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「スカンジナビアン・ダーク・シンフォニア」アングラガルド&アネクドテン来日公演(11/8)ライブレポート

11月8日に竹芝ニューピアホールにて行われた、「スカンジナビアン・ダーク・シンフォニア」アングラガルド&アネクドテン来日公演を観てまいりました!

アングラガルドとアネクドテンと言えば、90年代初頭に北欧スウェーデンから突如登場し70年代以来となるプログレの再興を担った、現代のプログレ・シーンでは屈指と言うべき重要バンドたち。

日本での演奏は、アングラガルドが13年3月のクリムゾン・プロジェクトとの来日公演以来、アネクドテンも同年1月の第1回ヨーロピアン・ロック・フェス以来となります。

当日はあいにくの悪天候となりましたが、観客はほぼ満員。Tシャツなどグッズも売り切れ続出の状態だったようで、90年代以降のバンドの中でも別格と言える人気の高さを開演を前に早くも実感します。

開演時間の16時30分を回り、主宰のストレンジデイズ岩本さんが登場。本物のメロトロンを使用したステージになることを告げると、会場から大きな拍手が沸き起こります。往年の名バンドの来日公演も含めてメロトロンの音を擬似的に再現した電子キーボードを使うバンドが多いなかで、これは何とも嬉しいサプライズです。「エングラゴーッ!」とバンドを呼ぶと、メンバーたちがステージに姿を現します。
メンバーは以下の6人。

ヨハン・ブランド(Johan Brand) – ベース
アンナ・ホルムグレン(Anna Holmgren) – フルート、サックス、メロディカ(ピアニカ)etc.
リナス・コーセ(Linus Kase) – キーボード、メロトロン、ソプラノ・サックス
エリク・ハマーストロム(Erik Hammarstrom) – ドラム、グロッケンシュピール、各種パーカッション
ヨナス・エンデガルド(Jonas Engdegård) – ギター
トード・リンドマン(Tord Lindman) – エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター

今回は、前回来日時には参加していなかったギターのヨナス・エンデガルドが復帰しており、6人編成での演奏となりました。

演奏が始まりまず耳を奪うのが、フロントでフルート/サックスをメインに担当する女性メンバー、アンナ・ホルムグレンによる澄み切った中にもどこか哀切の漂うフルートの調べ。うっすらと霧のかかった北欧の森に木霊するような、オリジナル録音と変わらぬ息をのむような美しい音色が会場中に響き渡ります。

そこに満を持して加わるメロトロン!生メロトロンだけあって、やはりデジタルのものとは違うジョワーっと湧き上がってくるような音色には、不思議な温かみが宿っているように感じられます。特有の音の立ち上がりの遅さもかえって幽玄な雰囲気を高めていて、彼らの演奏の静謐なパートに非常にマッチしているんですよね~。北欧の美しくも物悲しい情景が次々と浮かんでくるような映像喚起的な演奏に、感動が収まりません。

そんな北欧幻想が会場を包みこんだかと思うと、不意に叩きつけるような重たいドラムが雪崩れ込み硬質なギターが唸る、一気になぎ倒すようにヘヴィな変拍子アンサンブルへと突入!こ、この「静」と「動」のダイナミズムこそアングラガルドの醍醐味!いや~たまりません!

フルートにメロトロン、そして竪琴のように典雅な音色を奏でるアコースティック・ギターらが織りなすリリカルなパートと、リズム隊と2本のギターがアグレッシヴに突き進むヘヴィーなパートが交錯しながら構築美を築いていく、アングラガルドの真骨頂と言うべき見事な演奏が続いていきます。北欧プログレ勢の中でも「静」と「動」の対比がとくに強烈なアングラガルドですが、その静動が切り替わる瞬間の切れ味はやはりさすがと言う他ありません。

12年作『Viljans Öga』からのナンバー「LANGTANS KLOCKA」では、彼らの内包するヘヴィネスが一気に爆発します。サックスに持ち替えたアンナがワルツ調のフレーズをなめらかに奏でる優雅さと妖しさが交差するアンサンブル。森の奥深くで行われる謎めいた儀式を想わせる独特の世界観に会場を惹き込みます。優雅なサックスとは対照的にリズム隊とギターが次第にヘヴィに唸り始めると、キーボード奏者リナスがソプラノ・サックスを持ってフロントに移動。それに対抗するようにダブル・サックスが金切り音で絶叫しはじめます。サイケデリックな酩酊すら感じさせながら混沌の渦に飲まれていくアンサンブル。これはもう凄絶の一言でした。理知的で緻密な音運びを持ち味とするバンドが突如として見せた狂気に圧倒されましたね。

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「JORDROK」「VANDRINGAR I VILSENHAT」など1stからのナンバーもやってくれましたよ。初期の特徴であった北欧トラッド色を反映した凛と澄みきった演奏は、ライヴでも変わらずゾクリとするほどの美しさを感じさせます。そこに幽玄のメロトロンが絡んできて世界観がブワーと広がっていく演奏には鳥肌を立てずにはいられません。

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およそ1時間半のステージのあいだ、会場を遠く北欧の大地に変えてしまったアングラガルド。デビュー時よりファンを魅了してきた、圧倒的なまでの表現力を誇る演奏は今もって健在でした!もちろん会場は文句なしのスタンディングオベーションで包まれます。

30分の休憩をはさんで、次はアネクドテンのステージです。
メンバーは、サポートメンバーを含めたこの5人。

ニクラス・バーカー(Nicklas Barker) – ギター
アンナ・ソフィ・ダールベリ(Anna Sofi Dahlberg) – メロトロン、キーボード
ヤン・エリク・リリェストロム(Jan Erik Liljeström) – ベース
ピーター・ノルディンス(Peter Nordins) – ドラム
マーティ(サポートメンバー) – ギター、パーカッション

