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「そしてロックで泣け!」第十六回 パブロフズ・ドッグの「オンリー・ユー」

あけましておめでとうございます。2016年も「少しマイナーだけど泣けるロック曲」を紹介していきたいと思いますので、宜しくお願いします。新年一発目は、僕の大好きなパブロフズ・ドッグでいってみよう!

よく考えたらすごいバンド名のパブロフズ・ドッグ。日本で初めて紹介されたのは1976年のこと。彼らのセカンド・アルバム『At The Sound Of The Bell』が『条件反射』という邦題で発売された。帯には「かつてのロック概念を打ち破る、新しい世代のための新しいロック・アイドルの台頭。秘密のベールを脱いでパブロフ、ついに日本上陸」とある。パブロフって略したら、アイドルではなくて、ヒゲの学者の方を想像するけどね。

『条件反射』にはイエス~キング・クリムゾンのビル・ブルフォードやロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイが参加。それもあって、パブロフズ・ドッグは熱心なロック・ファンの間で知られていたようだが、知る人ぞ知るという存在だった。

その状況が変わったのは93年で、ソニーから75年のデビュー作『禁じられた掟』と2作目『条件反射』が国内初CD化された。僕が初めてパブロフズ・ドッグを聴いたのも、その再発時。とにかく聴いてビックリした。叙情派アメリカン・ロック・バンド、という情報は知っていたけど、まさかこれほどまでに泣きと陰りのメロディが満載とは! 本当に衝撃的だった。

「こんなすごいバンドなのに、知る人ぞ知る存在じゃもったいない! もっと広く知ってもらいたい!」と、そんな思いは、僕が音楽ライターを目指す動機にもなった。その思い入れもあって、後に『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック』という本を監修した時に、『禁じられた掟』のジャケットを大きく表紙に載せて欲しいと頼んだ。

そこで、今回は音楽ライターの初心に戻って(?)、パブロフズ・ドッグの「オンリー・ユー」を紹介したいが、その前にザッと彼らの作品を紹介しておこう。

まず基本アイテムといえるのが、75年発表のデビュー作『Pampered Menial』と、76年発表の2作目『At The Sound Of The Bell』の2枚。

その後解散したように思われていたが、実は3作目もレコーディングしていた。だが所属レーベルが発売を拒否してお蔵入りとなり、後に『St.Louis Hound』という名義の同名タイトル盤が自主制作(ブートレッグ?)でコッソリ出ていた。90年代になって『Third』などのタイトルでCD化され、07年に発表された『Has Anyone Here Seen Siegfried?』というタイトルのCDが、現行のオフィシャル・ヴァージョンとなっている。

90年には、デヴィッド・サーカンプとダグ・レイバーンの元メンバーで再結成され、4作目となる『Lost In America』を発表。上記1~4作目までは、ボートラ入りの再発CDがあり、国内盤でも紙ジャケット仕様で再発された。

95年には元メンバーのマイク・サフロンがパブロフズ・ドッグ2000を結成して『End Of The World』を発表。01年にはデヴィッド・サーカンプがソロで『Roaring With Light』を発表。いずれも6曲入りのミニ・アルバムだった。

07年には、デヴィッド・サーカンプがソロで『Dancing On The Edge Of A Teacup』を発表。また10年には、再結成パブロフズ・ドッグの09年のライヴを収録した『Live And Unleashed』、そして通算5作目の『Echo & Boo』を発表。さらにスタジオの火事で焼失したとされていた75年録音のデモ音源『Pekin Tapes』のコピー・テープが奇跡的に発見され、14年にCD化されている。上記4作は国内盤でも発売され、僕がライナーを担当させてもらった。

15年には76年のライヴ音源が『Of Once And Future Kings…Live』のタイトルで発掘CD化されるなど、近年はライヴ活動もリリース状況も活発になっている。

泣ける曲という点からすれば、なにはともあれ初期2作をお勧めしたいが、今回はちょっとマイナーなところで、3作目収録曲「オンリー・ユー」を紹介したい。

歌詞のテーマは悲恋もの。自分の元を去っていった彼女に、君しかいないんだ、戻ってきてほしい、と訴えている。よくあるテーマだが、デヴィッド・サーカンプのヴォーカルが、尋常でないほどに泣きまくる。

