2014年3月27日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
タグ: プログレ
一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。
本日は、イタリアの国民的バンドI POOHの出世作『OPERA PRIMA』をピックアップいたしましょう。
『OPERA PRIMA』は、大手CBSレーベル移籍後の71年作で通算4枚目。
まずはここまでのバンドの歩みを振り返ってみましょう。
結成は1964年。ドラマーであり作詞家のValerio Negriniを中心に、ボローニャで活動をスタートします。
ちなみに、Valerioは、『OPERA PRIMA』リリース後に作詞に専念するためグループを脱退しますが、「第五のメンバー」としてI POOHの作品も多く手がけていきます。日本で言えば、元はっぴいえんどの松本隆と言えますね。
当初JAGUARSというバンド名でしたが、66年はじめに、同名のバンドがローマに居ることから、I POOHに改名。66年2月、スペンサー・デイヴィス・グループ「Keep On Running」のカヴァーでシングル・デビューします。最初はR&Bバンドだったんですね!
その後、I POOHのキーパーソンとなるKey奏者/VoのRoby Facchinetti、B/VoのRiccardo Fogliが加入。66年末、『PER QUELLI COME NOI』でレコードデビューします。
68年、オリジナル・ギタリストの2人が、結婚やツアー疲れなどにより脱退。RobyとともにI POOHの顔と言えるギタリスト、Dodi Battagliaが加入します。
2nd『Contrasto』をリリースしますが、これがいわくつきの作品。バンド側の承諾なく、レコード会社主導で既発曲やデモなどをまとめてリリースしたもので、バンド側の抗議により回収。1000枚ほどが市場に出回ったのみというレア盤として、原盤は中古市場で高値で取引されています。
Valerio、Roby、Richard、Dodiの4人が揃い、イタリア初のコンセプト・アルバムと言われる3rd『MEMORIE…』を70年にリリースします。全曲がRobyとValerioコンビによる楽曲となり、これまでのビート・サウンドを脱却。美しいメロディとクラシカルなアンサンブルが印象的で、その後のI POOHサウンドの萌芽が確かに感じられます。
評論家からは高く評価されたものの商業的にはうまくいかず、レーベルとの契約は打ち切られますが、彼らのステージを見て感銘を受けたプロデューサーGiancarlo Lucarielloの誘いにより、大手CBSに移籍。Giancarloのプロデュースの元、荘厳なオーケストラ・アレンジと「愛」をテーマにした歌詞による甘美なロックというスタイルが確立します。その後、Giancarloとの共同作業は75年の8枚目『FORSE ANCORA POESIA ミラノの騎士』まで続き、70年代ロック屈指の名作を次々にリリースしていきます。
そんなGiancarloとの共同作業の一発目であり、I POOHサウンドを確立し、イタリアでの人気を確立した出世作が『OPERA PRIMA』です。
何と言っても素晴らしいのが、アルバムに先行してリリースされたシングル「Tanta Voglia Di Lei」。年間3位となる大ヒットとなります。
ギターのDodiによるハイ・トーンのヴォーカルと「美旋律」という言葉がぴったりの何度聴いても胸を鷲掴みにされて涙がこぼれそうになるエモーショナルで美しすぎるメロディは本当に素晴らしく、個人的には、プロコル・ハルム「青い影」、バッドフィンガー「ウィズアウト・ユー」と並び、気品に満ちた美旋律な名曲トップ3にランクイン!
I POOHは、本国イタリアでは、今でもスタジアムを満員にする国民的グループ。2011年のこの曲のライヴ映像もご紹介いたしましょう。スタジアムが一体となった合唱は鳥肌ものですよ~。
アルバムのオープニングを飾る「Pensiero」もまた、今でもコンサートで演奏されファンに愛される名曲。
古代ギリシャ~ローマから中世カトリック世界、バロックまで、豊かなヨーロッパ文明が香る気品に満ちたメロディ・ラインは絶品の一言。
オーケストラの響きもまたいかにも西洋音楽の中心地イタリアならではの魅力に溢れていて、英米ロックに装飾として使われるストリングス・アレンジとはまったく異なる荘厳さ、艶やかさが印象的です。
なお、オーケストラ・アレンジは、Gianfranco Monaldi。彼のアレンジした曲としては、フォルムラ・トレのAlberto Radiusの「Che Cosa Sei』も特筆です。
I POOHの育ての親と言えるGiancarlo Lucarielloのプロデュース作で、I POOHの妹分と言える2作品もあわせてご紹介いたしましょう。
I POOHが気に入った方はこちらも間違いなくグッとくるはずでしょう。
I POOHは、2012年にイタリアン・プログレ・フェスで来日しました。あのスタジアム級バンドをクラブチッタという小さな会場で間近に見られる幸せ。生で聴く「Tanta Voglia Di Lei」と「Pensiero」はまさに至福で、あの時の感動はまだ鮮やかに心に残っています。
ライヴ・レポートもあわせてご覧ください。
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4月28日(土)、クラブチッタで行われたレ・オルメとイ・プーによる感動のライヴをレポート!