注目は、今回ほぼメロトロン専任と言えるアンナ・ソフィ。生メロトロンに加えデジタル・メロトロンも導入した一人ダブル・メロトロンという前代未聞のスタイルで、アネクドテンの音楽性の要といえるメロトロン・サウンドを担います。
今年リリースされた新作『Until All The Ghosts Are Gone』からのナンバーを中心に、1st、4th、5thからの曲を演奏。

新作からのナンバー「Get Out Alive 」「Writing On The Wall 」などでは、パワフルで硬質なリズム隊とニクラスのラウド感のあるギタープレイを前面に出した非常にライヴ映えするサウンドで観客を圧倒。演奏がドラマティックに高まってきたところにいよいよメロトロンが高らかに鳴り響く、極上の「メロトロン・ロック」を展開します。

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どの曲でも、とにかくここぞという場面で溢れだすメロトロンの使い方が見事。そのセンスたるやもう神がかり的と言えるほどです。通常は楽曲の味付けとして用いられることが多いメロトロンですが、彼らの場合メロトロンをいかに印象的に聴かせるかという部分を前提にして曲作りをしているように思わせます。アンサンブルとメロトロンの融合度合いで言えば、彼らの右に出るものはまずいない、それを生で彼らの音を浴びながら改めて強く実感します。まさに「メロトロン・ロック」と形容すべき孤高のサウンドが目の前で鳴らされているこの興奮と言ったらありません!

ダブルで厚みをグッと増したメロトロンの音色が会場を満たす場面など、もはや快感さえ覚える素晴らしさ。これぞ至福の一時・・・。

4th『GRAVITY』からの「Ricochet」も素晴らしかった~。浮遊感のある印象的なメロディとサビで力強く響き渡る雄大なメロトロンが大変に感動的!この曲オリジナルも泣けますが、ライヴだとそれはもう輪をかけて泣けましたね~。

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1stに国内盤ボーナス・トラックとして収録された大名曲「SAD RAIN」も演奏してくれました!これでもかと溢れ出る叙情メロトロンと悲哀に満ちたメロディによって紡がれる一大ロック・シンフォニー。一気に初期の激しくも美しく陰鬱な北欧幻想が蘇ってきます。ここまで来ればその壮大な音の流れにただただ酔いしれるだけです。堪能いたしました~。

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新作からのナンバーで畳み掛ける終盤には、なんとアングラガルドの管楽奏者アンナ・ホルムグレンとサックスを手にしたkey奏者リナス・コーセがスペシャルゲストとして登場。ニクラスのラウドなギターに轟々たるダブル・メロトロン、そしてフルートとサックスの管楽器の響きが加わった素晴らしすぎる演奏に終始感動してました~!

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アンコールは4thの表題曲「GRAVITY」!この曲もご存知の通り極上のメロトロンが堪能できる名曲。途中、オリジナル以上に長くヘヴィな間奏でタメにタメて、一気にメロトロンが炸裂するラストなんてもう言葉になりませんっ・・・!最高のアンコールに観客も大興奮で喝采を送ります。

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いや~、2バンドのステージを通して一生分のメロトロンを聴いたとさえ思えるほど、濃密なメロトロンサウンドに最後までやられっぱなしでした。シンフォニックなアンサンブルに寄り添う「幽玄」を感じさせるアングラガルドのメロトロン、とにかく力強くこれでもかと雄大に鳴り響くアネクドテンの劇的なメロトロン。古くは60年代から聴き手だけでなく演奏者をも強烈に魅了し続けてきたこの楽器の真髄を、今たっぷりと味わわせてもらったように思います。

アングラガルドは10日の単独公演では1st『HYBRIS』の完全再現公演を行うことになっていますが、今回の演奏を聴くにそちらも素晴らしい内容になるであろうことは間違いないでしょう。

遠くスウェーデンの地からありがとう、アングラガルド&アネクドテン!
またの来日を心待ちにしています!

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  • ANEKDOTEN / VEMOD

    93年リリース1st、90年代プログレッシヴ・ロックを代表するモンスター・アルバム!

    スウェーデン出身プログレッシヴ・ロック、93年デビュー作。90年代以降の北欧プログレを代表するグループであり、中期KING CRIMSONの影響を現代的なヘヴィネスと融合しています。メカニカルにリフをユニゾンするギター、ベース、ドラムによるヘヴィ・サウンドと、悲愴感を漂わせるメロトロンとチェロの旋律が溶け合う凶暴でありながら、アコースティックな質感も残したアンサンブル。憂いを含んだヴォーカルも魅力的。静と動の対比が鮮やかな楽曲構成も素晴らしくクリムゾン・フォロワーとしてのみならず、現在の北欧プログレ・シーンに大きな影響を与えたアルバムです。

  • ANEKDOTEN / LIVE EP

    96年のライヴ音源を収録

  • ANEKDOTEN / FROM WITHIN

    現代の北欧プログレを代表するバンド、繊細さと攻撃性との対比の中でじっくりと世界観を広げていくドラマティックな楽曲構成が素晴らしい99年作3rd

    新世代北欧プログレを代表するバンド、99年3rd。ズシリとした重量感/硬質感を持つドラム、地を這うように迫るベース、クリムゾン『RED』を彷彿させる破壊的なギター、そして轟々たるメロトロン!時に祈るように切々としたヴォーカルが胸を打つ物悲しいパートと、リズム隊/ギター/メロトロンが一斉にぶつかり合い轟音をまき散らしながら突き進むパートとの落差は強烈の一言!クリムゾンの影響下から独自のヘヴィー・プログレを構築した問答無用の傑作です!

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