2015年1月26日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
彼らの公式サイトのバイオグラフィを元にバンド・ストーリーを紹介しつつ、80年代の初期作品をピックアップしてまいりましょう。
北欧ならではのリリカルなメロディと手工芸品のような温かでいて精緻なタッチのアンサンブルに彩られた名品たちをお楽しみください。
バンドの出身地は、カテガット海峡を挟んでデンマークを望み、中世時代にはスウェーデンとデンマークとの間で領土争いが繰り広げられた、スウェーデン南西部の都市ハルムスタッド。
ギター/VoのMats Nilssonを中心に、ジェネシスやイエスやジェントル・ジャイアントやEL&Pなどブリティッシュ・プログレのファンだった15歳~19歳のメンバーにより76年に結成されます。
バンド名は、Mats Nilssonがファンタジー小説に傾倒していたことから、J・R・R・トールキンの『指輪物語』から取って「ISILDURS BANE(イシルドゥアの禍い)」に。「イシルドゥアの禍い」とは、物語に登場する数々の指輪の中でも、最も強大な力を持つ指輪の別称で、指輪自体がまるで意思を持つかのように持ち主(イシルドゥア)の運命を翻弄し、その命を奪った「あやめ野の凶事」という伝説から、畏怖を持ってそう呼ばれていました。
結成翌年の77年に、キーボード奏者で作曲もできるMats Johanssonが加入し、Mats Nilsson(G)とMats Johansson(Key)の2人のコンポーザーによる双頭体制となり、ブリティッシュ・プログレからの影響とファンタジー小説のモチーフとをブレンドさせた彼らならではのサウンドが確立しました。
そこから、フュージョン、ジャズ、クラシック、演劇音楽なども吸収しながら、北欧ならではの柔らかな幻想美を持ったサウンドに磨きをかけていき、ライヴ会場でのカセット販売はすべて完売するなど自信を付けていく中で84年に制作したデビュー作が『Sagan om den Irlandska Algen』です。
当時のスウェーデンではプログレッシヴ・ロックのマーケットが小さく、どのレーベルも興味を示さなかったようで、自身のレーベルIsildurs Recordsを設立し、そこからリリース。彼らの80年代の作品はすべてIsildurs Recordsからリリースされます。
核戦争とそこでの人間の反応(無関心、批判、恐怖、パニック)がコンセプトで、それだけ聴くとピンク・フロイドを彷彿させますが、フロイドのようにリアリスティックではなく、ファンタジー小説的な柔らかな幻想性に彩られているのが彼らの持ち味です。
優美さと神秘性が同居した、たなびくキーボードとフルートで幕開け。力強いタッチの流麗なピアノがまるでイタリアのロッカンダ・デッレ・ファーテのような格調高さと瑞々しさとともに入ってくるとアンサンブルは動き出し、ジェネシスとキャメルからの影響が感じられるファンタスティックなシンフォニック・ロックへと展開します。軽やかに舞うフルート、スティーヴ・ハケットゆずりの精緻なタッチのギター、夢想的なムーグ・シンセが代わる代わるに奏でるリリカルなリードのあまりの美しさに言葉を失います。
シャープにリズムを刻むドラム、フュージョン風味のあるよく動くベースによるリズム隊も安定感と歌心抜群。
木琴などが彩る色彩感あるアレンジもまた見事です。
翌85年には2ndアルバム『Sea Reflections』をリリース。82年頃から一緒に演奏することもあったサックス奏者Bengt Johnssonが正式メンバーとなり、新たな試みとしてブラスを導入するとともに、ナレーションのみでインストゥルメンタルになるなど、サウンドは大きく変化。言葉での表現は、レコード・カヴァーやブックレットにとどめ、作品では、サウンドだけで世界観を表現するとともに、ステージングでは、ライティングや朗読や服装面で観客のイマジネーションを刺激するスタイルへと変わりました。
