2019年11月12日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
こんにちは。スタッフ増田です。
ここ最近は過ごしやすい日が続いていますね。とはいえ徐々に落ち葉も舞い始め、冬への移り変わりが感じられるこの季節。
今回はそんな時期にぜひ味わっていただきたい、黄昏色のブリティッシュ・ロック作品をセレクトいたしました。
まずは王道中の王道。叙情、哀愁・・・と言えばウィッシュボーン・アッシュの『アーガス』。2本のギターが紡ぐ英国的な陰影に包まれたリリカルなフレーズが、丁寧に折り重なるように交差して美しいハーモニーを奏でる。英国ロック史上最上の瞬間の一つですね。
さらに外せないのがプロコル・ハルム。秋から冬にかけてのこの時期には、ゲイリー・ブルッカーのソウルフルかつ憂い滲む歌声が実に合います。ビートルズ「エイト・デイズ・ア・ウィーク」の秀逸なカヴァーを含む後期の代表作。
哀愁ほとばしる泣きのギターと言えばポール・コゾフ。FREEも良いのですが、ここでは彼がFREE解散後に組んだグループをピックアップいたしましょう。key奏者ラビットがもたらしたアメリカン・ロック的なアーシーさと、コゾフのギターによる英国叙情に富んだブルース・フィーリング&メロウネス。繊細さと憂いに溢れたセンシティブなブリティッシュ・ロックの逸品です。
泣きのギターと言えば、こちらも良いですよ。CAMELのKey奏者がバンド結成前にリリースしていたソロなのですが、なんとギターを弾いているのはFLEETWOOD MACでおなじみのピーター・グリーン。リリシズム滲むオルガンとブルージーなギターの熱いバトルが素晴らしい・・・。
もう一つ、英国叙情たっぷりのギターが堪能できる作品をご紹介いたしましょう。マイナーながら、パトゥのオリー・ハルソールやニュークリアスのクリス・スペディングに通じるいぶし銀のギター名手、ザル・クレミンソン擁するグループ。繊細な牧歌性とエッジの利いた重厚さが交わった英ハード名作!
こちらは元NICEのドラマーBrian Davison率いるグループの70年作。音の隙間からフツフツと溢れ出る叙情性がスッと胸に染み入ります。FREEに迫る芳醇さを持つ、英国ロックの深い森の奥で静かに佇む逸品。
黄昏色のジャケ通り、ブリティッシュな哀愁香り立つアンサンブルが堪りません。ラテン・テイストも取り入れ、時に涼やかで時に熱気溢れるジャズ・ロック・サウンドを聴かせる70年作。
こちらのジャケも黄昏感たっぷり〜。なんと後に英プログレの名バンドJONESYを結成するJones兄弟在籍のグループ。といっても本作で聴けるのはBYRDSあたりの米国憧憬に満ちたフォーク・ロックなのですが、その中にも英国的繊細さがたっぷりと滲んでいて良いなあ。
こんな秋らしい枯葉ジャケもいかがでしょう。ポール・マッカートニーのバックでも演奏した名ピアニストPete Wingfield率いるグループなのですが、コクたっぷりのピアノは勿論、熱気と哀愁ほとばしるソウルフルな歌唱が凄い!もっと評価されるべきミュージシャンです。ちなみにプロデュースはブルース・ロック界の立役者マイク・ヴァーノン。
そんなマイク・ヴァーノンのソロ作品もご紹介。洒脱で軽快かつひしひしと繊細さ滲み出るような、渋いサウンドが堪りませんね。ロリー・ギャラガーやポール・コゾフもゲスト参加の71年作。
イギリスのグループなのに、ドイツのみでリリースされて、ジャケは星条旗ってなんじゃそれ!? しかし内容は英国臭と米国臭がブレンドされた、芳醇なスワンピー・ハード・ロックの逸品なのです。
米憧憬と言えばこちらもオススメです。米ルーツのコクを取り入れつつも、流れるようなリズムや叙情的なストリングスはどこまでもブリティッシュ!アルバムのどこを切っても英国叙情こぼれ落ちる、ブリティッシュ・スワンプの愛すべき名作。
そんなRO ROのAlan RossがINDIAN SUMMERのkey奏者と結成したグループもご紹介。ファンク・ロックをベースとしつつ、メロウな哀愁がひしひしと滲み出るサウンドは英ロック・ファンにもドンピシャでしょう。それにしてもこのAlan Ross氏、どうやら今年の6月にお亡くなりになったそうです。ご冥福をお祈りします…。
最後はそんなINDIAN SUMMERでお別れいたしましょう。ちなみにインディアン・サマーとは、秋から初冬にかけての暖かく穏やかな日和の事。ぜひ落ち葉舞い落ちる景色を眺めながら、哀愁いっぱいのブリティッシュ・ロックに黄昏てみて下さい。
丁寧に折り重なるようにメロディが交差するツイン・リード・ギターがトレード・マークのグループ。彼らの最高傑作である72年作。叙情性溢れる英国的なメロディも絶品。