ピアノの調べをバックにした冒頭の歌から、デヴィッド・サーカンプの声は悲しみをたたえているが、そこではまだ冷静で、落ち着いた雰囲気がある。ところが、サビで一気に感情が爆発。このサビの最初の歌詞「ラヴリー・ユー」の「ユー」のメロディの抑揚が、胸をギュッと締めつける。どこか演歌に通じるような歌いまわしだ。

彼女を失って、初めてその大切さを知った男の絶望が、何とか戻って来てほしいと願ってかき乱れる心の叫びが、「ラヴリー・ユー」の歌に込められている。このデヴィッド・サーカンプの独自の歌唱センス、感情表現こそが、パブロフズ・ドッグの悲哀感の根幹といえる。

2番目の歌メロからはメロトロンも登場し、デヴィッド・サーカンプの歌も悲痛さを増している。どこか弱々しいギターとメロトロンのインスト・パートを経て、ラストで執拗に「君だけなんだ」と繰り返す。「愛しい君よ。君だけが愛とすべての痛みに耐えることができた。君だけなんだ。君だけなんだよ」と。切なすぎるよなぁ。

惜しむらくは、3作目がアルバムとして最終的な完成をみていないために、デヴィッド・サーカンプの歌、各楽器の音に厚みがない。ギターやドラムの音色も軽くて、曲自体の重みが不足している。アレンジに関してももう少し凝ることができただろう。1・2作目に比べると影が薄いアルバムだけど、きっちりとプロデュースされていたら、同曲も本作も違う評価がされているはず。

まずはこの3作目からパブロフズ・ドッグを聴いてみようという人は少ないかもしれないけど、1・2作目が好きなら、きっと気に入るはず。先に紹介した近作も、派手さには欠けるけど良質の内容なので、ぜひチャレンジしてみてほしい。で、あとは待望の初来日が実現すれば、ってとこなんだけど、2016年に何とか……無理かなあ?

それでは、来月もロックで泣け!

Pavlov’s Dog / Only You

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  • PAVLOV’S DOG / PAMPERED MENIAL

    ゲディ・リーを彷彿させるハイトーンVoと吹きすさぶメロトロンが印象的な米プログレ・バンド、75年デビュー作

    David SurkampとRick Stocktonを中心に結成されたアメリカのプログレッシブ・ロックグループの75年デビュー作。その内容はDavid Surkampの非常に個性的なハイトーン・ボーカルで聴かせるハード・ロック的な音楽性を基本にしたもの。ヴァイオリン、フルートといったアクセントも巧みに取り入れたサウンドを聴かせていますが、なんと言っても湿り気のあるメロトロンが使われていることがこのグループの音楽性をプログレッシブ・ロックへと接近させており、アメリカよりはブリティッシュ・ロック的な味わいを感じさせる作風となっています。

  • PAVLOV’S DOG / AT THE SOUND OF THE BELL

    米プログレの名バンド、76年作2nd、個性派ハイトーン・ヴォーカルを看板としたドラマティックな楽曲が魅力、Bill Bruford/Michael Brecker/Andy Mackayらが参加!

    中毒性が高いハイトーン・ヴォーカルとキーボードが中心のドラマティックなサウンドを看板とした米プログレ・グループ。Bill Bruford(ドラム)、元ROXY MUSICのAndy Mackay(サックス)など多数の実力派ミュージシャンがゲスト参加した76年作2nd。ハイトーン・ヴォーカルが情感豊かに叙情的なメロディを歌いあげ、儚げなヴァイオリン、荘厳な響きのメロトロン、おおらかでスケール感があるキーボードが透明感溢れるアンサンブルを展開。壮大に泣くギター、クライマックスに向けてアタックを仕掛けるドラムなども適材適所で活躍し、多彩な音色が無理なく融け合っています。アメリカのグループながら、繊細なアレンジや暗いサウンドは、英国ロックに近い聴感。GENESISなどのドラマティックなプログレが好きな方には、是非一度試していただきたい一枚。

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