2015年3月5日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
世の中には、数々の人生の局面を経てきた大人だからこそグッと来る、沁みる音楽ってあると思います。
今回は、そんな大人の心の琴線をきっとかき鳴らすであろうサウンドを【大人のロック】と位置づけて、世界各国からピックアップしてまいります。
その1、フュージョンの作法を取り入れたプログレ
独特のなめらかで叙情的な音運びや技巧的かつスマートにまとめ上げられたインストゥルメンタルなどフュージョンの様式を巧みに取り入れたそのサウンドは、まさに大人の音楽の代名詞と言えるのではないでしょうか?
巨匠セゴビアに学んだギター名手ジョン・ウィリアムズを中心に元カーヴド・エアのフランシス・モンクマンらを擁したフュージョン・ポップ・グループ。ウィリアムズによる透明感溢れるトーンできめ細かく紡がれるギタープレイの数々は流石の一言。クラシック・ギター界の貴公子と言われただけの腕前を存分に振るっています。
プログレ~フュージョン界を縦断し数々のビッグネームをサポート、ファーストコール・ミュージシャンの地位を築いた名キーボード奏者ですね。多くの大物ミュージシャンたちが惚れ込んだその腕前が遺憾なく発揮されたフュージョン/プログレ傑作!
天才チャーリー・ガルシアがアルゼンチンの国民的バンドSERU GIRAN以前に率いたグループ。スティーリー・ダンあたりとも通じる都会的な洗練を感じさせるサウンドセンスと流麗に紡がれる演奏が理想的に組み合わさった極上フュージョン・プログレ。名作!
柔らかくたおやかな地中海フレイヴァーが彩る、イマジネーション豊かなスパニッシュ・ジャズ・ロック作。ジャズの確かな素養を備えたSABATESによる、軽やかで芳醇なピアノ・プレイの何と美しいこと。幻想的なフルートの調べにも心洗われます・・・。
ジャズ・ロックの緻密さと地中海音楽のたおやかさが絶妙にブレンドされたまばゆい作品が多いイスラエル・ロックの中でも最高峰と言えるのがSHESHET。日本人には耳慣れないヘブライ語の響きが、本作の神秘的な雰囲気を一層引き立てています。
その2、芳醇なコクと渋みを味わうブルース・ロック
ブルース特有の芳醇なグルーヴ感覚と重厚な渋み。ルーツを黒人音楽に持つブルース・ロックならではの旨みが満載ですよね。まるでブラックコーヒーのような大人の味わいと言えるでしょうか。
後にJEFF BECK GROUPやKEEF HARTLEY BANDに参加する渋いメンバー達によるグループ。ブルースの味わい深さとロックの躍動感が理想的に配分された完成度の高いブルース・ロックが楽しめる逸品ですね。ヴァイオリンのスリリングなプレイも見事。レジェンド、ピーター・グリーンのゲスト参加にも注目です!
いぶし銀の英ブルース・ロック・ギタリスト投票を行えば、このデイヴ・ケリーは間違いなく入ってくるでしょうね。ソリッドでどっしり重厚なブルース・ロックならではのアンサンブルに、ケリーのワウカッティングが絡むこの問答無用のカッコよさよ!
