2016年12月20日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ヘンリー・カウやユニヴェル・ゼロといったバンドを源流として、現代に至るまで世界中で演奏されてきたチェンバー・ロック。
先人からの影響もあって、サウンドの傾向としてはアヴァンギャルドでダークな質感のものが中心となっており、やや取っ付きにくいという印象を持たれている方も少なくないかもしれません。
そんな中、管弦楽器の瑞々しい音色を生かした美麗さファンタジックさを堪能させてくれるチェンバー・ロック作品も近年は数多く登場してきているんです。
今回は、シンフォ・ファンにもお楽しみいただけるであろうファンタジックなチェンバー・ロック新鋭を中心にピックアップしてまいりたいと思います!
メキシコのCASTに参加するヴァイオリニストを中心とするイタリアの管弦楽カルテット、15年作。フルートやヴァイオリンが織りなすファンタジックで華やかな広がりを持つ管弦楽アンサンブルは、室内楽的な取っつきにくさを微塵も感じさせない心地よいまでの聴きやすさ。CASTを率いるkey奏者ALFONSO VIDALESのソロ楽曲をプレイした作品となりますが、こうして聴いても本格的なクラシック音楽と遜色ない楽曲群は、彼の作曲能力の高さも同時に実感させます。
こちらは上記バンドの14年デビュー作。往年のプログレ名曲のトリビュート作品となっていて、曲は「ラウンドアバウト」、「虚空のスキャット」、「コンチェルト・グロッソ」など!原曲を違和感なく管弦重奏アンサンブルへと落とし込む手腕は特筆モノでしょう。ハケットを始めとする大物ミュージシャン達からの賛辞も納得の完成度です。
イタリアの新鋭チェンバー・ロック・バンドによる15年作。ジャケットのイメージ通りの落ち着きある静謐の美が漂う演奏から、ザッパやPDPからの影響を感じさせるややアヴァンギャルドでトリッキーなチェンバー・サウンドまでを自在に行き交うアンサンブルは絶品。緊張感は孕んでいるもののダークなイメージはなく、瑞々しくも躍動的なダイナミズム溢れるチェンバー・ロックを展開します。傑作!
ギリシャはアテネ出身の新鋭グループ、10年デビュー作。現イタリア最高峰のチェンバー・ロック・バンドYUGENのメンバーが全面参加していますが、YUGENのような暗黒感はなく管弦楽器が妖しくも流麗に舞う麗しのチェンバー・シンフォ作に仕上がっています。フィメール・ヴォーカルによる澄み渡るハイトーンにも心奪われるし、神秘的な世界観がどこまでも広がっていく素晴らしい一枚です。
ザッパのトリビュート・バンドとしても活動しているスペインはバルセロナのグループが、ストラヴィンスキー「兵士の物語」のカヴァーに挑戦した14年作!凄まじい演奏の強度と合間に見せる芳醇で艷やかな音色使い。まさにザッパが編曲したストラヴィンスキーって感じでとにかく圧巻です。因みに動画中央でトランペットを吹いている女性メンバーは日本人奏者のNatsuko Sugao氏。
06~10年にかけ4作品をリリースしたベラルーシの名チェンバー・ロック・グループRATIONAL DIET。そのメンバーが分裂し、ダークで緊張感みなぎるアヴァンな音楽性のARCHESTRAと、より静謐でクラシカルな音楽性を持つFIVE-STOREY ENSEMBLEという2つのバンドとして活動を開始、本作は後者のバンドのデビュー作となります。クラシックの素養を生かした格調高く透明感に満ちたチェンバー・アンサンブルは思わず息を飲むほどに魅力的。全編を通じてうっすらと保たれた緊張感にゾクゾクします。
これぞ新世代チェンバー・ミュージックと言える!?チェンバー×ポストロックと言えるサウンドで、アンビエンスな空気感を持つモダンなポストロック調アンサンブルの中で、ふわっと立ち上がる芳醇な管楽器群。それだけでも感動的なところに加わってくるアルゼンチンらしい詩情豊かな「歌」。このアプローチはちょっと他では聴けないと思います。すごいです。
ギリシャはアテネ出身、女性ヴォーカル、男性フルート/Key奏者、男声ギタリストによるトリオ、2010年デビュー作。グリフォンやジェントル・ジャイアントから影響を受けているようで、艶やかなヴァイオリン、ミスティックでいて気品に満ちたフルートやリコーダーが彩る、クラシカルかつトラディショナルな優雅さに、ゲスト参加した現代イタリアが誇るチェンバー・ロック・バンドYUGENのKey奏者やD.F.A.のドラマーによるチェンバー・ロック/プログレのエッセンスが加わったサウンドは、圧倒的に瑞々しく幽玄。紅一点エヴァンゲリアの澄み切ったハイ・トーンのヴォーカルも絶品です。これは至高の一枚!
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!