透明スリップケース付き仕様、SHM-CD、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲、定価2667+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
透明スリップケース付いていません
英国はグラスゴー出身。後にアレックス・ハーヴェイと出会い、センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドへと発展するグループ。70年作の1st。前半は、アコースティック・ギターのバッキングを活かした英国的な牧歌性も感じさせるサウンドで、後半はツェッペリンも意識したハード・エッジなサウンドへとシフト・チェンジ。聴き所は、なんといってもZal Cleminsonのギター。コシのある歪みで、タメの効いたリフ、鋭角に畳みかけるスリリングなリードともに懐深く弾いていて、パトゥのオリー・ハルソールあたりにも通じる、ブリティッシュならではの陰影に富んだいぶし銀のフレージングが光っています。リズム隊も特筆で、特にベースのChris Glenは、後にMSGにも参加する名手。クリームのジンジャー・ベイカーにも負けないセンス抜群のベースを響かせています。2ndはハード・ロック化しますが、本作は、深い森に迷い込んでしまったような幻想性や陰影が感じられるのが特徴。渋くメロウなスルメ名盤です。
元NICEのドラマーBrian Davisonと後にARCなどで活躍する実力派シンガーGraham Bellを中心とするグループ。ゆったりしたテンポの中、ムーディーなサックスやフルート、エモーショナルなGraham Bellのヴォーカルが枯れた哀愁を放つメロウなフォーク・ロック。音の隙間からフツフツと溢れ出る叙情性がスッと胸に染み入ります。本当に味わい深く素晴らしすぎるメロディ。フルートの静謐な響きは、クリムゾンの「風に語りて」や「Cadence And Cascade」を想わせます。名作。
70年のFREE解散の後、Paul KossoffとSimon Kirkeが、後にFACESでも活躍する日本人ベーシストの山内テツと米国人Key奏者RABBITを迎えて結成したグループ。71年の唯一作。RABBITことJohn Bundrickが10曲中5曲の作曲を担当。RABBITがもたらしたアメリカン・ロック的なアーシーな哀愁とPaul Kossoffのギターによる英国叙情に富んだブルース・フィーリングとメロウネス。繊細さと憂いに溢れたセンシティブなブリティッシュ・ロックの逸品。音と音との「間」の雄弁さはさすが。専任ヴォーカリストの不在が弱点として言われますが、RABBITやSimon Kirkeの誠実な歌声がメロディの繊細な魅力を見事に引き出しています。
ブリティッシュ・ロック・グループ。71年にドイツのみでリリースされた作品。レーベルは、BELLAPHON。中域寄りにバキっと歪んだコシのあるスワンピー&メロウなギター、サザン・ロックに通ずる豪快なリズム、郷愁を誘うメロディアスなオルガン&エレピ、哀愁いっぱいでグッとくるメロディと分厚いコーラス・ワークが印象的な土臭いハード・ロック。旧A面はアメリカナイズされたサウンドですが、B面はグッと英国臭がまし、泣きのツイン・ギターや憂いに溢れたメロディがたまりません。特に『Just Aint Fair』は、PROCOL HARUMばりの土臭くも叙情あるメロディがこれでもかと溢れる名曲。全体的に演奏には厚みとキレがあり、メロディ・センスも抜群。英国でリリースされなかったのが不思議なほどの逸品。
ジョン・エントウィッスルのソロ作や英スワンプ・デュオのロ・ロで活動したアラン・ロスと、インディアン・サマーのキーボーディスト、ボブ・ジャクソン等が組んだバンド、74年作。ハード・ロックとフォーク・タッチの組み合わせがWISHBONE ASH『ARGUS』の雰囲気に近く、アラン・ロスのハイトーンのボーカルと表情豊かなギターが楽しめる一枚です。英国ロック・ファンなら疾走感溢れるオープニング「Alright By Me」で即ノックアウトでしょう。ワウの効いたギターが靄のように漂い、キーボードやパーカッションが微かに煌めくオープニング。ベースが入ると一気にギアが入り、ギターがファンキーなカッティングでリズムを刻み、分厚いメロトロンのような音色でキーボードが被さります。ブルースやR&Bをベースとした黒っぽくファンキーなグルーヴを根っこに持ちつつ、タイトにカチッとまとまったアンサンブルやくぐもった質感の音もまさに英国でしか出ないものでしょう。英国ロック・ファンは必携の一枚です。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!