2017年2月9日 | カテゴリー:リスナー寄稿記事,世界のロック探求ナビ
タグ:
寄稿:富山県魚津市 宮崎純一様
南米ブラジルは日本人の移民が多い事やカーニバルの情熱的な踊り、サッカーの熱狂的なファンが多い事などで知られているが、音楽については一般の人はサンバ、ボサノバぐらいしか思い浮かばないのではなかろうか。
今回紹介したいのはロック、それもプログレッシヴ・ロックである。その中でもジャンル的にはシンフォニック・ロックと呼ばれるグループに属する作品である。
まず最初に紹介するのは、世界的に見てもトップランクのバンドである「サグラド」である。リーダーでマルチプレイヤーのマルクス・ヴィアナを中心としたシンフォニック・アンサンブルは非常に雄大でダイナミックであり、且、極めて繊細である。現在までに多数の作品があるが、ファーストからサードアルバムまではいずれ劣らぬ高水準な作品であり、中でもサードアルバムは彼らの代表作といえる素晴らしい出来で、1つ1つの音が複雑に繊細に紡ぎ合わせられて行くさまは非常にスリリングで感動的である。
ヴァイオリンをフロントに従えて各種キーボードを駆使し広大な音宇宙を築きあげて昇華して行くそのサウンドはジェネシスとPFMをミックスしたかの如き印象をも与える。
また、リーダーのマルクス・ヴィアナは多数のソロ作品を発表しており、そのいずれもが「サグラド」の作品に勝るとも劣らぬ出来映えで、雄大で抒情的であり、作品の根底には深い人間愛が満ち溢れている。「Trilhas&Temas vol1」というのが多分ソロ第1作目だと思うが、そのあまりにもドラマティックな旋律は自然界の大きなうねりに身を任せたかの如き安らぎと優しさに満ち溢れている。中でも3曲目の後半部の繊細な絹糸のようなヴァイオリンの旋律が次第に盛り上がって壮大なシンフォニーとなって行く様は何度聴いても感動的である。終曲の「AVE MARIA」では少年のソプラノ・ヴォイスが効果的に使われ、曲の良さを際立たせている。
シリーズ作「TrilhasTemas vol4」では映像が眼前に浮かぶような作風で、聴く者の深層心理を刺激して深い感動を呼ぶ必聴の作品となっている。この作品の冒頭でも使われているように、彼の作品には良く鐘の音が非常に効果的に使われている。それは教会の鐘のようであり、また、旅立ちの銅鑼にも聞え、胸の奥に沁みてくる。彼は我々に如何なるメッセージを込めているのだろうか。真摯に受け止めたいものだ。
彼の率いる「TRANSFONICA ORKESTRA」のDVD作品を見たが、各メンバーの力量に感服したと共に曲の良さを改めて確認した次第である。愛娘のオリビアと共演する時の優しい眼差し、最後の「AQUARELA DO BRASIL」の明るさの中にも、どこか悲しさがあるこの曲の対比を見事に表現した素晴らしいライヴ映像でこちらも入手される機会があれば是非ご覧になってほしい作品である。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!