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<ロック黄金時代回想企画>1969年デビュー・アルバム特集Vol.8 ー AMON DUUL II『PHALLUS DEI』

こんにちは。スタッフ増田です。

すでに記している通り、60年代末から70年代初頭というのは我々ロック・ファンにとって注目すべき「ロックの黄金時代」。

その理由は若者によるカウンターカルチャーの勃興があり、反戦運動など人々の社会に対する激しい情熱があり、またBEATLESをはじめとするロック・バンドの成功によって、ミュージシャン、聴衆、レコード会社の三者が「新たなロック」に期待と野望を抱いていたからです。

その結果、ロックをさらに複雑で高い次元へと押し上げたKING CRIMSONやLED ZEPPELINといったバンドが英米のロック・シーンから登場していった事は、この「1969年デビュー・アルバム特集」でも取り上げた通り。

しかし時を同じくして、ヨーロッパ大陸の一国、敗戦によって二つに分断されたドイツの西側においても「新たなロックの革命」が起こりつつありました。

今回ご紹介するアルバムはそんな西ドイツから現れた「クラウトロック」の一バンド、AMON DUUL IIの69年1st『PHALLUS DEI(神の鞭)』です。

デビューまでの経緯

作品の話をする前に、まずはクラウトロックというジャンルについて簡単に説明しておきましょう。

クラウトロックとは60年代末の西ドイツで誕生した「実験的ロック・バンド」の総称。「クラウト」とはご存知ザワークラウト(酢漬けキャベツ)のことで、英国のメディアがこれらのバンドを嘲笑の意味でそう呼んだ事からその呼び名が定着しました。

彼らは西ドイツ内で同時多発的に現れてはいたものの、(プログレッシヴ・ロックもそうであるように)その音楽性はさまざま。CANやNEU!のように比較的「ロック」の様式にのっとっているバンドもいれば、後に「テクノ」や「アンビエント」と呼ばれるようなエレクトロ・ミュージックに特化したKRAFTWERKやTANGERINE DREAMのようなバンドも多く、一般的なロック・ファンにとっては少々掴みにくい領域である事は確かでしょう。

そんなクラウトロックの代表的バンドの中でもAMON DUUL IIは特に早い段階で海外に進出し、注目を浴びた「ロック寄り」のグループ。要するに当時から海外のロック・ファンにも好意的に受け入れられ、なおかつ「クラウトロック」と呼ばれるようなサウンドを作り上げていたという事ですが、一体彼らはどのようなバンドだったのでしょうか?その軌跡を振り返ってみましょう。

その名の通り、AMON DUUL IIは67年に結成されたAMON DUULというグループを母体としています。彼らはドイツ南部のミュンヘンを拠点とする音楽グループであると同時に、大規模な学生コミューン(共同体)でもありました。

60年代末には世界各地で若者による社会運動が活発化しており、特にフランスや西ドイツでは学生運動が年々勢いを増していました。当時のミュンヘンはその中心地の一つで、ドイツの中でも特に過激なデモ運動が行われていたようです。その中でも楽器や歌といった音楽を介して彼ら自身の不満を表現していたのが、AMON DUULというコミューンでした。

とはいえ、当時のAMON DUULの演奏はあくまでアマチュアの域を出ないものでした。ドラッグを浴びながら、音楽的な教養のないメンバー達が好き勝手に打楽器を叩いて即興演奏をする。そんな現状に不満を抱いたコミューンの初期メンバーは、彼らと袂を分かち、より音楽を追求するための新しいグループの創設を決意します。AMON DUUL IIと名付けられたそのグループは、68年9月に開催されたドイツ初の大型ロック・フェスティバル『エッセン・ゾンクターク』にオリジナルのAMON DUULと名を連ねて出演することになりました。

69年デビューアルバム『PHALLUS DEI』

69年にはAMON DUULとAMON DUUL IIの双方がデビュー・アルバムのリリースを果たしますが、先に録音を行っていたのはオリジナルAMON DUULの方でした。彼らはベルリンのコミューンから「アルバムを録音しないか」と声を掛けられ、68年にドラッグにまみれた長時間のスタジオ・セッションを行なっていたのです。

