2016年6月30日 | カテゴリー:スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。
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こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」は、一般的にはあまり注目を集めることのない作品ながら「実は良い作品なんだけどなぁ、もっと聴かれてほしいなぁ。」とスタッフ佐藤が日頃から感じている、愛して止まない作品たちを取り上げてご紹介していこうというコーナー。
今回取り上げるのは、イタリアのリブラによる74年作『ムジカ&パローレ』です。
プログレの醍醐味は?と聞かれれば、それこそ答える人の数だけそれは存在するかと思いますが、もっとも大きな部分で言えば、ジャンルの垣根を超えて多種多様な音楽と融合することで新たなサウンドが生み出される、というところあるのではないかと考えています。
クラシックの交響曲から影響を受け、管弦楽器あるいはそれを模したキーボード・サウンドを中心に構築されるシンフォニック・ロック、ジャズのメソッドをロックに持ち込んだジャズ・ロック、管弦楽器を主体とする室内楽アンサンブルを取り入れたチェンバー・ロックなどが、その最たるものと言えるでしょう。
そんな中で、ファンクの要素を導入したプログレ・グループというのは、このリブラ以外にちょっと思いつかないのですがどうでしょうか?
実際のところ、スタッフ佐藤の個人的なプログレ10選の中にも入ってくるのが、今回取り上げたいリブラの『ムジカ&パローレ』なのです。
リブラは、元ブオン・ヴェッキオ・チャーリーのkey奏者Alessandro Centofantiや元レアーレ・アカデミア・ディ・ムジカのギタリスト Nicola Di Staso、そしてゴブリンのオリジナル・メンバーだったドラマーDavid Walter(Walter Martino)らを中心に75年に結成、同年に1st『ムジカ&パローレ』をリリースしています。のちに77年のダリオ・アルジェント監督作品『ショック』のサントラを担当したことでご存知という方も多いようです。
このリブラ、実はアメリカでレコード・デビューを果たしたバンドの一つ。
イタリアから国外デビューを果たしたバンドと言えば、ELPが運営するマンティコア・レーベルが送り出したPFMやバンコが真っ先に挙げられると思います。
この2バンドはあくまでプログレ・バンドとして世界に紹介されたわけですが、リブラの場合は明らかにただのプログレ・バンドとしてとは異なる扱いで米デビューしたと言えるでしょう。何せ彼らが所属したレーベルというのが天下のモータウン(タムラモータウン)。イタリアのプログレ・バンドが米モータウンからアルバムをリリースするという普通なら全くありえなさそうな出来事が密かに起こっていたんですね。
とは言え、彼らのサウンドを聴けばそれも宜なるかなというもの。ワウギターとエレピ/クラヴィネットを中心とするジャズ・ファンクの要素を大胆に取り入れたグルーヴィーでアグレッシヴなアンサンブルが炸裂する、プログレッシヴ・ファンク・ロックと言えるサウンドを展開してしまうのです。そこにイタリア語で熱唱するヴォーカルがこれまた意外なほどハマっていて驚き!
一曲目「NATO OGGI」を初めて聴いて、大げさでなくPFMの「リヴァー・オブ・ライフ」を聴いた時と同等に近い衝撃を受けたんですよね~。それくらい他のどのイタリアのバンドもやっていないことをやってのけているバンドだと思います。
また素晴らしいのが、そんなファンク要素と同時にイタリアらしい叙情的な部分も堪能させてくれるところ。決して米ファンクの真似事に終わらず、イタリアン・ロックをしっかりと根っこに感じさせる繊細な表現力も見せていて、ファンキーながらもあくまでイタリアン・ロック作品として聴くことができるのも、ロック・バンドの優れたバランス感覚を示していると言えそうです。
誰もやってこなかったことを模索し誰も聴いたことのない新たなサウンドを創り出していく。これこそがプログレの精神の根幹だと思いますし、その試みの結実がモータウンからのデビューという快挙だったのだと思うんですよね!
こちらがモータウンからリリースされた1stの英語盤『LIBRA』(未CD化)。いかにも当時のファンク・バンドっぽいジャケットになってますよね。英語で歌われていますが特にアレンジが大きく変わったところはないようです。そっち方面は詳しくないのですが、クラブシーンでは屈指のレアグルーヴ盤として知られているとか!
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