2014年9月1日 | カテゴリー:プログレ温故知新,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ温故知新
ジャズ・ロック本来のタイトで硬質なサウンドにイタリアらしい叙情性を内包したイタリアン・ジャズ・ロックをテーマに、定番からはPICCHIO DAL POZZOの1stを、新鋭からはSADOの08年作『HOLZWEGE』をご紹介いたします。
PICCHO DAL POZZOは、港町ジェノヴァにて結成されたジャズ・ロック・グループ。バンドを率いるのは、イタリアン・ロックを代表するグループNEW TROLLSでリーダーを務めるVittorio Di Scarziの弟にあたるkey奏者Aldo Di Scarziで、兄弟が設立したGROGレーベルより76年と80年に2枚のアルバムをリリースしています。
一言にジャズ・ロック・グループと言っても彼らのサウンドは76年当時としては実にユニーク。英国のカンタベリー・ロック勢から影響を受けた、歌心溢れる芳醇なポップセンスと適度に散りばめられたアヴァンギャルド要素の組み合わせが印象的な、非英国カンタベリー・フォロワーの先駆けと言えるサウンドを聴かせてくれます。では本作の導入からの2曲「Merta 」「Cocomelastico」をお聴きいただきましょう。
ヴァイヴの涼やかな音色に導かれて幻想的な演奏が紡がれていく冒頭は、カンタベリー・ロックの真髄を受け継ぐ息を呑む美しさを感じさせます。それと同時に醸しだされる独特の透明感や浮遊感と、迷宮の奥深く迷い込んだかのような不安を伴う静かな緊張感が均衡したサウンドは彼らならではの味わいで、いちカンタベリー・フォロワーという位置づけを越えたオリジナリティとして活きている点がまた何とも見事です。イタリア語のヴォーカルも印象的で、まるで楽器の一部のように繊細な響きを持っているところが、多くのイタリアン・ロック・グループと一線を画する魅力となっている点も聴きどころ。
いかにもイタリアン・ロックという熱量の高いサウンドを聴かせる兄VittorioのNEW TROLLSとは対照的に、PDPはひたすらクールに繊細かつアーティスティックなサウンドというのが面白いですよね。音楽性は違えど才能の豊かさは互いに引けを取りませんね。
さて、そんなPDPを始めとする70’sイタリアン・ジャズ・ロックの精神を現代に受け継ぐイタリアの新鋭が、続いてご紹介するSADOです。
SADOは管楽器奏者を含む6人編成のイタリアンのジャズ・ロック・グループ。このバンドについては決して多くの情報は公開されていないのですが、そのサウンドは文句なしに素晴らしく、AREA直系と言える理知的かつ凶暴なアンサンブルを基調として、そこにユーモラスかつ緻密なカンタベリー・タッチを織り交ぜた独特のジャズ・ロックを披露します。
では08年リリース作『SOCIETA ANONIMA DECOSTRUZIONISMI ORKANICI』より、冒頭の楽曲「Engasa Leappirt」をお聴きください!
初期AREAを思わせるフリージャズの要素が強いサウンドですが、カンタベリー風のユーモラスなフレーズが随所に散りばめられているのが特徴で、硬質なだけではない不思議な聴き心地の良さも持っています。本格派ジャズテイストを持ったままにハイテンションで突っ切るようなスピード感いっぱいのアンサンブルは、まさに痛快の一言。とは言えイタリアらしく叙情的なナンバーもあって、渋くむせぶサックスのプレイが素晴らしいビートルズカバー「Michelle」なども聴きどころとなっています。
イタリアン・ジャズ・ロックをテーマに新旧2タイトルをご紹介してまいりましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。イタリアにはまだまだ素晴らしいイタリンン・ジャズ・ロックの名作が存在しますので、ぜひここを足がかりに探求をしていただければと思います!
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