上げられた傑作!
FINISTERREを率いた奇才Fabio Zuffantiを中心に、ムゼオ・ローゼンバッハやイル・バレット・ディ・ブロンゾなど70年代のグループに敬意を払い、そのサウンドを再現することをコンセプトに結成したグループ。02年の1st。メロトロン、ピアノ、フルートをフィーチャーし、BANCOやMUSEOなど70年代の往年のプログレ然としたサウンドが印象的。さすが元FINISTERREで、センス、テクニックともに抜群。力強くも精緻なアンサンブル、「静」と「動」を鮮やかに配置したダイナミックな構成、胸を締め付けるリリシズムなど、イタリアン・シンフォ好きにはたまらない作品に仕上がっています。名作。
FINISTERREを率いた奇才Fabio Zuffantiを中心に、ムゼオ・ローゼンバッハやイル・バレット・ディ・ブロンゾなど70年代のグループに敬意を払い、そのサウンドを再現することをコンセプトに結成したグループ。03年作2nd。70年代イタリアン・ロックへのオマージュに溢れていた1stに比べ、ぐっとモダンに仕上がっています。哀愁を幾分抑え、その分、ダークな攻撃性や現代的なヘヴィネスが増した印象。ただ、メロトロンの洪水やむせび泣くフルートは相変わらず。現代版イタリアン・シンフォの一つの完成形と言えるでしょう。圧倒的なスケールで聴き手に襲いかかる名作。
FINISTERREやLA MASCHERA DI CERAの中心人物Fabio Zuffantiによるプロジェクト・グループ。08年作。「四季」を表現したコンセプト・アルバムで、メロトロンやキーボードをフィーチャーした壮大なシンフォニック・ロックに仕上がっています。ファンタスティックなパート、静謐なパート、ダークで荒涼としたパートなど、イメージ喚起力のある雄弁なアンサンブルが次々と溢れてきます。アコースティックな「静」とヘヴィな「動」との対比も鮮やか。70年代イタリアン・プログレ直系のサウンド・プロダクションもたいへん素晴らしい。オール・インスト。シンフォニック・ロックの名作。
イタリアン・ロック界の奇才Fabio Zuffantiが率いるシンフォ・プロジェクト・バンド。本作は、12年に発表された『RIME OF THE ANCIENT MARINER』を、役者とダンサーが歌い、踊り、演じる、舞台の映像と音源を収録したもの。バンドも舞台上で演奏しており、音源だけでも十分にドラマティックだった本作が、舞台上で繰り広げられる役者の演技によって、その深く壮大な世界観をさらに味わえるようになっています。CDのほうは、バンドのライヴアルバムという聴き方をしてもやはり素晴らしい完成度。オリジナルの12年作には未収録だったパートも追加されており、聴き所となっています。仕掛け人であるこのFabio Zuffantiという方の多才ぶり、やはり半端ではありません。彼の一ミュージシャンに留まらない溢れんばかりの創造性を堪能したいという方には、是非ご覧いただきたい作品です。
盤質:無傷/小傷
状態:良好
盤に小さい汚れあり
97年のイタリア公演とフランス公演を収録したライヴ・アルバム。やはり、このグループは演奏レベル高いです。スタジオ作の精緻さはそのままに、ロック的ダイナミズムを増幅したアンサンブルは、ライヴとは思えない圧巻の完成度。
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