日本のロック黎明期の作品とは思えないこの完成度。荘厳なメロトロン、寂寥感を漂わせるフルート、情感豊かなヴォーカルは、あのKING CRIMSON「Epitaph」すら彷彿させます。
アメリカのトラフィックだって!?いやいや、R&Bに根ざしたアーシーでメロウなサウンドならトラフィックよりも本場アメリカの俺らだろ! と言わんばかりのサイケデリック&グルーヴィーなブルース・ロックを聴かせる好グループ。ヴォーカルもウィンウッドに負けない存在感で歌い上げます。
デンマーク出身ブルース・ロック・バンドの69年作・・・、どんな音かと想像が難しいですが、ブルースブレイカーズや初期フリートウッド・マックを彷彿させる骨太なブルース・ロック秀作!派手さはなくとも安定したテクニックとセンスで聴かせる逸品です。
その3、伝統と革新を地で行くトラッド・フォーク&ロック
幾百年にわたって受け継がれてきた土着の伝承音楽は、まさに民族のアイデンティティが育んだ純粋なる遺産と言えるもの。現代の感覚と有機的に結びつき新たな姿を得たトラッド・ミュージック作品たちをご紹介。
秘境バスク自治州出身のフィメール・ヴォーカル・プログレッシヴ・フォーク・グループ。幽玄なフルートやチェロ、虚ろな女性ヴォーカル、エキゾチックなパーカッション。でも、混沌とすることはなくて、もうそれはそれは美しいんですよね。これぞバスキッシュ・プログレ・フォーク。
その歴史的・文化的背景から北米大陸ともヨーロッパとも似て非なる独自のサウンドを形成するカナダはケベック州の兄妹トラッドデュオ。フランス語によるセンチメンタルなヴォーカルと管弦楽をフィーチャーした流麗なトラッド・ロック・アンサンブルが絶品。英国で言えばフェアポート・コンヴェンションからスパイロ・ジャイラまでのファンには是非お聴きいただきたい逸品です。
北欧エレクトリック・トラッドと言えばこのバンド。野太いリズムと心地よく歪んだギターが紡ぎだす雄大にしてメロディアスなアンサンブルは、これぞまさに北欧!と言いたくなる代物。哀愁とユーモラスさが絶妙にバランスした唯一無二のサウンドですね。
ドイツにこれほどまでに崇高な、メロウ・キャンドルやスパイロジャイラにも比肩しちゃうようなグループが居たとは。各種古楽器を導入した典雅でメランコリックな陰影を湛えたアンサンブルが最高過ぎます・・・。フィメール・フォークのファンであれば避けて通るのはもったいない一枚!
フェアポート『LEIGE & LEIF』の北欧版と言える73年の名作。THE BANDなど米ロックからの影響が強い土臭いフォーク・ロックを土台に、トラッドやダンス・ミュージックのエッセンスを加えた賑々しいサウンドが特徴的。リコーダーやアコーディオン、フィドルを交えた透明感溢れる北欧トラディショナルな演奏にもグッと来ます。
クラシック・ギター界の貴公子とも言われる名ギタリストのジョン・ウィリアムスを中心に、元カーヴド・エアのKey奏者のフランシス・モンクマンの他、クラシック畑出身のセッション・ミュージシャンにより79年に結成されたスーパー・グループ。LP2枚組の大作ながら全英チャート1位を獲得するなど大ヒットした80年の2nd。正確なタッチでスピーディーに奏でられるクラシカルなギター、きらびやかなハープシコード、伸びやかに駆け巡るムーグ・シンセ、そして、疾走感いっぱいにドライヴするリズム隊によるダイナミック&クラシカルな「トッカータ」など、フランシス・モンクマンによるプログレ度の高いキーボード・アンサンブルとジョン・ウィリアムスによる緻密なギター・ワークを中心に、ジャンルの壁なんぞ関係ないぜ、とばかりに天空から見渡してはスケールの大きなインストゥルメンタル・ミュージックを鳴らした名作。
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsaレーベルより76年にリリースされた3rdソロ。BARCELONA TRACTIONのベーシスト、ORQUESTRA MIRASOLのブズーキ/マリンバ奏者、前作から引き続いてのギタリストRicard Sabatesなどサポート。傑作となった前作『Ocells Del Mes Enlla』と比べ、フルート、ブズーキ、ウッドベース、フラメンコ・ギターが入り、地中海フレイヴァーが増した印象。リリカルなピアノをバックにフルートがエキゾチックかつたおやかに流れる部分はイスラエルのSHESHETに通じる味わい。時にチェンバー・ロック的な緊張感もあり、同じバルセロナのMUSICA URBANAに通じるテイストもあります。ジャズ/フュージョンを軸に、カタルーニャ音楽やその他地中海音楽のエッセンスを加えたイマジネーション豊かな逸品。OMをはじめソロも含め、Jordi Sabates周辺作にハズレなし!ジャズ・ロック・ファンは是非一聴を。
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