執拗に繰り返されるギター・リフ、無造作に叩かれる太鼓、正気を失ったようなうめき声。そこへ幻覚的なテープ・コラージュをふんだんに施した混沌たる音の洪水、オリジナルAMON DUULの『PSYCHEDELIC UNDERGROUND』は、ロック界屈指の迷盤として今に語り継がれています。

一方、より音楽的理念を追求したAMON DUUL IIの方はドイツ・リバティ・レコードとの契約を交わし、本格的なライヴ活動を行なったのちデビュー作をリリースします。それが「男根の死」という意味深なタイトルが付けられた本作『PHALLUS DEI』です。

メンバーはAMON DUULの初期メンバーであるクリス・カーラー(Gt)とピーター・レオポルト(Dr)に加え、レナーテ・クラウプ(Vo)にヨーン・ヴァインツール(Gt,Ba)、ファルク・ログナー(Organ)、ディーター・ゼルファス(Dr)、クリス’シャラト’ティーレ(Per,Vo)、そして後にHAWKWINDに参加する英国人デイヴ・アンダーソン(Ba)という8名のラインナップ。また後にジャズ・ロック・バンドEMBRYOのリーダーとなるクリスチャン・ブーチャードがビブラフォンで、POPOL VUHに参加するホルガー・トルシュがターキッシュ・ドラムで参加しています。

Kanaan

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黒い枯れ木の影を映し出した恐ろしげなジャケットの通り、ここから現れるのは怪しく東洋的な呪術色に満ちたヘヴィなサイケデリック・ロック。行進曲のリズムに乗せてビブラフォンが幻惑的に響き、シタール風のエフェクトを施したギターが中近東を思わせる旋律を弾き鳴らす。異国の言語を語る男性の声に、背後で響く女性の声。怒涛の勢いで叩き鳴らされるパーカッションやドラム、激しさを増すアンサンブル・・・。

重ねようとすればVELVET UNDERGROUNDやPINK FLOYDからの影響をそこに見ることもできますが、それよりも遥かに原始的でワイルドな、太古の地球のエナジーが蠢いているような不気味さ。アルバムの幕開けを飾る「Kanaan」から、神秘的でいて荒々しさに満ちた他に類のないサウンドが我々を襲います。

続く2曲目は「Dem Guten, Schönen, Wahren」。前曲にも増して怪しさ全開のギター・リフに、存在感の強いベースとヴァイオリンの旋律が縦横無尽に絡み合って、おどろおどろしくも重厚なサウンドを作り上げていきます。とりわけ強烈なのはクラウプ嬢のヴォーカル。歌を歌っているのか喚き叫んでいるのかも分からない、狂気に満ちたその声はSLAPP HAPPYのダグマー・クラウゼを凌駕するほどの迫力です。

Luzifers Ghilom

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3曲目の「Luzifers Ghilom」はトライバルなパーカッションのビートに乗せてギターが躍動し、ベースがゴリゴリと邁進する「ハード・民族調・ロック」といったドライヴ感溢れるナンバー。途中で曲調が切り替わって、スキャットなのか呪文の詠唱なのかも不明なシャラトの奇妙なヴォーカルが炸裂すれば、謎のエキゾチズムはさらに加速していきます。複雑な展開を織り交ぜ、さらに混沌の奥へ奥へと突き進んでいくような構成も見事。ときどき勢い余ってアンサンブルが破綻しかけている部分もありますが、そんな危うさと衝動性が彼らのワイルドさをさらに印象強いものにしているようです。

A面の最後は「Henriette Krötenschwanz」。またしてもマーチ風のドラムに、クラウプ嬢のとても安定しているとは言えない鬼気迫るヴォーカルが響き渡ります。そして「Kanaan」から始まった行進が終われば、B面を丸々使った21分に及ぶ表題曲「Phallus Dei」が待ち受けています。

Phallus Dei

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カオスを体現したようなアヴァンギャルド精神溢れるフリー・インプロビゼーションがおよそ3分半続き、視界が開けたと思えば、またもやそこは怪しげな呪術セッションの中。叩き鳴らされる太鼓、反復するギターとベースのリフの上を、ジミヘンからの影響も感じるアグレッシヴなギター・ソロがフリーキーに滑っていきます。いかにも一発録りらしい緊張感みなぎるジャム・セッションを繰り広げていると、やがて地の底から響き渡るような悲鳴が。

