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MEET THE SONGS 第77回 トラフィック『ミスター・ファンタジー』

今日の「MEET THE SONGS」は、トラフィックの67年デビュー作『ミスター・ファンタジー』をピックアップいたしましょう。

トラフィックと言えば、15歳の時にスペンサー・デイヴィス・グループ(以下、SDG)でデビューした天才シンガー&Key奏者、スティーヴ・ウィンウッド!

「キープ・オン・ランニング」「ギミ・サム・ラヴィン」など、全英チャート1位のヒットを飛ばしてスターに上りつめ、アメリカでの成功もつかもうとしていた絶頂期の67年にグループを脱退。ビートルズが『ラバー・ソウル』『リヴォルヴァー』と野心的な作品を次々とリリースしてロックを進化していた時代に、彼らに負けないサウンドを求めて地元バーミンガムの仲間達と結成したのがトラフィック。

仲間達は当時こそ無名に近い存在でしたが、今ではロック・シーンに名を残す名手3人、

・デイヴ・メイスン(ギター)
・ジム・キャパルディ(ドラム)
・クリス・ウッド(フルート/サックス)

デイヴ・メイソンは、2nd録音後にトラフィックを抜けますが、その後は、LAなどアメリカのミュージシャンとも交流し、エリック・クラプトンやジョージ・ハリスンとともに英スワンプ・ロック・シーンを盛り上げた名ギタリストでありコンポーザー。

デイヴ・メイスンと63年に結成されたバンドHELLIONSで一緒だったのがジム・キャパルディで、ドラマーながら作曲も非凡で、ソロとしても名作を残す名ミュージシャン。なお、HELLIONSは、64年にビートルズも武者修行したハンブルグのSTAR-CLUBのステージにも立ち、そのときに同じホテルに泊まっていたのがSDGで、デイヴとジム、そしてスティーヴ・ウィンウッドの3人は仲良くなったようです。

そして最後の一人、クリス・ウッド。若い時は同郷のクリスティン・パーフェクトやスタン・ウェブやカール・パーマーとバンド活動をしながら腕を磨いたフルート/サックス奏者で、セッション・ミュージシャンとしてもジミ・ヘンやフリーの作品に参加した名手。彼の妹がデザイナーで、SDGの衣装をデザインしていたことがきっかけでスティーヴと知り合ったようです。

そんなバーミンガムの才能みなぎる仲間達4人は、南部の田舎町バークシャーにコテージを借り、半年間にわたり共同生活をしながらリハーサルを続けます。

そして、67年5月にリリースされたのがデビュー・シングル「Paper Sun」!

Paper Sun

作曲は、スティーヴ・ウィンウッド/ジム・キャパルディの名コンビ。

全編にフィーチャーされたエキゾチックなシタールとアシッド臭いっぱいのフルート、そしてフックに富んだメロディは、これぞ英国サイケデリック・ポップ!

ピアノやハープシコードにはゾンビーズに通じるクラシカルな気品もあって、う~む、素晴らしすぎるデビュー曲!

全英5位!

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デビューから3ヶ月後の67年8月にリリースされた2ndシングルが「Hole In My Shoe」!作曲はデイヴ・メイスン!

Hole In My Shoe

ビートの効いたデビュー・シングルとは方向を変え、英国的な牧歌性や幻想性が全面に出ています。

メロトロンやフルートを効かせた英国幻想ポップは、ムーディー・ブルースの「サテンの夜」と並んで、英プログレの原点とも言えますね!ちなみに「サテンの夜」は3ヶ月後の67年11月リリースですね。

デビュー曲を上回る全英2位の大ヒット!

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この曲のB面が素晴らしくって、BLOOD SWEAT & TEARSもカヴァーした「Smiling Phases」!

Smiling Phases

こういうR&Bフィーリングたっぷりのグルーヴィーな曲では、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルが映えまくってますね!

ジム・キャパルディのタメの効いた力強いドラムもカッコ良い!

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BS&Tのバージョンもついでにどうぞ!

