2018年7月21日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: サイケ
スタッフ増田です。
サマー・オブ・ラヴ。サイケデリック・ロックとヒッピー・ムーヴメントの熱気が最高潮に達した1967年の夏、サンフランシスコを中心に巻き起こった現象を人々はそう呼びました。米国の若者たちはカウンター・カルチャーの中心地であるサンフランシスコに集い、ドラッグ崇拝、平和と平等、そしてサイケデリック・ロックを胸に、短くも熱い夏を過ごしていったのです。
というわけで、サイケといえば夏。皆様もサイケを聴きつつ、あの67年の夏に思いを馳せてみませんか?
この「真夏のサイケデリック探検隊」では、多様なサイケのジャンル毎に定番から世界のニッチなグループまで、様々な作品を紹介していきたいと思います。
今回のテーマは「ガレージ・サイケ」!
50年代のロックン・ロール、そして60年代半ばのビートルズやストーンズなどの「ブリティッシュ・インヴェイジョン」に触発された米国の若者が、家の車庫(ガレージ)などでバンド練習をしていたことに由来。ベテランのプロ・ミュージシャンのような高い演奏技術を持たないかわりに、ロックの原初的な衝動がストレートに現れたサウンドが持ち味です。
ガレージ・バンドと呼ばれるグループが登場し始めたのは65年前後からですが、チープな録音の中に荒々しさや暴力性、また実験性を閉じ込めたサウンドは、特別なエフェクトを使わなくとも既に十分な「サイケデリック感」を感じさせます。後のへヴィ・サイケ~ハード・ロックに繋がる「ロックのへヴィ化」、そして70年代後半に登場するパンク・ロックの元祖とも呼べますね。
ではでは、まずはガレージ・サイケの王道と呼べる名盤から!
元祖ガレージ・パンクと呼ばれる米国ワシントン州出身の名ガレージ・バンド、65年1st。ブリティッシュ・ビートとプリミティヴなロックンロールが交わった瑞々しいサウンドもさることながら、65年作とは思えぬ凶暴なシャウトが物凄い!
67年作。ガレージの「衝動」とサイケの「音響」とがぶつかりあってエネルギーを放つUSガレージサイケの古典。デビュー曲「アクション・ウーマン」の耳をつんざく雷鳴の如きファズギターは永遠!
66年1st。当時のシーンでひときわ異彩を放っていた黒ずくめの出で立ちと、それにそぐわぬとも云えるラフな演奏との落差は唯一無二!のちに『ファンタスティック・マック』を手がける名プロデューサーのキース・オルセンも在籍!
ビートルズのラストツアーとなった米国公演の前座を務めたことでも知られる実力派の4人組、67年作。ガレージの域を超える演奏力を持ちながら、ブレイクを待たずに突如解散してしまった名グループ!
甘くセクシャルな歌声を持ったUSガレージの名物男=スカイ・サクソン率いる4人組、66年作。ストーンズ影響下のクールなやさぐれ感、ひりついたファズとサクソンの奇妙なヴォーカルに虜にされること必至!
ではここからはカケレコらしく、ちょっぴりニッチな作品をご紹介してまいります。
シングル「You, I」で米チャートTOP40入りも果たした、元OXFORDSの兄弟率いるケンタッキー産サイケ・バンド。エネルギッシュなガレージ・サイケから叙情的なオルガン・ロックまでキャッチーな良曲揃いの69年唯一作!
66年結成、サンフランシスコで12年間も活動しながらリリース作品はなし・・・んがしかし、残された音源はサイケ・ガレージの秘宝。レイト60sのマイナー・サイケ・ポップのコンピが好きなら「ワオ!」となるはず!
73年に録音され、なんと原盤は25枚のみプレス!という幻の米ペンシルバニア出身ガレージ・サイケ。ですが、これがプロト・パンク的瑞々しさとフォーク・ロック的リラックス感を兼ね備えた代物でなかなか癖になるのです。
4人のアメリカ人がシンガポールで結成したバンド、自主制作の75年作。この演奏のズレはヘタなのか、いや、きっと意図的なはず。ヘロヘロ&グルーヴィーで、ユーモアもあって、こりゃサイケ/ガレージの愛すべき逸品!
こちらは英国のグループ。アルバムは残さず解散した幻のバンドによる69年音源なんですが、クリーム時代のクラプトンを混沌とさせた感じのファズ・ギターが実に雄弁!ガレージ・サイケ~ヘヴィ・サイケのファンにとって掘り出しもののはず!
宅録で、家具をパーカッション代わりに使用していたという65年結成のスウェーデン産アンダーグラウンド・サイケ。アコギと気だるいワウ・ギター、ちょっぴジャジーな雰囲気が幻想的。
最後はハンガリー、ポーランド、チェコ、ブルガリアなど東欧のガレージ・サイケを集めたこちらのコンピをご紹介。ニッチもニッチですが、この絶妙な哀愁が入り混じった東欧ガレージ、癖になること間違いなし。
サイケ入門特集『連れサイケ』はこちらから。
問答無用のUSサイケ・ガレージの大傑作、MUSIC MACHINEの記念すべきデビュー作!66年にORIGINAL SOUNDレーベルからリリースされた今作は、冒頭「TALK TALK」からがっつり聴く者を惹きこんで行きます。それでいて豊富な曲調の彩りは、彼らの貪欲な音楽センスを反映しており、どの曲も個性的で際立った味わいを魅せています。5曲のカヴァー(中でもBEATLESのカヴァー、「TAXMAN」等はビートの輪郭がより際立った骨太なカヴァー!)と7曲のオリジナルによる、ガレージ・サイケの万華鏡。
ギタリスト/ヴォーカリストDennisとドラムGregのChaplick兄弟、同じくギター/ヴォーカルのJack Sarvisと後にJackの義理の兄弟となるベーシストKen Turikによって結成された米ペンシルバニア州の「親戚」ガレージ・サイケ・バンド。73年に地元のスタジオにて録音され、25枚限定でプレスされたという幻のアルバム。気張らないヴォーカル、マイルドなエレキ・ギターと爽やかなアコギ、モコモコボンボンとしたベースにバタつくドラム。これぞガレージ・サイケ!というアマチュアリズム溢れる演奏ですが、意外にも曲は良い。ファズの効いたギターとスピード感のあるリズム隊が程よい躍動感と脱力感を醸し出すキャッチーなタイトル曲「Backbone Of The Nation」をはじめ、瑞々しいガレージ・ロック/プロト・パンクと自然体のフォーク・ロックが交わったような「和み」のサウンドが非常に癖になります。原盤が$1000超えで取引されているというのも納得の、愛すべき一枚です。
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