2015年12月15日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ,新譜CDナビ
詩情溢れる歌心、「静」と「動」との対比鮮やかなドラマ性、切れ味するどい演奏力。この三拍子が揃ったイタリアらしいサウンドが魅力のVIII STRADAによる2015年作『BABYLON』をピックアップいたします。
VIII STRADAは、イタリアはミラノ出身で、ヴォーカルのTito Vizzusoとキーボード奏者のSilvano Negrinelliの二人を中心に90年代末に結成されました。98年の4曲入りのEPをリリース後、メンバー・チェンジを行い、若いメンバーが加入。新たなラインナップで08年に『LA LEGGENDA DELLA GRANDE PORTA』でデビューを果たします。
70年代イタリアン・ロックの美麗さとともに、プログレ・メタルを通過したシャープなヘヴィネスも盛り込んだドラマティックな作品はプログレ・ファンの間で話題になり、ツアーでは、なんとAREAのKey奏者Patrizio Fariselliが参加しました。その際の音源がこちら。楽曲はAREA『CRAC!』収録の名曲「L’Elefante Bianco(白い象)」!Tito Vizzusoの力強い歌声、バンドの高い演奏力がわかります。
そして、前作から7年を経た2015年にリリースした2ndが『BABYLON』です。ギタリストがDavide Ziglianiに、ベーシストがSergio Merlinoに交代し、フレッシュなメンバーで録音されました。デビュー作は、MA.RA.CASHレーベルからのリリースでしたが、2ndは、FADING RECORDSからのリリース。70年代的なヴィンテージさとモダンな音像とが同居した優れたシンフォニック・ロック作品を続々とリリースしている注目のレーベルで、LOCANDA DELLE FATEの瑞々しい2012年復活作もFADINGですね。
アルバムのオープニングを飾る「Ombre Cinesi」から彼らの魅力である美麗なダイナミズムに溢れていて興奮。
艶やかなトーンと流麗なフレーズの中にクラシックの確かな素養が感じられるピアノ、澄み切ったトーンでたなびくシンセにみなぎる格調高さ。その一方では、硬質なトーンのアグレッシヴなリズム・ギター、明瞭かつヘヴィでソリッドなドラムによるモダンなリズムがキレ味を加えていて、70年代のDNAとモダンさが見事に同居していてただただ「鮮烈」。
さらに「歌」も魅力的で、深い情感たっぷりのシアトリカルなヴォーカル、胸を焦がすような哀愁みなぎるメロディは、70年代イタリアン・ロックそのままと言えるでしょう。変拍子を織り交ぜ、焦燥感たっぷりに畳み掛けるような攻撃的かつ荘厳な展開もまた70年代の空気ぷんぷんだし、各パートのテクニック、メロディ・センス、歌唱力ともにいやはやハイレベル。
爽やかに広がるアコギにピアノとムーグが柔らかにからみ、ギターが伸びやかなリードを紡ぐファンタスティックな2曲目「Preludio A Eclypse」も必聴曲だし、ヘヴィなギター・リフのバックにメロトロン風にキーボードがたなびく荘厳な3曲目「Eclipse Anulaire」からクラシカルなピアノからロマンティシズムが溢れまくる4曲目「Deguello」の流れはこれぞイタリアだし、近年のイ・プーにも通じるハードかつ歌心たっぷりな5曲目「1403 Storia In Firenze」もグッとくるし、アブストラクトなキーボードのバッキングの神秘的なパートから変拍子で畳み掛けるジャズ/アヴァン・ロック的なパートへと雪崩れ込むスリリングなタイトル・トラック「Babylon」もカッコ良いし、クラシックとジャズの素養みなぎる美麗さとモダンなヘヴィネスとの対比が実に鮮やかな8曲目「Slow」、クラシック・ギターのバッキングが小気味よく響く陽光が溢れるようなイントロからエレキの目の覚めるようなリズムが引っ張るプログレ・ハードへとスイッチするラスト・ナンバー「Ninna Nanna」まで、すべての楽曲がイタリアらしい輝きを放っています。
2015年リリース作の中でも間違いなくトップクラス。70年代のDNAをモダンな音像で仕立たサウンドは、メキシコの雄CASTの傑作2015年作『VIDA』も彷彿。これは傑作です。
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