2020年4月9日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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こんにちは。
スタッフ佐藤です。
今回は、チェコで活動中のプログレ・グループDIFFERENT LIGHTによる2019年作4th『BINARY SUNS(PART1 – OPERANT CONDITION)』にフォーカスしてまいります!
まずは、本作より1曲どうぞ♪
輝かしい響きのピアノ、メロディアスに歌うギターらが彩る、ポップ・フィーリングいっぱいに心地よく広がるサウンドが素敵ですよね。
こんな素晴らしいサウンドを鳴らすDIFFERENT LIGHTですが、実は結成から四半世紀を超えるベテラン・グループ。
良い意味で円熟味とは無縁と言える瑞々しくフレッシュな音作りが魅力的です。
では、そんな彼らの来歴を簡単に追ってみましょう。
DIFFERENT LIGHTは現在チェコで活動するグループですが、上記のオリジナル・メンバーはマルタ共和国の出身。マルタはシチリア島の南に位置する地中海上の島国で、イギリス領に属しています。
1994年に結成されたDIFFERENT LIGHTは、90年代を通じマルタ国内で活動。96年に1stアルバム『All About Yourself』でデビューを果たしました。98年にはマルタの音楽フェスでFISH(元MARILLION)のサポートを務めるなどして活躍しますが、99年に一度活動休止を迎えます。
1stアルバムより。同時代のギターポップやオルタナの影響も感じる、ギター主体の爽やかなメロディアス・プログレが気持ちいいですよね。
次に彼らの活動が再開されたのが、2008年のチェコ・プラハ。一部メンバーが現地のミュージシャンHynek Kocourek(ギター/ヴォーカル)とPetr Lux(ギター/ヴォーカル/プロデュース)に交代、マルタ/チェコの混成バンドとなったDIFFERENT LIGHTは、09年に2nd『Icons That Weep』をリリース。MOON SAFARIを彷彿させる、キャッチーかつ流麗なメロディメイクと確かなテクニックに裏打たれた端正な演奏で、親しみやすくもドラマチックに聴かせる力作です。
前作にあたる16年の3rd『The Burden Of Paradise』では、Trevor Taboneを除くメンバーがチェコ人メンバーへと交代。本作に繋がるピアノを大きくフィーチャーしたシンフォ・スタイルを確立しました。
それでは改めて、19年作『Binary Suns』に注目してまいりましょう。現メンバーはこちら。
元々親しみやすいメロディ作りに秀でたグループでしたが、一層ポップ・フィーリングに磨きがかかった本作を表現するなら、ずばり「ベン・フォールズがプログレやったら?」。
メロトロンも駆使したシンフォニックなサウンドではありますが、最も特徴的なのは、全編を通して流麗に響きわたるピアノと、ポップで躍動感たっぷりのメロディ、そして繊細かつ清涼感あるコーラスワーク。
と来れば、思い浮かぶのは現代ピアノ・ロックの代表的ミュージシャン、ベン・フォールズ。
そんなリリカルなピアノ・ロックを軸に、GENESISからの影響も加味したファンタジックなシンフォ・スタイルが組み合わされて、「シンフォニック・ロック+ポップス」の一つの理想形を形作っていると言って良いでしょう。
それでは、アルバムより注目曲を聴いてみましょう♪
Two Faces
無邪気に跳ねるようなピアノのタッチにベン・フォールズが最も感じられるのがこの曲。構築的な展開や音数の多いギターソロこそプログレチックですが、この耳当たりの良さはもうポップスと言っても問題ないのではないでしょうか。無垢なコーラスも美しいし、言うなれば「ベン・フォールズのバックをムーン・サファリが務めたら?」って感じ!
Spectres and Permanent Apparitions
21分の大作ですが、ピアノ弾き語りをタイトに刻むリズム・セクションや歌うようにメロディックなギターが壮大に盛り立てるようなスタイルは、まさにベン・フォールズが長尺シンフォに挑んだかのようなサウンド。ギターやシンセの音運びにはポンプ・ロックに通じる劇的さがあって、演奏にダイナミックな起伏を生み出しています。とめどなく溢れる美メロを追っているとあっという間に時間が過ぎてしまうマジカルな一曲!
ここまでこなれたポップス的センスをプログレの中で発揮しているのって、本当にムーン・サファリくらいじゃない?ってほどに、「シンフォニック・ロック+ポップス」が様になっているこのDIFFERENT LIGHT。
本作に触れれば、「プログレってなんとなく難しい音楽」という印象が一瞬で氷解しちゃうはず。
是非注目していただければと思います。
94年結成、地中海に浮かぶ島国マルタ共和国出身で、現在はチェコを拠点とする新鋭グループによる2020年作。これは素晴らしいです!全編を彩る流麗なピアノ、叙情たっぷりのフレーズを次々と奏でるドラマチックなギターが印象的なメロディアス・プログレなのですが、特筆はビックリするくらいにポップで親しみやすいメロディ。少年のような実直さと優しさを感じるヴォーカルに瑞々しいコーラスが絡むスタイルは、メロディの良さも相まって、MOON SAFARIも想起させるほど。そんなサウンドを雄大に盛り上げるメロトロンの使い方も見事です。21分の大作は、GENESIS的な英国叙情やSPOCK’S BEARDに通じる洗練されたモダンな構築性を発揮しながら、ひたすらキャッチ―なメロディが紡がれ続ける名曲で興奮必至です。演奏面ではピアノの存在が大きく、Ben Foldsばりのピアノ弾き語りポップスにシンフォニックな味付けをしたようなスタイルとも言えるかも。四半世紀の活動歴を持つバンドとは思えないサウンドの鮮度に驚かされる愛すべき一枚。カケレコメンド!
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