みなさまのロック探求のお役に立てれば幸いです。
また明日、お会いいたしましょう。
プログレッシブ・ロック・フィールドの枠を飛び越えてイタリアを代表するポップ・ロックバンドであり、イタリア然とした甘美なバラードやオーケストラとの華麗なる融合など、プログレッシブ・ロック的なアプローチも聴かせるグループによる72年作。CBS移籍2作目である本作は、前作同様Giancarlo Lucarielloプロデュースで製作された名盤であり、オーケストラを全編に配し、イタリア叙情をふんだんに感じさせる切ないボーカルが素晴らしい作品となっています。ボーカリストRiccardo Fogliは本作を最後にグループを離れます。ヒット曲「愛のルネッサンス」などを収録。
プログレッシブ・ロック・フィールドの枠を飛び越えてイタリアを代表するポップ・ロックバンドであり、イタリア然とした甘美なバラードやオーケストラとの華麗なる融合など、プログレッシブ・ロック的なアプローチも聴かせるグループによる73年作。ワーグナーの同名歌劇を元にしたコンセプト・アルバムの形を取った本作は、脱退したRiccardo Fogliに代わりRed Canzianが参加し不動のラインナップが完成。オーケストラの登用や楽曲の良さは当然のことですが、そのコンセプト性や大仰な作風はプログレッシブ・ロック的に最も完成されたものであり、10分を超える表題曲は特に圧巻です。
プログレッシブ・ロック・フィールドの枠を飛び越えてイタリアを代表するポップ・ロックバンドであり、イタリア然とした甘美なバラードやオーケストラとの華麗なる融合など、プログレッシブ・ロック的なアプローチも聴かせるグループによる75年作。「Parsifal」「Un Po’del Nostro Tempo Migliore」というスケール感のある作品が続いた後の本作は、オーケストラの使用などは程々に控えられ小品を中心に収録されており、本来の彼らのサウンドへの回帰が伺えます。前2作の大仰な展開こそ少ないものの、当然ながらイタリアの叙情を映す甘いメロディーは健在であり、胸に響く1枚となっています。「愛のひととき」「恋するミラノ」などを収録。
プログレッシブ・ロック・フィールドの枠を飛び越えてイタリアを代表するポップ・ロックバンドであり、イタリア然とした甘美なバラードやオーケストラとの華麗なる融合など、プログレッシブ・ロック的なアプローチも聴かせるグループによる75年作。前作ではシンフォニック・ロックの極地のような壮大なサウンドを聴かせた彼らですが、本作ではそのサウンドを引き継ぎながらもエレガントで落ち着いた雰囲気へシフト。元来彼らの個性であった甘美なメロディー、哀愁、イタリアの叙情、優雅なクラシカルさなどが最高のバランスで混ざり合い、シンフォニック期の彼らの集大成を見せつけています。
80年作。前オリジナル作の大ヒットを経て制作された充実のアルバム。強調されたスリリングなビート、コーラスの美しさ、シンフォニックなキーボードなど、イタリアン・ロックの粋を集めて作り上げられた傑作。アルバム・チャートで2位を記録。ヒット曲「あなた色のうた」収録。
イ・プーの集大成ライブ盤がいよいよ完全版で登場。81年秋のスタジアム級ツアーから、代表曲を網羅。一糸乱れぬ演奏技術に加え、全員がボーカルをとるという重厚な音の壁が胸を熱くする。プログレ期の名曲「パルシファル」の完璧な再現をはじめ、初期名曲群が一望出来るヒット・メドレーなど、イ・プーの魅力の全てを余すことなく詰め込んだ、イタリアン・ロック史上に残る大傑作。
84年作。前作同様、イタリアから飛び出してハワイで録音された意欲作。広大な大海原のごとくシンフォニックに展開する愛と望郷の旅。アルバム・チャートで2位、年間チャートでも9位を記録した大ヒット作。
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