後半からはヴァイオリンがヨーロピアンな旋律を粛々と弾き鳴らしたり、かと思えば突如原住民のどんちゃん騒ぎのようなパーカッション・パートが幕を開けたりしていく「国籍ごった煮」な怒涛の展開に突入。クライマックスにはヨーロピアンとオリエンタルとトライバルの国際交流のような歓喜に満ちた雰囲気が溢れ出し、やがて酔い潰れてまどろみの中に落ちていくような快楽的で幻想的なラストを迎えます。

AMON DUUL IIと「共同体の音楽」

『PHALLUS DEI』は録音したものにほとんど手を加えず、たったの2日間で完成したとか。しかしだからこそ荒削りながらも生々しい、人間的な力強さに満ちたサウンドが創り出されています。

しばしばドラッグに魅了された人々、あるいは個性的な表現方法を模索する人々は遥か遠い「宇宙」を好み、SF的な要素を音楽の中に落とし込みます。クラウトロックの中でも同じようなドラッギーなジャムを作風としている初期ASH RA TEMPELやCOSMIC JORKERSなどがそうでした。

しかし彼らAMON DUUL IIの場合は違います。東洋や中近東の民族性を取り込み、自分たちの中で再構築した我流の民族音楽ロック。それぞれのパートが個のエネルギーを発散させているようで、それでいて一体感を保った演奏は、まさに「地球の中で共に生きる人間の共同体」を再現しているかのようです。

当時の西ドイツの若者たちはWW2の敗戦を経て、米国の企業や文化が当たり前のように浸透してしまった自国に憤りを感じていたそうです。アイデンティティを主張し、国際社会の中に出て行こうにも、ナチス・ドイツの負の過去がどうしても付いて回る。そんな中で彼らAMON DUUL IIが選択したのは、自分たちが「地球全体の共同体」であることを作品で表現することだったのではないでしょうか。人間と民族。そんな地球に根付いた「共同体」のエネルギーが、コミューンから誕生したAMON DUUL IIのデビュー作には現れています。

AMON DUUL IIの在庫

  • AMON DUUL II / YETI

    ジャーマン・ロックを代表する一枚、70年2nd!

    オリジナルAMON DUULから更なるサウンド面の追求を求めて分裂したグループ、AMON DUUL llの70年作2nd。当時LP2枚組の大作で、作曲されたA面&B面、即興演奏によるC面&D面という構成。内ジャケットに描かれた幻想絵巻をそのまま音で表現したかのような豊穣な音宇宙。聴く者を釘付けにする圧倒的な世界。バンドの世界を確立した傑作。

  • AMON DUUL II / DANCE OF THE LEMMINGS (TANZ DER LEMMINGE)

    クラウト・ロック代表格、最高傑作との呼び声高い71年発表の3rd

    AMON DUULから分派しChris KarrerとJohn Weinzierlを中心に結成されたグループの、最高傑作と言われる71年3rd。AMON DUULが非常に政治的な活動を視野に入れていたのに対し、AMON DUUL ?はより高い音楽的な活動を目標に枝分かれしたと言う経緯もあって、シンフォニックとすら言えそうなメロトロンやヴァイオリンなどの効果的な使用をはじめ、シタールなど民族楽器の登用など、音楽的にも非常に計算された作風。もちろんシンセサイザー・ノイズやテープのコラージュを駆使したアヴァンギャルド色も見られており、GONGやPINK FLOYDの作品などと同様にある種の中毒性を放つ作品となっています。

  • AMON DUUL II / WOLF CITY

    クラウト・ロック代表格、72年リリースの5th

    72年作。アルバムとしてのトータル性を重視する時代から、個々の楽曲を重視する方向性に移行した時期の作品。名曲「ドイツ・ネパール」収録。

  • AMON DUUL II / LIVE IN LONDON

    ジャーマン・ロックの代表格、73年のライヴ作

  • AMON DUUL II / VIVE LA TRANCE

    クラウト・ロック重鎮、74年作

  • AMON DUUL II / MADE IN GERMANY

    クラウト・ロック代表格、75年作

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