「海とそこで生きるために働く人々へのトリビュート」というアルバム・コンセプト通り、まるで海にきらめく陽光のように眩しいぐらいに明るいトーンのシンセときらびやかなホーン・セクションがフィーチャーされ、フュージョン~AOR色を増した「アダルト・オリエンテッド・シンフォ」と言えそうなサウンドを聴かせています。
86年に初の海外ツアーでドイツへ渡り、3週間滞在。87年には、ミニアルバム『Eight Moments of Eternity』をリリースします。前作と同じくインスト作品で、前作でのフュージョン/AOR要素と、初期のファンタスティックなシンフォニック・ロックとがブレンドしたような明朗でいてリリシズムあるサウンドが特徴です。大きなテーマを持たず、1曲1曲を独立した曲として作ったようで、バンドのメンバーいわく「これまでの作品が小説だとしたら、短篇集と言えるね」。
そして88年、デビュー前に制作し、ライヴ会場でのカセット販売ながら3000本を売り切った初期音源を、再レコーディングや新曲追加などリメイクして『Sagan om Ringen』としてリリース。
バンド名由来の『指輪物語』をテーマにした初期の楽曲はメンバーの思い入れも強く、ファンからの再発の要望も多かったため、自身のレーベルからの待望のリリースとなりました。ファンタスティック・ロックの傑作と言える1stとともに、ジェネシスやキャメルなど叙情派プログレのファンにはたまらない演奏が続く北欧シンフォ屈指と言える大傑作に仕上がっています。
指輪物語の舞台となった「中つ国」の中でも最古の存在という不思議な老人トム・ボンバディルを描いた楽曲。
鉄琴、ピコピコ音のシンセ、霧の向こうから鳴るような繊細なタッチのエレキが織りなす、可愛らしく、これぞ「ファンタスティック」と言えるイントロから心躍ります。メロディアスに躍動するベース、手数多いドラムによるリズム隊もファンタスティックさを巧みに演出するし、1分半頃には、スティーヴ・ハケットゆずりの繊細なギターとともに、ジェネシス的なキメも入ってたまりません。スティーヴ・ハケットとキャメル時代のリチャード・シンクレアが共演したような素晴らしいアンサンブル!フルートやきらびやかなシンセなどが次々に折り重なってきて、ただただ至福。陽気で飛び跳ねる老人として描かれたトム・ボンバディルへの包み込むような愛情に溢れた名品と言えるでしょう。
リリースと同年に、スウェーデン、ドイツ、ハンガリーをツアー。特にブダペスト公演は盛況に終わります。当時の映像がありましたので、是非、ご覧ください。ジェネシス時代のピーター・ガブリエルばりのシアトリカルさ!聴き手のイマジネーションを刺激することへの並々ならぬこだわりが感じられます。
楽曲は、『Sea Reflections』から、フュージョンとシンフォニックが見事に融合したサウンドを聴かせる「Bat Seba」!
ファンタスティックとは、辞書で調べると「幻想的で、夢を見ているようなさま」の意。1st『SAGAN OM DEN IRLANDSKA ALGEN』と3rd『SAGAN OM RINGEN』ほど、「ファンタスティック」という形容がぴったりくる作品はないでしょう。古より伝わる「北欧神話」と、その影響の元で生まれたトールキンのファンタジー文学の世界が楽器を通して音の物語として紡がれていくような、ファンタスティック純度100%と言える北欧の名バンドです。
なお、上記の4作品は、1stと3rdの2in1CD、2ndとミニアルバムとの2in1CDとしてCD化されておりますので、是非ゲットください!
