2017年2月9日 | カテゴリー:リスナー寄稿記事,世界のロック探求ナビ
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続いて紹介するのはアルゼンチンの「ミア」というグループのキーボード奏者であったリト・ヴィターレの作品である。彼もまた多数の作品を発表し続けている素晴らしい作曲家で、演奏者である。
その作風は作品によって多少印象が異なる場合があるが、基本的には深い自然愛に満ちた雄大な曲想の作品が多い。中でも「Mas Alla Del Mar」と題されたアルバムでは、パット・メセニー・グループの作品にも通じる前半部と一大抒情詩的な後半部に分かれてはいるが、ほとんどトータル作といえるまとまりのある大作となっている。特にゆったりとしたテンポの曲での抒情は並で無く、あまりの美しさに呆然としてしまう程で心が疲れている時などに聴くと涙が止まらなくなってしまいそうだ。先のマルクス・ヴィアナと比較してもメロディーメーカーとしての才能はリトの方が上かも知れない。後半の組曲は冒頭から情景描写が見事であり、サンプリングされたヴォイスを効果的に挿入して広大な音空間を作り上げている。ピアノがメインに使われてはいるが、それと同様にシンセサイザーのストリングスアレンジが素晴らしい。これほどリリカルな音は中々聴けないと思う程に良い音を出している。この雄大さ、優しさ、悲しみを湛えた様なメロディーラインはプログレッシヴ・ロックという範疇に閉じ込めておくのはもったいない気がする。もっと多くの人々の耳に届くことが出来たなら人間の人格形成にも関わってくるような気がしてならない。機会があれば是非入手されることを薦めたい。
また、ヴォーカリストのヴァリエットとのジョイントライブでは独特のエレクトリックピアノ(CP70か)の音色が何とも良い味を出していて彼の音世界に即座に引き込まれてしまう。ヴァリエットとの共作もいくつかあって最新の二枚組DVD付アルバムではリラックスしながら楽しそうに共演する二人を観る事が出来る。このアルバムの最後に演奏される曲は彼らの1作目の最後にもなっていた、神々しいまでに敬虔で優しさに満ちた名曲である。私自身も辛い時や落ち込んだ時、幾度もこの曲に救われた。
また、以前ネットで入手した枚数限定のアイテム2種類は、最後の在庫ということで再発でもされない限り入手困難、究極のレア・アイテムとの事であったが、作品のクオリティーは相変わらず非常に高く雄大な作風は極めてドラマティックである。
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