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こうして聴いてみると、フルートやサックスをフィーチャーしたサウンドは、ブラス・ロックの源流とも言えそうですね。米ブラス・ロックの産みの親であるアル・クーパーにはきっと大きな影響を与えているでしょう。

ここまでのシングルは、アルバムには未収。国内盤紙ジャケなど、ボーナス・トラック付きのリマスター盤には収録されていますので、ボーナス・トラック付きをオススメいたしますよ~。

デビューシングル、2ndシングルともヒット、そしてライヴも大好評と波に乗る中、67年12月にリリースされたのが『ミスター・ファンタジー』。

67年の4月に結成だから、わずか8ヶ月しか経っていないわけです。恐るべしメンバーの才能と、67年当時のイギリスの音楽シーンが持つ創造のエネルギー。

R&Bフィーリングいっぱいのアーシーかつカラフルな楽曲を中心に、牧歌的なナンバーや、ラーガなナンバーなど名曲ぞろいですが、その中でもバンドの代表曲と言える2曲をピックアップいたしましょう。

Dear Mr.Fantasy

ザクりと無骨なトーンと繊細なタッチから生み出されるメロウかつエッジの立ったアルペジオ&リズム・ギターからは、デイヴ・メイスンらしいタイム感と歌心が溢れています。

サイケデリックな浮遊感と英国的な幻想美を加えるメロトロンも特筆。

どこまでも続くようなジャム・セッション的なギター・ソロもカッコ良すぎ!エンディングでは、前のめりにアグレッシヴにエネルギーを増していくドラムとともに、ジェフ・ベックやジミー・ペイジにも負けないハード・エッジなギターが炸裂。元祖ハード・ロックと言っても良いほどの切れ味ですね。

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Coloured Rain

R&Bの黒っぽさとクラシックの気品とのブレンドはプロコル・ハルムにも負けてないし、それに加えて、ジャズ・フィーリングやトラッドの素朴さや牧歌性なども混ぜ込んだサウンドは、同時代のビートルズにも負けてない先進性がありますね。

デイヴ・メイスンのギターも変幻自在で、ここぞではハード・エッジなリフをぶつけて、後半なんて、鳴り響くオルガンやメロトロンとともに、元祖キーボード・プログレ、オルガン・ハードと言えますね!

試聴 Click!

『サージェント・ペパーズ』をはじめ、67年に数多くリリースされたサイケ・ポップの傑作の中でも屈指と言える一枚。

天才スティーヴ・ウィンウッド、そしてその才能と五分に渡り合う名手3人の個性が際立つロック・クラシックですね!

TRAFFICの在庫

  • TRAFFIC / TRAFFIC

    ウィンウッド&デイヴ・メイソン!絶妙なグルーヴを生むアンサンブルと英国的な翳りあるメロディ、ブリティッシュ・ロックの名作、68年リリース

    天才スティーヴ・ウィンウッドがデイヴ・メイソン、ジム・キャパルディなどと組んだグループ。68年作2nd。1stでのサイケ色は無くなり、シンプルなフォーク・ロック・サウンドになったことで、演奏の巧みさ、バンドが持つ絶妙なグルーヴが際立っています。デイヴ・メイスンの作曲センスも特筆もので、特に「Feelin’Alright?」は、後のソロ作を彷彿とさせる憂いのあるメロディとシンプルながらメロディの魅力を倍増させるギターワークが堪能できる名曲。

  • TRAFFIC / JOHN BARLEYCORN MUST DIE

    TRAFFIC再結集、グルーヴィーで瀟洒な通算70年発表4作目!

    STEVE WINWOOD、DAVE MASONという両雄並び立たずな、関係の中でその摩擦力を音楽の原動力に変えて来た彼らの名盤の誉れ高い70年発表、通産4作目。表題曲「JOHN BARLEYCORN MUST DIE」は擬人化された大麦について歌われる英国のトラッド・ソング。ジョン・バーリコーン(大麦)は一度刈り取られなければならない。その後、美酒となって人々に幸福をもたらすと歌われるこの歌こそが、一度は解散しながらも再び相見えた、新生TRAFFICの姿勢を象徴しているかのようです。オルガン、サックス、パーカッションと月並みなロック編成を大きく離脱し、むしろジャズ・コンボのような柔軟さで、インストから幕を開ける今作は、来るべき80年代以降のジャンル混淆時代の突入を予見しているかのようです。

  • TRAFFIC / WELCOME TO THE CANTEEN

    Steve WinwoodとDave Masonを双頭とする名バンド、71年の初ライヴ作、Jim Gordon参加

  • TRAFFIC / SOME KINDA WOMAN

    94年リリースのシングル

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