現在も精力的な活動を続けるスウェーデンを代表するシンフォ・グループによる記念すべき84年1stアルバム。核戦争とその後の世界を描き出すコンセプト・アルバムで、クラシックの高い素養をベースにキャメルやマイク・オールドフィールドに通じるサウンドを取り入れて繊細にアウトプットしたシンフォニック・ロック。いかにも北欧と言える緻密さと透明感が魅力です。
紙ジャケット仕様、SHM-CD、ボーナス・トラック2曲、21年リマスター、定価3143+税
76年に結成され84年にデビューしたスウェーデンを代表するプログレ・グループ。89年作の5thアルバム。郵便局員の傍ら、33年をかけて夜な夜な石を積み上げて理想の宮殿を作り上げたフランス人フェルディナン・シュヴァルの生涯をテーマにしたコンセプト・アルバム。『Sea Reflections』でのフュージョン・タッチは無くなり、金管楽器のような艶やかで瑞々しいトーンのキーボード、朗らかなフルート、ティンパニを彷彿させるクラシックなタッチのドラム、精緻なタッチのメロディアスなギターが織りなす色彩豊かでイマジネーションに溢れたサウンドが印象的です。デビュー以来、様々な音楽性を取り込みながら、一貫してコンセプトを音像化することにこだわってきたバンドの表現力は、もはやバンドというより交響楽団と言った方がしっくりくるほど。キャメル『スノーグース』の世界を彼らならではの折衷センスでさらなるイマジネーションで展開した北欧プログレ屈指の傑作。これは唯一無比の一枚です。
スウェーデンのシンフォニック・ロック・バンドISILDURS BANEによる92年作。あまりに美麗なヴァイオリンとピアノが織りなす壮麗さに満ちたクラシカル・パートとテンションみなぎるギターがリードする緊張感MAXのヘヴィなパートをダイナミックに行き来する、有無を言わさぬ迫力を持ったシンフォニック・ロックを展開。そこにフルートらによる繊細なリリシズムを湛えたパートから、様々なSEをコラージュしたアヴァンギャルドなパートまでを加えて、目が回るような多彩な曲構成で駆け抜けます。極めつけは荘厳なヴォカリーズを随所にフィーチャーして宗教的な崇高さまでも演出、まさに圧巻の音世界が広がっています。80分以上に渡って繰り広げられる、これぞ真のロック・オペラ。傑作です。
2枚組、カバン形の特殊ケース仕様(茶色)、ブックレット付仕様
盤質:傷あり
状態:良好
軽微な汚れあり、ケースのステッカーの一部に糊剥がれあり
2枚組、カバン形の特殊ケース仕様(茶色)、ブックレット付仕様
盤質:傷あり
状態:並
ボックスに潰れあり、本来貼ってあるアーティスト名・タイトルのステッカーがありません
76年結成、84年にデビューしたスウェーデンのシンフォニック・ロック・バンドによる97年作8th。ずばり彼らの最高傑作と言ってもいい素晴らしい完成度を誇る作品こそ本作。フルート/トランペット/トロンボーン/オーボエ/ヴァイオリン/チェロなどの管弦楽器に加え十数種類に及ぶ多彩な打楽器群も導入しダイナミックかつ緻密に織り上げていくアンサンブルは、芸術の域とすら言いたくなる見事さ。エモーションたっぷりにフレーズを紡ぐメロディアスなギターや自在にトーンが変化する綺羅びやかなシンセサイザーも豊かな色彩を加えていきます。ヴァイオリンの活躍も素晴らしく、クラシックの並々ならぬ素養を発揮したエレガントなプレイで演奏をリード。全8曲となっていますが、まるで絵巻物を広げるかのようにアルバムを通して一貫した雄大な流れがあり、思わず惹き込まれてしまうような美麗で非現実的な世界観が広がります。気品高さと熱情がこれほど有機的に結びついたサウンドはそうはないでしょう。優美なシンフォニック・ロック作品をお探しなら、必ずや心奪われるであろう感動の一枚です。
特殊ペーパーケース仕様、直輸入盤(帯・解説付仕様)、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:
帯有
ブックレットに小さい折れあり、スレ・圧痕あり
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